

5分のチョコ停を放置すると、年間で約2,200万円の損失になることがあります。
停止ロスを正確に計算するには、まず「負荷時間」と「稼働時間」という2つの概念を区別することが出発点です。負荷時間とは、生産計画を達成するために設備が稼働しなければならない時間のことで、操業時間から保全休止・朝礼・計画停止などの予定外時間を除いた時間です。一方、稼働時間は負荷時間から「停止ロス時間」を引いた時間、つまり設備が実際に動いていた時間を指します。
停止ロス時間の正体は、故障・段取り調整・刃具交換など、予定外に設備が止まっていた時間の合計です。この区分が曖昧なまま計算すると、ロスの発生場所を誤認し、改善の効力が分散してしまいます。
たとえば、負荷時間が400分のラインで故障が30分、段取り調整が10分発生したとします。この場合、稼働時間は「400−30−10=360分」です。これが停止ロス計算の最初の土台になります。基本はシンプルです。
以下の表で用語を整理しておくと便利です。
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| 操業時間 | 設備が稼働しうる1日の全時間 |
| 負荷時間 | 操業時間から計画停止を除いた時間 |
| 停止ロス時間 | 故障・段取り・刃具交換などで止まった時間 |
| 稼働時間 | 負荷時間−停止ロス時間 |
停止ロスと性能ロス(チョコ停・速度低下)は別物です。設備が「完全停止」している間のロスが停止ロスで、動いているのに遅い・瞬間的に止まるケースは性能ロスに分類されます。混同すると改善の方向性がずれるため、定義の一致を現場全体で確認することが条件です。
参考:設備の7大ロスと停止ロスの位置づけについて詳しく解説されています。
停止ロスを計算する際、最もよく使われる指標が「時間稼働率」です。時間稼働率とは、負荷時間のうち設備が実際に稼働していた割合を示す数値で、以下の計算式で求めます。
$$時間稼働率 = \frac{稼働時間}{負荷時間} \times 100$$
具体的な計算例を見てみましょう。ある製造ラインで、1日の負荷時間が400分、そのうち故障で30分・段取り調整で10分の停止が発生したとします。
- 停止ロス時間:30分+10分=40分
- 稼働時間:400分−40分=360分
- 時間稼働率:360÷400×100=90%
この結果、「負荷時間の10%(40分)が停止ロスである」とわかります。時間で言うと、8時間勤務のラインにおける40分の停止は、コンビニのレジで昼休み前後まるまる閉まっているようなイメージです。つまり意外に長い。
時間稼働率が90%という数字だけ見ると「良好」に見えます。しかし、この90%の中にはチョコ停による性能ロスが含まれていないことに注意が必要です。停止ロスだけでなく、性能ロスを含めた「真の稼働率」を把握するためには、OEE(設備総合効率)の計算式に進む必要があります。
$$OEE = 時間稼働率 \times 性能稼働率 \times 良品率$$
たとえば時間稼働率90%・性能稼働率70%・良品率90%の場合、OEEは以下になります。
$$OEE = 0.9 \times 0.7 \times 0.9 \times 100 = 56.7\%$$
OEEが56.7%ということは、負荷時間の約43%がなんらかのロスだということです。「9割稼働している」と思っていた設備が、実際には半分程度しか価値を生んでいなかった——これが現場でよく起きる認識のズレです。停止ロスの計算はOEEの出発点にすぎません。
参考:時間稼働率と停止ロスの関係をわかりやすく解説されています。
停止ロスを時間で把握するだけでは、経営判断や改善予算の根拠にはなりにくいです。「40分の停止ロス」と報告するより「3万2,000円のロス」と報告するほうが、上司も投資判断をしやすくなります。金額換算が基本です。
最も実践的な方法が「チャージレート方式」です。チャージレートとは、設備・人件費・光熱費などを含む1時間あたりの加工コストのことです。
計算式は次のようになります。
$$停止ロス金額 = 停止時間 \times 担当人数 \times チャージレート(円/時間)$$
以下に具体例を示します。
| 条件 | 数値 |
|---|---|
| 停止時間 | 60分(1時間) |
| 担当オペレーター | 3人 |
| チャージレート | 4,000円/時間 |
| 停止ロス金額 | 60分×3人×4,000円=12,000円/回 |
これが毎日発生するとしたら、月間(20営業日換算)で24万円、年間では約288万円の損失になります。「1回たった1時間の停止」が積み重なると、中小製造業の年間利益を食いつぶすほどのダメージになりえます。痛いですね。
さらに故障ロスには、停止時間の人件費だけでなく、部品代・修理費用・不良品損失・残業工数・場合によっては納期遅延ペナルティも加わります。
$$故障ロス金額 = 停止ロス金額 + 故障対策費用 + 不良ロス + 残業工数費 + 納期遅延ペナルティ$$
TPMオンラインの資料によると、このような「ロスコストマトリックス」を整備している企業は、改善活動の優先度付けが明確になり、投資対効果が見えやすくなると指摘されています。金額が見えると動きやすくなります。
なお、チャージレートの設定には各企業の実態に応じた定義が必要です。まず自社の加工費(設備減価償却費+人件費+光熱費)を稼働時間で割って試算し、現場の実態に近い数値を設定することから始めると良いでしょう。
参考:故障ロスの金額評価方法と算出ルールが実例とともに解説されています。
製造現場でよく見落とされるのが「チョコ停」による停止ロスです。チョコ停とは数秒〜数分程度の短い設備停止で、作業者が手動でリセットすれば即復旧するため、日報にも記録されないことがほとんどです。しかし、その小さな停止の積み重ねが、年間で2,200万円を超えるロスになる可能性があります。
実際にキーエンスの調査事例では、単価5円の部品を毎分100個製造する設備で、5分のチョコ停が1時間に1回発生した場合の損失は次のようになります。
$$1回のチョコ停損失 = 5分 \times 100個/分 \times 5円 = 2,500円$$
$$年間損失 = 2,500円 \times 24回/日 \times 365日 ≒ 2,190万円$$
A4用紙1枚より薄い積み重ねが、気づけば東京ドーム近くの土地の維持費に相当するような損失を生んでいる——それがチョコ停の恐ろしさです。意外ですね。
チョコ停を停止ロス計算に含めるには「稼働率の定義の見直し」が必要です。通常の時間稼働率計算では、チョコ停は「性能ロス」に分類されるため停止時間に含まれません。しかし、実態として設備は止まっているわけですから、計算式を以下のように修正することでより正確な稼働実態が見えてきます。
$$修正稼働率(\%) = \frac{稼働時間}{負荷時間 + チョコ停時間} \times 100$$
たとえば負荷時間24時間・停止ロス1時間・チョコ停1.5時間の場合、従来の計算では稼働率は約91%ですが、チョコ停を含めると約86%まで落ちます。約1時間以上の差が生まれます。この差は設計上の生産計画にも直結します。
チョコ停のロスを正しく集計するには「ワークサンプリング+ワークシート記録」が現実的な手順です。
- 📋 ワークサンプリング:設備の状態(稼働・チョコ停・段取りなど)を短時間ごとに記録する
- 📋 ワークシート:作業者がチョコ停の原因と発生回数をその場で記録する
- 📊 パレート図:原因ごとの件数を集計し、上位原因(全体の80%を占める少数原因)を特定する
パレート図で重点原因を3つに絞ると、改善コストを集中させやすくなります。先のキーエンスの事例では、上位3つのエラーだけで年間約1,200万円の損失改善が見込めたと報告されています。まず3つに絞ることが条件です。
参考:チョコ停の計算方法・顕在化の手順・パレート解析の進め方が詳しくまとめられています。
多くの現場では、停止ロスの削減目標をOKR(Objectives and Key Results)やKPIで設定し、個別の設備ごとに改善を進めます。これ自体は有効です。しかし、停止ロスだけを削減した結果、意外な落とし穴にはまることがあります。それは「他のロスを見逃す」という問題です。
製造業の生産ロスは設備の7大ロスだけでなく、「人の効率を阻害する5大ロス」と「原単位の効率を阻害する3大ロス」を合わせた16大ロスで構成されています。停止ロスを削減したことで時間稼働率が上がっても、編成ロス・動作ロス・歩留まりロスが残っていれば、全体のOEEはほとんど改善しないことがあります。
たとえば、あるラインで停止ロス改善により時間稼働率を80%→90%に向上させたとします。しかし、性能稼働率が60%・良品率が85%のままだと、OEEは以下のように変化します。
| 改善前 | OEE=0.80×0.60×0.85×100=40.8% |
|---|---|
| 停止ロス改善後 | OEE=0.90×0.60×0.85×100=45.9% |
改善前と比べて5ポイント上がっています。ただし、OEE45.9%は依然として「負荷時間の半分以上がロス」の状態です。停止ロスの改善だけでは、工場全体の効率改善に限界があるということです。これは使えそうです。
そこで実践的なアプローチとして有効なのが、ロスの全体マップを作成してから優先順位をつける方法です。具体的には次のステップで進めます。
- 🗺️ ステップ1:ロスマップの作成 7大設備ロス+5大人ロス+3大原単位ロスの実態を時間と金額で一覧化する
- 📌 ステップ2:ボトルネックの特定 OEEに最も影響しているロス(時間稼働率・性能稼働率・良品率のどれが低いか)を数値で確認する
- 🔧 ステップ3:集中改善 上位2〜3つのロスに絞って改善投資を集中させる
- 📈 ステップ4:効果の定量評価 改善前後の時間稼働率・OEE・金額損失を比較し、数字で報告する
「段取りロスを4か所改善しました」より「時間稼働率を80%から87%に向上させました」と報告するほうが、経営層への説得力も格段に高まります。数字で語ることが原則です。
16大ロス全体を視野に入れた停止ロス計算は、単なる現場改善ツールではなく、製造業の収益管理に直結する指標です。設備の時間稼働率を入り口として、OEE全体の把握へと発展させることで、停止ロス計算の本来の価値が発揮されます。
参考:16大ロスの全体構造と各ロスの計算方法が体系的に整理されています。
生産ロスとは?製造業の7大ロスと削減方法や計算方法|FAプロダクツ

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