サーマルグリス塗り方と種類・量・交換タイミングの完全ガイド

サーマルグリス塗り方と種類・量・交換タイミングの完全ガイド

サーマルグリスの塗り方と種類・量・交換のすべて

グリスを丁寧に塗り広げたのに、何も塗らないよりCPU温度が高くなることがある。


この記事の3つのポイント
🌡️
塗り方が最重要

サーマルグリスは「何を塗るか」より「どう塗るか」が冷却効果に最大10%以上の差を生む。高価なグリスも塗り方が悪ければ台無しになる。

📏
量は米粒1粒が目安

多すぎても少なすぎてもNG。中央に米粒大を置いてクーラーで押し広げるのが基本の塗り方。塗りすぎると熱がグリス内にこもる。

🔄
寿命は約3年が目安

グリスは徐々に劣化・硬化する。3年を過ぎた頃から塗り直しを検討し、PCのパフォーマンス低下や熱暴走を防ぎたい。

収納情報


サーマルグリスとは何か・CPUクーラーとの関係


サーマルグリスは、CPUとCPUクーラーのベースプレートの間に塗る熱伝導材のことです。「サーマルペースト」「CPUグリス」「放熱グリス」とも呼ばれます。なぜこれが必要なのか、仕組みから理解しておきましょう。


金属の表面は一見なめらかに見えますが、実際には目に見えない無数の微細な凹凸があります。CPUのヒートスプレッダー(金属製のフタ)とCPUクーラーのベースプレートを直接くっつけても、その凹凸の隙間に空気が残ってしまいます。空気の熱伝導率は約0.02〜0.03 W/m・Kと非常に低く、これが断熱材として機能してしまうのです。


サーマルグリスはその隙間を埋め、熱伝導率を高める役割を担います。熱伝導率が低いグリスでも約1〜5 W/m・K、高性能なものだと12 W/m・K以上に達します。CPUで発生した熱がクーラーに伝わりやすくなれば、ファンが効率よく排熱でき、CPUの温度が安定します。


つまり「空気の断熱をなくす」のが目的です。


グリスを塗らずにCPUクーラーを取り付けると、冷却性能が著しく低下します。最悪の場合、CPUが90℃以上になり「サーマルスロットリング」と呼ばれる自動性能低下が発生します。頻繁にフリーズしたり、突然シャットダウンするといった症状に悩まされている場合、グリスの問題が原因の一つとして考えられます。


サーマルグリスは必須のアイテムです。


  • 🔵 サーマルグリスの別名:CPUグリス・サーマルペースト・放熱グリス・TIM(Thermal Interface Material)
  • 🔵 塗布箇所:CPUヒートスプレッダーとCPUクーラーのベースプレートの間
  • 🔵 主な目的:微細な隙間に入り込んだ空気(断熱層)を排除し、熱伝導効率を上げる
  • 🔵 塗らないとどうなる:CPU温度が上昇しサーマルスロットリング発生、最悪フリーズ・シャットダウン


インテルの公式ガイドでも「CPU の温度が上昇している場合は、放熱グリスの塗り直しも検討してください」と明記されています。


参考:サーマルグリスの塗り方について(Intel 公式)
放熱グリスの塗り方 - インテル公式サイト


サーマルグリスの種類と熱伝導率の選び方

サーマルグリスにはいくつかの種類があり、それぞれ熱伝導率・扱いやすさ・価格・リスクが異なります。「高性能なものを選べばいい」とは必ずしも言えないのが、この世界のおもしろいところです。


種類 熱伝導率(目安) 導電性 難易度 価格帯
シリコングリス 0.9〜3 W/m・K なし ⭐(簡単) 低(300円〜)
セラミックグリス 3〜8 W/m・K なし ⭐(簡単) 低〜中
シルバーグリス 6〜9 W/m・K わずかにあり ⭐⭐(注意が必要) 中(500円〜)
カーボングリス 4〜8 W/m・K なし ⭐(簡単)
ダイヤモンドグリス 10 W/m・K以上 なし ⭐⭐(慣れが必要) 高(1,000円〜)
液体金属グリス 40〜80 W/m・K以上 あり ⚠️ ⭐⭐⭐(上級者向け) 高(2,000円〜)


初心者に特におすすめなのは、シリコングリスやセラミックグリスです。導電性がないため、はみ出してもショートのリスクが少なく、価格も手頃です。爆熱のCPUでなければ、冷却性能も十分です。


シルバーグリスは熱伝導率が9 W/m・K前後と高く、実用的なコストパフォーマンスを持ちますが、導電性があるためはみ出しに注意が必要です。ARCTIC MX-4(約8.5 W/m・K)やThermal Grizzly Kryonaut(約12.5 W/m・K)は自作PCユーザーから高い評価を受けています。


液体金属グリスには注意が必要です。


液体金属(Thermal Grizzly ConductonautやCoollaboratory Liquid Proなど)はガリウムをベースとした成分で構成されており、熱伝導率が非常に高い反面、アルミニウム素材を腐食・脆化させる性質を持ちます。アルミ製ヒートシンクや一部のCPUクーラーに使用するとパーツを溶かしてしまうリスクがあります。また電気を通すため、マザーボードへのはみ出しはショートの原因になります。初心者が安易に試せるものではありません。


参考:液体金属グリスのリスクについて詳しい解説
アルミ製ヒートシンクに液体金属を使うとどうなるか - nichepcgamer


グリス選びのポイントは「熱伝導率(W/m・K)」「体積抵抗率(大きいほど非導電性)」「粘度(低いほど塗りやすい)」の3つです。一般用途には非導電性で扱いやすいものを選ぶのが原則です。


サーマルグリスの正しい塗り方と量の目安【手順つき】

サーマルグリスの塗り方には複数のパターンがありますが、正しく理解していないと「丁寧に塗れば塗るほど冷えが悪くなる」という逆効果に陥ります。手順を確認しましょう。


【塗る前の準備】


まず電源を完全に落とし、コンセントを抜きます。作業前は金属部分に触れて静電気を放電しておきます。エアダスターでPC内部のホコリを除去し、CPUクーラーをネジの手順に従って取り外します。古いグリスが残っている場合は、イソプロピルアルコール(無水エタノールでも可)と繊維の残りにくいキムワイプや不織布で丁寧に拭き取ります。ティッシュペーパーは繊維が残るため避けましょう。


古いグリスをきれいに取り除くことが条件です。


【代表的な塗り方4パターン比較】


  • 🟢 センター点塗り(通称「センターうんこ」):CPUの中央に米粒1粒分のグリスを置き、クーラーを圧着するだけ。最も簡単で初心者向け。クーラーの接触面が小さい場合に適している。
  • 🟢 バッテン(×)塗り:CPUの対角線上にバツ印を描くようにグリスを塗り、クーラーを装着する。接触面が大きいサイドフロー型のクーラーに向いている。空気が残りにくくアキバPC Watchの検証でも初回から好成績。
  • 🟡 ヘラ塗り(スプレッド):ヘラやカードでCPU全面に均一に薄く伸ばす方法。均一にできれば最も確実だが、慣れないと厚みにムラが出やすく、逆効果になることもある。
  • 🔴 円塗り:円を描くようにグリスを塗布する方法。中央に空気が残りやすく、あまりおすすめできない。


【量の目安】


量は「米粒1粒〜豆粒程度」が基本です。多すぎるとグリスの層が厚くなりすぎ、それ自体が断熱材として機能してしまいます。少なすぎるとCPU全面をカバーできず、冷えないエリアが生じます。


実際、あるBTOメーカーの検証データでは、グリスの塗り方の違いだけで温度に10%以上の差が出ることが確認されています。1,000円以上する高級グリスを使っても、塗り方が悪ければ300円のグリスに負けることがあります。塗り方が最重要です。


【CPUクーラー取り付けの手順】


クーラーを装着する際は1本のネジを一気に締めず、対角線順に少しずつ締めていきます(例:左上→右下→右上→左下の順)。このようにすることでグリスが均一に押し広げられ、片側に寄るのを防げます。CPUファンのケーブルを接続し忘れないよう注意しましょう。接続し忘れると、電源投入後すぐにCPU温度が急上昇します。


参考:BTOユーザー向けのグリスの塗り方・量の比較
CPUグリスの塗り方と性能比較 - bto-pc.jp


サーマルグリスの交換タイミングと劣化のサイン

サーマルグリスは消耗品です。一般的に寿命は3年程度が目安と言われていますが、PCの稼働時間や環境によって変わります。「交換のタイミングがわからない」という声は多いですが、実はいくつかのサインがあります。


【交換を検討すべき状況】


  • 🔴 ファンの回転数が高い状態が続く:起動直後からファンが全開で回っている場合、CPUの冷却が追いついていない可能性がある
  • 🔴 PCのパフォーマンスが突然低下する:サーマルスロットリングが発生している証拠。HWiNFO64などのモニタリングツールでCPU温度を確認するとよい
  • 🔴 頻繁にフリーズ・突然シャットダウンする:熱暴走のサイン。特に高負荷作業中に発生しやすい
  • 🔴 CPUクーラーを取り外した場合:一度外したグリスは再利用できない。必ず新しいグリスを塗り直す


CPUの温度確認には無料ツールが使えます。


CPU温度の確認には「HWiNFO64」や「Core Temp」などの無料ソフトが便利です。一般的に、アイドル時は40〜60℃、高負荷時でも80℃以下に収まっているのが理想的です。90℃を超える状態が継続する場合は、グリスの劣化だけでなくクーラーの清掃も合わせて検討しましょう。


グリスが劣化すると硬化・乾燥してひび割れが起きます。硬化したグリスは空気を多く含んだスポンジのような状態になり、熱伝導率が大幅に低下します。2〜3年に1回のペースで定期的にメンテナンスするのがおすすめです。PCの内部清掃と同時に行うと効率的です。


なお、多くのCPUクーラーには出荷時にあらかじめグリスが塗布されています。新品のクーラーをそのまま使う場合、別途グリスを塗る必要はありません。ただし、付属グリスをふき取って別のグリスに変更したい場合は、必ずすべて除去してから新しいグリスを塗り直します。2種類のグリスを混ぜると、成分の相性次第で性能が下がることがあります。


参考:サイコム公式によるCPUグリス寿命・選び方の解説
CPUを効率的に冷却するための必須アイテム!「CPUグリス」の基礎知識 - SYCOM


サーマルグリスの塗り方で見落とされがちな「独自の落とし穴」

ここからは、検索上位の記事ではあまり触れられていない、実際に失敗しやすいポイントをまとめます。知っていると冷却性能を確実に守れます。


① グリスを塗り直したのに温度が「上がった」ケース


「グリスを塗り直したら逆に温度が上がってしまった」という声がYahoo!知恵袋などにも多く見られます。原因としては次のような点が挙げられます。


  • 古いグリスをきちんと拭き取れておらず、新旧グリスが混在している
  • グリスを厚塗りしすぎて、グリス自体が断熱層になっている
  • CPUクーラーの固定が片側に偏っていて均一に圧着できていない
  • 塗布後、初回の高負荷テスト前に温度が最大値に達しているだけ(数回使うと安定することもある)


1つ確認すれば大丈夫です。


グリスを塗り直した後は、必ず実際に負荷をかけてCPU温度を確認します。「塗り直す前の温度」を事前にメモしておくと、効果の比較ができて便利です。


② ヘラ塗りは「均一に伸ばせる人向け」


ヘラ塗りは理想的に均一にできれば最良ですが、慣れていないと厚みにムラが出やすいです。アキバPC Watchの実験でも、ヘラ塗りは初回から冷えが良い結果が出た一方で、初心者が薄く均一に塗れなかった場合は逆効果になることが示されています。初めてグリスを塗る方は、センター点塗りかバッテン塗りのほうが失敗が少ない傾向があります。


バッテン塗りが初心者には最適です。


③ AMD CPUの「スッポン」に注意


AMD製CPUは、CPUクーラーを引き抜こうとしたときに、グリスがCPU本体に密着してマザーボードからCPUごと引き抜けてしまう「スッポン」という事故が起きることがあります。CPUがマザーボードから外れた場合、ピンが曲がって接触不良の原因になります。AMD CPUのクーラーを外す際は、左右にゆっくりとねじりながら外す(決して真上に一気に引っ張らない)のが鉄則です。Intelの場合はこの問題は発生しにくいですが、同様に慎重に扱いましょう。


④ マスキングテープ活用法


ヘラ塗りをする際に、CPUのヒートスプレッダーの四辺にマスキングテープを貼っておくと、グリスのはみ出しを防ぐことができます。さらにテープの厚みが塗布厚さのガイドにもなり、均一かつ薄い仕上がりになります。200円前後でソケット専用のグリスマスキングシールも市販されており、AM4・LGA1700など各ソケットに対応した製品があります。


これは使えそうです。


⑤ CPUとGPU(グラボ)のグリスは別物


GPUにも同様にグリスが塗布されています。グラボを分解してGPUのグリスを塗り替える場合、注意点が一つあります。GPUはCPUと比較して接触面積が広い(GPU全面)場合も多く、一本線塗りとまんべんなく薄塗りの温度差が最大5.3℃にもなるというデータも存在します。GPUのグリス塗り替えはさらに難易度が上がるため、ある程度CPUで経験を積んでからがおすすめです。


参考:PC自作の新常識・グリスの量と塗り方の検証
【PC自作の新常識】グリスの量、塗り方、今選ぶべきグリスは? - アキバPC Hotline!




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