原価計算のやり方を製造業向けに基礎から丁寧に解説

原価計算のやり方を製造業向けに基礎から丁寧に解説

原価計算のやり方を製造業向けに基礎から解説

粗利がプラスでも、販管費を引けば実は赤字になっている受注が社内に潜んでいます。


この記事でわかること
📦
製造原価の3要素とは

材料費・労務費・経費の違いと、直接費・間接費への分類方法を理解できます。

🔢
原価計算の3ステップ手順

費目別→部門別→製品別という流れで、手動でも実践できる計算手順を解説します。

📊
間接費の配賦と原価低減

間接費の配賦基準の決め方と、標準原価・実際原価の差異を使った改善のコツを紹介します。


製造業の原価計算とは何か:基本的な定義と目的


製造業における原価計算とは、製品を1個作るためにかかったすべての費用を数値化するプロセスです。「材料を買って製品にして売る」という流れのどこにいくらかかったのかを、細かく集計・分析します。


単なる会計処理ではありません。価格設定・コスト削減・経営判断のすべての基盤になります。


1962年に制定された「原価計算基準(企業会計基準委員会)」では、原価計算の目的として「財務諸表の作成」「価格計算の資料」「原価管理」「予算編成」「経営計画の立案」の5つが明示されています。製造業では特に、見積価格の算出と利益管理の2点で直接的な実務効果があります。


製造業の場合、販売業と違って在庫に工数がかかっているため、「いつ・どの製品に・いくら使ったのか」を工程ごとに追う必要があります。この追跡精度が低いと、売っているつもりで損している製品が生まれやすくなります。


経済産業省のデータでは、製造業全体の製造原価率は平均80.5%前後とされています。つまり売上の約80円が原価として消えているわけです。残り20円弱で人件費・販管費・利益をまかなわなければならないため、原価の1円単位の把握が経営に直結します。



参考:原価計算基準の目的・体系について(企業会計基準委員会 公式)
https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=156


製造業の原価計算の3要素:材料費・労務費・経費の分類方法

製造原価は「材料費」「労務費」「経費」の3つの費目に分類されます。これが原価計算の出発点です。


まず材料費は、製品を作るために消費した原材料・部品・購入品の費用です。原材料費、買入部品費、燃料費、工場消耗品費、消耗工具器具備品費の5種類に細分されます。部品を外部から仕入れる場合の外注費もこの区分に含めて管理する企業が多いです。


次に労務費は、製造現場の人件費全般です。正社員・契約社員の賃金、パート・アルバイトの雑給、賞与・手当、退職給付費用、社会保険料などの福利費がすべて対象になります。注意点として、事務や営業担当の人件費は労務費ではなく「販管費」に分類されます。製造部門に直接従事しているかどうかが判断基準です。


そして経費は、材料費と労務費のどちらにも分類されないその他の製造費用です。電気代・水道代(測定経費)、リース料・通信費(支払経費・月割経費)、設備の減価償却費(発生経費)などが含まれます。電気代は「燃料費では?」と思いがちですが、測定経費として経費に計上するのが正しい扱いです。これは間違えやすい点なので要注意です。


さらにこれら3費目は「直接費」と「間接費」にも分けられます。







区分 定義 具体例
直接費 特定の製品に紐づけられる費用 製品Aの原材料費、製品A専属作業員の賃金
間接費 どの製品に使われたか不明な費用 工場の電気代、設備の減価償却費、管理者の給与


間接費は「配賦(はいふ)」という方法で各製品に割り振ります。この配賦の精度が、原価計算全体の精度を大きく左右します。


製造業の原価計算のやり方:費目別・部門別・製品別の3ステップ

手動での原価計算は「費目別 → 部門別 → 製品別」の3段階で進めます。この順番は原価計算基準でも定められている正式な流れです。


ステップ1:費目別原価計算


まず発生したすべての製造費用を、材料費・労務費・経費の3費目に分類します。そして各費目を直接費と間接費に振り分けます。直接費はそのまま製品に紐づけられますが、間接費は次のステップで処理します。費目別の集計が曖昧だと、後の計算がすべてズレます。土台が原則です。


ステップ2:部門別原価計算


間接費を部門ごとに集計し、どの部門がどれだけの費用を負担するかを明確にします。製造部門(例:加工部・組立部)と補助部門(例:動力部・修繕部)に分け、補助部門の費用は一定の基準で製造部門に再配賦します。この作業によって、間接費が「工場全体のコスト」ではなく「各製造部門のコスト」として管理できるようになります。


ステップ3:製品別原価計算


ステップ1の直接費とステップ2で配賦された間接費を製品ごとに集計します。この最終段階で「製品1個あたりの原価」が算出されます。


具体的な計算式は次の通りです。



  • 📌 製造原価= 材料費 + 労務費 + 経費

  • 📌 当期製品製造原価= 当期総製造費用 + 期首仕掛品棚卸高 − 期末仕掛品棚卸高

  • 📌 製品1個の原価= 製造原価合計 ÷ 生産数量


例を挙げます。材料費1,600円・外注費500円・労務費1,840円・設備費76円・間接製造費用510円の場合、製品1個の製造原価は合計4,526円になります。これがコンビニのおにぎり3個分(約450円)の原価を10倍以上するようなケースでも、1円の誤差が数千個ロットでは数百万円のズレに直結するのです。


つまり単価×数量だけでは終わりません。


間接費の配賦基準の決め方と原価計算への影響

間接費の配賦は、製造業の原価計算で最もミスが起きやすい部分です。配賦基準の選び方を間違えると、製品ごとの原価が大きくズレて、価格設定や採算判断を誤る原因になります。


配賦基準とは「間接費をどの指標に基づいて製品に割り振るか」の基準のことです。代表的な配賦基準には以下があります。



  • 🕐 直接作業時間基準:作業員の実際の作業時間に応じて配賦する(労働集約型の工場に向く)

  • ⚙️ 機械作業時間基準:機械の稼働時間に応じて配賦する(設備集約型の工場に向く)

  • 💰 直接材料費基準:材料費の割合に応じて配賦する(材料費の比率が大きい業種に向く)

  • 📦 生産数量基準:製品の生産個数に応じて配賦する(単品大量生産に向く)


配賦の計算手順はシンプルです。間接費合計が100,000円、全製品の合計機械稼働時間が1,000時間なら、配賦率は100円/時間。製品Aが300時間稼働していれば、製品Aに配賦される間接費は30,000円、という計算になります。


ここで重要なのが「予定配賦」と「実際配賦」の使い分けです。


予定配賦は年度初めに予算で配賦率を決めて使う方法です。月次で素早く原価を出せる点がメリットですが、年度末に実際発生額との差(配賦差異)が生じるため、差異を調整する処理が必要になります。実際配賦は実績値をそのまま使う方法で精度は高いですが、月末になるまで原価が確定しないというデメリットがあります。製造業の実務では予定配賦が主流です。


配賦基準は年1回以上の見直しが条件です。設備の台数が変わったり、製品ラインナップが変化したりすれば、以前の基準が実態と乖離していきます。



参考:配賦の意味・計算方法・配賦差異の処理を解説(ITトレンド)


製造業で使う原価計算の種類:標準・実際・直接の違いと使い分け

製造業で採用される原価計算には主に3種類があります。それぞれの特徴と使い分けを理解することが、原価管理の精度向上につながります。


① 標準原価計算


あらかじめ理想的なコスト(標準原価)を設定し、実際にかかったコストとの差異(原価差異)を分析する方法です。コスト削減やPDCAサイクルの推進に向いています。標準値は現場と協議して設定しないと、かえってモチベーション低下を招くことも。目標値として機能させることが大切です。


② 実際原価計算


現場で発生した費用をそのまま集計する方法です。実態に忠実な原価が把握でき、財務諸表にも直接使えます。ただし膨大なデータ処理が必要で、集計に時間がかかる点がデメリットです。近年は原価管理システムを使って自動集計する企業が増えています。


③ 直接原価計算


原価を「変動費」と「固定費」に分けて、変動費だけを製品原価として計算する方法です。損益分岐点分析や製品ごとの採算シミュレーションに優れています。ただし、財務会計(決算書)には使えないため、内部管理専用と理解しておく必要があります。


さらに生産形態によっても向いている手法が変わります。



  • 🏭 総合原価計算:同じ製品を大量生産する場合に向く。工程ごとに費用を集計して完成品1単位に按分する。

  • 🔧 個別原価計算受注生産・オーダーメイド製品など製品ごとに原価を追跡する必要がある場合に向く。管理が煩雑になりやすいが、1件単位の採算が明確になる。


どれか1つが「正解」ではありません。大量生産ラインは標準原価計算+総合原価計算、受注生産は実際原価計算+個別原価計算、という組み合わせが現場では多く見られます。


粗利で採算判断するのが危険な理由:販管費まで含めた真の原価とは

製造業の現場でよくある落とし穴が、粗利(売上−製造原価)だけで「この案件は儲かっている」と判断してしまうことです。これは非常に危険な判断です。


製造原価の外には「販売費及び一般管理費(販管費)」が存在します。営業担当の人件費、事務員の給与、通信費、役員報酬など、製造に直接関わらない費用がすべて含まれます。中小製造業では売上高の10〜30%が販管費として発生するとされています。


具体例で考えると理解しやすくなります。製造原価4,525円の製品を5,700円で受注した場合、粗利は1,175円でプラスです。「儲かった」と感じるかもしれません。しかし販管費が1,300円かかっていれば、実際には125円の赤字です。見積に販管費を含めていなかったことが原因です。


こういった赤字受注が積み重なると、会社全体の営業利益が圧迫されていきます。


真の原価の考え方は次の通りです。



  • 製造原価(材料費+労務費+経費)

  • + 販管費(営業・事務・管理部門のコスト)

  • = 真の原価(見積原価)

  • + 目標利益

  • = 見積価格(受注価格の下限)


製造業の利益率の目安は一般的に5〜10%程度とされています。製造業全体の営業利益率が低い中で利益を確保するためには、見積段階で販管費まで含めた原価を正確に計算しておくことが不可欠です。


「粗利がある=黒字」ではないということですね。



参考:中小製造業の個別原価計算・見積価格の考え方(ilink-corp)
https://ilink-corp.co.jp/4417.html


製造業の原価計算をエクセルで行う手順と限界:システム活用への移行タイミング

中小製造業の多くが、まずエクセルで原価計算を始めます。特別なシステムが不要で、初期費用ゼロで始められるのが最大のメリットです。


エクセルでの原価計算表に必要な最低限の項目は以下の通りです。



  • 📋 製品コード・製品名・製造日

  • 📋 材料費合計(品目ごとの単価×使用量)

  • 📋 労務費合計(アワーレート×製造時間)

  • 📋 経費合計(設備費・光熱費・減価償却費など)

  • 📋 製造原価合計・生産数量・単位原価


実際の作業手順は4つのシートに分けて管理すると整理しやすくなります。「材料費シート」「労務費シート」「経費シート」をそれぞれ入力し、最後に「原価計算表サマリー」でSUMIF関数などを使って製品ごとに集計する形です。マクロを組んで自動計算化すれば、入力ミスのリスクも下げられます。


ただし、エクセル管理には明確な限界があります。



  • ⚠️ 複数人が同じファイルを更新すると、データの整合性が崩れやすい

  • ⚠️ 変更履歴の追跡が困難で、赤字の原因がどこにあるか後追いしにくい

  • ⚠️ 品種数・工程数が増えると集計の手間が急増し、月次原価の確定が遅れる

  • ⚠️ リアルタイムで原価を確認できないため、経営判断が後手になりやすい


品種が50を超えたあたりでエクセル管理の限界を感じる企業が多いです。原価管理システムやERPの導入を検討するタイミングの目安として、「月次の原価確定に3日以上かかっている」「見積ミスによる赤字受注が月1件以上ある」などが挙げられます。


クラウド型の原価管理システムであれば月額数万円から導入できるものも増えています。エクセルの限界を感じたら、ITトレンドなどの比較サイトで自社の規模に合ったシステムを確認することをおすすめします。



参考:製造業のエクセルを使った原価管理の方法(eigyo-mfg.com)
https://eigyo-mfg.com/blog/928/




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