

ショア硬さが「低いほど柔らかくて収納に優しい」と思っていると、棚板がたわんで中身が全損するリスクがあります。
ショア硬さ(Shore Hardness)とは、材料の表面に一定の荷重をかけた針(インデンター)を押し込み、その戻り量や沈み込み量から硬さを数値化した指標です。とくにゴム・プラスチック・エラストマーなど軟質材料の硬さ評価に広く使われており、金属の硬さ試験(ビッカース硬さ、ロックウェル硬さなど)とは測定原理が異なります。
単位としては「°(度)」または単に「数値+スケール記号」で表記されます。たとえば「Shore A 60」や「60 HS(A)」のように書かれます。国際規格ではISO 868が代表的で、JIS K 6253も同等の規格として日本では広く参照されています。
収納グッズに深く関係するのがゴム製品です。防振マット・すべり止めシート・引き出しライナー・収納ボックスの底面ゴムパーツなど、日常の収納場面には意外なほど多くのゴム素材が使われています。つまりそれらの選定基準を正しく理解するためには、ショア硬さの単位を知ることが実用上の意味を持ちます。
ショア硬さは0〜100の範囲で表される数値で、数値が高いほど硬い素材ということになります。スケールとして代表的なのが「A型(Shore A)」と「D型(Shore D)」の2種類で、それぞれ計測に使う針の形状と荷重が異なります。この2つのスケールは別物です。
JIS K 6253(加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法)概要 — 日本規格協会
Shore A(Aスケール)は比較的柔らかい素材の計測に使います。一般的なゴムパッキン・防振マット・シリコン製品はこのAスケールで評価されることがほとんどです。目安として、消しゴムが約Shore A 40〜50、一般的な靴底が約Shore A 60〜70の範囲に収まります。
Shore D(Dスケール)は硬い素材、つまりAスケールでは上限近い値になってしまうような素材を計測するためのスケールです。ハードプラスチック・樹脂ケース・硬質ゴムなどはDスケールで評価されます。収納ボックスの本体パーツやプラスチック製の仕切り板などはShoreDの数値が使われるケースがあります。
ここで重要な点があります。Shore A 90とShore D 40は同じ「90」「40」という数字でも、硬さの次元が全く異なります。Shore A 90は「非常に硬めのゴム」ですが、Shore D 40は「中程度のプラスチック的な硬さ」です。単位のスケールを見ずに数字だけで比較するのは誤りです。
つまり単位表記の「A」か「D」の確認が最初の条件です。
スケールの選び方には目安があり、一般にShore A 90以上になると素材が硬すぎてAスケールでの精度が下がるため、DスケールへのスイッチがJIS規格でも推奨されています。この切り替えタイミングを知っておくと、カタログや製品仕様書を読むときに混乱せずに済みます。
| スケール | 適した素材の例 | 硬さの目安 |
|---|---|---|
| Shore A | 消しゴム・防振マット・シリコンパッキン | 10〜90程度 |
| Shore D | 硬質プラスチック・樹脂ケース・硬質ゴム | 40〜90程度 |
| Shore A 90以上 | Dスケールへの切替推奨 | 境界域 |
プラスチックの硬さ試験の違い(ショア・ロックウェルなど)— テクノポリマー株式会社
ショア硬さの測定には「デュロメーター(Durometer)」と呼ばれる専用の測定器が使われます。デュロメーターは直径数mmの金属製の針(インデンター)を一定のばね荷重で素材表面に押し込み、15秒後(または即時)の沈み込み量を0〜100の数値に変換して表示する機器です。
測定時の注意点として、素材の厚みが薄すぎると正確な数値が出ません。一般にShore A・Shore Dともに、測定に必要な最低厚みは6mm以上とされています。これは収納グッズのゴムシートや引き出しマットを選ぶ際に実は重要な知識です。
薄いシートは数値が当てにならないということです。
デュロメーターはAmazonなどで数千円〜1万円程度で購入できる簡易品もあり、DIY好きなユーザーが素材確認に使うケースもあります。収納グッズの素材が公式に硬さ表記をしていない場合、自分で計測して比較するという手段も現実的な選択肢です。
測定する際には室温(23℃±2℃)での測定がJIS規格の標準条件となっています。ゴムは温度変化で硬さが変わる素材であるため、冬場に測定した数値と夏場では同じ素材でも異なる値が出ることがあります。収納場所が屋外や温度変化の大きい場所の場合、この点は頭に入れておく必要があります。
収納の現場でショア硬さの知識が活きるのは、大きく3つの場面です。1つ目は「防振・防傷用途のゴムシート選び」、2つ目は「収納ボックスの素材比較」、3つ目は「引き出しや棚に使うすべり止め素材の選定」です。
防振マット・防傷マットとして使われるゴムシートは、一般にShore A 40〜60の範囲のものが衝撃吸収性と耐久性のバランスが良いとされています。Shore A 30以下になると柔らかすぎて重いものを載せると素材が大きく変形し、棚板との接触面で跡が残ることがあります。逆にShore A 80以上になると硬すぎて防振効果がほぼなくなります。
これが基本です。
収納ボックスの本体プラスチック部分はShore D 60〜80程度のポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)が主流です。Shore D 60未満のプラスチック素材だと、重い荷物を収納した場合に側面がたわむリスクが上がります。製品仕様書に「Shore D」の記載がある場合、まずこの数値を確認すると素材の強度をある程度予測できます。
すべり止めシートについては、Shore A 50〜70が一般的な製品群です。数値が低い(柔らかい)素材ほど摩擦力は高いですが、長期使用で素材がつぶれて効果が低下しやすいという特性があります。硬さと耐久性はトレードオフの関係にある、ということです。
| 用途 | 推奨ショア硬さ範囲 | 理由 |
|---|---|---|
| 防振・防傷ゴムシート | Shore A 40〜60 | 衝撃吸収と耐変形のバランス |
| 収納ボックス本体(プラスチック) | Shore D 60〜80 | たわみ防止・耐荷重 |
| すべり止めシート | Shore A 50〜70 | 摩擦と耐久性のバランス |
| 家具の脚ゴムキャップ | Shore A 60〜75 | 床傷防止と安定性 |
これは使えそうです。収納グッズを選ぶ際に仕様書や商品説明にこの数値があれば、感覚に頼らない選択ができます。
一般にあまり語られないのが、ショア硬さは「購入時の数値」であり、素材は使用・保管環境によって時間とともに変化するという点です。これを「硬化(ハードニング)」または「軟化(ソフトニング)」と呼びます。
天然ゴムや一部のシリコーン製品は、紫外線・熱・酸素にさらされることで分子鎖が酸化し、Shore Aで測ると購入時より10〜20ポイント高くなる(硬くなる)ことがあります。収納棚の引き出しに使っているゴム製のすべり止めシートが数年後に硬くなって床に跡を残す、というトラブルの原因はこれです。
意外ですね。
逆にポリウレタン(PU)素材は加水分解により、湿気の多い環境では軟化・べたつきが発生します。押し入れや洗面所収納に使っているポリウレタン製の収納ボックスや仕切りが数年でべたついてくるのは、この硬さ低下が一因です。Shore D 65程度だったものが55以下まで低下すると、素材の形状保持力が目に見えて落ちます。
対策として、以下のポイントが効果的です。
- 🌡️ 保管温度を10〜30℃に保つ:高温(40℃以上)の環境はゴム・プラスチック双方の劣化を大幅に加速させます
- 💧 湿度60%以下を意識する:とくにポリウレタン素材は湿気による加水分解が最大の劣化原因です
- 🌤️ 紫外線を避ける:窓際の収納にゴム素材を使う場合はUVカットフィルムや遮光カバーが有効です
- 📦 使わないゴム素材はジップ袋に密封して保管:酸素と接触する面積を減らすことで酸化劣化を遅らせます
ショア硬さの数値は「今現在の数値」に過ぎません。選び方と同じくらい、保管方法と使用環境の管理が収納グッズの寿命を左右します。初期のShore A 55という優秀な数値を持つすべり止めシートも、高温多湿の押し入れで3年放置すれば性能が著しく低下することがあります。
硬さの数値だけを見て選ぶのではなく、素材の種類(天然ゴム・シリコーン・NBR・ポリウレタンなど)と使用環境を合わせて確認するのが、長く使える収納グッズを選ぶための現実的なアプローチです。素材名と推奨使用温度・湿度が記載されている製品を選ぶ、というのが一つの行動指針になります。
ゴムの硬さ(ショア硬さ)に関する技術解説 — バンドー化学株式会社
デュロメーター(ショア硬さ計)によるゴム硬さ測定の解説 — NOK株式会社