

硬化剤の混合比を1mmでも目分量にすると、2液型フィラーは永遠に固まりません。
収納情報
ウッドフィラーには大きく「1液型」と「2液型」の2種類があります。1液型は水分や溶剤が蒸発することで固まる仕組みで、使い方はシンプルですが、水分が飛ぶと同時に体積が縮む「肉やせ」が起きやすいという弱点があります。
2液型はまったく別の原理で動いています。主剤(ポリエステル樹脂またはエポキシ樹脂)と硬化剤を混合した瞬間から化学反応がスタートし、反応熱を発しながら固まります。乾燥ではなく「硬化」なので、水分の蒸発による収縮がほとんど起きません。
実際に「レックスリート(2液性ポリエステルパテ)」の仕様書によると、収縮率はわずか1〜2%。これはほぼ肉やせなしと言ってよい数字です。たとえば収納棚の角が5mm欠けたとしたら、1液型で補修すると硬化後に若干へこんでしまうことがあるのですが、2液型なら充填した形をほぼそのまま維持してくれます。
つまり深い、広い傷ほど2液型の出番です。
主な2液型ウッドフィラー(補修用パテ)の種類と特徴を以下に整理します。
| 商品名 | 樹脂 | 硬化開始時間 | 特長 |
|---|---|---|---|
| レックスリート | ポリエステル | 約5〜8分 | 鏡面仕上げ対応・チューブ式 |
| ウッディーポリパテ | ポリエステル | 約20〜30分 | ペースト状・広面積OK |
| ポリラック | ポリエステル | 約20〜30分 | 大容量1kgタイプあり |
| ウッドカラーエポキシパテ | エポキシ | 約20〜30分 | 粘土状・立体欠け補修向け |
作業可能時間が短いものもあります。素早く混ぜることが前提です。
収納家具、とくに棚板・引き出しの前板・扉の角など「毎日触れる場所」に傷がつくことは珍しくありません。これらを補修するとき、2液型ウッドフィラーが特に有効な理由があります。
まず、硬化後の硬度が高い点です。ポリエステル系の2液型パテは硬化すると、サンドペーパーや彫刻刀で削り出せるほど硬くなります。収納棚の角部分のように、荷物が当たりやすい場所でも欠けにくい仕上がりになります。
次に、耐水性があることです。1液型の水性アクリルパテは湿気に弱く、洗面台下の収納や洗面所近くの棚では補修が浮き上がることがあります。2液型のポリエステルまたはエポキシ系は耐水性があるため、湿度の高い場所でも安定しています。
そして、塗装・切削が可能という点が見逃せません。完全硬化後は塗装でき、木目を描き足すなどの仕上げ塗装ができます。研磨もしやすく、周囲の木材に馴染む表面を作れます。
収納の扉に5〜10mm程度のえぐれや角欠けがあるとき、業者に依頼すると1か所あたり3万〜5万円かかることもあります。2液型パテなら製品代2,000〜4,000円ほどで自分で対応できるため、費用差は非常に大きいです。これは使えそうです。
ただし収納素材がメラミン化粧板や塩ビシート貼りの場合、パテの密着が弱いことがあります。その際はサンドペーパーで足付け処理(表面を軽く削って凹凸をつける)をしてから塗布することが必要です。密着対策が条件です。
2液型パテが「永遠に固まらない」原因のほとんどは、混合比が正確でなかったことです。この点を理解しておくだけで失敗リスクが大きく下がります。
製品によって混合比は異なりますが、ポリエステル系パテの代表例は以下のとおりです。
「6cmに対し1cm」というのはミキシングボードに主剤を6cm絞り出し、硬化剤を1cm分の長さで絞り出すというイメージです。長さにして名刺の短辺(5.5cm)ほどの量に対して、キャップのツメ1本分くらいの硬化剤が目安です。ただしこれは目安であって、精密な補修では電子スケールで重量計量するのが確実です。
混合時の注意点がいくつかあります。まず、気泡が入らないようにゆっくり練り混ぜること。次に、容器の縁やヘラに付いたパテもしっかりしごき落として均一に混ぜること。混合が不十分だと、全体の一部分だけが硬化しない状態になります。
硬化剤の量は気温によって調整が必要です。寒い冬場(10℃以下)は化学反応が遅くなるため、硬化剤をやや多めにするか、ドライヤーで軽く温めると硬化が安定します。夏場(30℃超え)は逆に可使時間が急激に短くなるため、一度に混合する量を少なく抑えることが大切です。
混合後の可使時間内に使い切れる量だけ混ぜる、これが原則です。余ったからといって次の作業に取っておくことはできません。
実際の補修作業は大きく5つのステップに分かれます。ここではレックスリートを例にした手順を解説しますが、他の2液型パテでも基本的な流れは同様です。
ステップ1:下処理
補修箇所のほこり・水分・油分を完全に取り除きます。ここを怠ると密着不良の原因になります。やすりで表面を軽く荒らす「足付け」をすると、パテの食いつきがよくなります。
ステップ2:混合と充填
ミキシングボードに主剤と硬化剤を所定の比率で絞り出し、ヘラで均一に混ぜ合わせます。5〜8分で硬化が始まる製品の場合、手早く作業することが必要です。補修箇所に充填したら、付属の透明フィルムをかぶせてヘラで平らに延ばし、テープで固定します。
ステップ3:半硬化でのカット
完全硬化前(触ってもヘラに付かない程度)にフィルムを外し、余分なパテをスクレーパーや専用ツールで削り取ります。この「半硬化のタイミング」が仕上がりを左右します。早すぎると形が崩れ、遅すぎると削れなくなります。
ステップ4:研磨・面出し
完全硬化後、サンドペーパー(80番→180番→240番と番手を上げていく)で研磨し、周囲の面に合わせて平滑に仕上げます。2液型パテは硬いため、粗い番手から丁寧に進めることが重要です。
ステップ5:塗装・木目再現
単色の場合はラッカースプレーや水性スプレーで色を合わせます。木目が必要な場合はブラシペンやペイントマーカーで木目線を描き足し、最後にサンディングスプレー(下地剤)を塗って保護します。色調整は主剤1cmに対し専用着色料3〜5滴が目安です。
作業後に気になるのは有機溶剤の臭いです。2液型ポリエステルパテはスチレン等を含む溶剤系製品のため、屋内での使用は十分な換気が必須です。防毒マスク・手袋の着用も推奨します。
2液型パテを使うDIYerが見落としがちなのが「作業時の気温」という要素です。購入前には商品スペックばかり気にしがちですが、実は作業環境の温度こそが仕上がりを大きく左右します。
2液型パテの硬化は化学反応なので、温度が10℃を切ると反応がほぼ止まってしまい、硬化しない・白く濁るといったトラブルが起きます。冬の寒い部屋で収納を補修しようとして翌朝見たら「全然固まっていない」というのは、よくある失敗です。
一方、夏場に30℃を超える部屋で作業すると、混合後わずか2〜3分で粘度が上がり始め、充填前に固まりかけることもあります。これも深刻な失敗です。
最適な作業温度の目安は15〜25℃です。真冬の作業はエアヒーターなどで部屋を事前に温め、夏は朝か夜の涼しい時間帯を選びましょう。収納スペースは押し入れの中などの閉鎖空間が多く、外気温より温度差が大きくなることがあります。スマートフォンに対応した小型温湿度計(1,500〜2,000円程度)を補修スペースに置いておくと、気温・湿度をリアルタイムで確認でき、作業前のコンディション判断がスムーズになります。
湿度も無視できません。湿度が80%以上になると、表層に水分が付着して未硬化になるケースがあります。梅雨時期の補修作業は、除湿器を稼働させてから始めることが安全です。厳しいところですね。
また、収縮率1〜2%の数字は20℃前後の適正温度下での値です。低温・高温・高湿度のいずれかが重なると、この数字が保証されなくなることがあります。「なぜか補修部分が沈んだ」と感じたら、気温や湿度が原因であることを疑ってみてください。
実際に2液型ウッドフィラーが活きるシーンをいくつか見てみましょう。収納家具でありがちな傷の種類と、2液型が有効かどうかを判断する基準も整理します。
| 傷の種類 | 深さ・大きさ | 2液型の適性 |
|---|---|---|
| 引っかき傷・細いスジ傷 | 1mm以下の浅い傷 | △ 1液型や補修マーカーの方が簡単 |
| 釘穴・ビス穴 | 直径5mm以下 | ◎ 肉やせなしで確実に埋まる |
| 角の欠け | 5〜20mm程度 | ◎ 立体的に盛り付け可能 |
| えぐれ・深い凹み | 深さ3mm以上 | ◎ 2液型以外では再陥没しやすい |
| 腐食・腐朽した木部 | 広範囲 | ◎ エポキシ系2液型が最適 |
費用面では、2液型パテ製品の価格はおおよそ以下のとおりです。
業者に補修を依頼する場合、部分補修1か所で3万〜5万円が相場とされています。2液型パテを使ったDIYであれば材料費だけで済み、10分の1以下のコストで同水準の仕上がりが狙えます。ただし、塗装・木目再現まで含めると、初めての方は2〜3時間を見ておくと余裕があります。
仕上げに迷ったら、補修後の色合わせには「補修用カラーペン」や「タッチアップスプレー」を使うと、より馴染みやすくなります。ホームセンターのカラーサンプルと実際の家具を照らし合わせながら選べば、色ずれのリスクを最小限に抑えられます。目的に合わせた道具を選ぶことが大切です。
参考リンク:レックスリートなど2液型補修パテの詳細な使用説明(PDF)
レックスリート使用説明書(株式会社リペアル)
参考リンク:ハウスボックス 充填材・パテ一覧(1液・2液の比較表あり)
AQUA ウッドフィラー商品ページ・パテ比較表(ハウスボックス)
参考リンク:エポキシ2液型の混合比・硬化不良の原因と対処法
よくある質問と回答(ヒロウッデンカヌーショップ/エポキシ)