シリコングリスの用途をバイクで正しく使い分ける方法

シリコングリスの用途をバイクで正しく使い分ける方法

シリコングリスの用途をバイクメンテで正しく使いこなす

シリコングリスを金属部品にたっぷり塗ると、部品がすぐに摩耗します。


🔧 この記事で分かること
シリコングリスが向いている箇所

ゴム・プラスチック・シール類など、金属以外の素材への使用が基本。耐熱性はマイナス50℃〜250℃対応で幅広い環境に使えます。

⚠️
やってしまいがちなNG塗布

金属同士の軸受けや高負荷部品にシリコングリスを使うと潤滑不足で摩耗が加速します。グリスの種類を間違えると逆効果です。

💡
知らないと損する意外な活用場所

バッテリー端子の腐食防止・ヘルメットシールドの開閉改善など、バイク整備以外でも使えるシリコングリスの活用法を紹介します。

収納情報


シリコングリスとは何か、バイク整備における基本的な役割


シリコングリスとは、基油にシリコンオイルを使って製造されたグリスのことです。見た目は白色のペースト状で、一般的なリチウムグリスやモリブデングリスとは成分が大きく異なります。バイク整備において「グリス」と一言で言っても実は6種類以上あり、それぞれに得意な環境と苦手な環境があります。


シリコングリスが他のグリスと違う最大の特徴は、ゴム・プラスチック・樹脂などの非金属素材に対して攻撃性がほぼゼロという点です。リチウムグリスやウレアグリスは「万能グリス」と呼ばれますが、実はゴムや樹脂に対して侵食性があるため、シール類のある部品に使うと素材を劣化させてしまうリスクがあります。つまりシリコングリスは、「万能グリスが使えない場所のためのグリス」という位置づけです。


耐熱・耐寒の性能もシリコングリスの強みです。対応温度範囲はおよそマイナス50℃〜250℃(製品によっては280℃対応のものも)と非常に広く、夏の炎天下でも冬の厳寒でも安定した性能を発揮します。バイクのブレーキ周りは走行中に100℃を超えることも珍しくないため、耐熱性の高さは実用上非常に重要です。


グリスの役割は大きく分けて、①減摩作用、②冷却作用、③防錆作用、④シール性能の4つです。シリコングリスはこのうち「シール性能」と「ゴム・樹脂との相性の良さ」において特に優れており、ブレーキキャリパーや油圧系統のオーバーホール時に欠かせない存在です。


耐水性も高い点が特徴です。ヤングマシンの実験によれば、水に対する影響度が低いグリスとして「シリコン系」は上位に入っており、雨天走行が多いライダーにとっても頼もしい性能を持っています。


バイク整備では6種類のグリスを使い分けるのが基本です。まずシリコングリスとウレアグリスを揃えることで、ほぼすべての基本メンテナンスに対応できます。


バイク整備士が解説するグリスの種類と使い分け(gensan-blog):6種類のグリスの特徴と使用場所を整備士目線で詳しく解説。


シリコングリスをバイクで使う具体的な箇所と塗り方のポイント

シリコングリスを使う場所は、大きく分けて「ゴム部品が関わる箇所」と「シール類が絡む箇所」の2種類です。代表的な使用箇所をまとめると以下のようになります。


使用箇所 なぜシリコングリスが適切か
ブレーキキャリパーのピストン周り ピストンに触れるシールがゴム製のため
マスターシリンダー内部 ゴムカップを傷めないため
フロントフォークのダストシール・オイルシール ゴムシールの潤滑と保護のため
ブレーキパッドの裏側 金属とゴムの接触部分を保護するため
ヘルメットのシールド取り付け部 プラスチック素材を傷めないため
バッテリー端子 絶縁性があり腐食防止になるため


ブレーキキャリパーのオーバーホール時は特に重要です。ピストンシールはゴム製であるため、万能グリスを使うとゴムが膨張・劣化するリスクがあります。シリコングリスをピストン外周に薄く塗ることで、シールへの負担を最小限に抑えながらスムーズな組み付けができます。塗る量は「極力薄く」が原則です。


フロントフォークのメンテナンスも、シリコングリスが活躍する場面の一つです。フォークのインナーチューブ表面にシリコングリスを薄く塗った後、ブレーキをかけながらフォークをフルストロークさせると、ダストシールやオイルシールにグリスが馴染んでフォークの動きが格段に軽くなります。その後は余分なグリスをウエスで拭き取る一手間が必要ですが、放置するとホコリを吸着してしまうため必ず行いましょう。


塗り方のコツは3点あります。


- 薄く、均一に塗る:厚塗りすると余分なグリスがホコリを集めて研磨剤のように働いてしまう。


- 必ず清掃してから塗る:汚れた面にグリスを塗っても砂や金属粉がグリスに混入し、パーツを削る。


- はみ出たグリスは必ず拭き取る:目に見えるグリスは潤滑にはほぼ貢献せず、汚れの原因になるだけ。


つまり「多く塗れば効果が上がる」は完全な誤解です。


バイク向けグリス使い分けガイド(RIDE HI):シリコングリス・モリブデングリスなど種類別の適切な使用箇所と注意点を写真付きで解説。


シリコングリスをバイクに使う際のNG行為と失敗例

シリコングリスを万能だと思い込んで間違った場所に使うと、部品を傷めたり整備の意味がなくなったりします。これは実際のバイク整備でよく起こる失敗です。


最も多いNG使用が「金属同士が接触する高負荷部品への使用」です。例えば、ステアリングヘッドやスイングアームピボットのベアリング部分にシリコングリスを塗ってしまうケースがあります。シリコングリスは金属同士の潤滑性能が低いため、極圧(強い荷重)がかかるとすぐに油膜が切れ、金属が直接擦れて摩耗が進みます。こういった箇所には耐圧性の高いウレアグリスかリチウムグリスを使うのが基本です。


次に注意が必要なのが「シリコンスプレーとシリコングリスの混同」です。スプレータイプにはシリコンスプレーとシリコングリススプレーの2種類があり、見た目が似ているため混同しやすいのですが、性能はまったく異なります。シリコンスプレーは揮発性が高く、一時的な潤滑には向いていますが持続性がありません。さらに元々塗布されていたグリスを洗い流してしまう成分が含まれている場合もあり、バイクのブレーキ部品や可動部に使うと逆にメンテナンス効果が消えてしまいます。バイクのメンテナンスには必ず「シリコングリス」もしくは「シリコングリススプレー」を使いましょう。


電装系へのシリコン系スプレーの使用も避けるべきです。スイッチ類や電装部品にシリコン系のスプレーをかけると、接点に被膜が張って電気が通りにくくなる可能性があります。バッテリー端子への腐食防止目的での使用は問題ありませんが、スイッチやコネクター類には接点復活剤など専用品を使うのが安全です。


整備前の清掃を怠るのも深刻な失敗です。泥や金属粉が付いたままの部品にシリコングリスを塗ると、グリスが研磨剤の役割を果たしてしまい、部品の摩耗を逆に早めてしまいます。グリスを塗る前は必ずパーツクリーナーで脱脂・清掃する習慣をつけましょう。


厳しいところですね。しかし知っておけばこれらの失敗はすべて防げます。


Webike バイクのグリスアップ入門:シリコングリスとシリコンスプレーの違い、誤使用によるリスクをわかりやすく解説。


シリコングリスのバイク整備での意外な活用法3選

シリコングリスはブレーキやフォーク以外にも、意外な場所で活躍します。多くのライダーが知らないまま見過ごしている使い方を3つ紹介します。これは使えそうです。


1. バッテリー端子の腐食防止


バイクのバッテリー端子が白く粉を吹いてしまった経験はないでしょうか。これは端子の酸化腐食で、放置すると電気の流れが悪くなりエンジンのかかりが悪くなる原因になります。シリコングリスは電気を通さない絶縁性を持ちながら、防水・防食効果もあるため、端子の酸化を防ぐ目的で薄く塗布するのが有効です。端子の接続部分(電気を通す金属面)を外した状態で清掃し、接続後の端子の外周部分に薄く塗るのがポイントです。接続面そのものに塗ると電気が通りにくくなるため、塗布箇所を間違えないよう注意しましょう。


2. ヘルメットのシールドのラチェット部


ヘルメットのシールドの開閉が固くなってきたとき、または開閉のたびにキーキーと音がするとき、シリコングリスが有効です。プラスチックを傷めない性質があるため、シールドの取り付け部(ラチェット部分)に少量塗るだけで動きが軽くなり、摩耗も防げます。塗布量は「ほんの少量」が原則で、余分な量はホコリを呼ぶため、綿棒や細いヘラで薄く広げるのがコツです。1回の施工で数ヶ月間効果が持続します。


3. ラジエーターホースの取り付け時


ラジエーターホースやゴム製の各種ホースをパイプに取り付ける際に、接続部分にシリコングリスを薄く塗っておくと、組み付けがスムーズになるだけでなく、ゴムホースの劣化を遅らせる効果があります。ゴムに対してダメージを与えないシリコングリスならではの使い方です。ただし塗りすぎるとホースが滑ってしっかり固定できなくなるため、あくまでも薄く塗るにとどめましょう。


3つとも共通しているのは「少量を薄く」という使い方です。これが条件です。


バイク用シリコングリスの選び方とおすすめ製品の特徴

シリコングリスは製品によって形状・耐熱温度・容量が異なり、用途に合わせて選ぶことが大切です。主な選択肢はペーストタイプとスプレータイプの2種類です。


ペーストタイプ(チューブ・缶入り)


細かい箇所への塗布やオーバーホール作業向けです。量を調整しやすく、ブレーキキャリパーのピストンやシール類の組み付けといった精密な作業に向いています。代表的な製品として「デイトナ シリコングリス(30g・約1,100円)」があります。コスパが良く初心者でも使いやすい一本です。


スプレータイプ


フロントフォークのインナーチューブやヘルメットのシールド部など、広い面積に均一に塗りたいときに便利です。手が汚れにくく、細かいノズルで狙った場所にだけ吹き付けられる点も魅力です。「KURE シリコングリースメイト」はバイク以外にも時計・釣具・OA機器にも使える汎用性が高い製品で、価格も500〜700円程度とリーズナブルです。


高耐熱タイプ


ブレーキ周りを重点的にメンテナンスしたい方には、耐熱温度280℃対応の「ワコーズ 耐熱シリコーングリース(品番:S380)」がおすすめです。価格は約2,000〜3,000円とやや高めですが、ブレーキキャリパーのような高温になる部位に対して長期間安定した性能を発揮します。


選ぶ基準は3つあります。


- 用途を確認する:金属同士の接触部分には使わない。ゴム・プラスチック・シール類への使用に限定する。


- 耐熱温度を確認する:ブレーキ周りには250℃以上対応品を選ぶと安心。


- スプレー or ペーストを選ぶ:広い面にはスプレー、精密な組み付けにはペーストが向いている。


まず1本用意するなら「KUREシリコングリースメイト(スプレー)」か「デイトナシリコングリス(ペースト)」のどちらかを選べば、日常的なバイクメンテナンスのほとんどの場面に対応できます。


バイクメンテ塾 シリコングリスの使い方とおすすめ製品:耐熱性・耐寒性の具体的な数値と、製品別の特徴を分かりやすく紹介。




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