

タンスを「一台、二台」と数えていると、収納のプロに見えません。
タンスを数えるとき、多くの人が「一台、二台」と言っています。それは日常会話では通じますが、正式な日本語としては正しくありません。
タンスの正式な数え方は「一棹(ひとさお)・二棹(ふたさお)・三棹(みさお)」です。助数詞として「棹(さお)」を使うのが伝統的かつ正式な表現です。これは文化庁も認める日本語の助数詞のひとつで、タンスを数える際の基本単位として長く使われてきました。
「棹」という言葉は、もともと竹の枝を取り除いた細長い棒を指す語です。川を渡るときに使う竹竿や、物干し竿の「さお」と同じ言葉です。タンスと棹がどう結びついたのかというと、そこには江戸時代の歴史が深く関わっています。
つまり「棹」が基本です。
ちなみに「棹」という漢字の読み方は「さお」、1つは「いっさお(一棹)」または「ひとさお」とも読みます。2つは「ふたさお(二棹)」、3つは「みさお(三棹)」です。ふだんあまり使わない読み方なので、最初は戸惑うかもしれませんが、一度覚えれば迷うことはありません。
「棹だけ覚えておけばOKです。」
数え方単位辞典《公式》/「箪笥」の項目(正式な助数詞「棹」の説明あり)
「なぜタンスを棹と数えるのか?」という問いに答えるには、江戸時代初期の歴史を知る必要があります。意外にも、この数え方の裏には約10万人が犠牲になったともいわれる大惨事が関係しているのです。
タンスが普及する前、江戸時代初期の庶民が衣類や貴重品を収納していたのは「長持(ながもち)」と呼ばれる長方形の木箱でした。急いで持ち出せるように車輪をつけた「車長持(くるまながもち)」が当時の主流で、引っ越しや火事の際には便利に使われていました。
ところが1657年(明暦3年)、江戸の約6割を焼き尽くした「明暦の大火」が起こります。逃げる住民が一斉に車長持を路地へ転がして避難したため、道が完全に塞がれてしまいました。身動きが取れなくなった人々が巻き込まれ、この火事の死者数は10万人を超えたとも伝えられています。
この大惨事を教訓に、江戸幕府は車長持の製造を禁止しました。そこで職人たちが考えたのが、タンスの両側面に「棹通し金具」を取り付け、そこに長い棒(棹)を通して2人で担ぎ上げる方法です。車輪ではなく人の手で運ぶことで、路地を塞がずに素早く避難できるようになったのです。
この構造がタンスに引き継がれ、「棹を通して運ぶもの=一棹」という数え方が定着しました。これが原則です。
現代のタンスに棹通し金具はついていませんが、数え方だけが江戸の記憶を今日まで伝えています。収納家具を「一棹」と呼ぶとき、その言葉の中には360年以上前の教訓が宿っているというわけです。
府中家具工業協同組合「箪笥マメ知識」/明暦の大火と箪笥の歴史的な関係について詳しく解説
「棹」が正式な単位とはいえ、現代では場面によって複数の数え方が使われます。どの単位をいつ使うかを知っておくと、会話や書類で迷わなくなります。
| 数え方 | 読み方 | 使うシーン | 例文 |
|---|---|---|---|
| 棹(さお) | ひとさお・ふたさお | 和箪笥・伝統的な場面・正式な書き言葉 | 「桐タンスを一棹持っている」 |
| 台(だい) | いちだい・にだい | 日常会話・家具販売・現代的な家具 | 「洋服タンスを一台購入した」 |
| 点(てん) | いってん・にてん | 骨董・アンティーク・美術品として扱う場合 | 「江戸時代の箪笥が一点入荷した」 |
| 組(くみ) | ひとくみ・ふたくみ | 婚礼家具・セット販売 | 「婚礼タンスを一組そろえた」 |
日常会話では「台」で十分です。家具店でスタッフと話すときも「一台」と言えば通じます。ただし和タンスや桐タンスを格式ある場面(贈り物・証書・婚礼の目録など)で表現するときは「一棹」を使うと正確です。
婚礼タンスは昔から「整理箪笥・衣装箪笥・洋服箪笥の3点セット」で揃えるのが標準とされていました。このセット一式をまとめて「一組」と数えます。単品であれば「一棹」や「一台」で問題ありません。
骨董市やアンティークフェアでは、タンスは生活家具ではなく芸術品として扱われるため「一点」という表現が自然です。オークションカタログなどにも「一点のみ出品」と記載されることが多く見られます。
これが条件です。使う場面に合わせて選ぶだけで、知識として特別難しいことはありません。
数えかた・いろいろ辞典「たんすの数え方は棹?台?正しい助数詞の使い分けを徹底解説」
実は「棹」という単位はタンスだけに使われるわけではありません。一見まったく関係がないように見えるものが、同じ「棹」で数えられています。これは意外ですね。
代表的なのは「羊羹(ようかん)」です。羊羹も「一棹・二棹」と数えます。ただしその由来はタンスとは全く異なります。羊羹を作る際に使う流し型が「舟(ふね)」と呼ばれていたため、船を操る「棹(さお)」に由来するという説が有力です。虎屋など老舗和菓子店の資料でもこの数え方が使われています。棒状にして作る和菓子を総称して「棹物(さおもの)」「棹菓子(さおがし)」と呼ぶのもこの慣習からです。
もうひとつが「三味線(しゃみせん)」です。三味線も「一棹・二棹」と数えます。これは三味線本体の細長い棹(ネックの部分)がそのまま由来になっています。
タンス・羊羹・三味線、この3つはすべて「棹」で数えますが、由来はそれぞれ別物です。
それぞれまったく異なる文脈から同じ単位に行き着いている点が、日本語の助数詞の面白さです。収納にこだわる人ほど「なぜ?」と掘り下げる習慣がありますが、この知識は雑談の場でも使えます。
虎屋文庫「羊羹の数え方」(和菓子の「棹」という単位の歴史的記録と由来)
「一棹」という単位を使いこなすなら、タンスにどんな種類があるかを知っておくと収納計画が立てやすくなります。棹の数でどこに何を収めるか整理するのが、収納を極める第一歩です。
タンスの種類は収納するものによって細かく分かれています。
たとえば整理箪笥(一棹)の引き出し容量は、大型モデルだと幅90cm×奥行き45cm程度。畳んだTシャツを1枚の引き出しにおよそ10〜15枚収納できます。家族4人分の夏物であれば、引き出し5〜6段で収まる計算になります。
桐タンスは防湿性・防虫性に特に優れており、着物の保管には桐タンス一棹を専用にするのが理想とされています。桐タンス一棹の価格は職人仕立ての国産品で30万〜100万円以上になるものもあり、大切な衣類を長期保存する収納投資としての側面もあります。
これは使えそうです。収納計画を立てる際に「何棹必要か」を考えると、部屋のスペース配分もしやすくなります。
Wikipedia「箪笥」(箪笥の種類・歴史・助数詞について網羅的に解説)

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