超硬ドリル切削条件の計算式と回転数・送り速度の求め方

超硬ドリル切削条件の計算式と回転数・送り速度の求め方

超硬ドリルの切削条件を計算で正しく求める方法

切削速度を少し上げるだけで、工具寿命が半分以下に縮まることをご存じですか?


この記事でわかること
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切削条件の3大計算式

切削速度・回転数・送り速度の正しい計算式と、具体的な数値例をわかりやすく解説します。

⚠️
穴あけ深さによる条件変更

穴の深さが3Dを超えると回転数と送り速度を20%下げる必要があります。見落としがちなポイントを解説します。

🛡️
コーティングと被削材の対応

TiAlN・DLCなど主要コーティングの特徴と、被削材ごとの最適な選び方をまとめました。

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超硬ドリルの切削条件とは何か・基本の3要素を理解する


超硬ドリルで穴あけ加工をするとき、「カタログの条件をそのまま入れれば大丈夫」と思っている方は少なくありません。しかし、切削条件はドリルの径・被削材・機械剛性の三つが絡み合って決まるもので、カタログ値はあくまで出発点に過ぎません。


切削条件を構成するのは主に「切削速度(Vc)」「回転数(n)」「送り速度(vf)」の3要素です。この三つは独立しているようで、実は互いに密接に結びついています。


- 切削速度(Vc):ドリルの外周が1分間に進む速さ。単位はm/minで表され、被削材の硬さによって推奨値が変わります。


- 回転数(n):主軸が1分間に回転する回数。単位はmin⁻¹(rpm)です。ドリル径が小さいほど同じ切削速度を出すために高い回転数が必要になります。


- 送り速度(vf):ドリルが軸方向に進む速さ。1回転あたりの送り量(mm/rev)と回転数から求めます。


つまり切削条件が原則です。この三つを正しく把握して初めて、適切な穴あけ加工が実現します。


超硬ドリルは、ハイス鋼ドリルと比較して切削速度が2〜3倍程度高く設定できるのが特徴です。たとえば一般鋼(SS材)の場合、ハイスドリルの推奨切削速度が20〜30 m/minであるのに対し、超硬ドリルでは35〜80 m/min、さらにオイルホール付きの超硬ドリルになると100〜150 m/minまで上げられます。


加工速度を正しく設定することは、工具寿命の確保にも直結します。三菱マテリアルの技術資料によると、切削速度を20%上げただけで工具寿命は約1/2に、50%上げると1/5にまで低下します。わずかな速度変更が大きな経済的損失を招くのです。これは使えそうです。


三菱マテリアル|穴加工計算式(切削速度・主軸送り・穴あけ時間の公式と計算例)


超硬ドリルの切削速度・回転数の計算式と具体例

切削条件の計算は、一度理解してしまえばシンプルです。まず回転数の算出から見ていきましょう。


回転数(n)は以下の式で求められます。


$$n = \frac{V_c \times 1000}{\pi \times D_c}$$


ここで Vc は切削速度(m/min)、Dc はドリル径(mm)、π は円周率(3.14)です。


具体例を挙げると、SCM440(クロムモリブデン鋼)をφ10mmの超硬ドリルで加工し、切削速度を60 m/minに設定した場合、回転数は次のようになります。


$$n = \frac{60 \times 1000}{3.14 \times 10} \approx 1911 \, \text{min}^{-1}$$


約1910 rpmが目安です。計算が基本です。


逆に、回転数がわかっていて切削速度を確認したい場合は下式を使います。


$$V_c = \frac{\pi \times D_c \times n}{1000}$$


たとえば主軸回転速度1350 min⁻¹、ドリル径φ12mmであれば、


$$V_c = \frac{3.14 \times 12 \times 1350}{1000} \approx 50.9 \, \text{m/min}$$


切削速度は約51 m/minとなり、一般鋼向け超硬ドリルの推奨範囲(35〜80 m/min)内に収まっていることが確認できます。


被削材ごとの超硬ドリル推奨切削速度の目安を以下にまとめます。


| 被削材 | 切削速度の目安(m/min) |
|---|---|
| 軟鉄・一般鋼(SS材) | 35〜80 |
| 炭素鋼・合金鋼 | 30〜70 |
| ステンレス鋼(SUS304等) | 15〜30 |
| ダイス鋼・工具鋼 | 15〜30 |
| 鋳鉄 | 50〜70 |
| アルミニウム合金 | 100〜200(目安) |


ステンレスや工具鋼は数値が低めです。これは熱がこもりやすく、過大な切削速度が刃先の急激な摩耗を引き起こすためです。


日進工具|切削速度・回転数・送り速度の求め方(機械の回転数が不足する場合の対処法も解説)


超硬ドリルの切削条件計算・送り速度の求め方と注意点

回転数が決まったら、次は送り速度(vf)を計算します。送り速度が小さすぎると切り屑が絡まりやすくなり、大きすぎるとチッピングや折損の原因になります。


$$v_f = f_r \times n$$


ここで fr は1回転あたりの送り量(mm/rev)、n は回転数(min⁻¹)です。


先ほどの例(φ10mm超硬ドリル、n ≈ 1910 min⁻¹)で送り量を0.15 mm/revとすると、


$$v_f = 0.15 \times 1911 \approx 287 \, \text{mm/min}$$


送り速度は約287 mm/minとなります。送り量の目安は被削材と工具径によって変わり、超硬ドリルでは概ね0.1〜0.5 mm/revの範囲が一般的です。


| 被削材 | 超硬ドリル推奨送り量(mm/rev)の目安 |
|---|---|
| 軟鉄 | 0.20〜0.50 |
| 炭素鋼・合金鋼 | 0.20〜0.40 |
| ステンレス鋼 | 0.10〜0.30 |
| ダイス鋼 | 0.10〜0.30 |
| 鋳鉄 | 0.25〜0.40 |


初回加工時は小さめの送り量からはじめるのが安全です。意外ですね。慣れない被削材や工具では、カタログ下限値の7〜8割程度からスタートし、切り屑の形状や加工音を見ながら調整していくのが現場の鉄則です。


また、機械の最大回転数が推奨値に届かない場合は、回転数と送り速度を同じ割合で下げるのがポイントです。たとえば推奨回転数の80%しか出ない機械であれば、送り速度も同様に80%に落とすことで、1回転あたりの送り量(fr)が変わらず、切り屑厚みが適正に保たれます。


ミスミ|ドリルの説明〜分類・材質・選定仕様・切削条件〜(切削条件の換算式や穴あけ作業の注意事項も掲載)


超硬ドリルの切削条件・穴あけ深さによる条件変更の落とし穴

多くの方が見落としがちなのが、穴あけ深さと切削条件の関係です。ドリルの切削条件表は基本的に「穴あけ深さ3D以下」で設定されています。D はドリルの径です。


つまりφ10mmのドリルであれば30mm以内、φ6mmなら18mm以内の穴に適用される条件です。これが条件です。


穴が深くなるにつれ、切り屑の排出が難しくなります。切り屑が溝に詰まると、スラスト(軸方向)荷重が急増し、ドリル折損につながります。NACHI(不二越)の超硬ドリル切削条件表では、穴あけ深さが3Dを超える場合は「回転数と送り速度をそれぞれ20%下げる」ことが明記されています。


深さが 3D〜5D の範囲では20%減、5D を超えるような深穴ではさらなる条件緩和やステップ送りの採用が推奨されています。


🔽 ステップ送りとは、ドリルを途中で一度引き抜いて切り屑を排出しながら加工する方法です。加工時間は増えますが、折損リスクを大幅に下げられます。


また、穴あけ深さが長くなる場合は、オイルホール付きの超硬ドリルの使用が非常に効果的です。刃先への切削油を内部供給することで、冷却効率と切り屑排出性が大幅に向上します。オイルホール付きの切削速度は通常の超硬ドリルの2倍近くに設定できるほどです。これは使えそうです。


穴あけ深さと条件変更の関係を意識しておくだけで、折損リスクが大きく下がります。


NACHI(不二越)|超硬ドリルの基準切削条件PDF(穴あけ深さ3D・2Dごとの条件変更基準を記載)


超硬ドリルの切削条件を左右するコーティングの種類と選び方

超硬ドリルはコーティングの有無・種類によって、同じ切削条件でも工具寿命が大きく変わります。コーティング選びが条件です。


コーティングの主な目的は「耐摩耗性の向上」と「溶着の防止」ですが、種類によって得意な環境がまったく異なります。間違えると工具寿命が短くなるだけでなく、仕上げ面粗さの悪化や加工精度の低下を招きます。


主なコーティングの種類と適した被削材を以下の表に整理します。


| コーティング種類 | 特徴 | 向いている被削材 |
|---|---|---|
| TiN(窒化チタン)🟡 | 汎用性が高い。耐摩耗性・耐酸化性良好 | 一般鋼、炭素鋼 |
| TiAlN(窒化チタンアルミニウム)⬛ | 高硬度・高耐熱(800℃前後まで対応) | ステンレス、合金鋼、高硬度鋼 |
| DLC(ダイヤモンドライクカーボン)🔵 | 超低摩擦係数(0.05〜0.1)で溶着防止 | アルミ、銅、非鉄金属 |
| CrN(窒化クロム) | 非鉄金属との親和性が低い | 銅、真鍮 |
| ダイヤモンドコート 💎 | 最高硬度。ただし鉄系には不向き | グラファイト、超硬材、CFRP |


注目はDLCコーティングです。摩擦係数が0.05〜0.1と非常に低く、アルミ加工では被削材の溶着(構成刃先)が発生しにくいという特性があります。ただし耐熱温度は350℃程度と低めなので、切削速度が高くなる鉄系材料には不向きです。


反対にTiAlNコーティングはドライ加工(クーラントなし)でも800℃近くまで性能を維持するため、ステンレスや調質鋼のように熱がこもりやすい材料への切削に力を発揮します。ステンレス加工ではコーティングの有無で工具寿命に顕著な差が出ることも知られています。


コーティングと被削材の組み合わせを1点だけ記憶するなら、「アルミにはDLC・ステンレスにはTiAlN」を覚えておけばOKです。


北東技研工業|切削工具のコーティング種類と選定ポイント(被削材別コーティング対応表あり)


超硬ドリルの切削条件データを蓄積して加工精度を上げる実践法

計算式を覚えるだけでは、現場の加工精度はすぐには上がりません。最適な条件は「計算→実加工→観察→記録」のサイクルで育てていくものだからです。


現場の熟練した技術者が最初にチェックするのは「切り屑の形状」です。切り屑の状態は、切削条件が適切かどうかを示す最もリアルタイムな情報源です。


- 🔵 螺旋状の切り屑:送り量と切削速度のバランスが良好なサイン
- 🟡 粉状・微細な切り屑:切削速度が高すぎる、または送り量が少なすぎる
- 🔴 長く連続した帯状の切り屑:切り屑の詰まりや折損リスクが高い状態


切り屑が理想的な形になるよう、回転数と送りを微調整するのが実践の核心です。これが基本です。


加工ごとのデータをメモしておく習慣も非常に重要です。被削材の材種、ドリルの品番・径・コーティング、設定した回転数と送り速度、穴あけ深さ、切り屑の状態、工具の状態変化などを一行ずつメモするだけで、次回からの条件出しにかかる時間を大幅に短縮できます。


実際、加工ノウハウを長年蓄積している工場では、新規材料の条件出しを一度でほぼ最適化できるケースが多いです。データの蓄積は目に見えない「財産」になります。いいことですね。


また、切削条件の計算を現場で素早くこなしたい場合、三菱マテリアルや住友電工ハードメタルが提供するオンライン加工計算ツールが便利です。径・切削速度・送り量を入力するだけで回転数・加工時間・切削動力まで一括で算出できます。ブラウザから無料で使えるので、まずアクセスして確認してみてください。


MOLDINO|各種工具の切削動力計算ツール(ドリルのトルク・動力・送り分力を無料でオンライン計算)


三菱マテリアル|穴加工計算式ページ(切削速度・送り速度・加工時間を入力フォームで即計算)




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