

定量発注方式は「需要が安定しているものに使えばいい」というのは思い込みで、発注点を1個ずれて設定するだけで年間の無駄コストが数万円単位で膨らむことがあります。
在庫管理の世界では、大きく分けて「定量発注方式」と「定期発注方式」の2種類が使われています。この2つは名前が似ているため混同されがちですが、発注の「軸」がまったく異なります。
定量発注方式は、在庫が一定のライン(発注点)まで減った時点で、あらかじめ決めておいた「一定量」を発注する方法です。発注するタイミングは在庫の減り具合によって変わりますが、発注する量は毎回変わりません。シンプルに言えば、「在庫がここまで減ったら、これだけ補充する」という仕組みです。
一方、定期発注方式は「毎週月曜日」「毎月25日」のように、発注するタイミングをあらかじめ固定しておく方法です。そのタイミングが来るたびに在庫を確認し、目標在庫量まで補充するために必要な数量を計算して発注します。こちらは発注タイミングが一定で、発注量は毎回変動します。
つまり、両者の違いは下記のようにまとめられます。
| 比較項目 | 定量発注方式 | 定期発注方式 |
|---|---|---|
| 発注タイミング | 不定期(在庫が発注点を下回ったとき) | 定期的(毎週・毎月など固定) |
| 発注量 | 一定(毎回同じ量) | 変動(そのつど計算) |
| 向いている品目 | 需要が安定・単価が安い | 需要が変動・単価が高い |
| 管理の手間 | 比較的少ない | 毎回計算が必要 |
定量発注が向いているのは、消耗品のように需要が安定しているものです。定期発注は、季節や需要の波が大きい商品に向いています。これが基本です。
定量発注方式とは?計算方法や定期発注方式との違いをわかりやすく解説(マネーフォワード)
定量発注方式を実際に運用するには、「発注点」と「安全在庫」を正確に設定することが欠かせません。この2つがずれると、欠品か過剰在庫かのどちらかに必ず傾きます。
まず「発注点」の計算式は次のとおりです。
発注点 =(1日の平均使用量 × 発注リードタイム)+ 安全在庫
発注リードタイムとは、発注してから実際に商品が届くまでの日数のことです。たとえば1日に10個使う商品があり、届くまでに5日かかる場合、リードタイム中に50個消費されます。そこに安全在庫を20個加えると、発注点は70個となります。在庫が70個になった時点で発注をかければ、届くころには在庫がちょうど20個(安全在庫)残っている計算です。
次に、「安全在庫」の計算式です。
安全在庫 = 安全係数 × 使用量の標準偏差 × √リードタイム
安全係数は欠品をどこまで許容するかで変わります。欠品率5%まで許容するなら1.65が使われます。標準偏差とは、1日あたりの使用量のブレ幅のことです。たとえばトイレットペーパーが毎日ほぼ同じペースで使われる家庭なら標準偏差は小さく、安全在庫は少なく設定できます。
具体的な数字で見てみましょう。
- 1日の平均使用量:10個
- リードタイム:5日
- 安全係数:1.65(欠品率5%)
- 標準偏差:3個
このとき、安全在庫 = 1.65 × 3 × √5 ≒ 約11個となります。
発注点は(10 × 5)+ 11 = 61個です。在庫が61個になったら発注、という具合に管理できます。
「欠品率5%」は、つまり100回中5回は欠品しても許容できる、という水準を意味します。
定量発注方式とは?定期発注方式との違いや発注点の計算方法を解説(スクロール360)
定期発注方式では、発注タイミングが来るたびに「今回何個発注するか」を計算します。一般的に使われる式は次のとおりです。
発注量 =(在庫調整期間 × 予想消費量)− 現在の在庫量 + 安全在庫
この「在庫調整期間」は、次回の発注サイクルとリードタイムを合算した期間のことです。たとえば月1回発注(30日サイクル)でリードタイムが5日なら、合計35日分の消費に対応できる在庫を確保するように発注量を計算します。発注量が毎回変わることで、需要の増減にも細かく対応できます。厳しいところですね。
では、どちらの方式を選ぶべきかの判断基準をまとめると、次のようになります。
📌 定量発注が向いているケース
- 毎日ほぼ同じペースで消費される消耗品(洗剤、ティッシュ、トイレットペーパーなど)
- 単価が比較的安いもの
- 長期間保管が可能なもの
- ABC分析でBランク・Cランクに分類されるもの
📌 定期発注が向いているケース
- 季節・需要変動が大きいもの
- 単価が高く、過剰在庫のリスクが大きいもの
- 欠品した際の機会損失が深刻なもの(ABC分析のAランク商品)
企業での在庫管理ではABC分析との組み合わせが効果的です。売上貢献度が高いAランク品は定期発注、Bランク・Cランク品は定量発注で管理するのが一般的な考え方です。これが基本です。
定量発注方式のメリット・デメリット、定期発注方式との使い分け(SmartF by ネクスタ)
定量発注方式のもう一つの重要な要素が「経済的発注量(EOQ:Economic Order Quantity)」です。これが意外と見落とされているポイントで、知らないと毎回の発注コストと在庫維持コストの両方が膨らみ続けます。
EOQとは、発注コストと在庫保管コストの合計が最も小さくなる「1回あたりの最適発注量」のことです。計算式は次のとおりです。
EOQ = √(2 × 1回あたりの発注コスト × 年間需要量 ÷ 年間在庫保管コスト)
たとえば以下の条件で計算してみます。
- 1回あたりの発注コスト:1,000円
- 年間需要量:3,650個
- 単価:500円
- 在庫費用率:20%
このとき年間在庫保管コスト = 500円 × 0.20 = 100円/個。
EOQ = √(2 × 1,000 × 3,650 ÷ 100)= √73,000 ≒ 270個
1回あたり270個発注するのが最もコスト効率が高い、という計算結果です。もし100個ずつ発注していれば発注回数が増えて発注コストが増大し、500個ずつ発注していれば倉庫の保管コストが膨らみます。これは使えそうです。
家庭の日用品のスケールではここまで精密な計算は必要ありませんが、考え方として「多すぎず少なすぎない量を1回で買い足す」という原則は同じです。まとめ買いで節約できているように見えても、保管スペースや使用期限によるロスが上回っているケースがあるのはこのためです。
ここが、検索上位の記事にはほとんど書かれていない独自の視点です。定量発注と定期発注は企業の在庫管理の用語ですが、整理収納の専門家はすでにその考え方を家庭に持ち込んでいます。
実際に整理収納アドバイザーとして年間250件以上の整理相談を行っている専門家は、企業の5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の手法をそのまま家庭に応用することを推奨しています。その中核にあるのが「最低在庫(安全在庫)」と「発注点」の設定です。
家庭版の定量発注を実践する方法は、次のように整理できます。
✅ ステップ1:ストック品の「1か所集約」
日用品が家の中に散らばっていると在庫を正確に把握できません。定量発注方式が機能するには在庫の「見える化」が前提です。収納棚などにストック専用スペースを設け、全品目を一括管理します。
✅ ステップ2:品目ごとに「最低在庫量(安全在庫)」を決める
「この数より下になったら補充する」という発注点を品目ごとに設定します。例えばトイレットペーパーなら「残り2ロール」、洗剤なら「残り1本」が多くの家庭での目安です。
✅ ステップ3:ラベリングで発注点を可視化する
ケースの前面に品名と最低在庫数をラベリングします。誰が見ても「あと何個あれば安心か」がわかるようにしておくと、家族全員が在庫管理に参加できます。
✅ ステップ4:「残り1個になったら買い足す」を家族ルールにする
これが最も重要なルール化です。発注点(残り1個)を超えた時点でメモに書き、次の買い物時に補充します。購入数はあらかじめ決めておく(定量)ため、「いくつ買うか悩む」時間も消えます。
この仕組みが機能すると「二重買い」「買い忘れ」「過剰ストック」の3つを同時に防ぐことができます。1人あたりの日用品費は月約5,000〜7,000円ですが、ストック管理を改善するだけで過剰購入分のロスを年間で数千円単位で減らせます。つまり節約です。
また、定期発注型の家庭管理としては「月1回まとめて棚を確認し、不足分を計算して購入する」方法もあります。需要の波が読みやすいペーパー類や調味料には定量発注型、季節で消費量が変わる飲料や化粧品には定期発注型と使い分けると、より無駄のない家庭収納が実現します。
日用品のストックの買いすぎや買い忘れを防ぐ片付けプロのコツ(リンナイStyle)