

収納を極めたいのに、市販の棚を買い足すほど部屋が散らかっていく現実があります。
フィルフィット(FiLLFiT)は、大阪に本社を置く永大産業株式会社が手がけるビルトイン収納シリーズです。2018年に前身の「フィルカーゴ」を全面刷新する形で登場し、収納力・デザイン性・施工性を大幅に向上させた製品として、多くの新築住宅で採用されてきました。
「ビルトイン収納」という言葉に聞き慣れない方も多いかもしれません。簡単にいえば、壁と壁の間に造り付けるかたちで設置する、建物と一体化した収納のことです。市販の家具とは異なり、壁から壁まで隙間なくぴったり収まるため、デッドスペースが生まれにくく、部屋全体をすっきりと見せる効果があります。つまり収納家具ではなく、建築の一部として機能するわけです。
フィルフィットの最大の特徴は「側板タイプ」である点にあります。側板(ユニットの両端の板)を基軸として、棚板・引き出し・パイプといったパーツを自由に組み合わせられる設計になっています。クローゼット・ウォークインクロゼット・シューズクローク・玄関エントランス・パントリー・ランドリールームなど、住まいのあらゆる場所に対応するプランが用意されているのが強みです。これだけで十分です。
市販の収納棚と比べたとき、フィルフィット最大のアドバンテージは「特注対応」にあります。棚板の幅寸法カットや、壁から壁まで隙間なく収まる引き出し幅の特注加工に対応しており、現場での後付け作業を大幅に削減できます。一般的なDIY収納ではどうしても数センチの隙間が生まれますが、フィルフィットであれば文字通り"ぴったり"納まる仕上がりが実現できます。
導入の前に知っておきたい重要なポイントがあります。フィルフィットは「受注生産品」であり、注文から納品まで約2週間程度かかります。新築やリフォームのスケジュールには必ず余裕を持って発注する必要があります。また施工も必要なため、製品代金に加えて工事費が別途発生する点も予算計画に組み込んでおきましょう。
永大産業公式|フィルフィット製品ページ(プランバリエーション・カラー・オプション一覧)
2026年1月13日、フィルフィットは大幅なリニューアルを実施しました。発売から約7年が経過し、住空間のトレンドに合わせた進化です。これは見逃せません。
① 新カラーの追加
今回のリニューアルで最も目立つ変化は、ユニットカラーの拡充です。新たに「ノーブルベージュ柄〈NU〉」「ノーブルグレー柄〈NR〉」「チャコールグレー柄〈KG〉」の3色が追加されました。従来の木目系カラーに加え、近年インテリアトレンドの主流となっているグレー・ベージュなどのニュートラルカラーへ対応したかたちです。リビングに設置するオープンクロゼットにも空間と馴染みやすくなりました。
引き出し前板は、ユニットカラーと同色にするか、スキスムSカラー(木目柄8色)から選択でき、コーディネートの幅が大きく広がっています。木目の方向は横木目のみの設定なので、事前に確認しておきましょう。
② 中仕切り板なしで広々収納を実現
これが今回のリニューアルで最も実用的な変更点です。補強桟(幅広桟木セット)を追加することで、耐荷重を変えることなく、中仕切り板なしで天板・固定棚板・パイプを幅1910mmまで対応できるようになりました。1910mmというのはおよそ畳1枚の長さ(1820mm)を超えるサイズです。視線が抜けるすっきりとした見た目になり、収納量も増加します。
引き出しを並べるプランの場合は幅1820mmまでの対応となります。また1940mmまでの間口なら側板なしで棚板・天板・パイプを設置可能で、耐荷重は天板30kg・棚板50kgが確保されています。
③ 引き出しに取っ手仕様を追加
従来の手掛け仕様に加え、シャープな印象の取っ手仕様が選べるようになりました。取っ手はブラックとシルバーの2色展開で、スタイリッシュなインテリアを目指す方には嬉しい追加です。
④ おさまるライトの追加
クローゼット内部を照らす照明「おさまるライト」が新たにラインナップされました。電球色(色温度2700K)とクールな白昼色(色温度5000K)から選択でき、スタイリッシュなデザインで収納空間の上質感を高めます。フィルフィットとセットで導入するだけで、ショールームのような雰囲気が自宅のクローゼットで実現できます。これは使えそうです。
参考価格は1セット(施工例:ウォークインクロゼット)で333,200円(消費税・工事費別)。
永大産業公式ニュースリリース|フィルフィット2026年リニューアル詳細(カラー・仕様変更の全容)
フィルフィットには用途別に複数のプランが用意されています。それぞれの特徴を正確に理解することが、後悔のない選択につながります。
ウォークインクロゼットプラン
夫婦でも使いやすい機能性とインテリア性を兼ね備えたプランです。上下2段のハンガーパイプと深型引き出しを組み合わせることで、限られたスペースを最大限活用できます。丈の長いコートやワンピースも問題なく収まります。ハンガーに掛けられる服の収納目安は、2.0間×1.0間のプランで78枚(ハンガー108枚)と公式に示されています。2.0間は約3.6m幅で、6畳間の長辺に近いサイズ感です。
バッグなどのお気に入りアイテムはディスプレイ感覚で棚板へ飾れるため、"見せる収納"としても機能します。おさまるライトを組み合わせることで、ブランドのショールームのような空間演出も可能です。
ウォークスルークロゼットプラン
リビングや洗面・ランドリーと直結した間取りに最適なプランです。家族それぞれの衣類をゾーン分けして収納できるため、「誰が何をどこにしまったかわからない」という問題を解消できます。子どもでも自分で身支度ができるよう、ハンガーパイプや引き出しの高さを調整できるのも特徴です。収納内の中仕切り板を最低限に抑えた設計で、オープンな空間にも自然に馴染みます。
シューズクロークプラン
靴以外のアウトドア用品・スポーツ用品・ガーデニング用品まで収納できる大容量プランです。間口0.5間×1.0間のプランで靴収納目安70足、1.25間×0.75間のプランでは115足という驚異的な収納力を持ちます。一般家庭の玄関靴箱が20〜30足程度であることを考えると、その差は歴然です。スライドコートハンガー・壁付けミラー・ハンギングバーといったオプションも充実しています。棚位置は30mmピッチで調整できるため、ブーツや長靴など高さのある靴も効率よく収められます。
エントランスプラン
靴・傘・コート・カバンなど玄関まわりのアイテムをまるごと収納できるプランです。コートを脱ぐ際にカバンを置ける「仮置きスペース」が付いており、帰宅時の動線がとてもスムーズになります。靴用棚板は樹脂製で水洗いができるため、清潔を保ちやすいのも嬉しいポイントです。傘かけは各自の傘を一目で識別できる設計で、取り出す際に他の傘と引っかかる心配がありません。
パントリープラン(多目的プラン)
缶詰・調味料・ストック品など、キッチンに置きっぱなしになりがちな食品の専用収納として設計されたプランです。可動棚板を上下90mmずつ移動できるため、収納物の高さに合わせた細かい調整が可能です。ハンガーパイプと組み合わせれば掃除道具も収納でき、文字通り多目的に使えます。場所を選ばない汎用性の高さが特長です。
フィルフィットには独立したシリーズとして「フィルフィット ランドリー」があります。2025年10月に発売された最新プランで、洗濯家事に特化した専用設計が最大の特徴です。洗濯時間の短縮が目的です。
このシリーズのコンセプトは、「洗う→乾かす→たたむ→しまう」という洗濯の4ステップを1カ所に集約することにあります。従来の住宅では、洗濯機のある脱衣所、物干しスペース、クローゼットがバラバラの場所にある場合が多く、重い洗濯物を抱えて家の中を何度も往復する必要がありました。フィルフィット ランドリーはこの動線を根本から見直す製品です。
主な機能パーツは次のとおりです。
| パーツ名 | 機能・特長 |
|---|---|
| スリム引き出し(幅155mm) | 洗剤・柔軟剤専用。詰め替えやストック品も隠して収納。液漏れも拭きやすい設計 |
| 乾燥機収納ユニット | 排湿管を引き出し後ろに隠す独自設計。カウンター上がフラットに仕上がる |
| シンクユニット | ステンレス製。部分洗い・つけ置き洗いに対応。洗濯機近くで完結できる |
| ランドリーパイプ | 室内干し・一時掛けに対応。高さと幅のカットが可能 |
| 作業カウンター(奥行580mm) | 紳士もののシャツやパンツが広げてたためる。アイロン作業にも対応 |
| 洗濯カゴスペース | 複数のカゴを設置して洗濯前の仕分けをその場で完結 |
カウンターの奥行きは580mmで、A4コピー用紙を4枚横に並べたほどの広さがあります。アイロン台を広げる必要がなく、そのままカウンターでアイロン掛けができます。
注意点が1つあります。ランドリーパイプの取り付けは、十分な強度が確保された木下地がある位置に限られます。コンクリート下地や軽量鉄骨の下地には取り付けができないため、施工前に必ず下地の確認を依頼してください。シンクの素材はステンレス(バイブレーション仕上げ)で、総幅580mm×奥行き490mm・最大深さ192mmというしっかりとしたサイズ感です。
ランドリールームに隣接してファミリークロゼットを配置すれば、洗濯後の衣類をほぼ動かずしまえます。これが洗濯の家事負担を下げる黄金の動線設計です。
永大産業公式|フィルフィット ランドリー製品ページ(機能詳細・サイズバリエーション)
フィルフィットへの関心が高まるにつれ、実際に導入した方からの率直な声も出てきています。良い点だけでなく、導入前に把握しておくべき注意点を整理します。
ショールームで実物を必ず確認する
ネット上の口コミでは「棚板の角部分のシート処理が甘く、端がギザギザして下の木地が見えた」という声もあります。棚収納の場合、よく目に触れる部分だけにショールームで実物を確認してから判断することを強く推奨します。永大産業は全国にショールームを展開しており、触れて確かめることができます。特に高額な製品を選ぶ場合はこの一手間が重要です。
受注生産のため納期がある
フィルフィットは受注生産品のため、注文から約2週間の納期が必要です。新築・リフォームのスケジュールが決まったら、早めに工務店やハウスメーカーと相談して発注タイミングを調整しましょう。納期を把握せずに後回しにすると、引き渡しに間に合わなくなるリスクがあります。納期確認が最初の一歩です。
プラン変更は施工後にはできない
ビルトイン収納の特性上、壁に固定して施工するため、設置後のプラン変更は基本的にできません。棚位置の調整は可能なものの、引き出しの追加やユニット構成の変更には再施工が必要になります。収納したいものを事前にリストアップし、何年後かの生活変化も見据えたプランニングが理想的です。
工事費は別途見積もりが必要
製品価格に加えて施工費が発生します。参考として、ウォークインクロゼットのセット例(正規価格)は333,200円(税・工事費別)です。建材卸からの購入では定価の割引が受けられる場合もありますが、施工費は別途かかるため、総費用で比較することが大切です。工事費込みの見積もりを必ず取るようにしてください。
設置場所の下地・壁の状況を確認する
特にランドリーパイプや壁付けミラーなどのオプションを付ける場合、下地がない位置には施工できません。また側板なしで天板・棚板を設置するプランでは、耐荷重(天板30kg・棚板50kg)の範囲内での使用が条件です。重い荷物を大量に乗せる予定がある場合は、プランニングの段階で施工会社に相談してください。これが基本です。
以下に、失敗を防ぐためのチェックリストをまとめます。
永大産業公式|全国ショールーム一覧(実物確認・プランニング相談窓口)