ダイカスト金型の構造と種類・設計ポイントを徹底解説

ダイカスト金型の構造と種類・設計ポイントを徹底解説

ダイカスト金型の構造を基礎から設計まで徹底解説

収納グッズのアルミ製フレームや棚受け金具は、実は金型1つで数十万個を同時生産できる仕組みから生まれています。


📌 この記事の3つのポイント
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基本構造は「固定型+可動型」

ダイカスト金型は固定型・可動型の2ブロックに分かれ、合わさった空間(キャビティ)に溶融金属を高圧で注入して製品を成形します。

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主型・入子・スライドコアで精度を実現

外枠の「主型」に精密加工された「入子」をはめ込み、複雑形状には「スライドコア(引抜き中子)」を組み合わせることで高精度な製品が生まれます。

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冷却水路の設計が品質と寿命を左右する

金型内部に張り巡らされた冷却水路の配置が、製品の寸法精度・鋳造サイクルタイム・金型寿命を大きく左右します。


ダイカスト金型の基本構造:固定型と可動型の役割


ダイカスト金型は、大きく「固定型」と「可動型」という2つのブロックで構成されています。固定型はダイカストマシンの固定盤に取り付けられ、射出装置と接続される側です。一方の可動型は、金型の開閉動作を担う可動盤に取り付けられており、鋳造が完了すると開いて製品を取り出せる仕組みになっています。


この2つを合わせたとき、内側にできる空間が「キャビティ」です。キャビティに溶融金属(溶湯)を高圧で流し込み、冷えて固まったら可動型を開いて製品を取り出します。これがダイカスト成形の基本的な1サイクルです。


型締め時には、固定型と可動型は百トンをはるかに超える型締力で押し合わされます。これほどの力が必要な理由は、射出時の溶湯が30〜70MPa(メガパスカル)という高圧で注入されるためです。身近なイメージとしては、水道水の水圧が約0.3MPa程度なので、その100倍以上の圧力がかかっているとイメージするとわかりやすいでしょう。型の合わせ面が少しでも緩めば、金属が漏れ出てバリや欠陥品が発生してしまいます。高い型締力は製品精度を守るための絶対条件です。


固定型と可動型が合わさる面を「型分割面(パーティングライン)」と呼びます。製品の外観や寸法精度に直結する重要な設計要素で、ここにはエアベント(空気抜き)やゲート(湯口)も配置されます。型分割面の設計が適切でないと、バリが出やすくなったり、製品の取り出しが困難になったりするため、設計段階での慎重な検討が欠かせません。


参考:日本ダイカスト協会によるダイカスト金型の構造図解
日本ダイカスト協会「ダイカスト金型とその構造」(PDF)


ダイカスト金型の主型と入子の構造:材質の違いが寿命を決める

固定型・可動型はそれぞれ、さらに「主型(おも型)」と「入子(いれこ)」という2層構造になっています。これが分かると、なぜ金型が長持ちするのかが一気に腑に落ちます。


主型は金型の外枠・ホルダーにあたる部分で、入子を固定する役割を担います。溶湯と直接触れることはないため、比較的安価な炭素鋼や鋳鉄(FCD材)が使用されます。一方、入子は主型の内側に取り付けられ、実際に製品の形状を作り出す部位です。溶湯と直に接するため、600℃以上の高温にも耐える熱間工具鋼「SKD61」などの合金工具鋼が使用されます。


SKD61が選ばれる理由は明確です。耐熱性・耐摩耗性・靭性(粘り強さ)のバランスが非常に優れており、急激な温度変化による熱疲労亀裂(ヒートクラック)に対する耐性が高いからです。アルミニウム合金の溶湯温度は約650〜700℃に達しますが、それに繰り返し耐えながら数十万ショット(数十万回の鋳造)を可能にします。1つの金型で数十万個の製品が生産できるというのは、この材料性能のおかげです。


この2層構造には、コスト面でも大きなメリットがあります。入子のみが摩耗・損傷した場合、主型はそのままに入子だけを交換することが可能です。主型から全部作り直すとなると費用が大きく膨らみますが、入子のみの交換であれば補修コストを大幅に抑えられます。つまり入子交換が基本です。


参考:光軽金属工業によるダイカスト金型構造の解説(主型・入子の役割)
光軽金属工業「第32回ダイカストの金型構造について」


ダイカスト金型のスライドコアとアンダーカット処理の仕組み

固定型と可動型の2ブロックだけでは、どうしても成形できない形状があります。それが「アンダーカット」です。アンダーカットとは、金型の開閉方向(上下や前後)に対して引っかかりとなる凸や凹の形状のことで、そのまま型を開いても製品が抜けてきません。


この問題を解決するのが「スライドコア(引抜き中子)」です。スライドコアは、金型の開閉動作に連動して側面方向にスライドする可動部品で、型が開くタイミングに合わせてアンダーカット部分から横に引き抜かれます。これにより、側面に穴があいた形状や、横方向への突起がある複雑な製品でも離型が可能になります。


スライドコアを動かす仕組みは主に2種類あります。一つは「傾斜ピン(アンギュラーピン)」を用いた方法で、型開きの動きを傾斜ピンがスライドコアに伝えて横方向の動きに変換します。もう一つは「コアプラー(油圧シリンダー)」を用いた方法で、より大きな力が必要な場合や、独立したタイミングでスライドを制御したい場合に使用されます。


スライドコアを設けると金型構造が複雑になり、製作コストも上昇します。しかし、複数の部品を溶接・組み立てせずに一体成形できるため、最終的な製造コストは他の加工法より大幅に低くなることが多いです。収納グッズの取っ手や棚受けのような複雑な形状をもつアルミ部品が、低コストで大量に流通できるのは、このスライドコア技術の恩恵といえます。


ダイカスト金型の湯口方案:ランナー・ゲート・オーバーフローの構造

溶湯をキャビティに届けるための「流路設計」は、製品品質を左右する重大な設計要素です。溶湯がどのルートでキャビティに流れ込むかを決めるのが「湯口方案(ゆぐちほうあん)」で、ランナー・ゲート・オーバーフローの3つで構成されます。


ランナーは溶湯をキャビティへと導くための通路(湯道)で、スプルー(鋳込口ブッシュ)から溶湯を受け取りゲートへと流します。ランナーの断面積や長さによって、溶湯の流速や温度が変化するため、均一な充填を実現するための緻密な設計が必要です。


ゲートはランナーとキャビティの境界部分で、溶湯がキャビティに流入する直前の出口にあたります。ゲートの形状・位置・面積が、充填速度・充填方向・乱流の発生有無を決定します。ゲート面積が小さすぎると溶湯の流速が上がりすぎて乱流が起き、気泡を巻き込む「鋳巣(いす)」の原因になります。適切な設計が条件です。


オーバーフローは、キャビティに最初に流れ込む「先行溶湯」を受け止めるための余剰空間です。先行溶湯は空気や酸化物などの不純物を多く含むため、これを製品部の外に逃がすことで内部品質を高める役割があります。また、キャビティ内の空気・ガスを金型外に排出する「エアベント」と組み合わせることで、鋳巣や気泡の発生を最小限に抑えることができます。


これらの流路設計を最適化するために、現在では鋳造シミュレーションソフトウェアを活用して、溶湯の流れ・凝固・温度分布を事前に仮想検証する手法が広まっています。設計段階で欠陥を予測できれば、試作コストと手戻りが大幅に削減されます。これは使えそうです。


参考:アルミダイカスト金型設計の注意点(湯口方案・冷却水管の設計)
軽量・薄肉ダイカスト開発センター「アルミダイカスト金型設計時に留意すべきポイント」


ダイカスト金型の冷却水路設計と押出機構:構造上の重要部品

溶湯が固まるスピードと均一性を左右するのが、金型内部に張り巡らされた「冷却水路」です。金型の鋳込み温度の目安は、流し込む金属の融点(アルミの場合約660℃)の半分程度、つまり300℃前後を維持することが理想とされています。この温度管理を実現するために、主型・入子・スライドコアのそれぞれに冷却水管が設置されます。


冷却水路の配置が均一でないと、金型内に局所的な「温度ムラ」が生じます。温度ムラが起きると製品の収縮量が部位ごとに異なるため、寸法精度の低下や反りが発生します。さらに熱疲労による金型のひび割れ(ヒートクラック)の原因にもなり、金型寿命を大幅に縮める危険性があります。冷却設計が金型の命運を握っているといっても過言ではありません。


近年注目されているのが「3次元冷却水路(コンフォーマルクーリング)」です。従来のドリル加工による直線的な冷却穴ではなく、金属3Dプリンタを使って製品形状に沿った複雑な3次元冷却回路を形成する技術です。これにより冷却効率が大幅に向上し、鋳造サイクルタイムの短縮と不良率の低減が同時に実現できます。


もう一つの重要機構が「押出ピン(エジェクターピン)」です。溶湯が固まった製品はキャビティ内壁に密着しているため、そのままでは取り出せません。押出ピンは可動型の背面に設置された押出板に複数本が配置されており、型開き後に製品を均等に押し出す役割を担います。押出ピンの位置・本数・径のバランスが悪いと、製品が変形したり、金型表面に押出ピン跡(ゲート残り)が残ったりする原因になります。押出ピンの配置は慎重に決める必要があります。


参考:プロテリアル(旧日立金属)によるダイカスト金型の設計解説
プロテリアル「ダイカスト金型とは?種類や構造、役割などダイカスト金型の基礎を解説」


ダイカスト金型の構造タイプ4種類:直彫り・入子型・共通おも型・ユニット入子の違い

ダイカスト金型は、キャビティ部分の構成方法によって4つの構造タイプに分類されます。生産量・コスト・品種数に合わせてどのタイプを選ぶかが、製造全体の効率に直結します。


| タイプ | 特徴 | 向いているケース |
|--------|------|----------------|
| 直彫り金型 | 主型にキャビティを直接彫る最もシンプルな構造 | 短納期・試作・小ロット |
| 入子型 | 耐熱性の高い入子だけを交換可能にした構造 | 大量生産・長寿命化 |
| 共通おも型(ユニバーサル型) | 主型を複数製品で共用し入子のみ変更 | 多品種・初期費用削減 |
| ユニット入子 | 共通主型内に複数の入子を組み込み同時鋳造 | 多品種少量・試作品製造 |


直彫り金型は構造がシンプルな分、製作期間が短くすぐに量産に入れる利点があります。ただし、キャビティが主型と一体なので、摩耗・損傷があると金型全体の交換が必要になり、長期的なコストが高くなります。


入子型は現在の主流です。主型をFCD(鋳鉄)などの安価な材料で作り、実際にダメージを受けやすい入子部分だけを高価なSKD61で精密加工します。損傷した入子だけを交換できるため、ランニングコストを大幅に抑えながら大量生産を継続できます。つまりコスト最適化が基本です。


共通おも型(ユニバーサル型)は、主型の製作コストを複数製品で分散させる発想です。入子の形を変えるだけで異なる製品を成形できるため、金型初期費用と納期を大幅に削減できます。収納用品メーカーが複数サイズのアルミ部品を短納期で追加投入できるのは、この仕組みを活用しているケースが多いです。


ユニット入子は共通おも型のさらなる発展形で、1つの主型の中に複数品種の入子をまとめて組み込み、1ショットで複数の異なる部品を同時に生産できます。多品種少量生産の現場では特に有効な構造です。


参考:藤岡エンジニアリングによるダイカスト金型の種類・構造の詳細解説
藤岡エンジニアリング「ダイカスト金型とは?役割や種類、設計で押さえるべき4つのポイント」




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