

間違った金型材料を選ぶと、金型寿命が本来の10分の1以下に縮んで交換コストが跳ね上がります。
金型材料の中心といえば、やはり工具鋼です。工具鋼とは、鉄と炭素を主成分としながら、クロム(Cr)・モリブデン(Mo)・タングステン(W)・バナジウム(V)などの合金元素を加えて、硬度・耐摩耗性・靭性を高めた特殊鋼のことを指します。工具鋼が基本です。
金型向けの工具鋼はJIS規格でいくつかに分類され、特に代表的なのが「SKD11」と「SKD61」の2種類です。この2つは名前が似ていますが、用途が全く異なります。
| 鋼種 | 分類 | 主な用途 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| SKD11 | 冷間金型用合金工具鋼 | 冷間プレス金型・打ち抜き金型 | 耐摩耗性・寸法精度に優れる。焼入れ後の硬度はHRC58〜62程度 |
| SKD61 | 熱間金型用合金工具鋼 | ダイカスト金型・熱間鍛造金型 | 耐熱性・靭性に優れる。焼入れ後HRC50〜56程度 |
| SKH51 | 高速度工具鋼(ハイス鋼) | 小型パンチ・難加工材の金型 | SKD11より靭性が高く、衝撃に強い |
SKD11はいわゆる「冷間ダイス鋼」と呼ばれ、常温(冷間)で材料を打ち抜いたり成形したりする金型に向いています。一方、SKD61は「熱間ダイス鋼」と呼ばれ、500〜700℃以上の高温環境で使われるダイカスト金型などに適した鋼種です。つまり、SKD11とSKD61の使い分けは「温度環境」が判断基準です。
また、SKD11にはひとつ注意点があります。ワイヤカット放電加工で使う場合、一般的に低温焼き戻し(150〜200℃)ではなく高温焼き戻し(500〜600℃)が推奨されますが、標準のSKD11では高温焼き戻しをすると硬度が58HRC程度まで下がってしまいます。そのため、高温焼き戻しでも硬度が落ちないよう改良されたDC53などの改良ダイス鋼が現場で多用されています。これは意外ですね。
参考情報:ミスミ技術情報サイトにてプレス金型材質の選定基準を詳しく解説しています。
金型材料を調べると必ず出てくるのが「プリハードン鋼」という言葉です。聞き慣れない方も多いかもしれませんが、これを知っておくかどうかで金型のコストと納期が大きく変わります。これは使えそうです。
プリハードン鋼(Pre-hardened Steel)とは、鋼材メーカーがあらかじめ熱処理(焼き入れ・焼き戻し)を施した状態で出荷する鋼材のことです。一般的にはHRC28〜45程度の硬度に調整されています。JIS規格には定義がなく、各メーカーが独自のブランド名で販売しています。
| メーカー | ブランド名(代表例) | 特徴 |
|---|---|---|
| 大同特殊鋼 | NAK55 / NAK80 | NAK55は快削性が高く汎用金型向け。NAK80は鏡面磨き性に優れレンズ型などに使われる |
| 日立金属(プロテリアル) | HPM1 / HPM7 | HPM1は汎用向けの標準プリハードン鋼。HPM7は耐食性を強化 |
| 日本高周波鋼業 | KAP65 / KPM30 | KAP65は高硬度プリハードン鋼で耐摩耗性に優れる |
プリハードン鋼の最大のメリットは「焼き入れ不要」で使えること。通常、鋼材は加工後に焼き入れ処理を行いますが、この工程では歪みや変形が生じるリスクがあります。プリハードン鋼ならその工程が不要なので、納期短縮とコスト削減を同時に実現できます。
一方で、プリハードン鋼には硬度の限界があります。HRC45以下が一般的で、超高硬度が必要な精密パンチやダイには向きません。大量生産を前提とした金型なら、焼入れ鋼(SKD11等)や超硬合金の選択が現実的です。プリハードン鋼は中・小ロット金型に最適、と覚えておけばOKです。
生産数量が非常に多くなると、ダイス鋼(SKD11)だけでは寿命面で満足できなくなるケースが出てきます。そのときに選択肢として浮上するのが「高速度工具鋼(ハイス鋼)」と「超硬合金」です。
ハイス鋼(SKH51が代表)は、SKD11と比べて靭性・耐摩耗性・耐衝撃性に優れています。特にステンレス鋼板など難加工材のプレス、または中・厚板の打ち抜きに向いています。SKD11では刃先が欠けてしまうような加工条件でも、ハイス鋼なら安定して使えることが多いです。靭性が条件です。
超硬合金は、炭化タングステン(WC)を主成分に、コバルト(Co)をバインダー(接着剤)として焼結した材料です。ダイヤモンドに次ぐ硬度を持ち、耐摩耗性は工具鋼とは比較になりません。ただし、靭性(粘り強さ)が低く衝撃に弱いという特性があります。
抜き加工での超硬合金の使い分けとして、コニック社などでは次のような方針が一般的です。
また、抜き形状が微細だったり極めて高い寿命を求める場合には、超微粒子超硬合金を選ぶことで、耐摩耗性・抗折力・耐チッピング性をさらに高めることができます。
超硬合金の初期コストはダイス鋼の数倍〜十数倍に及ぶことがあります。しかし、数百万ショットという大量生産現場では、金型交換のダウンタイムや交換費用を考慮すると、トータルコストで逆転するケースは少なくありません。コスト計算は必須です。
参考情報:ミスミが公開しているプレス金型の材質選定ガイドでは、鋼種ごとの選定基準を詳しく確認できます。
金型材料は「何を作るか」だけでなく、「どんな材料を成形するか」によっても最適な鋼種が変わります。同じプラスチック金型でも、成形する樹脂の種類によって鋼材に求められる性質がガラリと違ってきます。つまり用途が条件です。
以下に代表的な用途別の選定基準をまとめます。
| 金型の種類 | 成形材料・条件 | 推奨鋼種の例 | 求められる特性 |
|---|---|---|---|
| プラスチック金型(汎用) | PP・ABS等の汎用樹脂 | S50C・SCM440・SKD61プリハードン鋼 | しぼ加工性・コスト優先 |
| プラスチック金型(鏡面) | PC・PMMA(光学部品) | SUS420J2・析出硬化型鋼 | 鏡面仕上げ性・耐食性 |
| プラスチック金型(難燃材) | PVC・難燃ABS | SUS系・SUS420J2 | 耐食性(腐食性ガス対策) |
| ダイカスト金型 | アルミ・亜鉛合金(高温) | SKD61・その改良鋼 | 耐熱性・耐ヒートチェック性 |
| 冷間プレス金型 | 鋼板・ステンレス板 | SKD11・ハイス鋼・超硬合金 | 耐摩耗性・靭性のバランス |
特に注意が必要なのはPVC(塩化ビニル)や難燃性樹脂を成形する金型です。成形時に腐食性の強い塩素ガスや難燃剤由来のガスが発生するため、通常の工具鋼では錆や腐食で金型が急速に劣化します。このような場合はSUS系ステンレス鋼が必須です。
また、レンズや光学部品のようにCDディスク・DVDディスクを成形するプラスチック金型では、鏡面仕上げ性と耐食性が最重要課題です。SUS420J2が最も広く使われており、ごく微細な傷でも製品に転写されてしまうため、材料の均質性と鏡面加工性の高さが求められます。SUS420J2が原則です。
一方、ダイカスト金型は500〜700℃の溶融アルミや亜鉛と繰り返し接触するため、熱疲労によるヒートチェック(熱亀裂)が大きな課題です。SKD61とその改良鋼(例:DHA1)が主流で、寿命はアルミダイカストで約6万〜15万ショットとされています。
参考情報:ミスミの鋼材選定表では、成形樹脂ごとの推奨鋼種を一覧で確認できます。
金型材料を選ぶ際に、多くの現場で後回しにされがちなのが「コーティング処理」の活用です。実は、材料選定とコーティングをセットで考えることで、金型のパフォーマンスを大幅に引き上げられます。これは独自の視点ですが、非常に重要な知識です。
まず前提として、ミスミの技術情報でも明示されているとおり「軟鋼(S50C等)にコーティングをしてもダイス鋼を越えるようなことはない」という原則があります。コーティングは材料の寿命をさらに伸ばすための「上乗せ手段」であり、素材選定が間違っていれば効果は限定的です。コーティングは補完が条件です。
代表的なコーティングには以下のものがあります。
例えば、SKD11にTiNコーティングを施すことで、コーティングなしと比べて金型寿命が2〜5倍に延びるケースが報告されています。材料コストをSKD11のまま抑えながら、コーティングで寿命を延ばすというアプローチは、中量生産の現場でコストパフォーマンスが高い選択肢となります。
またDLCコーティングは、アルミや樹脂が金型に張り付く「かじりつき」を防ぐ効果が非常に高いため、複雑な形状の射出成形金型や、アルミダイカスト用のスライドコア部分に採用されるケースが増えています。かじりつきで金型が破損するリスクを下げたい場面で確認するべき選択肢です。
参考情報:コニック社の技術ガイドでは、金型材質の選定とコーティング処理の組み合わせについて詳しく解説されています。

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