

CEマーキングの表示がある収納グッズは、EU圏内での販売が無条件に許可されると思っていませんか?
CEマーキングとは、製品がEU(欧州連合)の定める安全・健康・環境に関する法規制に適合していることを示すマークです。「CE」はフランス語の「Conformité Européenne(欧州適合)」の略称であり、製品がEU市場で流通するための「通行証」とも言えます。
このマークは品質の高さを保証するものではありません。これは多くの方が誤解している点です。あくまでも「EU指令・規則が定める最低限の要件を満たしている」という宣言であり、品質の優劣を示すものではないのです。
CEマーキングの対象となる製品カテゴリは非常に広範にわたります。機械類、電気製品、医療機器、建設製品、玩具、個人用保護具など、現在20以上の指令・規則が存在します。収納・インテリア関連製品であれば、電動収納システムや照明付き棚など電気部品を含む製品は「低電圧指令(LVD)」や「電磁両立性指令(EMC指令)」の対象となります。
つまり、物理的な収納用品でも電気を使う仕組みが入っていればCEマーキングが必要です。
マークのデザインは厳密に規定されており、縦の高さは最小5mm以上でなければなりません。フォント・縦横比も公式仕様に沿って作成する必要があり、勝手に変形したり縮小しすぎたりすることは規則違反となります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | Conformité Européenne(欧州適合) |
| 対象市場 | EU加盟27カ国 + EEA(ノルウェー・アイスランド・リヒテンシュタイン) |
| マーク最小高さ | 5mm以上 |
| 目的 | 規制適合の証明(品質保証ではない) |
| 有効期限 | 規制改定がなければ特定期限なし(ただし定期的な確認が必要) |
CEマーキングが適用される地域はEU27カ国にとどまらず、EEA(欧州経済領域)のノルウェー・アイスランド・リヒテンシュタインも含まれます。これら合計30カ国への製品輸出を検討する際には、マーキングの取得が前提条件となります。
CEマーキングの対象かどうかを判断するには、まず「どのEU指令・規則が適用されるか」を特定する作業が必要です。収納用品に関わる代表的な指令を整理しておきましょう。
電動シェルフやスマートロッカー、電動スライドラックなどは「機械指令(Machinery Directive 2006/42/EC)」の対象となります。機械指令では、可動部を持つ機械類について詳細な安全要件が定められており、設計段階からの対応が求められます。
電源を使用するLEDライト付き収納棚や電動昇降デスクの場合、「低電圧指令(LVD: 2014/35/EU)」と「電磁両立性指令(EMC: 2014/30/EU)」の双方に適合する必要があります。これが条件です。
一方で、完全に電気部品を持たない木製棚や金属製ラックなどは、多くの場合CEマーキングの対象外となります。ただし例外があります。建設製品規則(CPR)の対象となる場合や、子どもが使用することを想定した製品には玩具指令(EN 71シリーズ)が絡む可能性もあります。
意外なのは、収納ボックスであっても「おもちゃとして遊ばれることを想定したデザイン」であれば、玩具指令の要件を確認する必要が生じる点です。これは意外ですね。
また、EU市場向けに製品を輸出する日本の製造業者・輸出業者は、EUの「責任者(Authorized Representative)」を現地に設置することが義務付けられているケースがあります。2021年以降のEU規制強化によって、EU域外の企業が直接対応できる範囲に制限が増えています。
CEマーキングの取得プロセスは、製品カテゴリや適用される指令によって異なりますが、基本的なフローは共通しています。大まかには「適用指令の特定 → 整合規格の確認 → 試験・評価 → 技術文書の作成 → 適合宣言書(DoC)の作成・署名 → マークの貼付」という流れです。
ステップ1:適用指令・規則の特定
製品がどの指令の対象になるかを調査します。複数の指令が同時に適用されるケースも多く、この最初の調査で漏れが生じると後工程に大きな影響が出ます。
ステップ2:整合規格(Harmonised Standards)の確認
EU官報(Official Journal of the EU)に掲載されている整合規格を確認します。整合規格に準拠することで、指令の要件を満たしているという「推定適合」が得られます。整合規格への準拠は必須ではありませんが、準拠することで認証プロセスが大幅に簡略化されます。これは使えそうです。
ステップ3:試験・適合評価
製品によっては「公認機関(Notified Body)」と呼ばれる第三者試験機関による評価が義務付けられます(例:医療機器、防爆機器など)。一方で、多くの低リスク製品は製造業者自身が行う「自己宣言」のみで対応可能です。
ステップ4:技術文書(Technical File)の作成・保管
設計図、リスクアセスメント結果、試験レポート、使用した規格の一覧などをまとめた技術文書を作成し、最低10年間保管する義務があります。10年間の保管義務、これは必須です。
ステップ5:適合宣言書(DoC)の作成・署名
製造業者または権限を持つ代理人が、製品名・型番・適用指令・使用規格・署名者情報などを記載した正式な宣言書を作成・署名します。
ステップ6:CEマーキングの貼付
上記すべての手続きが完了してはじめて、製品または包装にCEマークを貼付できます。マーク貼付後も、規制の改訂があった場合は再評価が必要になります。
日本でCEマーキングの取得を支援する機関として、一般財団法人日本品質保証機構(JQA)や、一般財団法人電気安全環境研究所(JET)などが代表的です。疑問点があればこれらの機関への問い合わせが有効です。
CEマーキングの取得にかかる費用は、製品カテゴリ・適用指令の数・試験内容によって大きく変わります。費用が把握しにくい点が、多くの輸出事業者にとって最初のハードルになっています。
収納関連の製品(電動昇降デスク、スマート収納システムなど)を例にとると、おおよそ以下の費用構成が一般的です。
| 費用項目 | 概算費用の目安 |
|---|---|
| 適用指令・規格調査 | 10万〜30万円 |
| EMC試験(電磁両立性) | 20万〜80万円 |
| 安全試験(LVD/機械指令) | 30万〜100万円 |
| 技術文書作成(外注の場合) | 15万〜50万円 |
| 適合宣言書(DoC)作成支援 | 5万〜20万円 |
| 合計(目安) | 50万〜200万円程度 |
ただし、無線機能(Wi-Fi・Bluetoothなど)を搭載したIoT対応収納製品の場合は、無線機器指令(RED)の試験も追加となり、さらに20万〜50万円程度が上乗せされることがあります。費用は製品次第です。
取得期間は、試験機関の混雑状況や設計変更の有無にもよりますが、スムーズに進んだ場合でも3〜6ヶ月程度を見込んでおく必要があります。試験で不適合が出て設計変更が発生した場合は、半年〜1年以上かかるケースも珍しくありません。
費用を抑えるポイントは「整合規格に沿った設計を製品開発の初期段階から行うこと」です。後付けで対応しようとすると、設計変更費用が大幅にかさむリスクがあります。収納製品の企画・開発段階でCEマーキングの要件を設計仕様に組み込んでおくことが、コスト削減につながります。
また、日本貿易振興機構(JETRO)はEU規制に関する情報提供を無料で行っており、初期情報収集の段階では活用できます。
JETRO|EUの法規制・認証制度に関する情報(EU規制全般の調査に役立つ公式情報源)
CEマーキングを正しく取得せずにEU市場で販売した場合、または不正にマークを貼付した場合は、深刻なリスクが発生します。これは単なる行政指導にとどまりません。
EUの市場監視当局(各加盟国の規制当局)が不適合製品を発見した場合、まず「販売停止命令」と「市場からの製品回収(リコール)命令」が下されます。回収費用は製造業者・輸出業者の全額負担です。数千個の製品を回収・廃棄するとなれば、その費用は数百万〜数千万円規模になることもあります。痛いですね。
さらに加盟国によっては刑事罰の対象になります。例えばドイツでは、ProdSG(製品安全法)に基づき、CEマーキング違反に対して最高で3万ユーロ(約480万円※2024年レート換算)の行政罰金が科されるケースがあります。また、悪意のある虚偽表示の場合は禁固刑が科される可能性もあります。
EU域内の税関でも不適合製品の輸入差し止めが行われます。EUの「RAPEX(欧州迅速警戒システム)」と呼ばれるデータベースには、回収・差し止めとなった製品情報が公開されており、一度掲載されると信頼失墜につながります。
収納用品の製造・輸出においても、このリスクは決して他人事ではありません。EU市場への参入を検討しているなら、専門家への相談を早期に行うことが最善の対策です。
EUの製品安全規制に関しては、欧州委員会(European Commission)の公式サイトで最新情報が確認できます。
European Commission|CE marking 公式ページ(EUによるCEマーキングの公式解説・対象製品・指令一覧)
また日本語での実務的な情報収集には、JQA(日本品質保証機構)の公開情報が参考になります。
JQA(日本品質保証機構)|CEマーキングサービス(日本語でのCEマーキング取得支援・試験サービスの概要確認に)