

P規格のOリングは「内径が大きいほど呼び番号も大きい」とは限らない。
収納情報
Oリング規格pとは、日本産業規格「JIS B2401」によって公式に定められた寸法規格のひとつです。PはPackingの頭文字で、もともと「運動用」を想定して設計されましたが、実際には固定用(静止シール)としても幅広く使われています。これがP規格最大の特徴です。
JIS B2401では、Oリングの種類をP・G・Vの3系統に分けています。P規格は運動用および円筒面・平面固定用、G規格は固定用専用、V規格は真空フランジ用です。P規格だけが「動く場所にも止まる場所にも使える」という柔軟さを持っています。
つまり、用途を迷ったらP規格が原則です。
P規格の呼び番号は「P2」から始まり「P300」を超えるサイズまで全部で80種類以上が規定されています。これはA4用紙の短辺(210mm)に収まるような精密な小型機械から、内径300mmを超える大型設備まで対応できる幅広さです。P規格がものづくり現場で「まずP規格で探す」という出発点になる理由はここにあります。
なお、P規格はJASO F404(日本自動車技術会規格)とも一部で寸法が一致しており、自動車・バイクのメンテナンスパーツとして市販されているOリングの多くはこのP規格かJASO F404規格で表記されています。水道の蛇口パッキンやカメラの防水ハウジングのシールリングにも、P規格品が採用されているケースが少なくありません。
参考:JIS B2401 Oリング規格の公式情報(パッキンランド)
https://www.packing.co.jp/ORING/oringsyurui1.htm
P規格のOリングは、「呼び番号」「内径(d)」「線径(W=太さ)」の3つの数値で1本が特定されます。この3つの関係さえ覚えれば、カタログを見たとき迷いません。
まず「呼び番号」は内径のほぼ近似値(mm)です。P10ならd=9.8mm、P50ならd=49.7mm、P100ならd=99.6mmと、呼び番号の数字をmmで読めばおよその内径がわかります。
次に「線径(太さ)」は呼び番号のサイズ帯によって自動的に決まります。以下の5つが原則です。
| 呼び番号の範囲 | 線径(太さ) | 身近なたとえ |
|---|---|---|
| P2 〜 P10 | φ1.9mm | シャープペンシルの芯(0.5mm)の約4本分 |
| P10A 〜 P22 | φ2.4mm | 爪楊枝の先端付近の太さに近い |
| P22A 〜 P50 | φ3.5mm | 小豆の短径とほぼ同じくらい |
| P48A 〜 P150 | φ5.7mm | 単3電池の端子キャップ径に近い |
| P150A 〜 P300超 | φ8.4mm | 鉛筆の太さとほぼ同じ |
線径が大きいほど反発力(シール力)が強く、耐久性も上がります。ただし、同じ内径でP10とP10Aのように「線径違い」が2種類存在する番号もあるため、注意が必要です。
P10A(線径2.4mm)はP10(線径1.9mm)よりも太く、溝も深くなります。溝寸法が異なるので取り付け先の設計寸法も変わります。線径が違うOリングは互換性がないと考えるのが基本です。
参考:P規格Oリングの詳細サイズ表(Oリング.com)
https://xn--o-7eu7hjb.com/?mode=f9
P規格とG規格はどちらもJIS B2401に定められた規格ですが、想定している用途が異なります。この違いを知らないと「同じ内径なのに互換性がない」という事態に陥ります。
G規格の「G」はGasket(ガスケット)の頭文字で、固定部位専用のシール材として設計されています。P規格と同じ内径でも線径が細く、溝が浅くて済むため省スペースに向いています。たとえば内径149.3mm以下のG規格品は線径3.1mm一択です。同じ内径のP規格品(P150Aは線径8.4mm)と比べると、線径が約3mmも細くなります。
設計の現場では「動く場所はP、止まる場所はGまたはP」というのが基本的な考え方です。ただし、G規格は運動用としては使えません。P規格は固定用としても使えますが、G規格を運動用に使うと早期摩耗や漏れのリスクが高まります。G規格だけは固定専用が条件です。
一方で、固定用途においてP規格を使うと線径が太い分だけシール面の圧力(面圧)が高くなり、長期のシール性においてはむしろ有利なケースもあります。この判断は設置スペースと使用環境(圧力・温度)によって変わってきます。
水道蛇口やキャビネットの収納扉の防水など、比較的スペースが広い場所での固定シールにP規格品を流用することはよくあります。むしろ流通量が多い分、ホームセンターでもP規格品の方が手に入りやすい、という実情もあります。これは使えそうですね。
参考:P規格とG規格の違い(桜シール)
https://www.sakura-seal.co.jp/category/1928189.html
サイズ規格が同じでも材質が違えばOリングの性能はまったく異なります。P規格の「サイズ選び」と「材質選び」は別の作業です。この2つをセットで考えないと、正しいOリングにたどり着けません。
代表的な材質は3種類あります。最も一般的なのはNBR(ニトリルゴム)で、耐油性・耐摩耗性に優れ、価格も安価です。水・空気・作動油などの一般的な流体に対応でき、使用温度はおよそ−30℃〜+100℃の範囲。工業機械のほかに、水回りの補修部品としてもNBR素材のP規格品が広く流通しています。
FKM(フッ素ゴム)は耐熱性(〜200℃)と耐薬品性が格段に高い材質です。ただしNBRの5〜10倍ほどの価格になることも珍しくありません。耐熱が必要な場面や、特殊な薬液・燃料に接する部位に使います。
シリコンゴム(Si)は耐熱と耐寒の両立が特長で、−50℃〜+200℃以上に対応します。食品機械・半導体装置・クリーンルームなど、清潔さが求められる環境に向いています。ただし耐油性と摩耗耐性は低いため、運動部位(動く場所)での使用は避けるのが鉄則です。シリコンは運動用には不向きです。
材質を選ぶポイントは「何の流体が触れるか」「何℃の環境か」「動く場所か止まる場所か」の3つです。これらを先に整理してからカタログを引くと、迷わずに選定できます。特に防水収納ケースのパッキン補修など、DIYで使う場合はNBR製のP規格品が価格・入手性ともに最適です。
参考:Oリング材質の選び方(川島産業)
https://kawashimasangyo.co.jp/product-information/oring/
Oリングのサイズと材質が正しくても、はめ込む「溝」の設計が合っていなければ漏れや破損が起きます。この「溝設計」の基礎こそが、P規格を正しく使いこなすうえで最後のカギです。
Oリングは溝の中でつぶされたときの反発力(弾性力)によって隙間を塞ぎます。このつぶれ具合を「つぶし率」と呼び、JIS規格では線径に対して8〜30%の範囲が適正とされています。つぶし率が40%を超えると圧縮割れのリスクが生じます。逆に8%未満では反発力が不足して漏れにつながります。
静止用(固定シール)ではやや大きめの15〜30%のつぶし率が許容されますが、動圧用(ピストン・ロッドの往復運動)では摩擦と発熱を考慮し、10〜25%程度に抑えるのが基本です。静止用と動圧用でゾーンが違うということですね。
現場でよく起きる失敗のひとつが「つぶし代を多めにすれば安心」という思い込みです。実際には、つぶし過ぎによる初期破損・圧縮永久ひずみ(ゴムが変形したまま戻らなくなる現象)が、漏れの原因となるケースが多く報告されています。
また、溝幅については「断面径×1.5〜1.8倍程度の幅」が推奨される理由があります。Oリングはつぶされるとだるまのようにふくらみ、横方向にも広がります。逃げ場がない溝では摩耗が加速し、最悪の場合ちぎれて異物漏れを起こします。ホームセンターで売られているP規格品をDIYで補修に使う際も、溝の深さと幅を先に測ってから購入するのが正解です。深さが合わないと意味がありません。
P規格を扱う際に役立つのが、Oリングメーカーが公開している「推奨溝寸法表」です。桜シールや森清化工、Oリング.comなどのサイトでP2〜P300超の全サイズ分の溝幅・溝深さ・隙間寸法がまとめられており、これを参照すれば一から計算しなくても済みます。この寸法表が基本です。
参考:Oリング溝設計の5つのミスと防ぎ方(富士ゴム化成)
https://www.fujigom.co.jp/manufacturing/oring-groove-design-mistakes/
Oリング規格pの知識は、機械設計者だけのものではありません。防水収納ケースや工具箱の蓋パッキン、水栓のシール補修など、収納まわりのDIYメンテナンスにも直接役立てることができます。
防水収納ケース(アウトドアや工具収納用途に人気のPelican型やタカチ製など)のシールパッキンが経年劣化でへたってきたとき、同型の純正部品を取り寄せると数百〜1,000円以上かかることがあります。しかしパッキンの断面を測ってP規格の呼び番号を特定できれば、ホームセンターや通販で1本数十円のNBR製P規格品に交換できます。純正品の数分の1以下のコストで済むことも珍しくありません。
ポイントは「現物の溝の内径と深さをノギスで測る」ことです。溝の内径がわかれば呼び番号が絞れます。次に溝の深さを測り、推奨溝寸法表と照らし合わせて線径を確認します。たとえば溝の深さが約1.4mmならP2〜P10(線径1.9mm)クラス、約1.8mmならP10A〜P22(線径2.4mm)クラスが目安です。
よくある失敗が「外径を測ってサイズを選ぶ」ケースです。P規格の外径はD=呼び番号の内径+線径×2で計算されますが、呼び番号は外径ではなく内径を基準にしています。外径だけで選ぶと、同じ外径でも線径が異なる番号を混同してしまいます。外径ではなく内径が基準です。
さらに意外な落とし穴として、「ゴムは伸びるから少し小さいサイズでもはまる」という考えがあります。確かにOリングはゴム弾性で伸縮しますが、JIS規格では組み付け時の引き伸ばし量(内径の引張量)は最大3〜5%以内が推奨されています。これを超えると断面が楕円に変形してシール性が落ちます。適切なサイズ選びが損を防ぎます。
Oリングセット品として、P規格を中心に30サイズ以上がケース入りでまとめられた商品もAmazonやモノタロウで流通しています(1,000〜3,000円程度)。メンテナンスの頻度が高い方はセットを1つ収納しておくと、いざというときに即対応できて便利です。これは使えそうです。
参考:P規格Oリングの寸法と溝寸法の早見表(森清化工)
https://www.morisei-kako.co.jp/product_info/size/sizelist_p.html

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