

土壌汚染の調査をしないまま土地売買を進めると、買主が独自調査で汚染を発見した際に売主が損害賠償責任を問われることになります。
収納情報
ボーリングバーは、地中に細い調査孔を人力で掘るための鉄製の掘削具です。外観はスライド式のハンマーが中央についた金属棒で、ハンマー部分を上下にスライドさせることで地中にロッドを打ち込んでいきます。全長は標準タイプで約1,500mm(大人の身長より少し短い程度)、重さは3.5kgほどと、一人で現場に持ち込んで作業できるサイズ感が特徴です。
この器具が「ガス調査」の文脈で登場するのは、大きく2つの場面です。ひとつは土壌汚染調査、もうひとつはLPガス埋設管の漏えい検査です。どちらも「地中に小さな孔を開ける」という基本動作は共通ですが、目的と手順が異なります。
つまり用途によって使い方が変わる器具です。
「探針棒」「探査棒」とも呼ばれるこの器具は、もともとガスや水道事業者の保安調査で使われてきた道具でした。現在は環境調査の分野でも広く普及し、土壌汚染の有無を現場で素早く確かめる手段として定着しています。電動機械に頼らず、人力で扱えるコンパクトさが、狭い現場や舗装面の多い都市部での調査を容易にしています。
製品としては、株式会社ガステック(型番:361)や株式会社セロリのボーリングバーが代表的で、アスクルやモノタロウなどの通販でも購入できます。ガステック製は税込で3万円前後が相場です。
| タイプ | 全長 | 掘削長 | 掘削径 | 重量 |
|---|---|---|---|---|
| 標準タイプ | 1,500mm | 865mm | φ18mm | 3.5kg |
| ロングタイプ | 2,145mm | 1,510mm | φ18mm | 4.1kg |
ボーリングバーを使う際の前提として、掘削径はφ18mm程度と非常に細い(500円硬貨の直径より少し細い程度)です。この細さが重要で、調査後の孔をモルタルなどで容易に補修できるため、土間コンクリートや舗装道路の上でも作業が可能になっています。
参考:ボーリングバーの仕様・用途の詳細はメーカー公式ページで確認できます。
製品案内|ボーリングバー – 株式会社セロリ(掘削径・全長・特注対応の詳細)
土壌ガス調査においてボーリングバーが使われる理由は、環境省告示第16号「土壌ガス調査に係る採取及び測定の方法」に直接関係しています。この告示では採取孔の仕様として「直径15〜30mm程度、深さ0.8〜1mの裸孔で、鉄棒等の打込み等により穿孔したもの」と定められており、ボーリングバーはこの基準にぴったり合致する器具です。
深さ0.8〜1mというのは、定規で測ると「ひざ下から腰あたりまで」の深さに相当します。この深度の土壌ガスを採取することで、地表近くに蓄積した揮発性有機化合物(VOC)の汚染状況を把握できます。
調査の具体的な手順は次の通りです。
この方法は「君津式表層汚染調査法」とも呼ばれています。1988年に千葉県君津市で鈴木喜計氏と楡井久博士らが開発した手法です。安価・簡便でありながら精度と再現性に優れ、現場でただちに結果が得られる点から、全国の地質汚染現場における必須の基礎調査手法として普及しています。
精度が高いのに安くできるのは、この手法の大きなメリットです。
土壌ガス調査1地点あたりの費用は30,000円程度が目安です。これはコア抜きや詳細なボーリング調査(1地点20万〜80万円)と比べると格段に低コストです。ただし土壌ガスでVOCが検出された場合は、次のステップとして詳細なボーリング調査が必要になります。
参考:君津式表層汚染調査法の原理・開発背景・適用事例はこちら。
君津式表層汚染調査法について – 株式会社ガステック(手法の原理と活用事例)
ボーリングバーのもうひとつの重要な用途が、LPガス埋設管の漏えい検査です。この使い方は土壌汚染調査とは目的が異なり、地中に埋設されたガス配管からの漏えいを確認するために穴を掘り、ガス検知器で漏えいの有無を確かめます。
法的な根拠も明確です。液化石油ガス法施行規則では、埋設管のうち「白管(鋼管の表面に溶融亜鉛メッキ処理を施した管)」については1年に1回以上の漏えい試験が義務づけられています。共同住宅などガス供給を停止できない場所では、ガス検知器を用いた方法が採用され、その際は埋設管路線上を5m間隔でボーリングし、ガス検知器で確認することが規定されています。
5m間隔というのは、だいたい乗用車1台分の長さごとに穴を開けるイメージです。
経済産業省が公開しているLPガス保安業務ガイドにも、「ボーリングバーを使用して行う方法」が明記されており、専門器具として法令上に登場するほど現場では不可欠な存在です。前橋ガス事業協同組合の事例では、ボーリングマシンまたはボーリングバーにより導管路線上を5m間隔でボーリングし、ガス検知器を使用して漏洩の有無を検査していると公表されています。
注意点として、ボーリングを行う前に必ず配管図面やパイプロケーターで埋設管の位置を事前確認することが必須です。位置確認を怠ると、実際にガス管(φ80mmのポリエチレン製、埋設深度GL-0.8m)を破損してガスが漏洩した事故事例も報告されています。
埋設管の位置確認が条件です。
参考:LPガス埋設管の点検方法・漏えい試験の法的要件はこちらで詳しく解説されています。
第4389号 ガス埋設管の検査(プロパンガス編)– 川口液化ケミカル株式会社(白管の点検頻度・ボーリングバーの活用法)
ボーリングバーを選ぶ際には、作業環境に応じて「標準タイプ」「ロングタイプ」「特注タイプ」の3種類から選ぶことになります。この選択を間違えると、必要な深度まで掘削できなかったり、逆に不必要に大きな器具を現場に持ち込むことになります。
標準タイプ(全長1,500mm・掘削長865mm)は、環境省告示第16号が求める採取深度0.8〜1mをほぼカバーできるため、一般的な土壌ガス調査のほとんどの場面に対応します。一方でロングタイプ(全長2,145mm・掘削長1,510mm)は、掘削長が1.5mまで対応しており、斜面や土間コンクリートをはつった箇所など、掘り始めの地盤が足場より低い位置にある場合に有利です。
これが基本的な使い分けです。
特注タイプが必要になるのは、より硬い地盤への対応(ロッド材料の変更、径φ16mmへの拡大)や、最大φ40mmまでの掘削径拡大、深いところからのガス採取、あるいは飛び出し防止のネジ止め加工など、特殊な現場条件がある場合です。
収納ケースの選択も重要です。ボーリングバーはロッド部分が内部でスライドするため、運搬中に飛び出してしまうリスクがあります。これを防ぐために、塩ビ製ハードケースが標準装備で付属するモデルがあります。このケースは急な雨でも中の器具を保護できる耐水性があり、現場での仮置きに適しています。
一方、コストを抑えたい場合や本数を多く揃える場合は、紙管梱包(建設現場でよく見かける単管のキャップをつけた硬紙管)を選ぶ選択肢もあります。多少軽くなり運送費の削減にもつながりますが、長期間の屋外保管や多湿環境には向きません。
保管場所は湿気を避けた屋内が原則です。鉄製のロッドは長期間湿気にさらされると腐食が進み、削孔性能が落ちるだけでなく、収納ケースの取り出しに支障が出る場合もあります。
使用後は泥汚れをウエスで拭き取り、防錆スプレーを薄く塗布してからケースに収める習慣をつけることで、器具の寿命を大幅に延ばすことができます。これは使えそうなメンテナンスの習慣です。
参考:土壌汚染調査に関わる費用の目安はこちらで詳しく確認できます。
事例別 調査費用の目安 – 株式会社セロリ(土壌ガス調査・ボーリング調査の費用実例)
ここでは、検索上位記事ではあまり触れられていない独自の視点として、「ボーリングバーによるガス調査が正確な結果を出せない落とし穴」を整理します。
まず見落とされやすい落とし穴のひとつが、「舗装面の処理不足」です。地表がアスファルトやコンクリートで舗装されている場合は、コアカッターやドリル等でまず舗装面を削孔し、その後にボーリングバーで下の土壌まで掘り進める2段階の作業が必要です。この手順を省略して直接ボーリングバーを使おうとすると、舗装面で器具が滑ったり、破損の原因になったりします。
次に、「採取前の放置時間」の問題があります。孔に保護管を挿入してゴム栓で密閉した後、最低30分以上放置しないと孔内のガスが安定しません。現場での時間短縮のためにこの待機時間を省くと、測定値の再現性が損なわれ、汚染の見落としにつながります。
時間を省くと損します。
また、土壌が締まっていて硬質な場合、ボーリングバーで所定の深度(0.85〜1m)まで掘削できないことがあります。無理に打ち込もうとするとロッドが曲がるリスクがあります。このような地盤では、ロッドの材質を変えた特注品への変更、またはハンマードリルとの組み合わせを検討する必要があります。
さらに注意が必要なのが、「埋設物の事前確認」です。調査地にガス管・水道管・電話線等の埋設物がある場合、ボーリングバーで誤ってこれらを損傷すると、ガス漏洩・断水・通信障害などの重大事故につながります。実際の事故事例として、ボーリング掘削中にポリエチレン製ガス管(φ80mm・埋設深度GL-0.8m)を破損し、周囲にガスが漏洩した事故が報告されています。調査前に必ず配管図面を確認するか、パイプロケーターで埋設管の位置を把握することが必須です。
環境省告示第16号が規定する採取孔の深さ(0.8〜1m)を守ることはもちろん、孔底から間接吸引でガスを採取するプロセスを正確に実施することが、法律に基づいた信頼性の高い調査データを得るための前提条件です。
このルールを守れば大丈夫です。
参考:土壌汚染調査の注意点・埋設物確認の手順についてはこちら。
土壌汚染調査をする際の注意点 – 株式会社ジオリゾーム(埋設管確認・事前打ち合わせの重要性)