

高速で送り量を増やせば、工具がすぐ壊れると思っていませんか?
高送り加工のデメリットとして最初に押さえるべきなのが、底面の削り残り問題です。高送りカッタは底刃がフラットではなく、刃先外周部がわずかに高くなった傾斜形状になっています。この設計こそが高い送り速度を実現する理由ですが、同時に加工後の平面に必ず削り残りが発生するという制約を生みます。
各工具メーカーはCAM設定の際に「疑似R(プログラミングR)」という概念を使うことを推奨しています。これは実際の底刃R形状を、角部にRが付いた正面フライス工具とみなして加工パスを作成する手法です。ただし、あくまで仮想的なRであり、実際には削り残りが出ることに変わりはありません。
削り残りを考慮せずに次工程の工具を早送りでアプローチさせると、最悪の場合に工具が残材に接触してしまうリスクがあります。ピック量をもとに2DCADなどで削り残り量を事前確認することが、現場での安全な進め方です。つまり、疑似Rの管理が原則です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 底面の形状 | フラットにならない(R形状の削り残りあり) |
| 疑似Rの役割 | CAMパス作成時の仮想R。実際の削り残りとは異なる |
| 確認方法 | ピック量+2DCADで削り残り量を事前チェック |
| 次工程リスク | 早送りアプローチで残材に接触する危険あり |
仕上げ加工が必要な部品では、高送りで荒取りを終わらせた後、仕上げ用の別工具でフラット面を出す工程設計が基本になります。荒取りと仕上げの役割をしっかり分けることが大切ですね。
工具メーカーのカタログには各製品の底刃形状・削り残り量・疑似R値が必ず記載されています。使用前に必ず確認しておきましょう。
参考:高送りカッタの使用上の注意点について詳しく解説されています。
高送り加工のもう一つの大きなデメリットが、切りくず詰まりです。高送りカッタで刃数を増やすと切削能力は向上しますが、各刃の間にあるポケット(切りくずの排出スペース)が狭くなります。この狭い空間に切りくずが詰まると、排出効率が悪化してワークへのダメージリスクが一気に高まります。
特にポケット加工や溝加工では、切りくずが逃げにくい環境になりがちです。同じ場所をぐるぐると繰り返し加工するため、熱も切りくずも溜まりやすい構造になっています。深いポケットでは切りくずが壁に当たって舞い戻り、インサートに噛み込んで一発で欠けが入ることもあります。
切りくず詰まりが始まると、主軸負荷がじわじわと上昇し、刃先から火花が出始めてチッピングが進行します。痛いですね。こうした連鎖を防ぐためには、エアブローやクーラントの当て方を最初に見直すことが重要です。
エアやクーラントの当て方は「なんとなく流しておく」ではなく、切りくずが溜まる場所に狙って当てることが安定加工の鍵です。ポケットで不安定が続くときは、まず切りくず処理の見直しから始めるのが順番として正解です。
参考:切りくず詰まりによるワーク傷の原因と解決策を解説しています。
高送りカッタの加工でワークに傷がついてしまう問題への解決策|タンガロイ
高送り加工の構造上のデメリットとして見落とされがちなのが、軸方向切込み量(ap)の制限です。高送りカッタはインサートのコーナーR部を超えないことが鉄則になっており、コーナーRを超えて切り込んだ瞬間に「高送り工具」としての機能を失います。
切りくず厚さの公式は「t = fz × sin(κ)」で表されます。切れ刃角度κを15°まで小さくすることで、同じfzでも切りくず厚さを約1/4に抑えられるのが高送り加工の強みです。ところがapを欲張ってコーナーRを超えてしまうと、その部分は切れ刃角度が大きい通常のミーリングカッタと同等になり、高い送り速度では刃先に過大な負荷がかかってチッピングが発生します。
| 切れ刃角度 | sin(κ) | fz=0.2mmのときの切りくず厚さ |
|---|---|---|
| ショルダーミル(90°) | 1.00 | 0.20mm |
| フェイスミル(45°) | 0.71 | 0.14mm |
| 高送りカッタ(15°) | 0.26 | 0.05mm |
ap=1.0mmのDAH82を使うか、ap=1.5mm対応のDAH84を選ぶかなど、チップサイズの異なるモデルを選定することでこの制限をある程度カバーできます。これが条件です。切込み量を増やしたい場面では、インサートサイズの大きい製品を選ぶ判断が先に来ます。
また、ヘリカル加工で材料に切り込む場合、高送りカッタは中心部に刃がないため、ヘリカル半径が小さすぎると刃のない部分が材料に接触します。カタログに記載されている最小ヘリカル半径を必ず確認することが必須です。
参考:切れ刃角度と切りくず厚さの関係を数値で解説しています。
高送りカッタを極める — 「なぜ?」を理解すれば使いこなせる|タンガロイ
高送り加工の利点である「浅い切込みで高速送り」は、同時に加工パス数が増えるという構造的なデメリットを内包しています。apが浅いということは、余肉が多い材料では上から下まで何層ものパスを重ねる必要があり、工具経路全体が長くなります。プログラムが長く複雑化するため、基本的にはCAMが必要です。
現場での注意点として、プログラム上の送り速度(Vf)だけを見て「速い!」と判断するのは危険です。実際の加工では、コーナーや方向転換のたびに機械が減速します。特に輪郭が細かい形状では、最高速度に達する前に次の減速が始まるため、理論上の短縮効果が出にくくなります。逆に、長い直線や大きな曲線で走れる形状では機械の加減速性能が活きて、はっきりとした時間短縮が確認できます。
テーブル送り速度の計算式は「Vf=n(回転数)× z(刃数)× fz(刃当り送り)」です。回転数・刃数・fzのいずれかを上げると送りが一気に跳ね上がるため、感覚ではなく式で管理することが大切です。
アプローチ部やインコーナー部は、工具への負荷変動が最も大きくなる箇所です。ここでの設定が甘いと、安定していた加工が突然不安定になります。「入口と出口のパス設計に一番時間をかける」という意識で臨むのが、現場でのトラブルを防ぐ実践的なアドバイスです。
CAM設定で特に押さえたいのが「食いつき厚く、抜け際薄く」の原則です。抜け際で切りくずが厚い状態だと、分厚い金属片をちぎり取るような挙動が発生し、チッピングが起こりやすくなります。これは使えそうです。
高送り加工のデメリットとして語られることが少ないのが、保持剛性の問題です。「高送りは軸方向に力が集中するから安定しやすい」という説明は半分正しいですが、もう半分を見落としている人が多いです。
軸方向に力が寄るということは、ワークを押し付ける方向に継続的な力がかかるということでもあります。ワーク底面が薄い、支持が弱い、クランプが甘いといった状況では、押し付け力が原因でワークがたわんだり、微妙に浮いたりします。結果として、仕上げ代が狙い通り残らない・寸法がバラつくといった加工不良が静かに発生します。
工具突き出しが長い・ホルダが合っていない・チャックの締付けが弱いといった保持剛性の問題は、機械剛性よりも先に確認すべき項目です。「音が静かなのに面が安定しない」「びびりは出ていないのに寸法がズレる」という症状が出たときは、まず保持側を疑いましょう。これが原則です。
特に薄板や長物のワークは要注意です。押し付け方向に力が入るとたわみ量が変化し、仕上げ工程で初めて寸法ズレが発覚する、という遅れたトラブルになりやすいです。高送りの導入初期に起きやすいパターンなので、「音が静かでも、仕上げ代が揃っているか必ず確認する」という習慣を最初から持っておくのが安全です。
工具保持の観点では、BT40以上の主軸を持つマシニングセンタでは突き出し長4〜6D(工具径の4〜6倍)程度までは安定加工の実績があります。それを超える場合は、工具ホルダの選定から見直す価値があります。
参考:高送り加工の原理・メリット・デメリットを現場目線で詳しく解説しています。
高送り加工とは?デメリットとメリットを現場目線で整理|Kiriko Lab

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