

捨てた服や家電が、実は平均71万円以上の損失になっています。
サーキュラーエコノミー(循環経済)は、英語で「Circular Economy」と書き、直訳すると「円環型の経済」という意味です。エレン・マッカーサー財団が提唱するこのモデルは、従来の「取る→作る→捨てる」という一方通行の経済(リニアエコノミー)とは根本的に異なり、資源が永続的に循環し続けることを前提に設計されています。
3原則は次のとおりです。
- 原則①「廃棄物と汚染を生み出さない設計を行う」:製品を作る段階から、廃棄することを想定しない設計を行います。
- 原則②「製品と原料を使い続ける」:製品や部品・素材を常に最大限に活用し続けます。
- 原則③「自然システムを再生する」:資源を循環させることで、自然環境そのものを回復させます。
従来の3R(リデュース・リユース・リサイクル)は、「廃棄物が出ることを前提」に、その削減を目指す政策でした。一方、サーキュラーエコノミーは「そもそも廃棄物を出さない」という設計思想が出発点です。つまりゴールが違います。
3Rは廃棄物対策、サーキュラーエコノミーは経済システムの再設計というわけです。
収納に関心がある方にとって、この違いは非常に重要です。「断捨離して捨てる」のがゴールではなく、「捨てずに次の誰かへつなぐ」ことを前提に、持ち物の量と質を見直すことが、サーキュラーエコノミーの個人版実践になります。
循環経済(サーキュラーエコノミー)の定義と背景|環境省 令和3年版環境白書
メルカリが2025年10月に実施した調査(ニッセイ基礎研究所監修)によると、日本の家庭で「1年以上使われずに保管されている不用品」の総額は、約90兆5,352億円と推計されています。国民1人あたりに換算すると、平均で約71万5,000円にもなる計算です。
これが衝撃的なのは、多くの人が「自分の家の不用品なんてたいして価値がない」と思い込んでいる点です。実際、同調査で「全ての不用品を売ったときの予想金額」を聞いたところ、回答の平均は約19万5,000円。実際の推計値(約71万5,000円)より約52万円も低く見積もられていました。
大きな認識のギャップがあります。
具体例を挙げると、ファッションブランドの買い物袋に2,500円、私立校のスポーツバッグには2万6,800円の値が付いたケースも報告されています。「ただの紙袋や古いバッグ」と思っていたものが、誰かにとっては大切なアイテムである、という事実は、収納の見直しに新しい視点を与えてくれます。
メルカリは2025年6月期の取引高が約1兆1,200億円を超え、月間利用者数は約2,300万人に達しています。2024年度の取引で日米合わせて温室効果ガスを約69万トン削減したとの試算もあり、これは東京ドーム約285杯分の二酸化炭素に相当します。
リユースは節約にもなります。
サーキュラーエコノミーの実践として、まず「収納ボックスに眠っているものを1つ出品してみる」ことが最初のステップとして有効です。メルカリなどのフリマアプリを使えば、スマートフォン1台で出品から取引まで完結します。
メルカリが推進するリユースとサーキュラーエコノミーの関係を解説した経産省ジャーナルの記事
収納の中に「着なくなった服」が眠っているという方は多いはずです。クローゼットを開けるたびに、なんとなく罪悪感を感じるあの服たちが、実はサーキュラーエコノミーの重要な資源になります。
ファーストリテイリング(ユニクロ)が展開する「RE.UNIQLO」は、店舗内に設置された回収ボックスで不要になった衣類を受け取り、リユース・リサイクルに回す取り組みです。2024年度の実績では470万着(新品・古着含む)を回収し、難民キャンプへの寄贈や被災地支援への活用、さらにポリエステルのケミカルリサイクルなど多角的な活用が行われています。
つまり470万着が、ゴミではなく資源として循環したということです。
さらにユニクロは「RE.UNIQLO STUDIO」という店舗内サービスも展開しており、服のリペア(修理)・リメイクや、アップサイクル品の販売を行っています。2025年8月末時点で22の国・地域・63店舗まで拡大しました。捨てる前に「修理」という選択肢が増えたことは、収納の持ち物を長く使い続けるための大きな後押しになります。
ファッションのサーキュラーエコノミーはユニクロだけではありません。神奈川県川崎市のJEPLAN社が展開する「BRING」ブランドは、提携する200近いブランド店舗で回収した古着からポリエステル樹脂を抽出し、新しい衣料品を製造するケミカルリサイクル技術を確立しています。このリサイクルポリエステルは石油由来の素材に比べてCO2排出量を49%削減できます。
着ない服は捨てずに回収ボックスへ、が原則です。
「着なくなった服=ゴミ」という認識を変えるだけで、自分のクローゼットの見え方が大きく変わります。量を持ちすぎないこと、そして不要になったら「次の場所へ渡す」という意識が、収納とサーキュラーエコノミーをつなぐ最大のポイントです。
RE.UNIQLOの仕組みと回収実績の詳細(ユニクロ公式サイト)
収納が増える最大の原因のひとつは「とりあえず買う」という行動習慣です。サーキュラーエコノミーの観点から見ると、この習慣は「リニアエコノミー(使い捨て経済)」の典型と言えます。購入→使用→収納に眠る→最終的に廃棄、という流れがゴミと出費を生み続けます。
そこで注目されているのが「所有から利用へ」というシフトです。具体的には、ファッションレンタルサービス「エアークローゼット」のような月額制サブスクリプションが代表例になります。
エアークローゼットはプロのスタイリストが選んだ洋服を月額制でレンタルできるサービスです。1回3着・何度でも借り替えられる「レギュラープラン」は税込み1万980円で、新品1着1〜3万円の服が着放題になります。クリーニング不要で返却できるため、収納スペースを圧迫しません。2025年6月期には約4万200人の月額会員が利用しており、30〜40代の忙しい女性を中心に支持を集めています。
環境省の実証事業によると、ファッションレンタルは購入・廃棄モデルと比較してCO2排出量を19%、廃棄物排出量を27%削減できるという試算があります。これは使えそうですね。
家具や家電でも同様の考え方が広がっています。IKEA、CLAS(サービス終了事例もあり)など家具のサブスクや、スマートフォン・パソコンのレンタルサービスを利用することで、「壊れたら捨てる」ではなく「使い終わったら返す」という循環が生まれます。
サブスクやレンタルの活用は収納スペース削減に直結するため、「物が多くてどこに何があるかわからない」という悩みを根本から解消する手段になりえます。気になるサービスは1つに絞って試してみることをおすすめします。
リサイクルは素材を分解して再生することを指しますが、アップサイクルは元の素材を活かしながらより高い価値の製品に生まれ変わらせることを指します。つまり「格上げリサイクル」です。
収納の中に「捨てるには惜しいけど使い道がない」というものはありませんか。たとえば古いジーンズはカットして雑巾にする代わりに、ペンケースや小物入れに仕立てることができます。要らなくなったシャツ地はエコバッグやポーチに転換できます。こうしたアップサイクルは、自宅の不用品を「ゴミ収納」から「新たな収納グッズ」に変える行為です。
企業レベルでのアップサイクルの好事例として、東京・四ツ谷を拠点とするワークスタジオ社の「PANECO®」があります。同社は廃棄予定の繊維を回収し、独自の特許技術でボード素材に再生。このボードは家具・店舗什器・オフィス家具などに使用でき、木質ボードの代替素材として注目されています。繊維がそのまま家具になるというわけです。
もうひとつの事例が、東京・練馬区のモーンガータ社による「SminkArt(スミンクアート)」です。これは使われなくなったアイシャドウなど粉末化粧品を絵の具に変えるキットで、化粧品メーカーのコーセーも試作品の原材料提供という形で賛同しています。要らなくなったコスメが、芸術表現の道具に変わるのです。
これは意外な発想ですね。
収納の文脈に置き換えると、「使えなくなったもの=捨てる」ではなく「別の用途に変換できないか」という思考回路を持つことが、アップサイクルの起点になります。自分で手を加える創作が苦手な場合は、アップサイクルブランドの製品を購入することも立派なサーキュラーエコノミーへの参加です。
サーキュラーエコノミーを日常の収納習慣に落とし込む方法として、メルカリが提案している「一時保管箱」という考え方が実践的です。忙しくてフリマに出品する時間がないという方でも、「捨てる前にいったんこの箱へ」という習慣を作るだけで、循環のきっかけが生まれます。
メルカリは2023年に「メルカリエコボックス」を作成し、全国の自治体を通じて希望者に配布しました。このボックスは「捨てる前」の気持ちの切り替えを促す装置として機能しています。要するに「今すぐ決断しなくてよい収納」を設けることで、ゴミにせず誰かに渡すという行動が生まれやすくなります。
実践方法としては以下が挙げられます。
- 📦 一時保管ボックスを1つ用意する:収納スペースの一角に「手放し待ち」のボックスを設置し、まだ使えるけれど今は使っていないものをまとめる。
- 📱 週1回10分のフリマタイム:一時保管ボックスの中から1〜2点を選んでスマートフォンで出品。写真を撮ってテキストを入れるだけで完了。
- 👕 ブランド回収ボックスを活用:ユニクロ・無印良品・H&Mなど店舗に古着回収ボックスを設置しているブランドを利用して、服を売らずに回収に出す。
- 🏡 地域のリユースイベントに参加:自治体が主催するフリマや交換会は、地域内で物が循環する仕組みとして、スウェーデンの「ReTuna(リチューナ)」ショッピングモールのような発想に近いです。
ReTunaはストックホルムの自治体が運営する世界初のリサイクル品専門ショッピングモールで、衣服・家具・家電・家庭用品など生活に必要なものすべてをリサイクル品だけで揃えられます。これは地域版サーキュラーエコノミーの理想型と言えます。
捨てる前の「一時保管」が習慣化されると、家の収納量が自然に減っていきます。不用品が少なくなれば収納の見通しがよくなり、必要なものがどこにあるかすぐわかる状態が維持できます。これが収納とサーキュラーエコノミーが生み出す相乗効果です。
日本人の家には眠っている資産が多すぎます。
日本全体の「かくれ資産」90兆円という数字は、裏を返せば、一人ひとりが「捨てる前に誰かへ渡す」という習慣を持つだけで、数十万円単位の価値が動く可能性があるということです。収納の整理とサーキュラーエコノミーは、環境への貢献と家計の改善という2つのメリットを同時にもたらしてくれます。
サーキュラーエコノミーは、「特別な取り組みをしている企業の話」ではありません。自分のクローゼットを開けて、眠っている服を1枚手に取った瞬間から、あなたの循環経済はすでに始まっています。
メルカリが運営するサーキュラーエコノミー総研:個人がリユースを通じて循環経済に参加する方法を研究・発信するメディア