

防爆設備の「基準」は、一度決めたら永久に変わらないと思っていませんか?実は、換気設備の見直しだけで危険区域が工場全体の34%からわずか2%に縮小した企業事例があります。
防爆設備の基準を理解するには、まず「なぜ防爆が必要か」という根本から押さえておく必要があります。可燃性ガスや蒸気が空気中に漂う工場やプラントでは、電気機器のスイッチON/OFF時に生じるわずかなスパーク(放電)が点火源となり、ガス爆発を引き起こすリスクがあります。これが防爆設備の出発点です。
日本における防爆設備の基準は、主に以下の3つの法律によって定められています。
| 根拠法令 | 所管 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 労働安全衛生法 | 厚生労働省 | 防爆エリアでは国内防爆検定品を使用することを義務付け |
| 消防法(危険物規制政令) | 総務省 | 危険物施設の建築・設備の設置許可申請と使用前検査を規定 |
| 電気事業法 | 経済産業省 | 防爆エリアでの電気工事方法・国内防爆検定方法を規定 |
これら3法は相互に連動しています。つまり防爆設備は「どれか1つの法律を満たせばOK」ではなく、3法すべてに対応することが原則です。
違反した場合のリスクは深刻です。労働安全衛生法違反では民事責任(安全配慮義務違反)に加え、刑事責任として懲役や罰金の対象となります。さらに死傷事故が発生した場合は「業務上過失致死罪」にまで発展する可能性があります。罰則内容は重いですね。
また見落とされがちな点として、海外防爆認定品(IECEx・ATEX・ULなど)は日本国内では有効ではありません。
国内の型式検定(産業安全技術協会=TIISなどの認定機関)を通過した製品でなければ、法的には防爆機器として認められないのです。これが条件です。海外製品を「防爆品」として導入する際は、必ず型式検定合格証の有無を確認してください。
なお、防爆設備に関する型式検定や規格については、以下の資料が参考になります。
防爆機器の法的根拠・義務・罰則の詳細はこちら。
防爆における法的責任について(システムギア)
防爆設備を選ぶ前に必ず確認すべきなのが、その場所がどのZone(危険箇所)に該当するかです。Zone分類を間違えると、適合しない防爆機器を設置してしまうことになり、法令違反に直結します。Zone分類が基本です。
ガス・蒸気が存在する危険場所は、国際規格(IEC)に準拠した以下の3段階に分類されます。
| Zone区分 | 旧区分名 | 爆発性雰囲気の発生頻度の目安 | 代表的な場所の例 |
|---|---|---|---|
| Zone 0(特別危険箇所) | 0種場所 | 年間1,000時間以上、または連続的 | 可燃性液体タンク内部、反応容器の内部空間 |
| Zone 1(第一類危険箇所) | 1種場所 | 年間10〜1,000時間未満 | ポンプ・バルブのシール部周辺、タンクローリー充填口付近 |
| Zone 2(第二類危険箇所) | 2種場所 | 年間10時間未満、または異常時のみ | フランジやバルブの外側周辺、換気が十分な作業場 |
Zone 0は最も厳格な防爆性能が求められます。2023年1月時点では、日本の防爆規格(構造規格)でZone 0に対応した認証を受けた電気機器はまだ存在していません。Zone 0への設置は原則禁止と考えてください。
Zone 1には耐圧防爆構造(d)や内圧防爆構造(p)などが使用されます。一方Zone 2は比較的リスクが低いため、非点火防爆構造(n)など簡易的な防爆構造も認められています。
粉じんが存在する場所では「ゾーン20・21・22」という別の分類が適用されます。食品工場、金属加工工場、製紙工場、製薬工場などでは粉じん爆発のリスクもあるため、ガス系のZone分類と混同しないように注意が必要です。
食品や化粧品の原料を扱う倉庫・収納スペースであっても、粉体製品を扱う場合はゾーン20〜22の判定が必要になるケースがあります。意外ですね。「収納庫だから安全」と過信しないことが大切です。
防爆構造は大きく分けて10種類あります。Zone分類と照らし合わせて正しい防爆構造を選ぶことが、適法かつ安全な運用の前提となります。これが選定の原則です。
| 防爆構造の種類 | 記号(構造規格) | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 耐圧防爆構造 | d | 最も一般的。頑丈な容器で電気機器を囲い、内部爆発が外部に伝わらない設計 |
| 内圧防爆構造 | f | 容器内に保護ガスを注入し、外部の可燃性ガスの侵入を防ぐ |
| 安全増防爆構造 | e | 通常時に点火源にならない機器に二重の安全措置を施す。軽量化が可能 |
| 油入防爆構造 | o | 機器を油に浸して電気絶縁と爆発防止を同時に実現 |
| 本質安全防爆構造 | ia / ib | 故障時でも点火源にならないことが公的試験で証明済み。最高水準の安全性 |
| 樹脂充填防爆構造 | ma / mb | 絶縁性樹脂で点火部位を封入。小型化しやすい |
| 非点火防爆構造 | n | 「簡易防爆」とも呼ばれる。Zone 2のみに適用可能 |
| 特殊防爆構造 | s | 上記に該当しない防爆構造。公的機関の認証が必要 |
| 粉じん防爆普通防じん構造 | DP | 可燃性粉じんによる火災を防ぐ。接合面にパッキンを採用 |
| 粉じん防爆特殊防じん構造 | SDP | 爆発性粉じんにも対応。温度上昇が外部粉じんに伝わらない設計 |
本質安全防爆構造(ia/ib)は、防爆構造の中でも最も高い安全性を持ちます。通常時だけでなく、2回までの故障が発生した状態(ia)でも点火しないことが試験で確認されています。Zone 0に対応できる数少ない構造です。
一方、耐圧防爆構造(d)はコンバーターやモーターなど小〜中型機器への適用が多く、国内でも最も広く使われている構造です。ただし機器重量が増すという難点があります。
防爆機器を選定する際は、必ず機器本体に表示されている記号を確認しましょう。構造規格の場合は「d 2 G4」のような形式で表示され、整合指針(国際規格準拠)の場合は「Ex dⅡB T4」という表示になります。
防爆機器を発注・納品した際には、製造元から型式検定合格証の写しを受け取り、保管しておくことをおすすめします。設備の改造や点検時の記録としても役立ちます。
10種類の防爆構造の詳細な解説はこちらも参考になります。
10種類の防爆構造について詳しく解説(カナデン)
防爆設備の設計で特に重要なのが「危険箇所の判定」です。どの場所がどのZoneに属するかを正確に判定することで、必要以上に広い防爆エリアを設定するムダを防ぐことができます。つまりコスト管理に直結する作業です。
危険箇所の判定は「放出源の等級」「換気度」「換気の有効度」の3要素を組み合わせておこないます。
放出源の等級(発生頻度)
| 等級 | 概要 | 代表例 |
|---|---|---|
| 連続等級放出源 | 常時または頻繁に可燃性物質が放出される | 固定屋根式タンクの液面、大気開放ベント |
| 第一等級放出源 | 通常運転中に定期的に放出が起きる | ポンプのシール部、サンプリング点 |
| 第二等級放出源 | 異常時のみ短時間放出する | フランジ、継手、安全弁 |
換気度(空気で希釈できる能力)
換気度は「高・中・低」の3段階で評価します。高換気度は放出物質の濃度を瞬時に爆発下限界(LEL)未満まで下げられる能力を持つ状態を指します。適切な換気設備を整えることで、同じ放出源でも危険区域の範囲を大きく縮小できます。これが使えそうです。
換気の有効度(安定性・継続性)
換気の有効度は「良・可・弱」で評価します。「良」とは強制換気が連続的に保証される状態で、故障時に予備装置が自動起動するバックアップ体制が整っている場合などが該当します。屋外で常時風速0.5m/s以上が期待できる環境も「良」とみなされます。
実際の判定では、この3要素を経済産業省の評価表に当てはめて、危険区域のZone分類と範囲を決定します。特にZone 2(第二類危険箇所)は、企業によって「工場全体」と広く設定しているケースが多く見られます。しかし、リスクアセスメントを適切におこなって換気設備を改善すれば、Zone 2の範囲を実態に合わせて縮小することが可能です。
実際にJSR株式会社千葉工場では、危険区域の見直しによって防爆エリアが工場全体の34%から2%に縮小しました。これにより非防爆仕様のタブレット端末やドローンが導入可能になり、点検業務のペーパーレス化・効率化を実現しています。
なお判定の根拠となる「工場電気設備防爆指針(整合指針)」のテキストは以下から参照できます。
ユーザーのための工場防爆設備ガイド(独立行政法人労働安全衛生総合研究所)
「防爆設備の基準」というテーマで見落とされがちなのが、収納・保管スペースそのものの防爆対応コストです。工場や倉庫で危険物を扱う場合、保管エリアに防爆照明・防爆コンセント・防爆スイッチを設置するだけで、設備コストは一般仕様の数倍以上に跳ね上がります。厳しいところですね。
ここで重要になるのが、収納・保管エリアの「Zone再評価」という発想です。防爆機器が必要かどうかは、そのエリアが法的にZone 0〜2のいずれかに該当するかによって決まります。換気設備の改善や保管物の見直しによって、防爆エリアの指定を解除できるケースがあるのです。
実際に日産化学株式会社富山工場では、製品倉庫の危険区域を再評価・縮小することで、防爆仕様のハンディターミナルではなく、一般仕様(非防爆)のQRコード対応ハンディターミナルを導入することができました。防爆仕様の機器は選択肢が限られるうえ高価なため、非防爆化によって導入コストを大幅に削減しています。
収納・保管エリアで防爆設備の削減を検討する際の具体的なステップは次の通りです。
ただし注意点があります。Zone再評価は必ず専門の防爆設備エンジニアや設備安全の専門家が関与する形でおこなう必要があります。独自の判断で「ここは非防爆エリアだ」と結論づけるのは危険です。根拠のある再評価が条件です。
また、危険物倉庫の建設・改造時には事前に設置許可申請が必要で、完成後は消防署による「使用前検査」に合格しなければ操業を開始できません。収納スペースのリノベーションや増設時にも、この手続きは同様に求められます。消防署への事前相談は必須です。
危険物倉庫に必要な建築基準・消防法上の要件についての詳しい情報はこちら。
危険物保管庫と消防法の基礎・設置基準・罰則(ユニットハウス)

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