

板厚3mmのA5052でも、実際の寸法が規格値より最大0.45mmズレていることがある。
A5052は、アルミニウムにマグネシウムを2.2〜2.8%添加した「Al-Mg系合金」です。アルミ合金の中でも最も流通量が多く、単に「アルミ板」と呼ばれる場合にこの材種を指すことが業界内では珍しくありません。
密度は2.68 g/cm³で、同形状の鉄部品と比べると重量がおよそ1/3に抑えられます。例えば、幅300mm×奥行き300mm×厚さ3mmの板一枚の重量は約0.72kgです。木の板と大差ない軽さでありながら、錆びにくく腐食に強い点が収納DIYで重宝される大きな理由になっています。
引張強さは質別によって異なりますが、代表的なH34では約260 N/mm²(MPa)あります。これは普通鋼(SS400:400 N/mm²程度)より低いものの、密度が1/3のため「重さあたりの強度(比強度)」はほぼ互角です。軽くて丈夫、という収納素材として理想的な条件をA5052は備えています。
また、A5052は熱処理によって硬化しない「非熱処理合金」に分類されます。つまり強度向上は圧延加工による「加工硬化」で行われ、その度合いによって「質別(調質)」が変わります。これが後述するH32・H34などの記号につながります。
※A5052と各アルミ合金の違いをわかりやすく比較した参考ページです。
A5052の板厚は、JIS H4000(アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条)によって管理されています。市場で流通している板厚は0.3mmから350mmまで存在し、その幅広さはアルミ合金の中でも突出しています。
収納DIYの現場でよく使われる板厚帯は次のとおりです。
| 用途例 | 板厚の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 軽量カバー・仕切り板 | 1.0〜2.0mm | 板金加工・曲げ加工向き |
| 棚板・ベース板(小型) | 3.0〜5.0mm | 強度と加工性のバランス良好 |
| 棚板(大スパン・重荷重) | 6.0〜10mm | 切削加工対応、たわみ抑制に有利 |
| 構造部材・フレーム代替 | 12mm〜 | ボルト締結や精密加工に使用 |
一般的な薄板(1.5〜3.0mm程度)は板金加工、それ以上の厚みになると切削加工で仕上げるのが業界標準です。棚板として使う場合、荷重スパン(支点間の距離)が長くなるほど厚みを増す必要があります。スパン600mmで5kgの均等荷重を想定するなら、3mm板ではたわみが目立ちはじめます。5mm以上を選ぶと安心です。
標準在庫サイズとして最も流通しているのは1000×2000mmと1220×2440mm(いわゆる「4×8フィート」に近いサイズ)、および1250×2500mmです。厚板(8mm以上)になると1525×3050mmが主体になります。希望のサイズに切断注文できる業者も多く、端材を出さずにDIYに使えるのもメリットのひとつです。
A5052板 サイズ表(ニッカル商工)
※板厚0.4〜350mmまでのサイズと調質が一覧確認できる業者の在庫表です。
板厚規格で見落としがちなのが「板厚公差」です。公差とは「許容される寸法のズレ幅」のことで、例えば板厚3mmを注文しても、実際には2.87〜3.13mmの範囲内で納品されます。これはJIS規格で定められた正常な範囲であり、不良品ではありません。
JIS H4000に基づくA5052の板厚公差(冷間圧延品・抜粋)は以下のとおりです。
| 板厚の範囲 | 公差 | 製造方法 |
|---|---|---|
| 0.45mmを超え1.0mm以下 | ±0.09〜±0.1mm | 冷間圧延 |
| 1.1mmを超え3.0mm以下 | ±0.13mm | 冷間圧延 |
| 3.6mmを超え5.0mm以下 | ±0.2〜±0.25mm | 冷間圧延 |
| 8mmを超え11mm以下 | ±0.6mm | 熱間圧延 |
| 16mmを超え22mm以下 | ±0.8mm | 熱間圧延 |
| 40mmを超え50mm以下 | ±1.3mm | 熱間圧延 |
特に注意が必要なのは、厚板になるほど公差幅が広がる点です。板厚50mmの材料では±1.3mmの誤差が許容されており、実寸は48.7〜51.3mmになりえます。はがき1枚の厚さが約0.1〜0.15mmであることを考えると、50mm厚板の公差はハガキ約13枚分のズレに相当します。
収納棚の設計でこの公差を無視すると、棚板が棚受けに入らなかったり、ガタつきの原因になります。精密さが求められるDIYでは、高精度板(アルハイス、FP52、スーパープレートなどの製品名)を選ぶ方法があります。高精度板はJIS規定値の1/10程度まで公差を絞り込んでいて、例えば4mm厚品なら±0.04mm以内に収まります。コストは通常品より高くなりますが、組み立て精度を要求するフレーム構造や引き出しのスライドレールに嵌合させる場合は費用対効果が高い選択です。
A5052板の板厚公差一覧(丸久メタル)
※冷間・熱間圧延別の板厚公差を数値で確認できるPDF資料です。
A5052には質別(調質)という概念があります。これは製造時の加工硬化の度合いによって強度と加工性を調整したものです。同じ板厚でも調質が変わると引張強さや加工性が異なります。
代表的な調質の特性をまとめます。
| 質別記号 | 引張強さの目安 | 特徴 | 収納DIYでの向き不向き |
|---|---|---|---|
| O材(焼きなまし) | 約170 N/mm² | 最も柔らかく加工しやすい | 複雑な曲げ形状に向く |
| H32 | 約215 N/mm² | 強度と成形性のバランス良好 | カバー・仕切り・薄板ブラケット |
| H34 | 約260 N/mm² | H32より強度が高く、やや硬い | 荷重のかかる棚板・構造部材 |
| H112 | 熱間圧延まま | 厚板での標準的な調質 | 厚板(8mm以上)の棚板・フレーム |
H34はH32に比べて引張強さが約20%高くなります。棚板として重いものを載せるなら、同じ板厚ならH34の方がたわみにくくなります。これは収納において直接的なメリットです。
一方、収納ボックスの蓋や仕切り板のように、曲げ加工を多く施したい場合はH32の方が割れにくく扱いやすいです。H34で薄板(2mm以下)を急角度に曲げると、折り目でひび割れが発生するリスクが高まります。曲げ加工を想定している場合はH32を選ぶのが基本です。
厚板(8mm以上)ではH112が標準的な調質となり、高精度板はH112で供給されることが多いです。H112は熱間圧延のままの状態を指し、薄板のH32・H34とは管理方法が異なります。これだけは例外です。
A5052 H32とH34の強度比較と選び方(フィリール)
※調質ごとの強度差と用途別の選び方をわかりやすくまとめた参考記事です。
「どの板厚を選べばよいか」は、収納DIYにおいて最も重要な判断のひとつです。板厚が厚ければ強くなりますが、重量が増えてコストも上がります。逆に薄すぎると棚板がたわんでしまい、見た目も機能も損なわれます。
A5052のヤング率(縦弾性係数)は68 GPaです。鉄(206 GPa)の約1/3ですが、密度も1/3のため「比剛性(重さあたりの曲げにくさ)」では鉄と大差ありません。ただし同じ寸法の板として比較すると、アルミは鉄の約1/3のたわみしか防げません。同じスパン・同じ荷重で鉄板と同等の剛性を出すには、板厚を約1.44倍にする必要があります。
収納棚で使いやすい経験則として、支点間(棚受け間)のスパンに応じた板厚の目安を示します。
- スパン300mm・荷重5kg以下 → 板厚2〜3mm
- スパン500mm・荷重10kg以下 → 板厚4〜5mm
- スパン700mm・荷重15kg以下 → 板厚6〜8mm
- スパン900mm・荷重20kg超 → 板厚10mm以上または中間支持を追加
たわみを抑えたい場合、板厚を増やす以外に「棚受けの数を増やしてスパンを短くする」アプローチも有効です。スパンを半分にすると、同じ荷重に対するたわみは理論上1/8になります。スパン管理が板厚選定より効率的なコスト削減策になるケースは珍しくありません。
また、A5052の線膨張係数は23.7×10⁻⁶/K(鉄の約2倍)です。1mのアルミ板が気温10℃変化すると、約0.24mm伸縮します。屋外収納や温度変化の大きい車内収納に使う場合、組み立て時にクリアランスを設けておかないと、季節変化で部材が歪んだり固着する原因になります。これは意外と見落とされる盲点です。
A5052の特性・用途・加工設計のポイント(ミスミmeviy)
※比重・ヤング率・線膨張係数など設計に必要な数値が網羅された参考記事です。
A5052の大きな強みのひとつが、表面処理の豊富さです。素地のままでも酸化皮膜が自己形成されるため錆びにくいですが、さらに耐久性や美観を高めたい場合は表面処理が選択肢になります。
収納DIYでよく使われる表面処理を整理します。
- 普通アルマイト(陽極酸化処理): 表面硬度がHv200以上になり、傷や腐食に強くなります。銀白色の均一な仕上がりで、A5052は発色のムラが出にくいためアルマイト適性が高い素材です。
- カラーアルマイト: 着色染料を皮膜に浸透させます。A5052は均一な発色が得られやすく、ブラック・ゴールド・ブルーなど好みのカラーで仕上げられます。収納家具としてのデザイン性を高めたい場合に有効です。
- 硬質アルマイト: 硬度をHv450〜500まで高めます。可動部分(引き出しのレール部など)や摩耗が想定される箇所に適します。
注意点は、アルマイト処理の皮膜厚さ(通常品で5〜25μm程度)が寸法に加算される点です。嵌め合い精度が必要な部分では、処理前に寸法を0.02〜0.05mm分アンダーに仕上げておく設計が必要になります。
また、A5052はめっきや塗装の下処理に手間がかかります。アルミ表面の強固な酸化皮膜がめっき液の密着を妨げるため、専用の前処理(ジンケート処理など)が必要です。一般的な塗装ブース対応のDIYレベルでは密着不良が起きやすいため、表面処理はアルマイトを基本に考えるのが無難です。これが原則です。
屋外の物置収納や浴室まわりの棚に使う場合は、アルマイト処理済みの板材をあらかじめ購入するか、組み立て後にアルマイト専門業者に依頼する方法があります。後者は数千円〜1万円程度のコストが加算されますが、10年単位の耐久性を確保できます。
A5052の特徴と表面処理の選び方(金属加工のワンポイント講座)
※白アルマイト・硬質アルマイト・カラーアルマイトの違いと適用例が解説されています。
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