

押し入れや下駄箱に安全靴をしまっておくと、足の安全を守るどころか、靴底が突然崩壊する危険性があります。
収納情報
シモンの溶接用安全靴には複数のモデルがあり、代表的なのが「WS28黒床」と「528黒床靴」の2種類です。どちらも溶接・溶断作業向けに設計されていますが、スペックに明確な違いがあります。用途や体への負担を考えると、どちらを選ぶかは非常に重要な判断になります。
まずWS28は、甲被に牛床革(ベロア)を使用し、靴底にシモン独自の「SX3層底Fソール」を採用しています。標準重量は26cmサイズで両足995gと、溶接靴としては比較的軽量な設計です。規格はJIS T8101 CI/S/P1/F2/HI1/H合格という多機能な認定を取得しており、耐高熱・耐滑・衝撃吸収を兼ね備えています。
一方の528黒床靴は、同じく牛革(ベロア)の甲被で、靴底はニトリルゴム(NBR)を使用した合成ゴム1層底です。重量は26cm両足で1,200gとWS28より約200g重くなります。規格はJIS T8101 CI/H/P1合格で、JIS H種(重作業用)に特化した設計です。つまり耐久性と頑丈さを優先したモデルといえます。
| モデル | 靴底 | 重量(26cm/両足) | JIS規格 | 先芯 |
|---|---|---|---|---|
| WS28黒床 | SX3層底Fソール | 995g | CI/S/P1/F2/HI1/H合格 | ワイドACM樹脂先芯 |
| 528黒床靴 | 合成ゴム1層底(NBR) | 1,200g | CI/H/P1合格 | 鋼製先芯 |
重さの差は約200g。一見少なく感じますが、1日8時間履き続けると足腰への蓄積疲労は大きく変わります。軽量性・耐滑性を重視するならWS28、徹底した耐久性・重作業対応を優先するなら528、という選び方が基本です。
参考:シモン公式サイトでは製品ごとの詳細スペック・適合規格を確認できます。
シモン公式|528黒床靴 製品情報(JIS規格・重量・素材の詳細)
溶接用安全靴を選ぶうえで欠かせないのが「JIS規格」の理解です。規格を知らずに購入すると、作業内容に不足した保護性能の靴を使い続けることになります。これは健康・安全のリスクに直結します。
JIS T8101では作業の重さに応じて4つの区分があります。
| 区分 | 記号 | 耐圧迫荷重の目安 |
|---|---|---|
| 超重作業用 | U種 | 22.5kN以上 |
| 重作業用 | H種 | 15kN以上 |
| 普通作業用 | S種 | 10kN以上 |
| 軽作業用 | L種 | 4.5kN以上 |
溶接作業には最低でもS種(普通作業用)以上が必要で、重量物を扱う溶接現場ではH種を選ぶのが安全の原則です。528黒床靴はH種合格で耐圧迫荷重15kN(±0.1)に対応しており、鉄鋼・造船・建設現場での溶接にも安心して使えます。
また規格記号の中に「HI1」が含まれるモデルは、高温の接触熱に耐える性能(耐接触熱性)を持っています。WS28はHI1に加えF2(燃焼性)・CI(耐滑性)にも合格しており、スパッタ(溶接火花)が降り注ぐ環境での多角的な保護を実現しています。H種合格が条件です。
参考:JIS規格とJSAA規格の違い・安全靴の規格体系について詳しく解説しているページです。
ミドリ安全|安全靴の基礎知識:JIS規格とJSAA規格の違い
シモンのWS28が多くの溶接職人から支持される最大の理由が「SX3層底Fソール」の存在です。これは単なる靴底ではなく、複数の機能を1つのソールに集約した独自開発の技術です。意外ですね。
SX3層底の構造は、接地面の「SXラバーアウトソール」、中間層の「SX高機能樹脂ミッドソール」、そして甲被との接合部の3層で構成されています。アウトソールには一般ゴムよりも優れた耐摩耗性を持つ素材を採用し、ミッドソールには「加水分解しない」高機能樹脂を使用している点が大きなポイントです。
加水分解(水分と化学反応して素材が崩壊する現象)は、安全靴の靴底に使われるポリウレタン素材の宿命ともいわれます。未使用のまま保管していても進行するため、購入後に一度も履かなかった靴が突然崩れるというトラブルが実際に起きています。SX3層底はこの問題を根本から排除した設計です。
また、フラットソールの形状により接地面積が広く取れ、障害物を踏んでも安定した姿勢を保ちやすい構造になっています。溶接作業では屈んだり中腰になる姿勢が多く、靴底の安定性は作業効率にも直結します。これは使えそうです。
さらに「クレイドルインソール」と呼ばれる専用の中敷きが標準搭載されており、土踏まずへのサポートと衝撃吸収を組み合わせることで、長時間の立ち仕事での疲労を軽減します。スニーカーの一般的な中敷きよりも足裏全体を包み込む形状で、足の前後移動を抑える設計です。
参考:シモン公式によるSX3層底Fソールの技術解説ページです。5つの機能とサスペンションシステムについて詳しく確認できます。
安全靴を下駄箱や押し入れに収納するのは「当たり前の行動」に思えますが、実はその保管場所が靴底の寿命を著しく縮める原因になっています。特にポリウレタン底の安全靴は、湿気がこもる閉鎖空間に置いておくだけで加水分解が進行します。
シモン公式が明示している注意点として、「押し入れや下駄箱の中は湿気があり空気が停滞しているため、ウレタン底の靴の保管には適していない」と明記されています。つまり、多くの家庭や職場で当たり前のようにやっている収納が、安全靴にとっては最悪の保管環境だということです。
正しい保管の基本は以下の通りです。
2足ローテーションは特に効果的です。1日8時間履いた靴の内部には大量の汗が染み込んでいます。乾燥しきらないまま翌日も履き続けると、素材の劣化だけでなく細菌・カビの繁殖にもつながります。シモン公式も「2足以上を1〜2日周期で使用することで、より長く快適に使用できる」と明確に案内しています。2足交互が基本です。
また、SX3層底を搭載したWS28は加水分解しないミッドソールを採用しているため、長期保管が必要な場合はウレタン底モデルよりもSX3層底モデルを選ぶことが推奨されます。
参考:シモン公式の安全靴チェックポイントページ。加水分解の詳細・交換の目安・ウレタン底製品の取り扱い方法が網羅されています。
シモン公式|安全靴・プロスニーカーのお手入れ・交換の目安・加水分解について
どれだけ丁寧に保管していても、安全靴には必ず寿命があります。問題は「見た目が大丈夫そうだから」とそのまま使い続けてしまうケースです。実は外観は問題ないように見えても、内部の先芯が変形しているケースがあります。
シモン公式が定めた交換の目安として、以下の状態になったら即交換が必要です。
溶接作業では靴底が高温にさらされる頻度が高く、ゴム底の熱変形は見落としがちなポイントです。128度以上の接触熱に継続的にさらされたり、強いスパッタが集中した箇所は変色や硬化が起きていることがあります。靴の底を定期的に曲げて確認し、硬化・ひび割れがないかをチェックする習慣が大切です。
日常的なお手入れとしては、革製の安全靴には月に数回、乳化性クリームを布に取って薄く全体に塗り込む作業が有効です。革に水分・油分を補給することでひび割れを防ぎ、スパッタに対するわずかな耐性も上がります。純油性クリームはツヤ出し専用で保湿効果が低いため、通常のお手入れには乳化性クリームが適切です。
また靴底の泥や石の詰まりは、歯ブラシで定期的に落とすことで耐滑性を維持できます。WS28のSX3層底Fソールのグリップ力も、目詰まりが起きると著しく低下するため、清掃は欠かせないメンテナンスです。乳化性クリームが基本です。
さらに余裕があれば、シモンが販売している専用インソール(静電気帯電防止対応、アーチサポート付き)に交換するという選択肢もあります。標準のクレイドルインソールよりも体型・作業スタイルに合わせた最適化ができ、足裏の疲労感が大きく異なります。長時間の溶接作業でお悩みの方には検討の価値があります。