

「見本どおりに並べる」だけで収納が整わないのは、ペグボードを選び間違えているせいです。
ペグボードとは、等間隔に穴が開けられた板(ボード)に、棒(ペグ)やフックを差し込んで使う道具です。リハビリ分野では「指先でペグをつまんで抜き差しする」上肢訓練の器具として長く使われてきました。一方、インテリア・DIY分野では「有孔ボード」「パンチングボード」とも呼ばれ、壁面収納の定番アイテムとして広く普及しています。
「見本」という言葉が両方のジャンルに登場するのは偶然ではありません。リハビリのペグボードでは、図柄カード(見本カード)を見ながら色や形を認識してペグを並べる訓練が行われます。これはまさに「配置パターンを見本として再現する」作業です。収納ペグボードでも、あらかじめ配置レイアウト図(見本)を描いてからフックを設置するという手順が、整った仕上がりのカギになります。
| 項目 | リハビリ用ペグボード | 収納用ペグボード(有孔ボード) |
|---|---|---|
| 素材 | プラスチック・木製 | MDF・木製・金属・プラスチック |
| 主な用途 | 手指巧緻性・上肢訓練・認知訓練 | 壁面収納・見せる収納・整理整頓 |
| 「見本」の役割 | 図柄カード(配置パターン再現) | レイアウト図(フック・棚の配置計画) |
| 穴の間隔 | 訓練用途により異なる | 25mm・30mm・50mmが一般的 |
リハビリ用と収納用、一見全く異なるジャンルに見えますが、「穴が開いた板にパーツを差し込む」「見本を参照して配置を決める」という構造は同じです。つまり基本原則です。この共通点を理解すると、ペグボードの活用幅が大きく広がります。
収納を極めたい人にとって重要なのは、「見本を先に作ってから設置する」という順序を守ること。場当たり的にフックを差してしまうと、後から修正が困難になるケースがあります。これが原則です。
リハビリで使う用具のご紹介(医療法人起生会スタッフブログ)——ペグボードが目と手の協調運動や空間認識にどう役立つかを解説しています。
作業療法の現場では、ペグボードを使ったリハビリ訓練は複数のパターンに分類されます。実はこれらのパターンは、収納レイアウトの設計思想と驚くほど一致しています。
① 色分けパターン(色彩識別訓練)
赤・青・黄・緑などのペグを色ごとにグループ化して配置する訓練です。収納に置き換えると、「用途カテゴリごとにフックエリアを色で分ける」ゾーニングアイデアになります。たとえばキッチンのペグボードで、調理器具は左、文具は右、カラーテープで境界線を引くと、一目でどこに何があるかわかる収納が完成します。
② 見本再現パターン(構成訓練)
図柄カードを見ながら、その通りにペグを並べる訓練です。収納での応用は、スマートフォンで「理想の収納写真(見本)」を撮っておき、それを見ながら実際のレイアウトを再現すること。憧れの収納実例をそのままトレースする手法です。これは使えそうです。
③ タイムアタックパターン(集中力・速度訓練)
一定時間内にペグを抜き差しする訓練です。収納における応用は「15秒ルール」——どんなアイテムも15秒以内に取り出せる位置に配置するという設計思想です。使用頻度が高いものほどアイコンのように正面中央に配置することが、この考え方の基本です。
④ 左右交互パターン(非対称動作訓練)
利き手と非利き手を交互に使う訓練です。収納での対応は、左右どちらの手でも取り出しやすいアクセス設計を意識すること。ペグボードを机の正面ではなく、利き手側に設置する角度の工夫で実現できます。
⑤ 記憶再現パターン(記憶・認知訓練)
一度見た配置を記憶して再現する訓練です。収納では「ペグボードを撮影してホーム画面の壁紙にする」という手法に変換できます。外出中でも理想の配置を忘れず、帰宅後に素早く戻せるのがメリットです。
手作り道具を使ったリハビリ(社会福祉法人見松会 しろみ)——見本図を見て色や形を認識しながら行う訓練の仕組みを解説しています。
ペグボード収納で最も失敗が多いのは、「見本なしで取り付けを始める」ケースです。設置後にフック位置を変えようとすると、穴ピッチ分しか動かせず、意図した位置に配置できないことが頻繁に起こります。まず見本を作ることが条件です。
ここでは場所・用途別に、実践的な見本レイアウト設計例を紹介します。
🍳 キッチン向け見本レイアウト
キッチンのペグボードは、動線を最優先に配置します。シンク側に調理器具(フライ返し・トング・おたま)、コンロ側に鍋つかみ・タイマー・スパイスラックと、調理の流れに沿って左から右へ配置するのが基本的な見本パターンです。ただし、ガスコンロの直上や蒸気が多い場所はMDF製ボードが反りやすいため、スチール製または樹脂製を選ぶことが必要です。
🔧 工具・ガレージ向け見本レイアウト
工具収納では、「シルエットスプレー法」が効果的な見本作りの手法です。壁に紙を貼り、工具をシルエット状にトレースして配置図を作ります。戻すべき位置が一目で分かるため、誰でも正確に戻せる収納が完成します。リハビリの「見本どおりに並べる」原則をそのまま応用した手法です。
📚 デスク周り向け見本レイアウト
デスク周りのペグボードは「視線の高さ±20cm」に最も使うアイテムを集中させます。文具・メモ帳・充電ケーブルなど1日3回以上触れるものを上部中央に。週1回程度しか使わないものは端や下部に配置する縦ゾーニングが見本の基本です。
🚪 玄関向け見本レイアウト
玄関のペグボードは「出かける前30秒で支度が完了する」動線設計が見本です。鍵・マスク・ハンコ・宅配便の印鑑などを、ドアに向かって左手が届く位置にまとめます。財布や定期入れのような落下リスクが高いアイテムには、フック型よりトレー型パーツを選ぶと安全です。
🧸 子ども部屋向け見本レイアウト
子ども部屋では、床からの高さ60〜90cm(子どもの肩〜目の高さ)に主要アイテムを配置する見本設計が有効です。ランドセル・制服・水筒などを色分けフックで管理すると、小学校低学年でも自分で準備できるようになります。ランドセルは約1kgあるため、フックの耐荷重は3kg以上のものが必要です。
有孔ボード(パンチングボード)の基礎知識(LABRICO・平安伸銅工業)——穴ピッチの種類や取り付け前の確認事項が詳しくまとめられています。
理想の見本レイアウトを作っても、設置方法を間違えると収納が崩壊するリスクがあります。設置前に確認すべきポイントを整理します。
📐 穴ピッチは購入前に必ず確認する
ペグボードの穴間隔(ピッチ)は25mm・30mm・50mmが主流で、これが違うとフックが一切使えません。特にIKEAのSKÅDISは独自規格のため、市販の一般フックは基本的に使用不可です。商品ページの「対応ピッチ」と「フック規格」を購入前に必ず照合することが鉄則です。
🏠 賃貸での設置は「浮かせる」が必須
ペグボードを壁に直接密着させると、フックの爪が穴に入りません。ボード裏面と壁の間に12〜20mmの隙間が必要です。賃貸の場合は、ディアウォール(WAKAI)やラブリコ(平安伸銅工業)を使った突っ張り柱に固定する方法が、壁を傷つけずに本格設置できる定番手法です。退去時の補修費用リスクを回避できます。
⚖️ 耐荷重の確認を忘れずに
ボード本体の耐荷重と、フック1個あたりの耐荷重は別物です。一般的な有孔ボード用フックの耐荷重は1個あたり3〜5kg程度ですが、ボード全体の重量上限は取り付け方法に大きく依存します。石膏ボードの壁に専用留め具のみで固定した場合、下地がない場所では耐荷重が大幅に低下します。
重いアイテムを掛ける予定がある場合、下地センサー(1,500〜2,000円程度で購入可能)で間柱を探し、その位置に長めのビスで固定することで安全性が確保できます。下地に固定するのが原則です。
🌊 場所による素材選びも重要
| 設置場所 | 推奨素材 | 注意点 |
|---|---|---|
| キッチン・洗面所 | スチール・樹脂製 | MDF・木製は湿気で反り・カビが発生しやすい |
| リビング・書斎 | MDF・木製 | 見た目が良く加工しやすい |
| ガレージ・屋外 | スチール(粉体塗装) | 雨風への耐久性が最重要 |
ペグボードを使ったおしゃれ収納実例10選・取り付け方法(macaroni)——賃貸向けの壁非破壊設置方法と耐荷重の注意点を実例付きで解説しています。
ここが、収納を極めたい人がほぼ見落とす視点です。
リハビリのペグボード訓練が継続できる理由のひとつは、「毎回同じ見本を使って小さな達成感を積み重ねる」仕組みにあります。作業療法士は訓練記録(タイム・正確性)をつけ、前回との比較で進歩を数値化します。これが継続のモチベーションを生み出す核心です。
収納も全く同じ原理が使えます。「収納を維持できない」と悩む原因の大半は、初回設置への満足感のみで終わり、維持の仕組みがないことです。つまりこれが問題です。
📸 ベースライン写真を必ず撮る
ペグボードを理想通りに配置できた「完璧な状態」を写真に撮り、スマートフォンのホーム画面に設定します。「こうあるべき状態」の見本写真があると、乱れた際に戻す目標が明確になります。リハビリでいう「図柄カード」と同じ役割です。
📅 週1回のリセットタイムを設ける
ペグボード訓練では「反復練習」が回復の鍵とされています。収納でも同様に、週1回5分間「ペグボードリセット」の時間を設けることが、崩れた配置を元に戻す習慣化の最短ルートです。
🎯 フック位置に「専用ラベル」を貼る
アイテムを外した後のフックに、何を掛けるかを示すラベルを貼ることで、家族全員が同じ見本通りに戻せる仕組みができます。ラベルにはシンプルなシルエットアイコンを使うと、文字が読めない小さな子どもにも対応できます。
🔄 季節ごとに見本を更新する
リハビリでは訓練難度を段階的に上げることで継続的な改善が促されます。収納でも「春夏・秋冬の年2回」または「1〜3月の確定申告シーズン」など、ライフスタイルの変化に合わせてペグボードのレイアウト見本を更新する習慣が、収納の質を高め続けるコツです。
一度決めたら固定という考えが、収納が崩れる最大の原因になります。見本は「更新するもの」という認識に変えることで、ペグボード収納の完成度は長期間維持されます。いいことですね。
リハビリの世界で「急性期・回復期・維持期」とフェーズを分けるように、収納も「整理フェーズ・定着フェーズ・最適化フェーズ」と段階を踏んで育てていく視点が、長続きする収納を作る本質的な考え方です。
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