

なめたネジを工具箱にしまったまま放置すると、次の作業でまた同じ失敗を繰り返してしまいます。
収納情報
クニペックス(KNIPEX)は1882年創業のドイツのプライヤー専門メーカーです。世界100カ国以上で使用される信頼のブランドで、日本でも「握りものならクニペックス」という評価が定着しています。
その中でも「スリップジョイントプライヤー TwinGrip(ツイングリップ)」は、日本でも特に話題になった製品です。発売当初は品薄が1年以上続き、予約しても手に入らない時期が続きました。
最大の特徴は、アゴの先端に刻まれた縦溝による「フロントグリップ」と「サイドグリップ」の2系統の掴み機能です。フロントグリップはネジの正面から縦溝で噛み、サイドグリップは3点保持で側面からしっかりつかみます。この2つを組み合わせることで、十字穴が潰れたネジも、角がなめたボルトも、確実に回すことができます。
| 機能 | 詳細 |
|---|---|
| フロントグリップ | アゴ先端の縦溝でネジを正面から掴む |
| サイドグリップ | 3点保持機能でネジを側面から掴む |
| 開口幅調整 | プッシュボタン式5〜7段階。φ4〜22mm(または5〜27mm)対応 |
| アゴ硬度 | HRC61の高周波焼入れ。摩耗に非常に強い |
| 本体構造 | 3枚合わせ(ボックスジョイント)。横への力の逃げを防止 |
3枚合わせ(ボックスジョイント)構造というのも重要なポイントです。一般的なプライヤーは2枚合わせで、これだと掴んだ際に横へ力が逃げやすくなります。コブラと同様の3枚合わせ構造により、横への力の逃げを両側から防ぎ、掴む力を効率よく伝えてくれます。つまり、力が無駄なくネジに伝わるということですね。
また、アゴの硬度はHRC61。これは「コブラ」と同じ焼き入れレベルで、非常に摩耗に強い数値です。ダイヤモンドの硬度を10とするモース硬度とは異なり、HRCは鋼材の硬さを示す指標です。HRC61は一般的な工具鋼のHRC58〜60をさらに上回る水準で、アゴが摩耗しにくく長く使える設計になっています。
さらに、アゴの内側には釘や細いピンを保持できる専用の丸溝も切られています。薄い板状のものでも意外なほどガッチリ掴めるという声も多く、汎用性の高さに驚いた使用者が続出しています。これは使えそうです。
参考:KNIPEXスリップジョイントプライヤーの詳細スペックはこちら
ツイングリップは、登場時は200mm(品番8201-200)の1サイズのみでした。その後2024年10月に150mmと250mmが追加され、現在は3サイズのラインナップとなっています。収納スペースや用途に合わせて選べるようになったのは大きなメリットです。
| 品番(プラスチックコート) | 全長 | 掴み能力 | 調整段数 | 重量(目安) |
|---|---|---|---|---|
| 8201-150SB | 150mm | φ4〜16mm | 5段階 | 約180g |
| 8201-200SB | 200mm | φ4〜22mm | 5段階 | 約270g |
| 8201-250SB | 250mm | φ5〜27mm | 7段階 | 約450g |
150mmモデルは全長がちょうど定規1本分(15cm)ほどのコンパクトサイズ。狭い場所や精密な作業に向いており、腰袋への収納でも幅を取りません。工具箱をできるだけコンパクトにまとめたい人や、DIYの補助工具として1本追加したい人にはこのサイズが向いています。
200mmモデルは発売以来の定番サイズで、最もバランスが取れています。掴み能力φ4〜22mmはM4ネジから22mm幅のナットまでカバーし、家庭でのDIYから現場作業まで幅広く対応できます。はじめて購入する場合はまずこのサイズを選んでおけば間違いありません。
250mmモデルは7段階調整でφ5〜27mmに対応。より大きなボルトやナットを扱う配管作業や設備メンテナンス向けです。重量が約450gと200mmの約1.7倍になるため、収納場所への負担も考慮が必要です。ただし、大きいほど力が入りやすい場面もあります。
収納面から選ぶと、150mmは工具箱の引き出し一段に2〜3本並べても余裕があります。200mmは一般的なプライヤー差し(腰袋)にそのまま収まります。250mmはやや大きめの腰袋や引き出しが必要です。サイズが条件です。
参考:ツイングリップの新サイズ追加情報
【新商品情報】KNIPEX ツイングリップ サイズ拡充!!|喜一工具
クニペックスのスリップジョイントプライヤーには、グリップの種類で大きく2種類のラインナップがあります。品番の違いで言うと「8201-〇〇〇」がプラスチックコーティンググリップ、「8202-〇〇〇」がコンフォートグリップです。
プラスチックコーティンググリップは、グリップが細くスリムな形状です。腰袋のプライヤー差しにスムーズに収まり、ベルトに吊るしても邪魔になりにくいのが特徴です。指の動きが細かく調節しやすく、工具の開閉操作もダイレクトに感じられます。価格帯はプラスチックコートが3,000円台(200mmサイズ)前後で、クニペックス製品の中では比較的手に取りやすい金額です。
コンフォートグリップは、赤と青の2色からなる太めのグリップです。赤部分は硬い樹脂で力の方向を安定させ、青部分は柔らかいラバーで手への衝撃を吸収します。長時間握り続けても手が疲れにくく、力強くネジを回す場面で真価を発揮します。ただし、グリップが太い分だけ腰袋や収納ポーチに入れた際に幅を取ります。
収納を重視する場合はプラスチックコートが有利です。腰袋の細いプライヤー差しやツールロールのポケットに無理なく収まります。一方、作業中の手への負担を減らしたい場合はコンフォートを選びつつ、少し広めのポーチを用意するのが合理的です。グリップ以外の性能は全く同じなので、収納環境と作業スタイルの両方から判断しましょう。
なお、2024年発売の150mmと250mmサイズには「3Kグリップ」という新しいグリップタイプも追加されています。これは3層構造の高機能グリップで、さらなる操作性と快適さを両立させたものです。工具のトレンドに敏感な方はこちらも検討してみる価値があります。
参考:KNIPEXのグリップ選びについて詳しく解説
KNIPEX(クニペックス)のプライヤーレンチの2つのグリップについて|ファクトリーギアブログ
スリップジョイントプライヤーを「とりあえず工具箱に放り込む」だけでは、いざ使いたいときに取り出しにくく、プライヤーの刃面が他の工具と干渉して傷んでしまいます。収納に少し工夫するだけで、工具の管理がぐっと楽になります。
まず、最もシンプルな収納方法が腰袋へのポーチ収納です。プラスチックコートグリップの200mmであれば、一般的なプライヤー差し(幅40〜50mm程度)にそのまま収まります。現場でよく使う工具は腰袋に入れて携帯し、使用頻度が低い工具は工具箱の引き出しに整理する「2段階収納」がおすすめです。
次に、KNIPEX純正の専用ツールロール(品番:001961LE)があります。TwinGrip専用に設計されたこの収納ポーチは、150mm・200mm・250mmの3サイズを同時に収納できる4つのコンパートメントを持ち、全長330mmのコンパクトなサイズです。ロール状に丸めて持ち運べるため、出張作業や車載工具としても便利です。また、3本セット(品番:001961V01)の購入で、このツールロールが付属するセットも用意されています。これは使えそうです。
工具箱に収納する際は、ウレタントレイを活用する方法もあります。KNIPEXからはプライヤー形状に合わせた窪みのあるウレタントレイ入りセット(品番:002001V15など)も販売されており、工具の型取りがされているため、一目で「どこに何があるか」がわかります。引き出しの奥底で工具が重なって傷つく心配もなくなります。
壁掛けのツールボードに並べる場合は、フックやホルダーのサイズに注意が必要です。200mmであれば全長がちょうどはがきの縦2枚分ほどのサイズ感なので、一般的なペグボード用フックに収まります。150mmは最も小さく、ドライバーなどと並べても違和感のない収まりになります。
クニペックスのスリップジョイントプライヤーは「なめたネジを回す工具」として知られていますが、収納に関心が高いユーザー視点から見ると、単なる「困ったときの救助工具」として工具箱の奥に眠らせてしまうケースが多いようです。実はこれが大きな損失になっています。
ツイングリップのフロントグリップ機能は、横向きにプライヤーを使えない狭い場所でも縦向きにセットして回せるという点で非常に重宝します。たとえば、洗面台の下や食洗機の取り付け部など、工具を大きく振り回せない狭い空間での作業です。収納DIYやリフォームが趣味の人であれば、家の各所でこのような「狭所ネジ締め」の場面は必ず発生します。
また、アゴの先端の丸溝は、ステープルの針やクギの引き抜きにも有効です。なめてしまったくぎや曲がった釘を引き抜く際に、この丸溝で確実に噛みつかせると抜きやすくなります。コープ用紙のような薄いものでも驚くほどガッチリ掴めるという特性も、配線の被覆チューブを固定したいときなどに活用できます。
注意点として一つ覚えておきたいのが、このプライヤーはネジやボルトの「外側を掴んで回す」工具という点です。新品のきれいなボルトをこのプライヤーで締めると、ボルトの外周に傷がつきます。新品ボルトの締め付けには通常のレンチやスパナを使い、スリップジョイントプライヤーはあくまでも「なめたネジの救助」と「狭所作業」に使う、という使い分けが原則です。
さらに、プライヤーを工具箱に複数収納する際に起きやすい問題として「アゴ同士の干渉」があります。プライヤーをそのまま積み重ねると、HRC61という高硬度のアゴ先端が他の工具の表面を傷つけることがあります。ウレタントレイや専用ケースを使うか、少なくともプライヤー同士は直接重ならないよう仕切りを設けることを推奨します。収納時にこの一点だけ注意すれば大丈夫です。
参考:KNIPEX公式サイトのTwinGripセット・ツールロール情報
ツールバッグとツールケース一覧|KNIPEX公式(日本語)