

自作スポット溶接機の電源にカーバッテリーを使うと、引火爆発のリスクがあります。
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スポット溶接機を自作しようとすると、まず「どの回路方式を選ぶか」という壁に当たります。自作例として世界中のDIY愛好家が採用している方式は、大きく分けて「コンデンサ放電式」と「MOT(電子レンジトランス)式」の2種類です。
コンデンサ放電式は、大容量のコンデンサ(例:56,000μF/80V)に電荷を蓄積しておき、MOSFET等の電子スイッチで一瞬だけ放電させる方法です。通電時間はマイクロ秒〜数ミリ秒の超短時間で、電池タブ(ニッケルストリップ)や薄いステンレスの溶接に適しています。回路図の主な構成要素は、DC電源・充電用スイッチ(PWM回路)・大容量電解コンデンサ・MOSFETアレイ・タイマーIC(555など)・電極です。
コンデンサ式の特徴は短い。
一方、MOT式は廃棄された電子レンジのマイクロ波発生用トランス(Microwave Oven Transformer)の二次コイルを巻き直し、数ボルト・数百アンペアの低電圧大電流出力に改造する方式です。一次側はAC100Vをそのまま使います。タイマー回路(555IC+リレーやSSR)を組み合わせ、通電時間を制御します。板金溶接や太いニッケル板など、ある程度の板厚がある素材に向いています。
下の表で両方式の違いを整理しておきましょう。
| 比較項目 | コンデンサ放電式 | MOT式 |
|---|---|---|
| 主電源 | DC(カーバッテリー/AC→DCアダプター) | AC100V |
| 出力電流 | 1,000〜3,000A(パルス) | 数百A(連続寄り) |
| 通電時間 | 100μs〜数ms | 数十ms〜数百ms |
| 主な用途 | 電池タブ・薄板ステンレス | 板金・薄板鉄鋼 |
| 回路難易度 | やや高い(MOSFET制御) | 比較的シンプル |
| 部品コスト目安 | 3,000〜8,000円前後 | レンジが無料入手できれば安価 |
つまり用途によって選ぶ方式が変わります。
電池タブ溶接(18650リチウムイオン電池の組電池製作など)が目的ならコンデンサ放電式、板金修理などが目的ならMOT式が基本です。
参考になる詳細な回路設計と部品選定がまとまっているサイト(RADECH):
Easyスポット溶接の製作(回路図・シミュレーション・実装まで詳解) - RADECH
回路図を見ても「記号が多くて何が何だかわからない」という状態だと、組み立て時に致命的なミスにつながります。ここでは自作スポット溶接機の回路図に登場する主要部品を押さえておきましょう。
① 大容量電解コンデンサ(C)
コンデンサ放電式の核心部品です。容量の目安としては、1,000Aを10μs流す場合に必要なコンデンサ容量は約333μF(電圧30Vの場合)となります。実際の設計では余裕を持たせ、15,000〜56,000μFを搭載するケースが多いです。コンデンサを選ぶ際に注意が必要なのがESR(等価直列抵抗)です。通常の電解コンデンサはESRが比較的大きく、瞬間放電時のロスが増えます。導電性高分子タイプ(OSコンなど)はESRが低く、大電流パルスに有利です。ESRが性能を左右します。
② MOSFET(電界効果トランジスタ)
大電流を高速でON/OFFするスイッチング素子で、コンデンサ放電式の回路図では欠かせない部品です。溶接電流は数百〜数千Aにもなるため、1個のMOSFETでは到底耐えられません。実際の設計では、IRLB3034PBF(ON抵抗1.4mΩ、連続343A/パルス1,372A)などの低ON抵抗品を8〜14個並列に接続して電流を分散させます。秋月電子通商では1個あたり250円程度で入手できます。並列数が多いほど安全ですね。ただし、並列MOSFETにはそれぞれ保護抵抗を入れてON抵抗のばらつきによる電流集中を防ぐ必要があります。
③ タイマーIC 555
溶接時間(通電時間)を精密に制御するのがタイマーIC 555です。回路図上では「ワンショットタイマーモード」で使われることが多く、通電時間Tは「T=1.1×R×C」という式で計算できます。例えばR=100Ω、C=0.1μFなら約11μs、R=50kΩにすると約5.5msになります。この時間設定が溶接品質を決めます。
④ フォトカプラ(PC817など)
制御回路(低電圧側)と大電流スイッチング回路(高電圧側)を電気的に絶縁しながら信号を伝えるための素子です。回路図でフォトカプラが入っている意味は「感電防止と回路保護」です。これは必須です。
⑤ コンパレータ(LM319など)
充電完了タイミングの検出などに用いられ、555タイマーとの組み合わせで「充電が終わったら自動的に溶接可能状態にする」という制御フローを実現します。
参考として、電池タブ溶接用のコンデンサ式スポット溶接機の製作記録(実際の組み立て写真つき):
【DIY】電池タブ用のスポット溶接機の制作【組電池】 - 修理のきろくDX
実際に回路図を書き起こして自作に進むためのプロセスを整理します。いきなり部品を買い集めても、設計を理解していないと組み立て後に動かない・壊れるという結果になりがちです。実際に自作した製作者の多くが「FETの接続方向を間違えた」「配線の抵抗値が高くて電流が出なかった」といった失敗を経験しています。設計と理解が先決です。
ステップ1:溶接対象と必要エネルギーを計算する
ステンレス(SUS304)の場合、厚さ0.1〜0.2mm程度のタブ溶接に必要なエネルギーは0.05〜0.1J程度です。銀や銅は熱伝導率が高いため同条件では4〜10倍以上のエネルギーが必要になり、自作の小型装置では溶接できないことがほとんどです。「何でも溶接できる」わけではありません。
ステップ2:電圧と電流値を決める
自作機では感電リスクを下げるため、直流35V以下を上限とする設計が一般的です。実用的な出力電流は500〜1,000A程度。配線抵抗(往復1mのケーブルで3〜10mΩ程度)が大きいと電圧降下で実際の電流が大幅に落ちるため、配線は極力太く・短くする必要があります。配線抵抗が命取りです。
ステップ3:コンデンサ容量を選ぶ
「出したい電流 × 通電時間 = コンデンサの供給電荷量」から逆算します。1,000A・10μsなら電荷量は10mC。電圧30Vなら必要容量は333μFとなります。実際には内部抵抗(ESR)による損失を考慮して、計算値の5〜10倍程度の容量を搭載することが多いです。
ステップ4:スイッチング回路を設計する
MOSFETの選定では「ON抵抗が低い(1.4mΩ以下が理想)」「耐圧が電源電圧の1.5倍以上」「連続電流の余裕がある」の3点が重要です。複数個を並列接続する場合は、それぞれのソース端子に0.1〜0.33Ω程度の均流抵抗を入れてバランスをとります。
ステップ5:タイミング制御回路を設計する
555タイマーのワンショット回路を2段構成にして「充電制御タイミング」と「溶接電流出力タイミング」を分離するのが安全設計の基本です。充電スイッチがOFFになった後、わずかな遅延(1〜5ms)を挟んでから放電スイッチをONにしないと、両方のスイッチが同時にONとなり回路がショートする危険があります。この遅延が安全の要です。
以下のリンクはMonoistによる12Vバッテリーを使ったスポット溶接装置の回路図・実体配線図の解説(実際の動作検証まで記載):
これは多くの自作ブログで触れられていない、独自視点の重要ポイントです。回路図を完璧に引いても、実配線の抵抗値が高いと溶接機としてほぼ機能しません。知らないと損します。
仮に配線の往復抵抗が9mΩあるとして、そこに1,000Aを流しても電源電圧のほぼ全てが配線で消費されてしまいます(V=I×R = 1,000A × 0.009Ω = 9V)。電源が30Vでも実際に溶接点に届く電圧がほとんどなくなるのです。実際にRADECHの製作事例でも「+側ケーブルの抵抗5mΩ、−側4mΩ、合計9mΩ」という測定結果が出ており、これを1mΩ以下に下げる必要があると報告されています。これが現実の壁です。
配線抵抗を下げるための具体的な対策は以下のとおりです。
回路図で完璧に設計しても、配線の引き回しで性能が半分以下になることは珍しくありません。自作スポット溶接機の「動かない」「パワーが出ない」という悩みの多くは、回路設計ではなく配線の物理的な抵抗値が原因です。まず配線抵抗を疑いましょう。
また、コンデンサのESR(等価直列抵抗)も同様です。56,000μFの大型電解コンデンサでもESRが10〜15mΩある製品では、前述の配線抵抗と合計すると25mΩ近くになり、理論電流値の半分以下しか出せない計算になります。OSコン(導電性高分子タイプ)や低ESR品への置き換えが有効です。ESRの確認が必須です。
自作スポット溶接機の製作・使用において、安全対策は「あると良い」ではなく「なければ作ってはいけない」レベルの重要事項です。コンデンサ放電式溶接機での未放電コンデンサへの接触により380Vの感電が起きた事例があります。人体の抵抗を1,000Ωとすると電流は380mAとなり、これは安全閾値(一般的に10mA)の38倍に相当します。380Aではなく、たった380mAで命に関わります。
危険ポイント①:コンデンサの残留電荷
電源をオフにした後も、大容量コンデンサには数十〜数百Vの電荷が長時間残ります。作業前には必ず専用の放電抵抗回路(例:放電用の10〜50Ω/10W以上の抵抗をコンデンサに接続)でエネルギーを消費させてから作業してください。電圧計で36V以下であることを確認してから触るのが原則です。放電確認が絶対条件です。
危険ポイント②:MOT式の一次側は高電圧
MOTの一次側はAC100V、二次側のコイルを除去する前は約2,000Vの高圧を発生します。廃棄レンジからMOTを取り出す際は必ず電源コードを切断し、一次コイル・二次コイル・マグネトロン用フィラメントコイルの3系統が完全に無電圧であることを確認してから分解してください。電子レンジ内のマグネトロンに付属する高圧コンデンサも数kVの残留電圧を持っていることがあります。厳しいところですね。
危険ポイント③:FETの配線ミスによる即壊れ
MOSFETのN-ch品をソース側に負荷を接続するミス(正しくはドレイン側に負荷)は、VGSの定格(例:±20V)を超えて頻繁に破損する原因になります。実際の製作事例でも「何度やっても同じFETが壊れる、原因が分からない」という状況が起きています。FETの接続方向は回路図を3回確認するべきです。
危険ポイント④:スパッタと目の保護
溶接時には金属の溶融スパッタが20m/s以上の速度で飛散します。必ず保護眼鏡(通常の眼鏡では不十分で、保護ゴーグルまたは溶接用シールド)を着用してください。目への異物混入のリスクがあります。
以下は感電リスクや安全操作手順を詳細に解説した参考リンクです:
コンデンサ放電スポット溶接機の安全操作ガイド(感電・電磁放射線・機械的リスクの詳細) - busbarwelder

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