設備総合効率の計算式と7大ロス改善の全手順

設備総合効率の計算式と7大ロス改善の全手順

設備総合効率の計算式と改善の全手順

OEEが高いほど工場は儲かっていると思っていたら、在庫コストで年間数百万円の赤字になった現場があります。


この記事の3つのポイント
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OEEの計算式は3要素の積

設備総合効率(OEE)は「時間稼働率×性能稼働率×良品率」で算出します。3つの数字を掛け合わせるため、一つが低いだけで全体が大きく下がる構造です。

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OEEが高すぎると逆効果になる

OEE100%を目指すと過剰生産になり、在庫管理コストや品質劣化リスクが増大します。世界水準の目標値は85%ですが、多くの現場では60%前後が現実的な出発点です。

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7大ロスの整理が改善の第一歩

OEEを下げる要因は「7大ロス」に分類されます。どのロスが最大か特定してから対策を打つことで、改善効果を数値で確認できます。


設備総合効率(OEE)の計算式と基本の考え方

設備総合効率(OEE:Overall Equipment Effectiveness)は、JIS Z 8141で「設備の使用効率の度合いを表す指標」と定義されており、製造業の生産効率を評価する国際標準KPIのひとつです。単純な稼働率とは異なり、時間・性能・品質の3つの側面を同時に評価できる点が最大の特徴になっています。


計算式はシンプルです。


指標 計算式
設備総合効率(OEE) 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率
時間稼働率 稼働時間 ÷ 負荷時間
性能稼働率 基準サイクルタイム × 生産数 ÷ 稼働時間
良品率 (生産数 − 不良品数)÷ 生産数
稼働時間(補足) 負荷時間 − 停止時間


たとえば「時間稼働率80%、性能稼働率90%、良品率95%」という数値があったとき、OEEは 80% × 90% × 95% = 68.4% になります。3つの要素をすべて掛け合わせるため、どれか1つが低いだけでも全体の数値は大きく下がる構造になっています。これが重要なポイントです。


なぜ3つを掛け算するのか、疑問に思う人もいるかもしれません。それは「設備が稼働できる時間のうち、実際に価値を生み出した時間」を精緻に表すためです。稼働していても速度が遅い、あるいは不良品を作っているだけでは、設備の能力を十分に活かしていないことになります。3要素の積という計算式は、こうした現場の実態を正直に映し出す仕組みになっています。


参考として、日本産業規格(JIS Z 8141)の公式定義についてはこちらでご確認いただけます。


JIS Z 8141 生産管理用語 – 設備総合効率の公式定義(日本産業規格)


設備総合効率の計算式を使った具体的な算出例

計算式の理解を深めるために、1日8時間勤務の工場を例にステップごとに算出してみましょう。収納棚への部品補充作業がある製造ラインを想定しています。


今回使う条件はこちらです。


- 負荷時間:7.5時間(450分)
- 停止時間:0.5時間(30分)
- 基準サイクルタイム:1分(1個あたり)
- 生産数:350個
- 不良品数:14個


ステップ1:稼働時間を出す
稼働時間 = 450分 − 30分 = 420分


ステップ2:時間稼働率を計算する
時間稼働率 = 420 ÷ 450 = 93.3%


ステップ3:性能稼働率を計算する
性能稼働率 = 1分 × 350個 ÷ 420分 = 83.3%


ステップ4:良品率を計算する
良品率 = (350 − 14)÷ 350 = 336 ÷ 350 = 96.0%


ステップ5:OEEを算出する
OEE = 93.3% × 83.3% × 96.0% = 74.6%


この74.6%という数値、どう読み解けばよいでしょうか。世界クラス工場の水準とされる85%には届いていませんが、一般的な製造業の平均(60〜65%)は上回っています。まずは現状把握の基準点として機能します。


ここで見逃せないのが「性能稼働率が83.3%と最も低い」という点です。基準サイクルタイム通りに生産できていない時間があることを示しており、チョコ停や速度低下といったロスが潜んでいる可能性があります。つまりOEEは全体の問題ではなく、どの要素がボトルネックかを特定するレンズとして使えます。


なお、時間稼働率の「負荷時間」は「計画停止(休憩・朝礼・計画保全)を除いた時間」であり、「総操業時間」とは異なります。この定義を現場全体で統一しないと、計算のたびに結果が変わってしまうため注意が必要です。定義を揃えることが基本です。


設備総合効率を低下させる7大ロスの分類と特徴

OEEが低くなるとき、その原因は「7大ロス」と呼ばれる7種類の損失のいずれかに分類できます。TPM(Total Productive Maintenance:全員参加の生産保全)の考え方に基づいており、OEEの3要素と以下のように対応しています。


OEE要素 ロスの種類 具体例
時間稼働率を下げるロス ①故障ロス 突発的な設備停止・部品破損
②段取り・調整ロス 品種切替や金型交換・設定変更
③工具交換ロス 刃具や消耗品の交換作業
性能稼働率を下げるロス ④立ち上がりロス 始業・休憩後の暖機・条件安定まで
⑤速度低下ロス 設備の老朽化・意図的な低速運転
⑥チョコ停・空運転ロス 詰まり・センサー誤作動による短停止
良品率を下げるロス ⑦不良・手直しロス 規格外品の発生・再加工作業


この7種類の中で、特に見落とされやすいのが「チョコ停(⑥)」です。1回あたりの停止は数分以内と短く、作業者が「たいしたことない」と感じて記録しないケースが多くあります。しかし月単位で積み上げると、1日あたり30〜60分のロスに相当することも珍しくありません。


段取り・調整ロス(②)も大きな影響を持ちます。多品種少量生産の現場では1日に何度も品種切替が発生するため、段取り時間が積み重なると時間稼働率を大きく引き下げます。SMED(シングル段取り)と呼ばれる手法では、段取り作業を「機械を止めたまま行う作業(内段取り)」と「機械を動かしながら行える作業(外段取り)」に分けて最適化することで、段取り時間を最大50%削減できた事例があります。


また、良品率の低下要因である不良・手直しロス(⑦)は、見た目には「直せばいい」と思われがちです。しかし手直しには材料費・工数・スペースのすべてが余分にかかります。厳しいところですね。良品を一発で作る設計が、長期的なOEE向上の根本対策になります。


参考になる7大ロスの詳細と実例解説はこちら。


設備総合効率(OEE)を上げるには?計算式や7大ロスの原因と対策(tebiki現場教育)


設備総合効率の目標値と「高すぎる」ときの落とし穴

設備総合効率の目標値として、業界標準では「85%以上がWorld Class(優良水準)」とされています。一般的な製造業の平均は60〜65%程度で、製造業全体の工場平均は30〜60%という調査データもあります。目標値はあくまで参考です。


OEEレベル 評価
85%以上 World Class(優良)
70〜85% 良好(改善余地あり)
60〜70% 平均的な水準
60%未満 要改善


ここで多くの人が誤解しやすい点に触れておきます。「OEEは高ければ高いほど良い」というのは間違いです。これは使えそうな知識ですね。


OEEを無理に上げようとして性能稼働率を高めると、需要以上の製品を生産してしまう「過剰生産」が起きます。過剰生産は、トヨタ生産方式が定義する「7つのムダ」の筆頭に挙げられているほど深刻な問題です。在庫の保管スペース・管理コスト・品質劣化リスクがすべて増大するため、OEEが高くても実際のコストは悪化するという逆転現象が起こります。


実際に、過剰生産によって在庫スペースが不足した工場では、資材の収納場所が散乱して段取り時間がさらに延びるという悪循環に陥るケースがあります。収納の乱れが新たなロスを生む流れです。


設備総合効率はあくまで「現場の生産実態を映す鏡」として使い、数値そのものを目的にしないことが重要です。85%を目標にするとしても、自社の生産形態・品種数・設備の種類に合わせた現実的な目標設定が必要になります。多品種少量生産の現場では70〜75%が適正な目標値となるケースも多いです。


中小企業向けのOEE目標設定の考え方についてはこちらも参考になります。


設備総合効率(OEE)の計算方法・指標の目安・改善のポイント(日研トータルソーシング)


設備総合効率の計算式から改善アクションにつなげる手順

OEEの数値を出すだけでは何も変わりません。数値を改善アクションに変換するプロセスが不可欠です。以下の5ステップが実務では基本になります。


Step 1:計測対象設備を絞る
全設備を一度に計測しようとすると工数が膨大になります。まず「ボトルネック工程」や「停止頻度が最も高い設備」を1〜2台選んで集中的に計測しましょう。


Step 2:3要素の定義をチームで統一する
「負荷時間に休憩を含めるか」「何分以上をチョコ停とカウントするか」などの定義を現場全員で揃えます。定義が揃わないと、集計のたびに数値がブレます。一般的にはチョコ停は5分未満、停止ロスは5分以上という分類が多く使われています。


Step 3:日次でデータを記録する
手書きの記録票でも構いません。停止時間の理由・生産数・不良数を毎日記録することがスタートです。週1回OEEを計算して傾向を掴む段階から始めると無理なく続けられます。


Step 4:最も低い要素に絞って対策する
3要素のうち最も低いものを特定し、その要素に対応するロスを7大ロスの分類から見つけます。たとえば「時間稼働率が低い」なら故障・段取り・調整ロスのどれが主因かを確認します。


Step 5:施策前後のOEEを比較して効果を検証する
改善施策を実施したら、1か月後のOEEを施策前と比べます。数値が改善されていれば対策が機能した証拠であり、変わらなければ原因の特定がズレていた可能性があります。


このサイクルを継続的に回すことで、OEEは確実に改善していきます。前期比2〜5%の向上を目標に、小さな改善を積み重ねることが現場では現実的な進め方です。


収納・工具管理の観点から段取りロスを減らしたい現場には、定位置管理(モノの置き場を決めて表示する管理手法)の導入が有効です。工具や治具が決まった場所に収納されていれば、段取りのたびに「道具を探す時間」が発生しません。こうした収納の工夫ひとつが、段取りロスを月単位で数十分単位で削減する事例もあります。これは覚えておけばOKです。


OEEの改善ステップと調査データに基づく詳細な解説はこちらもご参考に。


OEEとは?設備総合効率の計算式・7大ロス・改善ステップを解説(八千代ソリューションズ)