寸法公差h7の基本と穴基準はめあいの選び方と実践

寸法公差h7の基本と穴基準はめあいの選び方と実践

寸法公差h7の基本と穴基準はめあいの選び方と実践

「公差をきつくすれば精度が上がるから安心」は間違いで、H7より1ランク厳しい公差にするだけで加工コストが数倍に跳ね上がり、予算オーバーで部品を作り直す羽目になることがあります。


この記事の3つのポイント
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h7の意味と許容差の読み方

「H7」は穴側の公差記号。大文字=穴、数字=精度の範囲を示し、JIS表から実寸法をすぐに読み取れます。

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H7/g6などのはめあい組み合わせ

使用目的に応じた組み合わせ選定が重要。「動かす」「固定する」「位置決め」で最適な相手公差が変わります。

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公差選定とコストの関係

H7は加工しやすくコスト的にも優秀。不要に精度を上げると加工費が跳ね上がるため、目的に合った選定が肝心です。


寸法公差h7とは何か|記号の意味と許容差の基本

図面を見ていると「Φ20 H7」「Φ30 h7」のような記号が頻繁に登場します。これが「はめあい公差」と呼ばれるもので、機械部品の穴や軸が「どのくらいの精度で加工されるべきか」を一言で伝えるための記号体系です。


まず記号の構造を整理しましょう。アルファベット部分と数字部分、それぞれに明確な役割があります。


  • 🔡 アルファベットが大文字(H など):「穴」の公差を表す。Hは基準寸法と同じか、それより大きい側に公差が開く穴を示す。
  • 🔡 アルファベットが小文字(h など):「軸」の公差を表す。hは基準寸法と同じか、それより小さい側に公差が広がる軸を示す。
  • 🔢 数字(7 など):IT公差等級(International Tolerance Grade)と呼ばれる精度の「範囲の広さ」を示す。数字が小さいほど許容範囲が狭く、加工精度が高くなる。


つまり「H7」とは「穴」で「IT7等級の精度範囲」を持つ、という2つの情報がセットになった記号です。


具体的な数値を見てみましょう。例えばΦ30 H7の場合、JIS B 0401の公差表を参照すると、基準寸法30mmに対してH7の許容差は「上の寸法許容差:+21μm、下の寸法許容差:0」となっています。これは30.000mmから30.021mmの間に穴の直径が収まっていれば合格、という意味です。「0.021mm」はちょうど髪の毛の太さ(約0.08mm)の約4分の1に相当する、非常に細かい寸法です。つまり「H7なら問題ありません。」


同じΦ30でも基準寸法の区分が変わると数値も変わります。基準寸法が50mm超・80mm以下であれば、H7の許容差は「+30μm/0」になります。公差表を手元に置いておくことが基本です。


三木プーリ:はめあい公差一覧表(JIS B 0401抜粋)|穴・軸それぞれの許容差が一覧で確認できる実務向け公差表


寸法公差h7のはめあいの種類|すきまばめ・しまりばめ・中間ばめ

H7という公差は単独で成り立つものではありません。必ず「相手の軸がどの公差を持っているか」との組み合わせで初めて意味が決まります。この「穴と軸の組み合わせ関係」をはめあいと呼び、大きく3種類に分類されます。


🔵 すきまばめ(Clearance fit)

穴の最小寸法が軸の最大寸法よりも常に大きい関係です。必ず「すきま(隙間)」が生まれます。手でスルッと入れられる感触で、スライドするシャフトや回転するベアリングシャフトの取り付けなど、「動かしたい場所」に使います。H7/g6やH7/f7がこの代表例です。


🟡 中間ばめ(Transition fit)

すきまが生じることもあれば、しめしろ(軸が穴より大きい状態)が生じることもある関係です。銅ハンマーで「コンコン」と叩けば入る程度の"しっくりばめ"で、位置決めピンや頻繁には動かさない精密部品に使われます。H7/k6やH7/js6がこの例です。


🔴 しまりばめ(Interference fit)

計算上、軸が穴より常に大きい関係です。プレス機での「圧入」や穴を加熱して広げる「焼きばめ」が必要なギチギチの状態で、絶対に動かしたくない場所を強固に固定します。H7/p6やH7/r6がこの例です。


これが基本の3分類です。


| はめあいの種類 | 代表的な組み合わせ | 現場の感触 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| すきまばめ | H7/g6、H7/f7 | スルッ・ヌルッ | 回転軸、スライド部品 |
| 中間ばめ | H7/k6、H7/js6 | コンコン・ピタッ | 位置決めピン |
| しまりばめ | H7/p6、H7/r6 | ギチギチ・圧入 | 動かさない固定部品 |


ミスミ:はめあい選択の基礎(PDF)|穴基準・軸基準それぞれの公差域の相互関係と常用するはめあいの組み合わせ一覧


寸法公差h7の表の読み方|JIS規格による許容差の確認方法

実際の加工現場や設計業務では、「Φ20 H7の穴を作る場合、実際の寸法範囲は何mmから何mmか」をすぐに確認できる必要があります。これはJIS B 0401(ISO 286と同等)に基づく公差表から読み取ります。


手順はシンプルです。まず基準寸法の区分行を探し、次にアルファベット+数字(公差域クラス)の列を見て、上下の許容差を読む——この3ステップだけです。


【実践例1:Φ15 H7の穴の場合】

公差表で「14を超え18以下」の行を選びます。H7列を見ると「上:+18μm、下:0」とあります。実際の穴の寸法範囲は15.000mm〜15.018mmです。絶対に15.000mm未満にはならない「下限ゼロ」が穴基準H公差の大きな特徴です。


【実践例2:Φ20 h7の軸の場合】

公差表で「18を超え24以下」の行を選びます。h7列を見ると「上:0、下:−21μm」とあります。実際の軸の寸法範囲は19.979mm〜20.000mmです。絶対に20.000mmを超えないのがh公差の特徴です。


この「穴はプラス方向のみ、軸はマイナス方向のみ」という基本ルールを押さえておけば、公差表の読み方で迷うことはほとんどありません。覚えておけばOKです。


読み取った数値は、ノギスマイクロメーターによる実測値と照らし合わせて合否判定に使います。例えば、リーマ加工でH7の穴を仕上げた後、内径測定器で計測し「15.000mm〜15.018mm」の範囲内に入っているかを確認する流れです。


JIS B 0401-1:2016(規格本文)|公差クラスの決定方法・穴基準はめあいの注記など規格の詳細確認に有用


寸法公差h7が多用される理由|加工性・互換性・コストのバランス

機械設計の現場で「穴の公差といえばH7」と言われるほど、この公差は広く使われています。理由は単純に「優れているから」ではなく、複数の現実的なメリットが重なっているからです。


① 加工のしやすさ

H7の公差範囲は、一般的なリーマ加工や精密ボール盤、NC旋盤を使った通常の切削・研削作業で十分に達成できる精度です。特殊な工具や超精密機械を用意しなくても、安定した量産が可能です。「加工できる工場が多い」ことも選ばれる理由の一つです。


② 標準部品との互換性

市販のベアリング(玉軸受け)やブッシュ、ノックピンは、その取り付け穴をH7で設計することが国際的に標準化されています。JIS B 0401やISO 286に基づく規格のため、設計者が「H7」と指示するだけで、世界中どのメーカーの標準部品とも互換性が取れます。互換性が保てるのは大きなメリットです。


③ コストと精度のバランス

これが最も重要なポイントです。H7より1段厳しいH6、さらに厳しいH5になると、公差幅が狭くなる分だけ加工時間が長くなり、不良品のリスクも上がり、工具の消耗も激しくなります。Φ30の穴を例にとると、H7の公差幅は21μmですが、H6になると13μmと約38%も狭くなります。加工コストは精度に比例して高くなりますが、H7ならその増加幅が抑えられます。


④ 「穴基準方式」の採用

機械設計では「穴基準方式」、つまり穴の公差を基準に固定し、軸側を調整して目的のはめあいを作るやり方が主流です。穴は一度加工すると修正が難しいのに対し、軸は旋盤で細くするのが容易なためです。H(大文字、穴)が基準として使いやすいのが原則です。


寸法公差h7の公差選定ミスが招くコスト損失|知らないと損する実務の落とし穴

ここは検索上位の記事があまり深く触れない、実務での「お金の話」です。寸法公差の選定ミスは、直接的な加工費の無駄遣いにつながります。


「とりあえずH6にしておこう」の危険性

設計者が公差の意味をよく理解せずに「精密な方が安心だから」とH7よりきついH6やH5を指定するケースは珍しくありません。しかし加工側からすると、H6はH7に比べて公差幅が約4割狭く、それに対応した砥石仕上げや精密リーマ工程が必要になります。コストは無視できません。


具体的なイメージとして、Φ50の穴を100個加工する場合、H7指定ならリーマ加工で対応できますが、H6になると研削仕上げが必要になることがあり、1個あたりの加工費が1.5〜2倍程度上がるケースも現場では起こります。100個なら差額は数万円規模になることも珍しくないのです。痛いですね。


「公差なしでいい」の誤解

逆に「どうせ収納棚の金具程度だから公差なんて不要」と公差を指定しない場合も問題です。公差指定がない図面には「一般公差」(JIS B 0405)が自動的に適用されますが、これは機械加工の一般公差(m級:±0.1〜±0.5mm程度)であり、H7(±0.01mm台)とは桁が違います。組み立て時に部品が入らない・ガタつくといったトラブルの原因になります。


「必要な場所に、必要な公差を」が鉄則です。


以下のような考え方で選定すると、コストと品質のバランスが取りやすくなります。


  • ⚙️ 動かす場所(回転・スライド):H7/g6またはH7/f7(すきまばめ)
  • 📌 位置決めが必要な場所:H7/k6またはH7/js6(中間ばめ)
  • 🔩 絶対に動かさない固定部:H7/p6またはH7/r6(しまりばめ)
  • 💡 精度が特に不要な場所:一般公差(m級・c級)で十分


加工依頼の前に「この穴は何のためにあるか」を一言確認する習慣が、費用ロスと作り直しの9割を防いでくれます。


寸法公差h7の独自視点|収納・インテリア家具のDIYとh7の意外な接点

機械設計の話が続きましたが、実は「収納」や「家具づくり」の世界にもH7の考え方は静かに息づいています。知っておくと棚やラックの設計精度が格段に上がります。


棚のダボ穴とはめあい公差の意外な関係

木製棚の棚板高さ調整に使う「ダボ(棚受けピン)」と「ダボ穴」は、まさに「軸と穴のはめあい」そのものです。例えば直径5mmのスチールダボを木材に穴あけして差し込む場合、穴が5.3mm以上あると棚板がガタつき、4.9mmだとダボが入りません。これはすきまばめ(H7/g6的な発想)の考え方と全く同じです。


収納ユニットの棚柱(レール)と棚受けブラケットの「遊び」

IKEAのビリーシリーズやニトリ可動棚ユニットなど、市販の棚システムは棚受けブラケットが脱着できるよう意図的に「わずかな遊び(すきま)」が設計されています。これを無視して「ぴったりゼロすきま」で設計すると、温湿度変化による木材の伸縮でブラケットが外れなくなることがあります。スライドや着脱を前提とした部分には「意図的なすきま」が必要という考え方は、H7/g6が「動く場所には隙間が必要」という原則と同一です。


金属ラックのポールと棚板穴の精度

スチールラックのポールと棚板のポール穴は、市販品では概ね「0.2〜0.5mm程度のすきま」を持つよう設計されており、これはH9〜H10程度の公差感覚に相当します。DIYでメタルラックに棚板を自作増設する場合、ポール径を測定して穴径を「ポール径+0.3mm程度」に設定するとスムーズに取り付けできます。これが使えそうです。


精密機械だけの話ではありません。収納・家具の「はまり具合」の裏にも、h7が象徴する「必要な場所に必要なすきまを作る」という設計思想は生きています。「公差の考え方」を知ることで、棚のガタつきや組み立てのストレスを回避するヒントが得られます。


  • 🪛 ダボ穴のドリル径は「ダボ径+0.1〜0.2mm」を目安にする(すきまばめの発想)
  • 📏 スチールラックのポール穴は「ポール径+0.3mm程度」にすると着脱が容易
  • 🌡️ 木材は温湿度で±0.5mm程度伸縮するため、ゼロすきまは避ける


ミスミmeviy:寸法公差(サイズ公差)の目的と記入方法|公差をつける場所や数値の決め方の考え方を設計思想の観点から解説