mtコネクトとファナックのCNC接続と稼働改善

mtコネクトとファナックのCNC接続と稼働改善

mtコネクトとファナックのCNC接続で稼働率を上げる方法

「mtコネクトはファナックCNCには使えない」と思っていると、稼働率が68%のまま止まります。


この記事の3つのポイント
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MTConnectはロイヤリティフリーのオープン規格

MTConnectはライセンス料ゼロで利用できる工作機械向け通信プロトコル。ファナックCNCはFOCAS2と組み合わせてMTConnectに対応可能です。

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稼働率68%→92%の改善事例あり

MTConnect経由でデータを収集・可視化した工場では、設備稼働率を68%から92%へと大幅に向上させた事例が報告されています。

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FIELD system Basic PackageでさらにIoTが拡張

ファナックの最新プラットフォームはMTConnectとOPC UAの両方に対応。他社CNCも含め最大100台までの設備を一元管理できます。


MTConnectとは何か——ファナックCNCとの関係を整理する

MTConnect(mtコネクト)は、MTConnect協会が標準化した製造機器向けのオープン通信プロトコルです。工作機械が生み出すデータをHTTPとXMLという汎用インターネット技術を使って構造化・送信するため、特定のメーカーに縛られない形でデータ活用が実現できます。


重要なのは「ロイヤリティフリー」という点です。MTConnect協会への使用許諾料(ライセンス料)を支払う義務が一切発生しません。ライセンス契約に同意した企業であれば、自社製品にMTConnectを統合して使えます。つまりコスト面のハードルが低い規格です。


では、ファナック(FANUC)との関係はどうなっているのでしょうか?ファナックのCNCには、長年にわたり独自の通信インターフェースである「FOCAS2」(Fanuc Open CNC API Specification 2)が搭載されています。これはイーサネットまたはHSSBベースのライブラリ(.dllファイル)を使ってCNCのデータにアクセスする方式です。FOCAS2はファナック専用の仕組みであり、取得できる情報は豊富ですが、ファナック以外の機械には使えません。


一方のMTConnectは、ファナック製CNCに対してもFANUC MTConnect Server(MTConnectアダプタ)をインストールすることで対応可能です。このアダプタは産業用PCまたは機械に組み込まれたPCにインストールし、FOCAS2を介してCNCデータを取得してMTConnect形式のXMLに変換します。WindowsのシンプルなUIで設定が完了するため、専門的なプログラミング知識がなくても導入できます。


つまり、ファナックCNCの場合の接続方式は2段構えになります。


- FOCAS2のみ:ファナック機専用、より深い情報(工具オフセット、PMC信号、マクロ変数など)にアクセス可能
- MTConnect(FOCAS2経由):ファナック機でもMTConnect標準に変換して出力、他社システムと統一フォーマットで連携できる


混在環境が前提となる工場では、MTConnect対応が特に有効です。


ファナックCNCの世界シェアは約50%、国内シェアは70%とも言われています。それだけ多くの製造現場でファナック機が稼働しているということは、MTConnectを軸にしたデータ収集体制を整えることが工場全体のIoT化につながる大きな一手になります。


MTConnectの基本概念と特徴についての解説(キーエンス IoT用語辞典)


MTConnectとFOCAS2の違い——ファナック導入で選ぶべきはどちらか

ファナックCNCのデータを収集したいとき、「FOCAS2だけで十分なのか、それともMTConnectを使うべきか」という疑問が生まれます。選択は工場の状況によって変わるので、それぞれの特性をきちんと把握しておくことが大切です。


FOCAS2の特徴


FOCAS2はファナックが提供する独自のAPI仕様で、イーサネット接続またはHSSBドライバを通じて機械データを取得します。CNCの状態(稼働・停止・アラーム)、加工プログラム名・番号・サイズ・更新日時、工具・ワークオフセット、アラームコードとテキスト、主軸回転数・送り速度オーバライド、位置情報などを取得できます。データの鮮度も高く、ファナック機に特化した深いレベルのデータアクセスが可能です。


ただし、FOCAS2はファナック専用です。工場にファナック以外のCNCが1台でもあれば、そのCNCには別の手段が必要になります。


MTConnectの特徴


MTConnectはHTTP+XML形式でデータを共通化します。そのため、ファナック、三菱電機、マザック、ハイデンハインなど複数メーカーの機械が混在する環境でも「同一フォーマット」でデータを収集できます。これが最大の強みです。


MTConnectで取得できる代表的なデータは以下の通りです。


| データ種別 | 具体例 |
|---|---|
| 稼働状態 | 実行中・アイドル・アラーム |
| 生産情報 | 加工数、プログラム名 |
| 軸情報 | 主軸回転数、送り速度 |
| 条件情報 | オーバライド値 |
| アラーム | アラーム番号・内容 |


どちらを選ぶか


ファナック機しかない工場でより深いデータを取りたいなら、FOCAS2を直接利用するほうが取得できる情報量が多い場面があります。一方、複数メーカーの設備が混在する工場や、外部システム(MES・ERPなど)と連携したい場合はMTConnectが適しています。


結論は「用途と環境次第」です。


ファナックのFIELD system Basic PackageはMTConnectとOPC UAの両対応ですので、既存環境に合わせて柔軟に選択できます。FOCAS2とMTConnectを「排他的な関係」と誤解している人もいますが、実際には共存できる仕組みになっています。


MTConnect対FOCAS2の詳細比較と対応コントローラの表(Shop Floor Automations)


ファナックのMTConnect導入手順——FIELD system Basic Packageの活用

ファナックのCNCにMTConnectを導入する際、現時点での最新プラットフォームは「FIELD system Basic Package(FsBP)」です。MT-LINKiの後継として2023年より販売が開始されており、MTConnect・OPC UAの両方に対応しています。


FsBPはハードウェア版(FIELD BASE Pro)と仮想マシン(VM)版の2種類があります。ハードウェア版は最大50台、VM版は最大100台の設備接続が可能です。


なお、MT-LINKiはすでに開発終了しており、現在は保守対応のみ継続されています。これからMTConnectを活用した工場IoTを構築するなら、FsBPへの移行を検討するのが自然な流れです。


導入の基本的な流れ


1. 接続対象となるCNCのシリーズを確認する(Series 16i/18i/21i/30i/0i-B以降が対象)
2. CNC側のイーサネット設定(IPアドレス・TCPポート番号など)を行う
3. FsBPハードウェアまたはVM版をネットワークに接続し、接続設定を実施する
4. Webブラウザから稼働監視画面を立ち上げ、設備の状態をリアルタイムで確認する


設備を選ぶと稼働監視画面が自動生成されるので、専用のプログラミング作業は最小限です。ファナック製CNCに限れば、最短データ収集周期は1ms(ミリ秒)というサーボデータまで対応しています。これはA4用紙1枚の厚さほどの時間スライスでデータを拾えるイメージです。


ファナック以外のCNC(他社製)については、OPC UAまたはMTConnect対応であれば同じFsBPで接続できます。また、Modbus/TCPに対応したPLCや設備からのデータ収集・制御にも対応しています。これは使えそうです。


収集したデータはCSVファイルやREST-API(HTTPS)、OPC UA形式で出力でき、BIツール・MES・ERPなどの上位システムとの連携が実現できます。


注意点


FsBPは買切りのハードウェアまたは仮想マシンに加えて、接続台数ごとのソフトウェア年間利用ライセンスの購入が必要です。台数(5台・10台・20台・50台・100台)に応じたライセンスを選ぶ形になっており、導入前に接続対象の機械台数を正確に洗い出しておく必要があります。稼働台数が増えた場合にライセンスを追加できる仕組みになっているのは柔軟な点です。


FIELD system Basic Packageの機能詳細と仕様(ファナック公式)


MTConnectで工作機械のデータを収集すると何ができるか——具体的な活用例

MTConnectでファナックCNCのデータを収集できるようになった後、そのデータを何に使うのかが現場の最重要テーマになります。データを集めるだけでは何も変わりません。


稼働率の可視化と改善


工場のIoT化で最初に着手される目標の一つが、設備稼働率の把握です。ある機械加工工場では、設備稼働率をMTConnect経由で収集・可視化して現場で共有した結果、稼働率が68%から92%まで向上したという事例があります。この差は約24ポイントで、1台の機械が1日8時間稼働すると仮定すると、旧状態では約5.4時間しか動いていなかったものが、改善後は7.4時間動くようになる計算です。これは時間で言えば1日約2時間の増加です。


MTConnectで取得できる稼働状態(実行中・停止・アラーム)に加えて、M0(プログラムエンド)、M1(オプショナルストップ)などの停止理由も細分化して把握できます。「なぜ止まっているのか」が分かることが、改善の第一歩になります。


品質・寸法管理への応用


NCプログラムに測定機能を組み込んでいる場合、加工後の寸法測定値もMTConnect経由で収集できます。図面寸法・公差・実測値をリアルタイムで管理図として表示すれば、工具摩耗と寸法精度の相関が見えてきます。工具交換のタイミングをデータで判断できれば、過剰な工具コストの削減と不良品発生リスクの低減が同時に実現できます。


予防保全と故障予兆の検知


ファナックCNCのサーボデータ(軸ごとの電流・位置・負荷など)を最短1msで収集できると、主軸や送り軸の異常な負荷変動を早期に発見できます。定期的な診断運転で取得したサーボデータのベースラインと比較することで、基幹部品の劣化を予測する予防保全につながります。突発故障による生産ラインの停止は損失が大きいため、ここでの価値は非常に高いです。


人の動きとの組み合わせ


MTConnectのデータを人の動きデータ(ビーコン・RFIDなど)と組み合わせることで、「人待ち停止時間」と「機械側の停止時間」を区別して分析できます。段取り替え時間・監視運転時間・操作時間などを数値化すれば、どのオペレーターのどの作業に改善余地があるかが具体的に見えます。属人化しがちな工程の標準化にも役立てることができます。


工作機械IoT化の活用事例と稼働率改善の実例(神戸製鋼システムソリューション)


MTConnectをファナックで使う際の「見落としがちな注意点」——独自視点

MTConnectとファナックの組み合わせについて解説する記事の多くは、導入のメリットや手順に焦点を当てています。しかし実際の現場導入では、知っておかないと後から損をする注意点もあります。


「データの海」に溺れるリスク


MTConnectは多くのデータを収集できますが、収集できること自体が目的にすり替わってしまうケースがあります。「とりあえず全データを取ってから考えよう」というアプローチは、後の分析設計を複雑にするだけです。スマートファクトリー支援の実績があるエイムネクストも、MTConnect活用のポイントとして「まず何を狙うか(生産性向上・加工不良抑止など)を明確にしてから、必要なデータを定義することが大変重要」と述べています。


導入前に「何を改善したいか」を1つに絞ることが基本です。


古いCNCへの対応は事前確認が必須


FIELD system Basic PackageでMTConnect接続できるファナックCNCは、Series 16i/18i/21i/30i/0i-B以降です。それよりも古い機種(例えばOi-B、16-A/B/CシリーズなどはFOCASがUncommonまたはPossibleの扱い)は、対応状況が異なります。古い機械については、ファナックへの直接問い合わせか、データサーバーボードの後付け改造が必要になる場合があります。


在庫や予算の都合で「古い機械も含めてIoT化したい」という場合は、機種ごとの対応可否を最初に洗い出してから計画を立てることが条件です。


MT-LINKiとFsBPの移行タイミング


現在MT-LINKiを使っている工場は注意が必要です。MT-LINKiはすでに新機能開発を終了しており、保守対応のみ継続されています。新しいOSへの対応も行われないため、セキュリティ観点から将来的なリスクが生じる可能性があります。MT-LINKiの設定データはFsBPに取り込んで移行できる仕組みが用意されているので、移行計画を早めに立てることが望ましいです。


MTConnectとOPC UAはどちらが「上」ではない


MTConnectとOPC UAはしばしば比較されますが、どちらが優れているかという議論は的外れです。MTConnectは「工作機械のデータ収集・可視化」に特化したシンプルな読み取り専用プロトコルであるのに対し、OPC UAはより広範な制御・読み書き双方向の通信に対応した汎用プロトコルです。FsBPは両規格に対応しているため、設備の種類や目的に応じて使い分ければ問題ありません。


「MTConnectだけで工場の全設備をカバーできる」と思い込んでいると、PLC制御設備や産業ロボットとの連携で想定外の手間が発生します。導入設計の段階で接続対象ごとのプロトコルを確認することが重要です。


MTConnect活用のポイントと「データの海に溺れない」ための設計指針(エイムネクスト)


MT-LINKiとFIELD system Basic Packageの機能比較・移行方法(ファナック公式)