

クローゼットの服の8割は、手持ちの服の2割しか着ていないせいで収納できなくなっています。
パレート図とは、棒グラフと折れ線グラフを組み合わせた複合グラフです。左から件数の多い順に棒グラフが並び、右肩上がりの折れ線グラフが各項目の累積比率(累積構成比)を示します。これにより「全体のどの問題が最も大きな割合を占めているか」が一目でわかります。
この図はQC(Quality Control)7つ道具のひとつとして位置づけられており、製造業の品質管理だけでなく、クレーム分析・売上分析・在庫管理など幅広い場面で使われています。収納の整理にも、使用頻度や収納スペースの逼迫度を数値化すれば、同じ考え方を活用できます。つまり優先度を数字で見える化する道具です。
パレート図の基盤となるのが「パレートの法則」、別名「80:20の法則」です。全体の成果の80%は、全要素のうち20%が生み出しているという経験則で、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが19世紀末に発見しました。クローゼットにある服の80%の着用回数は、全体の20%の服に集中している、という日常的な例がまさにこれにあたります。
Excelでパレート図を作る前に、把握しておくべき重要なポイントがあります。Excel 2016以降では「挿入→統計グラフの挿入→パレート図」という操作で自動作成できますが、この機能にはひとつ大きな落とし穴があります。自動生成されるグラフでは折れ線グラフ(累積比率線)が最初の棒の左端から始まってしまい、正式なパレート図の仕様である「原点(0)から始まる折れ線」を満たさないケースが多いのです。QCサークル活動や品質管理の現場では、折れ線は必ず原点0から引く仕様が求められます。この点を事前に知っておくことが大切です。
また、パレート図に使えるデータは「数値で表せる定量データ」に限られます。不良品の件数、クレーム件数、売上金額など、カウントできる数値があれば何でも対応できます。データを集める際は分析期間を明確にし、長くても1年以内に留めるのが一般的な目安です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| グラフの構成 | 棒グラフ(件数)+折れ線グラフ(累積比率)の複合図 |
| 理論的根拠 | パレートの法則(80:20の法則) |
| 主な用途 | 品質管理・クレーム分析・売上分析・在庫管理 |
| Excel自動作成 | 2016以降で可能。ただし折れ線の開始位置に注意 |
| 分析期間の目安 | 最長1年以内を推奨 |
参考:パレート図の基礎概念と用途例について詳しく解説しているページです。
パレート図とは?基礎知識と作り方、活用方法をわかりやすく解説 – Backlog
パレート図を作る最初の一歩は、データの準備です。ここを正確にやっておかないと、グラフが完成しても正しい分析ができません。データの準備は基本が原則です。
まず、項目名と件数(または金額)を表に入力します。表の構成は「項目名」「数値(件数)」「累積金額または累積件数」「累積比率」の4列が基本です。件数は必ず降順(多い順)に並べてください。ただし「その他」という項目は件数に関わらず最後の行に置くのがルールです。
累積件数の計算には、Excelの数式を活用します。最初の行(最も件数が多い項目)の累積件数はそのまま同じ値を入力します。2行目以降は「直前行の累積件数+当該行の件数」で計算します。たとえばA列が件数でB列が累積件数の場合、B3セルには「=B2+A3」と入力し、それ以下の行にオートフィルでコピーすれば自動的に計算されます。
累積比率の計算は、「各行の累積件数 ÷ 全体の合計件数」で求められます。セルの書式設定でパーセンテージ表示に変更するのを忘れないようにしましょう。最終行の累積比率が100%になっていれば正しく計算できています。
ここで重要な作業がひとつあります。折れ線グラフを原点(0)から始めるため、表の一番上にダミー行を1行追加してください。このダミー行には項目名を空白にして、累積比率だけ「0%」と入力します。この0%の行がないと、後でグラフを調整しても折れ線が棒グラフの右端ではなく左端から始まってしまいます。これを知っているだけで修正の手間が大きく省けます。
データが完成したら、選択すべき範囲は「項目名」「件数」「累積比率」の3列です。合計行は選択範囲に含めないようにしましょう。合計行が含まれると、グラフに余分な棒が追加されてしまいます。
参考:総務省統計局によるパレート図の作り方解説(公的機関の説明で信頼性が高いです)。
データの準備ができたら、いよいよExcelでグラフを作成します。「項目名」「件数」「累積比率」の3列をCtrlキーを押しながら選択したら、メニューバーの「挿入」タブをクリックします。
次に「おすすめグラフ」→「すべてのグラフ」→「組み合わせ」→「集合縦棒 – 第2軸の折れ線」を選択します。これで棒グラフと折れ線グラフの複合グラフが自動的に挿入されます。Excel 2016以降では「統計グラフの挿入」→「パレート図」でも挿入できますが、この場合は折れ線の開始位置が自動調整されないため、手動で修正が必要です。
グラフが挿入されたら、次の順番で書式設定をおこないます。最初にやるべきことから進めましょう。
① 棒グラフの間隔を0%にする
棒グラフをどこかひとつ右クリックして「データ系列の書式設定」を開きます。「系列のオプション」の中にある「要素の間隔」を「0%」に変更します。これでヒストグラムのように棒同士が隙間なく並ぶパレート図らしい見た目になります。
② 右軸(第2縦軸)の最大値を1.0(100%)に設定する
右側にある縦軸(累積比率用の軸)を右クリックし、「軸の書式設定」を開いて「最大値」を「1.0」に変更します。表示形式のカテゴリを「パーセンテージ」にすれば、100%と表示されます。
③ 左軸(第1縦軸)の最大値を合計件数に設定する
左側の縦軸を右クリックして同じく「軸の書式設定」を開き、「最大値」をデータの合計件数に設定します。最小値は「0」にしてください。この設定で左右の軸が正確に対応するようになります。
④ 折れ線グラフの開始位置を原点(0)に修正する
ここが多くの人がつまずくポイントです。グラフを選択した状態で右上に現れる「+」ボタンをクリックし、「軸」→「第2横軸」にチェックを入れます。次に追加された第2横軸を右クリックして「軸の書式設定」を開き、「軸位置」を「目盛」に変更します。これで折れ線グラフが原点から始まるように修正されます。
第2横軸を表示させたままだとグラフが見づらくなるため、「軸の書式設定」の「ラベル」から「ラベルの位置」を「なし」に設定して非表示にします。注意点として、第2横軸を「Delete」キーで削除してしまうと折れ線が元に戻ってしまいます。削除ではなく非表示にするのが正しい手順です。
この修正をすると折れ線が棒グラフの左端ではなく右端を通るようになります。これが仕様上正しい位置です。
⑤ グラフタイトルと軸ラベルを追加する
「グラフのデザイン」→「グラフ要素を追加」から、グラフタイトル・縦軸ラベルを追加します。第三者が見てもわかる資料にするため、タイトルに分析対象と期間を書き込みましょう。凡例は非表示にするとスッキリした見た目になります。
参考:折れ線が0から始まるパレート図の詳細な作成手順を図解で解説しています。
パレート図が完成したら、続いてABC分析と組み合わせることで、データを実際の行動に落とし込みやすくなります。ABC分析とは、累積比率に基づいてデータをA・B・Cの3つのランクに分類する方法です。
一般的な分類の目安は以下の通りです。Aランクは累積比率0〜80%の範囲に入る項目で、全体に対する影響が最も大きいグループです。Bランクは81〜95%の範囲に入る項目で影響が中程度、Cランクは96〜100%の範囲に入る影響が小さいグループです。パレート図のAランク項目が、真っ先に対処すべき「重要な少数」になります。
ABC分析が条件です。
ここからが、収納に興味のある方にとって特に面白い応用です。収納の悩みの本質は「物が多すぎてどこに何があるかわからない」ことではなく、「使わないものが大半を占めている」ことです。パレートの法則を収納に当てはめると、「実際に使っているものの80%は、全アイテムの20%にすぎない」という結論が導けます。
具体的には、クローゼットの衣類を「先月着た回数」で数えてデータ化し、降順に並べてパレート図を作ってみましょう。多くの場合、手持ちのアイテムの上位20〜25%が着用回数全体の8割を占めていることがわかります。Aランクに入らなかった75〜80%のアイテムが、スペースを圧迫している元凶だということです。
この方法の大きな利点は、「なんとなく捨てにくい」という感情的な判断を排除し、数字で優先順位をつけられる点です。Cランクに入ったアイテムは「使用頻度が年に1回以下」と数値が証明してくれるため、手放す判断がしやすくなります。実際にこの手法で収納を見直した場合、手放せるアイテムが全体の50〜60%以上になることも珍しくありません。これは使えそうです。
パレート図と収納の組み合わせという視点は、一般的なビジネス書や整理術の本にはほとんど載っていない独自のアプローチです。データで「手放すべきもの」を明確にしてから整理に取り掛かると、作業時間が半分以下になります。
パレート図を作る際に多くの方がつまずくポイントは、ある程度共通しています。トラブルの原因を知っておくと、作業がスムーズになります。
ミス① 折れ線グラフが棒グラフの「左端」から始まる
最もよくあるトラブルです。折れ線グラフの始点が棒グラフの左端(0の位置ではなく最初の棒の中央付近)から始まってしまうケースです。これは第2横軸の「軸位置」が「目盛と目盛の間」になっているためです。前の手順で解説したように、第2横軸の軸位置を「目盛」に変更するだけで解決できます。
ミス② 累積比率の最大値が120%や150%になる
右軸(第2縦軸)の最大値をExcelが自動設定したため、100%を超えた値になってしまうことがあります。解決方法は「軸の書式設定」から最大値を手動で「1.0」に変更することです。意外ですね。
ミス③ 合計行がグラフに含まれて余分な棒が追加される
データを選択する際に合計行まで含めてしまうと、グラフに不要な棒グラフが追加されます。必ず合計行は選択範囲から外すようにしてください。グラフ作成後でも、グラフ上で右クリック→「データの選択」から選択範囲を修正できます。
ミス④ 「その他」項目が棒グラフの最左端に表示される
「その他」を件数順に並べてしまうと、件数が多い場合に左側に来てしまいます。「その他」は件数に関わらず必ず一番右に配置するのが原則です。データ作成時に一番下の行に手動で配置し直しましょう。
ミス⑤ 項目を細かく分けすぎて重要度が分散する
項目数が多すぎると、パレート図の意味が薄れます。影響の小さい項目が分散してAランクが多数になり、優先対処すべき課題が特定しづらくなります。目安として、項目数は5〜10程度に絞り込むのが適切です。件数が少ない項目はひとまとめにして「その他」に統合しましょう。
| よくあるミス | 原因 | 解決策 |
|---|---|---|
| 折れ線が左端から始まる | 第2横軸の軸位置が「目盛の間」 | 軸位置を「目盛」に変更 |
| 右軸が100%超え | 最大値がExcel自動設定 | 最大値を手動で1.0に設定 |
| 余分な棒が表示される | 合計行が選択範囲に含まれている | 合計行を選択から外す |
| 「その他」が左に来る | 降順で並べ替えた結果 | 手動で最終行に移動 |
| Aランクが多数になる | 項目の細分化しすぎ | 5〜10項目程度に統合 |
パレート図作成後には「第2横軸を削除したら折れ線が元に戻った」というトラブルも非常に多いです。第2横軸はDeleteキーで削除せず、ラベルを非表示にする設定で対処するのが鉄則です。この一点を覚えておけば大丈夫です。
Excelでのパレート図作成が手間に感じる場合、無料テンプレートを活用するのもひとつの方法です。テンプレートは項目名と数値を書き換えるだけで自動的にグラフが更新されるため、初めての方でも確実に完成させられます。
参考:Excel 2013以降のQC仕様のパレート図作成について詳しい解説があります。
パレート図の作成(QC ver.)with Excel2013, 2016, 2019 – ひとりマーケティング
パレート図を作成した後は、分析結果を実際の改善行動に結びつけることが重要です。グラフを眺めるだけでは、作業の半分しか終わっていません。
ビジネスの品質管理場面では、Aランクに入った項目(累積比率0〜80%を占める問題群)に対して優先的に改善策を立案します。製造現場の場合、Aランクに入る不良原因は全体の3〜5項目程度であることがほとんどです。この3〜5項目だけを重点的に解決することで、全体の不良件数の8割を削減できる計算になります。改善後に再びパレート図を作成して比較すると、どの程度効果があったかを視覚的に確認できます。
収納整理の場面での次のステップはこうです。パレート図でCランクに分類されたアイテムを洗い出したら、そのアイテムに対して「処分・売却・寄付・デジタル化」のいずれかを決定します。収納スペースが1畳のクローゼット(一般的な幅182cm×奥行き91cmの押入れを想定)の場合、Cランク品を取り除くと通常の収納量の40〜60%分のスペースが空くと言われています。これは東京都内の6畳ワンルームのクローゼット収納で試算すると、衣類が平均100〜150点ある人のうちAランク品は20〜30点程度にすぎないことを意味します。
ビジネス利用の場面では、パレート図は定期的に更新することが推奨されます。市場環境や業務内容が変われば、優先すべき課題も変わるからです。月次・四半期ごとにデータを更新してグラフを再作成することで、改善の進捗状況と次の重点課題を継続的に把握できます。更新頻度の目安は3〜6ヶ月に1回が一般的です。
Excelでの作業を効率化したい場合は、VBAマクロを使ってパレート図の自動生成を設定することもできます。毎月同じデータ構造で分析をおこなう業務がある場合は、マクロ化によって数分かかっていた作業が数秒に短縮されます。VBAに不慣れな方向けには、Webツール型のパレート図ジェネレーターも複数公開されており、データを貼り付けるだけでグラフを出力できます。
最後に、パレート図を活用する上での3つの原則を整理します。まず「分析目的を先に決める」こと。損失金額を減らしたいのか、件数を減らしたいのかによってデータの集め方が変わります。次に「項目を適切な数に絞る」こと。5〜10項目程度が理想で、細かすぎると全体像が見えにくくなります。そして「定期的に更新する」こと。一度作ったパレート図を使い続けるのではなく、状況の変化に合わせてデータを更新することで、継続的な改善につながります。これだけ覚えておけばOKです。
参考:パレート分析の実践的な活用法とビジネスシーンへの応用について解説されています。