OHSAS18001からISO45001への移行と認証取得の完全ガイド

OHSAS18001からISO45001への移行と認証取得の完全ガイド

OHSAS18001からISO45001への移行と認証の基本を完全解説

OHSAS18001の認証を持っていれば、そのままISO45001も有効だと思っていませんか?実は2021年3月に認証が自動失効しており、対応が遅れた企業は取引停止リスクを負っています。


この記事のポイント3つ
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OHSAS18001とISO45001の違い

旧規格と新規格の構造的な違いや、ISO45001が求める「労働者参加」「リスクとチャンス」の概念をわかりやすく解説します。

移行期限と移行手順

2021年3月に終了した移行猶予期間の背景と、現在新規取得を目指す企業が踏むべき正しいステップを紹介します。

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認証取得のメリットと注意点

ISO45001取得がもたらす取引信頼性の向上・労災コスト削減の効果と、取得時に見落としがちな落とし穴を具体的に説明します。


OHSAS18001とISO45001の基本的な違いを押さえる

OHSAS18001は、英国規格協会(BSI)を中心とした業界団体が1999年に策定した労働安全衛生マネジメントシステムの規格です。一方、ISO45001は国際標準化機構(ISO)が2018年3月に初めて正式発行した、労働安全衛生分野における国際規格です。つまり、ISOとして初めて統一されたグローバルスタンダードがISO45001ということになります。


最も大きな構造的違いは「HLS(High Level Structure:上位構造)」への準拠です。ISO45001はISO9001(品質)やISO14001(環境)と同じHLSを採用しており、複数の規格を統合管理しやすい設計になっています。OHSAS18001にはこの共通構造がありませんでした。統合管理が条件です。


また、ISO45001では「労働者及び労働者代表の参加」が大幅に強化されています。単に経営層がシステムを作るだけでなく、現場の作業員が安全衛生の仕組みづくりに参画することが明確に求められています。これは現場の声を安全管理に反映させるという点で、実態に即した改善につながりやすい仕組みです。


さらに「リスク及び機会」という概念がISO45001では重要な柱になっています。従来のOHSAS18001がリスクの洗い出しと対策に主眼を置いていたのに対し、ISO45001はリスクだけでなく「改善の機会(チャンス)」も同時に検討することを求めています。つまり安全管理が守りだけでなく攻めの経営戦略にもなるということです。





































比較項目 OHSAS18001 ISO45001
発行機関 業界団体(BSIなど) ISO(国際標準化機構)
発行年 1999年 2018年
HLS対応 なし あり(ISO9001・ISO14001と共通)
労働者参加 限定的 明確に要求
リスクと機会 リスク中心 リスク+機会の両面
認証有効性 2021年3月に失効 現在有効


OHSAS18001の認証失効とISO45001移行の期限について

OHSAS18001からISO45001への移行猶予期間は、ISO45001の発行日(2018年3月)から3年間と定められていました。つまり2021年3月12日をもって、OHSAS18001の認証はすべて無効となっています。失効は確定事項です。


この期限を過ぎてもOHSAS18001認証書を「まだ有効だ」と誤解したまま取引先や顧客に提示していた企業が一定数存在したと言われています。認証書の有効期限の日付だけを見て、規格自体の廃止を見落としてしまうケースです。これは取引上の信頼失墜につながる重大なミスになります。


日本における移行状況を見ると、公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)の発表によれば、2021年3月時点でISO45001への移行が完了していなかった認証件数が相当数あったとされています。移行が遅れた理由としては、移行審査のスケジュール調整の難しさ、コロナ禍による審査機関の対応制限、社内文書の大幅な改訂作業などが挙げられます。厳しいところですね。


現在新規でISO45001の認証を取得したい場合は、最初からISO45001の要求事項に基づいてマネジメントシステムを構築・運用し、認証機関による初回審査(文書審査+現地審査)を受ける流れになります。OHSAS18001からの「移行」という選択肢はもはや存在しないため、新規取得として一から進めることが原則です。


参考:公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)によるISO45001の認定情報
JAB公式サイト:ISO45001認定に関する情報


ISO45001の認証取得手順とスケジュールの目安

ISO45001の認証取得は、大まかに「システム構築→内部監査→マネジメントレビュー→外部審査申請→文書審査→現地審査→認証登録」という流れで進みます。初めて取り組む企業の場合、準備開始から認証取得まで最短でも約6ヶ月、通常は1年前後かかることが多いです。これが基本です。


具体的な手順を整理すると以下のようになります。



  • 📝 ギャップ分析(1〜2ヶ月):現状の安全衛生管理とISO45001要求事項のギャップを洗い出します。専門コンサルタントを活用すると精度が上がります。

  • 📂 文書・手順書の整備(2〜4ヶ月):安全衛生方針、目標、リスクアセスメント手順、緊急事態対応手順など、ISO45001が求める文書を整備します。

  • 🔍 内部監査の実施(1ヶ月):構築したシステムが規格要求事項を満たしているか、社内の訓練された内部監査員が確認します。

  • 👔 マネジメントレビュー(1〜2週間):トップマネジメントがシステムの有効性を評価し、改善指示を出します。

  • 🏢 外部審査(1〜2ヶ月):認証機関による文書審査と現地審査を受けます。不適合があれば是正対応が必要です。


審査機関の選定も重要なポイントです。日本国内でISO45001の審査登録を行う機関は、JABまたはIAF(国際認定フォーラム)に加盟する認定機関から認定を受けた機関を選ぶ必要があります。認定を受けていない機関の認証書は、国際的に通用しない場合があるため注意が必要です。認証機関は慎重に選ぶことが条件です。


コスト面では、企業規模や審査機関によって大きく異なりますが、中小企業(従業員50〜200名規模)の場合、コンサルティング費用・審査登録料・社内工数を合計すると初年度で100〜300万円程度の投資になるケースが一般的とされています。これは使えそうです。


ISO45001取得が職場の安全管理にもたらす具体的なメリット

ISO45001を取得することで得られる最も直接的なメリットは、労働災害件数の減少とそれに伴うコスト削減です。厚生労働省のデータによれば、労働災害1件あたりの直接損失(医療費・補償費)と間接損失(生産ロス・採用コスト・調査費用など)を合算すると、1件あたり数百万円から数千万円規模になることがあると試算されています。安全管理は経営課題です。


ISO45001のリスクアセスメントの仕組みを機能させることで、潜在的な危険源を事前に特定・対策できます。特に建設業・製造業・運輸業などの高リスク業種では、1件の重大災害が企業存続に関わるダメージになりうるため、認証取得による体制整備の意味は非常に大きいです。


取引・入札面でのメリットも見逃せません。大手企業やゼネコンのサプライチェーンに組み込まれるためにISO45001認証が事実上の条件になっているケースが増えています。公共工事の入札においても、ISO14001やISO9001と並んでISO45001認証が評価加点の対象になっている自治体があります。これは知っておくべき情報です。


また、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の観点から、ISO45001認証はS(社会)の要素を証明する手段として機能します。企業の社会的責任を可視化することで、融資・投資家との関係においても有利に働く場面が増えています。


参考:厚生労働省「労働安全衛生マネジメントシステムに関するガイドライン」
厚生労働省:労働安全衛生マネジメントシステムガイドライン


ISO45001とISO9001・ISO14001との統合管理という独自視点

ここはあまり語られない視点です。ISO45001・ISO9001・ISO14001の3規格をすでに保有している、または取得予定の企業では「統合マネジメントシステム(IMS:Integrated Management System)」として一本化して運用することが可能です。


3規格がHLSという共通構造を持っているため、方針・目標設定、内部監査、マネジメントレビュー、文書管理といった共通要素を一本化できます。これによって、以下のような実務上の負担軽減が実現します。



  • 📉 文書数の削減:各規格で別々に作成していたマニュアル・手順書を統合し、文書管理の煩雑さを大幅に減らせます。企業によっては文書数が3分の2以下になった事例もあります。

  • 🗓️ 審査日程の効率化:3規格を個別に審査すると年に複数回の審査対応が必要になりますが、統合審査では1回の審査で複数規格を同時に対応できます。

  • 👥 担当者の負担軽減:品質・環境・安全衛生をそれぞれ別の担当者が管理していたのを、統合システム担当として整理することで、情報共有と効率が向上します。


統合管理を進める際に注意すべき点は、各規格の「独自要求事項」を統合の中に埋没させないことです。ISO45001であれば「労働者参加」、ISO14001であれば「ライフサイクル視点」など、それぞれ固有の要求がある部分は共通化せずに独立して管理する必要があります。統合と独立のバランスが原則です。


統合マネジメントシステムへの移行を検討する際は、現在の認証機関に「統合審査への切り替えが可能か」を事前に確認しておくことをお勧めします。認証機関によって対応範囲が異なる場合があります。まず確認することが条件です。


参考:ISO(国際標準化機構)公式によるISO45001の要求事項概要
ISO公式サイト:ISO45001 Occupational health and safety