センタードリル規格JISのA形B形C形R形の全比較

センタードリル規格JISのA形B形C形R形の全比較

センタードリル規格JISのA形・B形・C形・R形を徹底解説

旧JIS規格のままセンタードリルを選ぶと、シャンク径が最大3mm以上変わり、加工機のコレットに入らない失敗をします。


📌 この記事の3ポイント要約
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JIS規格はISO規格と統一済み

現行のJIS B 4304(2018年版)はISO 866等と共通化されています。旧JIS(1形・2形)とは寸法が異なるため、図面の呼びが「1.25×60°」か「1.2×60°」かで使うドリルが変わります。

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形状は4種類・細分類で7種類

A形・B形・C形・R形の4形式があり、さらに寸法規格の違いでA形-1、A形-2など計7種類に分かれます。用途や加工条件に合わせた選択が加工精度を左右します。

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括弧付き呼びはなるべく使用禁止

JIS規格表で呼びに括弧がついているサイズ(例:0.5/3.15、1.25/3.15など)は「なるべく用いない」と明記されています。発注・設計時に間違えやすいポイントです。

収納情報


センタードリルとは何か・JIS規格の概要


センタードリルとは、旋盤加工や円筒研削加工の際に材料の端面軸中心へ「センタ穴」を加工するための専用ドリルです。形状が独特で、細いドリル部とテーパ部(傾斜部分)が一体になっています。


センタ穴の役割は、ひと言でいえば「加工の基準点を作ること」です。旋盤の芯押し台のセンターという工具をセンタ穴に差し込むことで、材料のたわみや芯ブレを防ぎ、高精度な切削を可能にします。これが基本です。


日本国内でのセンタードリルは、JIS B 4304(2018年版)「センタ穴ドリル」 として規格化されています。1950年の制定から改正を重ね、2018年版ではISO 866・ISO 2540・ISO 2541(2016年第2版)を基にした内容となりました。つまり、現行JISは国際規格との整合性が取られているということです。


センタードリルはセンタ穴加工だけでなく、穴あけの位置決め(センタリング)・穴の面取り・薄板の穴あけなど幅広い加工にも使われます。これは使えそうですね。全長と溝長が短いため剛性が高く、ドリルの先端が材料面で滑りにくいという特徴があります。チゼルエッジ(切削能力のない部位)が短いため、一般的なドリルよりも高精度な位置への穴あけが可能です。


センタードリルの材質は主にハイス(高速度工具鋼:HSS) と超硬合金の2種類です。ハイス製は粘り強く、コストも低めで汎用加工に向いています。超硬合金製は硬度・耐熱性が高く、切削速度をハイス比で2〜3倍程度まで上げられますが、価格は高くなります。近年は難削材向けにコーティング処理を施した製品や刃部交換式のタイプも市販されています。


JIS B 4304:2018 センタ穴ドリル 全文(kikakurui.com)
※JIS B 4304の現行規格全文。A形・B形・C形・R形の寸法表や品質基準を詳細に確認できます。


センタードリルのJIS規格4形状の違いと用途

JIS B 4304では、センタ穴の形式によってA形・B形・C形・R形の4種類が規定されています。さらに寸法の許容差の違いによって、A形-1、A形-2、B形-1、B形-2、C形-2、R形-1、R形-2の計7種類に細分されます。それぞれの特徴を正確に知ることが、適切な選択の第一歩です。


A形はセンタードリルの中で最もスタンダードな形状です。面取り部(保護角)がなく、ドリル部からテーパ部がシャンク部に直接つながります。センタ穴角は60°・75°・90°があり、60°が最も広く使われています。「とりあえずセンタードリル」という場面でほぼ間違いなく選ばれる形状です。旧JIS規格での「1形」に相当します。


B形は、60°のテーパ部の外側にさらに120°の面取り(保護角)が付いたタイプです。旧JIS規格での「2形」に相当します。この保護角の役割は、センターを挿入する際のガイドとして機能することと、センタ穴周囲のバリやカエリ、外部からの打痕によるテーパ面の損傷を防ぐことです。


つまりB形は「センタ穴を外部の影響から守る」形状です。


B形が選ばれる場面は、複数回にわたって芯押し台のセンターを着脱する場合や、加工途中に材料のハンドリングがある場合など、センタ穴が傷つきやすい工程です。シャフト類の両端を何度もチャッキングし直すような長尺加工では、B形が特に有効です。


C形は、テーパ部の外側が120°の面取りではなく「座ぐり(平らな沈み穴)形状」になっているタイプです。座ぐりによってセンタ穴の保護効果はB形よりもさらに高くなります。長尺のシャフト材など、センターを挿入する際に先端がテーパ面に衝突して傷つきやすい加工に多く採用されています。厳しいところですね。


R形は、テーパ部の傾斜が直線ではなく円弧状になっているタイプです。センターとの接触が面ではなく「線接触」になるため、センターとセンタ穴の角度に多少のズレがあっても、また軸心がわずかにずれていても、比較的安定してセンターを支持できます。円筒研削盤を使う工程などで最も高い真円度を得やすい形状です。ただし線接触のため重切削や重量物の支持には不向きで、センター自体も損傷しやすい点には注意が必要です。


以下に各形状の特徴を整理します。


| 形状 | 旧JIS名称 | 特徴 | 主な用途 |
|------|---------|------|---------|
| A形 | 1形 | シンプルな形状、最汎用 | 一般的なセンタ穴加工・位置決め |
| B形 | 2形 | 120°保護角付き | 長尺加工・ハンドリングが多い場合 |
| C形 | — | 座ぐり形状の保護部 | 極長尺シャフト・高度な保護が必要な場合 |
| R形 | — | 円弧状テーパ面 | 高精度円筒研削・精密な真円度要求 |


センタ穴ドリルの種類 | YAMAWA(株式会社彌満和製作所)
※A形・B形・C形・R形の構造の違いと使い分けについて、図解付きでわかりやすく解説されています。


センタードリルのJIS規格寸法表と呼び方の読み方

JIS B 4304の規格表を読む際に、理解しておくべき重要なポイントがいくつかあります。規格を正しく読めると、発注時のミスや工具の選定ミスを防げます。


まず呼び(サイズ指定の方法) には3種類あります。「先端直径のみ」「先端直径/シャンク径」「先端直径×センタ穴角」の3種類で、形状によって使い分けられています。A形-1やB形-1などは「Dc/Ds(先端直径/シャンク径)」で表記し、A形-2やB形-2などは「Dc×θ(先端直径×センタ穴角)」で表記します。


呼びに括弧が付いているサイズは「なるべく用いない」とJIS規格に明記されています。これが条件です。例えばA形-1の呼び「(0.5/3.15)」「(1.25/3.15)」「(5/12.5)」などがこれに当たります。設計図面や発注書を作成するときは、括弧なしの呼びを優先して選ぶのがルールです。


A形-1の代表的な寸法を例に挙げると、呼び「2/5」(先端直径Dc=2.0mm、シャンク径Ds=5.0mm)の場合、全長Lは38〜42mm、刃長lは2.5〜3.3mmです。全長38〜42mmは、一般的な大人の親指の長さ(約6cm)より少し短い程度のサイズ感です。シャンク径5mmはボールペン軸よりわずかに細い太さに相当します。


製品の呼び方は「規格番号(または規格名称)+種類+呼び+材料記号」の順で表記します。例えば「JIS B 4304 A形 2×60° SKH51」や「センタ穴ドリル B形 6.3×60° HSS」のような形式です。材料記号はSKH51(ハイス)やHSSで表記されます。


センタ穴角の許容差は厳しく設定されています。60°の場合「60° -30'(マイナス30分)」という許容差で、これはほぼ60°でなければならないという精密な規定です。一方、先端直径Dcや全長Lの許容差は比較的緩やかに設定されています。センタ穴は旋盤加工・円筒研削の精度基準になるため、角度精度を特に重視しているということですね。


センタ穴ドリル 切削工具の基礎講座 | MonotaRO
※各形状の図解と寸法関係、センタとの組み合わせについて初心者にもわかりやすく解説されています。


旧JIS規格と現行JIS規格の違い・互換性の注意点

現場で混乱が起きやすいのが、旧JIS規格と現行JIS規格の混在です。実は旧JIS規格品もまだ流通しており、「1形」「2形」という呼び名で発注・在庫管理をしている現場も少なくありません。


現行JISのセンタ穴規格はISO規格と共通化され、寸法も変更されました。最もわかりやすい例が先端直径Dcのキリのいいサイズです。旧JISでは「φ1.2×60°」「φ3×60°」といった整数・1桁小数の呼びでしたが、現行JIS(ISO準拠)では「φ1.25×60°」「φ3.15×60°」となっています。一見似ていますが別規格品です。これは注意すれば大丈夫です。


特に注意したいのがシャンク径(Ds)の違いです。同じ先端径に対しても、旧JIS規格と現行JIS規格ではシャンク径が異なるサイズが設定されています。YAMAWA社の技術資料によれば、例えばDc=1.25(現行)と Dc=1.2(旧JIS)では、シャンク径が「3.15mm」と「5mm」で大きく異なります。差は約1.85mmです。一見小さな差に見えますが、工作機械のコレットやドリルチャックのサイズが合わないトラブルに直結します。痛いですね。


また、刃長の測定基準も規格間で異なります。現行JIS規格では刃長を「ドリル部の先端からの長さ」で規定していますが、旧JIS規格では「肩(テーパ部との境界)からの長さ」で規定しています。同じ刃長の数値であっても、基準点が違えば実際のドリル部の長さは変わります。


現行JIS規格のセンタードリルは、ISO規格との共通化により小径部とシャンク径の比が旧JISより小さく設計されています。これにより、剛性が高まってより安定した加工が期待できます。


発注・仕入れ時には必ず「現行JIS規格品か旧JIS規格品か」を確認し、図面の呼び寸法と照らし合わせることが重要です。図面に「φ3.15」とあれば現行JIS、「φ3」とあれば旧JIS対応品を選びます。確認するという一つの行動で、コストのかかる工具選定ミスを防げます。


センタ穴とセンタ穴ドリルの規格(No.122)| YAMAWA 困ったときの知恵袋
※現行JIS規格と旧JIS規格の寸法比較表が掲載されており、シャンク径・刃長の違いを具体的な数字で確認できます。


センタードリルのJIS規格に基づく正しい切削条件と回転数の求め方

センタードリルを正しい条件で使うことは、工具寿命を延ばし、加工精度を保つうえで欠かせません。間違った切削条件は、センタードリルの折損や被削材の損傷につながります。


切削条件を決める主な要素は3つです。「センタードリルの先端直径(Dc)」「被削材の材質」「センタードリルの材質」です。これを抑えれば問題ありません。


回転数(N)は切削速度(V)と先端直径(Dc)から求めます。計算式は以下の通りです。


$$N = \frac{1000 \times V}{\pi \times Dc}$$


例えば、ハイス製センタードリルで炭素鋼を加工する場合、推奨切削速度は15〜25 m/minです。先端直径Dc=2mmで切削速度V=20 m/minとすると、回転数は約3,183 rpmになります。この値を目安として工作機械の設定を行います。


| 材質 | ハイス切削速度(m/min) | 超硬切削速度(m/min) |
|------|---------------------|---------------------|
| 軟鉄 | 20〜30 | 35〜80 |
| 炭素鋼 | 15〜25 | 30〜70 |
| 合金鋼 | 5〜15 | 30〜70 |
| ダイス鋼 | 〜5 | 15〜30 |
| ステンレス鋼 | 5〜10 | 15〜30 |
| 鋳鉄 | 20〜35 | 50〜70 |


送り量については、先端直径が小さいほど工具剛性が低下するため、小さい値を選ぶ必要があります。ハイス製Dc=2mmで炭素鋼を加工する場合の送り量は0.12〜0.4 mm/revを目安とします。


カタログの切削条件はあくまで推奨値です。実際の加工では工作機械の剛性や材料のロット差などによって最適値が変わります。最初は推奨値より少し低め(回転数・送り量ともに約8割程度)に設定し、状態を見ながら徐々に上げていくアプローチが安全です。


下穴を開ける際の深さにも注意が必要です。センタードリルのテーパ部が材料に当たる深さまで掘り込んではいけません。また、面取りを兼ねて下穴を加工する場合は、皿穴径がセンタードリルの胴径(シャンク径)に達するまで掘り込むと工具が損傷するリスクがあります。結論は「テーパ部が材料に当たらない深さ」が基本です。


※切削速度・送り量・回転数の計算式とともに、材質別の推奨切削条件の具体的な数値を確認できます。


収納・整理で工具を長持ちさせるセンタードリルの保管と管理のコツ

センタードリルは先端直径が0.5mmという極細サイズから存在する精密工具です。適切に保管・整理しないと、工具同士がぶつかって微小な欠けが発生し、加工品質の低下や工具寿命の短縮につながります。


まず保管の基本は「種類・規格別に分けて収納すること」です。現行JIS規格品と旧JIS規格品が混在していると、先端直径が近いサイズを見た目で区別するのが難しくなります。たとえばDc=1.2mm(旧JIS)とDc=1.25mm(現行JIS)は、ノギスがなければ現物では判別困難です。収納ケースやツールボックスには必ずラベルで規格と呼びを明記する習慣をつけましょう。


工具収納に使えるアイテムとして有効なのが、ドリルビットスタンド(ドリルホルダー) や フォームインサート対応のツールケースです。センタードリルは全長が20〜130mm程度と小型のため、穴あきフォームを加工した専用インサートを作成すれば、サイズ別・規格別に整然と収納できます。1本ずつ独立した穴に立てて保管することで、先端の接触による損傷を防ぎます。


センタ穴角の許容差はわずか「−30分(−0.5°)」という精密な規格値です。工具に小さな欠けや変形があると、この許容差を外れる可能性があります。そのため、定期的な外観確認(刃先の欠け・摩耗チェック)と、管理台帳や在庫管理ツールによる使用履歴の記録も大切です。


さらに、センタードリルの収納場所は乾燥した環境が望ましいです。高湿環境では錆が発生しやすく、JIS規格でも外観品質として「さびがないこと」が要求されています。防錆油を薄く塗布してから収納するか、防湿ケースでの保管が有効です。


収納と整理の一手間が、工具への余計な出費を防ぎます。センタードリルを規格ごとに正しく管理することは、加工精度の維持と直結しています。




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