

実はレゾルバーを「古い技術」と思って無視すると、最新の収納自動化設備の導入コストが30%以上高くなることがあります。
レゾルバー(Resolver)とは、回転体の角度位置や回転速度をリアルタイムで検出するための電磁式センサーです。モーターの軸に取り付けて使用し、「今、軸が何度の位置にあるか」を電気信号として出力します。つまり「位置を正確に測る装置」です。
仕組みの核心は電磁誘導にあります。レゾルバーの内部にはローター(回転部)とステーター(固定部)があり、ローターが回転すると、その角度に応じてステーター側のコイルに誘起される電圧の大きさが正弦波・余弦波として変化します。この2つの波形の比率を計算することで、軸の絶対角度を0.01度単位という高精度で算出できます。
一般的な家電のモーターにはこうした精密な位置検出機能は必要ありませんが、産業用ロボットや自動化機械では「どの位置で止まるか」が製品の品質に直結します。精度が命です。レゾルバーは100℃を超える高温や激しい振動のある環境でも安定して動作できるよう、可動部分が非常にシンプルな構造で設計されています。
日本電産(現ニデック)や多摩川精機などの国内メーカーが高精度レゾルバーを製造しており、自動車のEV駆動モーターや産業用サーボシステムに広く採用されています。自動倉庫の搬送装置や収納ラックの昇降機構にも応用されており、現代の収納自動化インフラを支える縁の下の力持ちといえます。
多摩川精機:レゾルバー製品ページ(レゾルバーの構造・種類・用途の詳細あり)
レゾルバーの動作原理を理解するには、電磁誘導の基礎を知ることが助けになります。レゾルバーの一次側(ローター)には励磁コイルがあり、ここに交流電圧(励磁電圧)を与えます。このとき二次側(ステーター)には、回転角度θ(シータ)に応じて以下の2つの電圧信号が出力されます。
この2信号の比率(arctan計算)を取ることで、0°〜360°の絶対角度が1回転分すべて検出できます。計算は難しく見えますが、実際には「R/Dコンバーター(レゾルバー/デジタルコンバーター)」と呼ばれるIC回路が自動的に処理します。これが条件です。
信号処理をR/Dコンバーターに任せることで、マイコンやサーボドライバーはデジタル値として角度データを受け取るだけで済みます。これは使えそうです。分解能は製品によって異なりますが、一般的な産業用レゾルバーでは12〜16ビット、つまり4,096〜65,536分割で1回転を測定できます。16ビットの場合、1回転360°を65,536等分するため、約0.0055°という非常に細かい単位での位置検出が可能です。これはA4用紙の厚さよりはるかに小さい変位を軸の角度として捉えられるイメージです。
励磁周波数は通常400Hz〜10kHzの範囲で使用されます。周波数が高いほど応答速度が上がりますが、ノイズの影響も受けやすくなります。用途や設置環境に応じて最適な仕様を選ぶことが重要です。
レゾルバーと混同されがちなのが「エンコーダー」です。どちらも角度・回転を検出するセンサーですが、原理と得意な環境がまったく異なります。
| 項目 | レゾルバー | エンコーダー |
|---|---|---|
| 検出方式 | 電磁誘導(アナログ) | 光学式・磁気式(デジタル) |
| 耐熱性 | ◎(150℃以上も対応可) | △(高温に弱いものが多い) |
| 耐振動・耐衝撃 | ◎(構造がシンプル) | △(光学ガラスが割れる場合あり) |
| 耐油・防塵 | ◎ | △〜○(製品による) |
| 分解能 | ○(〜16bit) | ◎(〜23bit以上も) |
| コスト | やや高め | 幅広い(安価なものも多い) |
| 信号処理 | R/Dコンバーター必要 | 直接デジタル出力が多い |
エンコーダーはデジタル信号をそのまま出力できるため、取り扱いが簡単で低コストな製品が多いのが利点です。しかし、光学エンコーダーの場合は内部のガラスディスクが振動で破損するリスクがあり、工場のプレス機など振動の激しい環境では使いにくいです。厳しいところですね。
一方、レゾルバーは内部に壊れやすい部品がないため、振動・衝撃・高温・油まみれの過酷な環境でも10年以上安定稼働する実績があります。自動車のEVモーター(エンジンルームに近い高温環境)や、鉄鋼プラントの圧延ロールなど、エンコーダーでは耐えられない場所で圧倒的な強みを発揮します。
収納自動化システムの設計段階では、設置場所の温度・振動・粉塵の状況をまず確認し、それに合わせてレゾルバーかエンコーダーかを選ぶことが大切です。確認することが第一歩です。
オムロン技術解説:エンコーダーの種類と選び方(エンコーダーとの比較検討に役立つ公式ガイド)
レゾルバーにはいくつかの種類があり、用途や取り付け方式によって選ぶべきタイプが変わります。代表的な分類を以下に整理します。
ブラシレス型はメンテナンスコストの観点から特に注目されています。自動倉庫や収納搬送装置では、24時間365日稼働するケースも珍しくありません。そのような環境でブラシ型を使うと、年に数回のブラシ交換が必要となり、1回あたりの部品代・工賃を含めると数万円のコストが発生することがあります。ブラシレス型ならこのコストをほぼゼロにできます。
VR型は多極レゾルバーとも呼ばれ、たとえば16極タイプでは1回転あたり16回の電気的サイクルが発生するため、実質的な分解能が大幅に向上します。単純な1極タイプと比べて16倍の精度で角度を検出できるイメージです。多極化が精度向上の鍵です。
収納システムの自動化設計で使用するモーターのスペックシートにレゾルバーの仕様が記載されている場合、「何極か」「ブラシレスか否か」を確認することで、メンテナンス計画の精度が上がります。
収納に関心のある方が「レゾルバー」という言葉に出会うのは、主に自動倉庫・自動収納システム(AS/RS:Automated Storage and Retrieval System)の文脈です。これらのシステムでは、棚の昇降台(スタッカークレーン)や水平搬送台車が毎秒数メートルという高速で動き、ミリ単位の精度で目的の棚番地に停止しなければなりません。
この「高速+高精度の停止」を実現するために、駆動モーターにレゾルバーが組み込まれています。レゾルバーが毎秒数千回の頻度で軸の角度を測定し、サーボドライバーにフィードバックすることで、スタッカークレーンは±2mm以内の精度で目標位置に停止できます。これが基本です。
たとえば、高さ20m・横幅100mの大型自動倉庫では、1台のスタッカークレーンが1日あたり300〜500回の入出庫動作を行います。1回の動作ごとに正確な位置決めが求められ、少しでもズレが蓄積すると商品の取り出しミスや棚への衝突が発生します。レゾルバーはこの膨大な繰り返し動作に耐えながら、長期間にわたって精度を維持できる数少ないセンサーの一つです。
また、最近では家庭用・オフィス用の電動収納ユニット(電動昇降デスク、電動収納棚、クローゼット自動仕分け機など)にもサーボモーターが使われるケースが増えており、高機能製品の中にはレゾルバーやエンコーダーを内蔵したものも登場しています。意外ですね。収納の「スマート化」が進む中で、レゾルバーの知識は設備選定や導入計画にも役立つ知識になりつつあります。
ダイフク:自動倉庫システム(AS/RS)製品ページ(スタッカークレーンの実際の動作仕様・精度要件を確認できる)
レゾルバーの選定では、本体の仕様だけでなく「信号ケーブルの取り回し方」が精度に大きく影響するという事実はあまり知られていません。これは見落とされがちな盲点です。
レゾルバーはアナログ信号(正弦波・余弦波)を出力するため、ケーブルが電磁ノイズの強い環境(インバーター装置の近くなど)を通ると、信号に乗るノイズが大きくなり、角度検出の誤差が生じます。具体的には、シールドなしケーブルをインバーターケーブルと並走させた場合、角度誤差が0.5〜1.0°程度増大するケースが報告されています。
また、レゾルバーの取り付けアライメント(同軸精度)も重要なポイントです。レゾルバーのローター軸とモーター軸の中心がわずかにずれるだけで、1回転に1回の「電気的誤差」(1X誤差と呼ばれる)が発生します。カップリング選定には注意が必要です。
自動倉庫や収納搬送設備の新規導入・リニューアル時には、レゾルバー本体の仕様だけでなく、配線計画と取り付け精度管理をセットで確認することをおすすめします。仕様書だけでは判断できない部分です。機器メーカーや専門のFAエンジニアに事前相談することで、導入後のトラブルを未然に防ぐことができます。
オムロン技術解説:サーボシステムのノイズ対策(配線ノイズがフィードバック精度に与える影響と具体的対策を解説)