突っ切りバイト チップの種類と正しい選び方完全ガイド

突っ切りバイト チップの種類と正しい選び方完全ガイド

突っ切りバイト チップの選び方と基本知識を徹底解説

鋼材用のチップでSUS304を削ると、1回の加工でチップが使えなくなる場合があります。


🔧 この記事でわかること
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チップの形状と用途の違い

縦長タイプと多角形タイプそれぞれの適した使い方を解説します。

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材質(P/M/K/S)の選び分け方

超硬合金の識別記号と被削材の正しい組み合わせを紹介します。

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型番・規格の読み方

型番に含まれる形状・逃げ角・コーナーRなどの記号の意味を解説します。

収納情報


突っ切りバイト チップの形状による種類と特徴


突っ切りバイトのチップには、大きく分けて「縦長の1〜2コーナータイプ」と「多角形の3〜6コーナータイプ」の2種類があります。どちらを選ぶかで、加工できる深さや経済性が大きく変わります。


縦長の1〜2コーナータイプは、チップの全長を超えるような深い溝にも対応できる点が最大の強みです。主に溝幅2mm以上のホルダに使われており、ある程度の大径ワークを突っ切る場面で活躍します。ただし、1つのホルダで対応できる溝幅は1種類だけに限られるため、複数の溝幅に対応したい場合は別途ホルダを揃える必要があります。


一方、3〜6コーナーの多角形チップは、1つのホルダで複数の溝幅に対応できることが大きな利点です。小径ワーク(φ12mm以下)の浅い突切りに向いており、チップを交換するだけで溝幅を変えられるため、段取りの手間を大幅に減らせます。ただし、多角形タイプには加工可能な深さに上限があるため、深溝には不向きです。これが条件です。


タイプ コーナー数 主な溝幅 対応深さ 特徴
縦長タイプ 1〜2 2mm以上 深溝まで対応 1ホルダ・1溝幅固定
多角形タイプ 3〜6 〜2mm 浅〜中程度まで チップ交換で複数幅対応


突切り径の大きさによって推奨チップも変わります。Sandvik Coromantのガイドラインでは、径10mm以下には溝幅1.0mm、径10〜25mmには1.5mm、径25〜40mmには2.0mm、径40〜50mmには2.5mm、径50〜65mmには3.0mmのチップ幅を推奨しています。これはカードの短辺(約54mm)程度の径には3mm幅が目安、というイメージです。つまり、ワーク径に合わせてチップ幅を決めるのが基本です。


突っ切りバイト チップの材質(超硬合金の識別記号)の選び方

突っ切りバイトのチップを選ぶとき、「とりあえず手元にあるもので削ってみる」という判断は、チップの寿命を大幅に縮める原因になります。切削工具用の超硬合金チップはISO規格によってP・M・K・N・S・Hの6種類に分類されており、それぞれ削れる被削材が異なります。


- P(識別色:青) — 鉄鋼・炭素鋼など一般的な鋼材に使用
- M(識別色:黄) — ステンレス鋼(SUS304など)に対応
- K(識別色:赤) — 鋳鉄専用
- N(識別色:緑) — アルミニウム合金などの非鉄金属向け
- S(識別色:茶) — チタン合金・耐熱合金などの難削材用
- H(識別色:灰) — 高硬度材料・焼入れ鋼向け


特に注意が必要なのはM材(ステンレス)との組み合わせです。鋼材用のP材チップでSUS304を加工しようとすると、切削点で鉄系材料と化学反応が起きやすく、チップが急激に摩耗したり最悪の場合は折れてしまうことがあります。これは痛いですね。


汎用性を優先したい場合は、M材(ステンレス対応)のチップを選ぶのが定石です。M材チップは鋼材にも問題なく使えるものが多く、チップ交換の頻度と管理コストを下げるうえで合理的な選択です。現場でチップの材種を見分けるには、ホルダのシャンク端に示された識別色か、チップケースの記号を確認するのが確実です。


切削加工の基礎に関する詳細な解説は以下のページが参考になります。芝浦工業大学の澤准教授が監修しており、超硬合金の識別記号から使い分けの原則まで丁寧に解説されています。


1-3 超硬合金チップの使い分け|切削工具の基礎講座 – モノタロウ


突っ切りバイト チップの型番・規格の読み方

チップの型番は一見複雑に見えますが、ISO 1832規格に基づいた「暗号」です。構造さえ覚えれば、カタログを見ただけで形状・逃げ角・サイズ・コーナーRを読み取れるようになります。意外ですね。


型番は基本的に以下の順序で並んでいます。


位置 内容
1文字目 チップ形状 T=正三角形、S=正方形、C=ひし形80°
2文字目 逃げ角 N=0°、C=7°、D=15°
3文字目 精度 M=金型品、G=研磨品
4文字目 穴・ブレーカー有無 N=穴なし・ブレーカーなし、M=穴あり・片面
5〜6文字目 切刃長さ 09=内接円9.525mm
7〜8文字目 厚み 03=3.18mm
9〜10文字目 コーナーR 04=0.4mm、08=0.8mm
以降 ブレーカー記号(メーカー独自) 各社で異なる


たとえば「TNMG160408」というチップ型番なら、T=正三角形、N=逃げ角0°、M=精度M級、G=両面ブレーカー穴あり、16=内接円径9.525mm相当、04=厚み4.76mm、08=コーナーR0.8mmを意味します。このように読み解くと、カタログなしでもチップのおおよその特性が把握できます。これは使えそうです。


ただし、ブレーカー記号と材種記号はメーカーごとに独自の表記になっているため注意が必要です。三菱マテリアル・京セラ・HORN・Sandvik Coromantなどでは、同じブレーカー形状でも記号が異なります。ホルダを購入するときはメーカーを揃えることが大前提で、異なるメーカー間でのチップとホルダの互換性は基本的にありません。チップ互換性なしが原則です。


型番の詳しい読み方は以下のページで図解されています。型番コード表をそのまま参照できるため、実務でのチップ選定に役立ちます。


切刃(チップ)の型番の見方|モノタロウ


突っ切りバイト チップのブレーカー選定と切削条件の関係

チップブレーカーとは、チップのすくい面に設けられた溝や突起のことです。切り粉(切削屑)をコントロールして分断するための重要な形状要素で、見た目の差は小さいですが、加工結果に与える影響は大きいです。


ブレーカーを選ぶとき、最初に確認すべきなのは「送り速度」です。送り速度が低い条件では、切り粉が薄くなるため「軽切削用(低送り対応)ブレーカー」が適しています。逆に送りを速くかけたい場合は、切り粉が厚くなるため「汎用ブレーカー」や「高送り用ブレーカー」を選ぶ必要があります。


たとえばNC旋盤でSUS304を2mm幅の突っ切りバイトで削る場合、送り速度の目安はf0.02mm/rev程度です。鋼材の場合はf0.04mm/rev前後が一般的な目安になります。溝幅が3mmに広がると、f0.06mm/rev程度まで上げられる場合もあります。この数値はISO規格の用紙1枚(A4)の短辺が約210mmですから、毎回転で0.02mmというのは約1/10,000の値、非常に細かいレベルの送りです。


突切り加工では切り粉の排出が悪いとチップが折れる直接的な原因になります。特に深溝になるほど切り粉が溝の中に詰まりやすくなるため、突切り用に設計されたブレーカーを選ぶことが重要です。溝入れ用とは異なり、突切り専用ブレーカーは溝幅よりも細い切り粉を出すように設計されており、切り粉の詰まりを防ぐ構造になっています。ブレーカー選定が条件です。


また、汎用旋盤で使う場合は送り速度が遅すぎると刃先に「こすり」が生じ、摩耗が急加速します。一般的な感覚よりも「少し速め」に送ることで、刃先をしっかり切り込ませるのがコツです。切削条件の最適化が基本です。


突切り加工の適用方法・推奨送り速度などの詳細は以下が参考になります。世界最大規模の切削工具メーカーSandvik Coromantによる公式技術情報です。


突切り加工の技術情報|Sandvik Coromant(サンドビックコロマント)


突っ切りバイト チップ交換の見極め方と寿命を延ばす独自ポイント

突っ切りバイトのチップ交換のタイミングは、多くの現場で「加工音が変わったとき」や「削り面が粗くなったとき」を目安にしていることが多いです。しかしこれは実は遅すぎる判断で、チップが破損してワークごと廃棄になるリスクが高まります。チップの「折れ」は突切り工程の最終段階に多発し、折れた瞬間にワークの突っ切り面が傷つくため、仕上がりで廃品になるケースが後を絶ちません。


チップ寿命の見極めに役立つ具体的なサインを以下に挙げます。


- 🔔 びびり音が増えてきた — 刃先の摩耗が進み切削抵抗が不安定になっているサイン
- 🔔 突っ切り面に筋が残るようになった — すくい面の欠けや摩耗が始まっている
- 🔔 切り粉の色が変わった(青みがかった変色) — 刃先が高温になりすぎている証拠
- 🔔 送り中の抵抗感が重くなった — 逃げ面の摩耗進行が考えられる


チップ交換のタイミングを早めに判断するうえで有効な方法が「加工本数カウント」です。材料や加工条件が安定している量産品であれば、「何本加工したらチップを交換する」と予め決めておくことで、トラブル発生前に計画的なメンテナンスができます。突っ切り加工は旋盤工程の最終工程になることが多く、ここでのミスは製品全体を廃棄することに直結します。廃品ゼロが目標です。


チップ交換の具体的な手順はメーカーによって異なりますが、多くのスローアウェイバイトでは六角レンチまたはトルクスレンチでクランプネジを緩め、インサートを裏返しまたは次のコーナーに回して取り付けます。2コーナーチップであれば1枚で2回使用でき、6コーナーチップなら最大6回の使用が可能です。多コーナーチップの経済性は1枚あたりのコストを大きく下げるため、量産加工でのランニングコスト削減に直結します。これはいいことですね。


また、HORNのように上下対角配置の2コーナーチップを採用しているメーカーでは、未使用のコーナーが加工中に傷まない設計になっており、1チップあたりの有効使用率が高くなります。一般的な2コーナーチップは両コーナーが隣り合う形状のため、片方を使用中にもう片方も摩耗・欠けのリスクにさらされることがあります。この点は見落とされがちな選定ポイントです。


チップの形状・取り付け精度・クランプ強度を合わせてカタログで確認する際は、HORN社のWEBカタログが溝入れ・突っ切り専門の情報として特に充実しています。


HORN社 溝入れ・突っ切りバイト WEBカタログ(日本語)




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