振動診断の判定基準を正しく理解して設備を守る方法

振動診断の判定基準を正しく理解して設備を守る方法

振動診断の判定基準を正しく知って設備保全に活かす方法

絶対値判定基準が「正常」を示していても、翌週に設備が破損した事例が現場で報告されています。


📋 この記事でわかること
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振動診断の判定基準3種類

絶対値・相対値・相互判定のそれぞれの特徴と使い分けを解説。どの場面でどの基準を使えばいいかが明確にわかります。

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絶対値判定だけでは危険な理由

ISO/JIS基準を「そのまま」使うと的中率が下がる落とし穴。設備ごとに判定基準を調整しなければならない理由を具体的に説明します。

🛠️
精密診断・FFT解析の活用法

簡易診断で見落とした初期異常をFFT周波数解析でどう検知するか、具体的な手順と活用シーンを紹介します。


振動診断の判定基準とは何か:3種類の基本を押さえる


振動診断で設備の状態を評価するとき、測定した振動値が「良いのか悪いのか」を判断するための物差しが判定基準です。判定方法には大きく分けて「絶対値判定」「相対値判定」「相互判定」の3種類があり、それぞれ使うべき場面が異なります。


まず絶対値判定とは、ISOやJISなどの規格で定められた数値と、実際に測定した振動値を比べる方法です。例えばISO基準に準拠したAMD基準(旭化成振動基準)では、振動速度が2mm/s以下であれば「GOOD(良好)」、4〜8mm/sで「SLIGHTLY ROUGH(要注意)」、16mm/s以上では「VERY ROUGH(極めて危険)」と評価されます。新設直後の設備や、まだ診断データが少ない段階では、この絶対値判定が出発点になります。


次に相対値判定とは、同じ設備の同一測定点を定期的に測定し、正常時の値(初期値)と比較して何倍に増加したかで判断する方法です。基本的な判定基準は「初期値の2倍未満で良好」「2〜4倍で注意」「4倍以上で危険」とされています。設備の個体差や環境差を吸収できるため、長期運用中の設備に特に有効です。


相互判定は、同じ仕様・同じ運転条件の複数の設備を横並びで比べる方法です。同等設備と比較して振動速度の実効値が2倍以上の差があれば、異常の可能性ありと判断します。この判定が活きるのは、同じ型式のモーターやポンプを複数台稼動させているような製造現場です。


つまり3種類の判定を状況に応じて組み合わせるのが原則です。一種類だけに頼ると、異常の見逃しや誤診につながるリスクが高まります。


旭化成エンジニアリング|振動診断基礎講座 第6回「振動値の判定」(絶対・相対・相互の3判定方法をAMD基準やISOと合わせて詳説)


振動診断の判定基準でISO・JIS規格を正しく使い分ける

振動診断の世界では、長年にわたってISO 10816シリーズが主要な評価基準として参照されてきました。しかし2016年以降、ISO 10816とISO 7919の2シリーズは統合・改訂が進み、現在はISO 20816シリーズとして順次発行されています。ISO 20816-3は「定格出力15kW超、回転数120〜30,000rpmの産業機械」を対象とした規格で、工場のモーター・ポンプ・ファンなどの汎用回転機械の多くがこの規格の対象になります。


ISO 20816-3では非回転部(軸受箱など)における振動速度の実効値(rms)を基準に、状態をゾーンA〜Dの4段階に分類します。ゾーンAは新品状態の機械に対応する正常レベル、ゾーンBは長期連続運転が許容される範囲、ゾーンCは短期間での改善措置が必要、ゾーンDは損傷発生リスクが高く即座に対応が必要な状態です。


重要な点として、ISO 20816-1では「評価基準Ⅰ(振動の大きさ)」と「評価基準Ⅱ(振動の変化量)」の2軸で機械を評価する考え方が示されています。振動の絶対値がゾーンCに達していなくても、短期間で振動が急増した場合には対処が必要とされています。これは、絶対値判定だけを見ていると異常のサインを見落とす可能性があることを意味します。意外ですね。


日本工業規格(JIS B0906など)もISOに対応した振動評価規格を定めていますが、設備の種類・取り付け方法・運転条件によって適用できる規格が変わります。すべての設備に同じ規格を当てはめるのは危険です。設備ごとにどのISO/JISパートが適用されるかを確認することが、判定精度を高める最初の一歩といえます。


新川電機株式会社|回転機械の振動と状態監視(ISO 20816シリーズの改訂内容や評価ゾーンA〜Dの詳細を解説)


振動診断の判定基準で絶対値判定だけに頼ってはいけない理由

「基準値内だから安心」と思っていたら、翌週に突発故障が起きた——こうした現場の声が設備保全の世界では決して珍しくありません。絶対値判定が万能でない理由は、明確にあります。


JISやISOに基づく公表済みの絶対値判定基準は、あくまで「標準的な回転機械」を前提に作られたものです。実際の現場では、設備の取り付け剛性・振動ノイズの大きさ・運転条件・経年劣化の程度によって、同じ振動値が示す「劣化度」がまったく異なります。設備Aで「要注意」相当の値が、設備Bでは「正常」に近い場合もあり得ます。


振動計の機種が異なれば、同じ設備を測定しても数字が一致しないケースもあります。これが、異なる部署間で「基準値に互換性がない」と感じる原因です。振動計ごとの測定原理・周波数帯域の違いが結果に影響するため、共通の絶対値基準をそのまま流用することには限界があります。


的中率の高い絶対値判定基準を作るには、実際に交換した部品の損傷状態と、その時点での振動データを照合する作業が欠かせません。損傷部品は交換後も荷重方向や損傷位置がわかるよう保管しておき、データとの突き合わせを繰り返すことで、その設備固有の「危険ライン」を導き出していきます。これが条件です。


この作業が十分に積み重なるまでは、絶対値判定を暫定基準として使いつつ、相対値判定や相互判定を並行させることで診断の信頼性を担保するのが現実的な運用方法です。


ジュンツウネット21|振動計の有効活用(判定基準の限界と、設備ごとに固有基準を作成するための実践的注意事項を解説)


振動診断の判定基準に加えるべき精密診断とFFT解析の活用

簡易診断の振動値が基準値内に収まっていても、機械の内部では初期的な異常が進行していることがあります。この段階を捉えるために使われるのが、FFT(高速フーリエ変換)を用いた精密診断です。


FFT解析とは、複雑な振動波形を周波数ごとに分解し、どの周波数成分がどれだけの強さで存在するかを「スペクトル」として可視化する手法です。例えば、転がり軸受に初期損傷が生じると、その損傷に対応した固有の「欠陥周波数」にスペクトルのピークが現れます。このピークは、全体の振動レベルにはほとんど影響しないため、絶対値判定では見えてきません。FFT解析があって初めて見えてくる情報です。


異常の原因別に現れる周波数パターンもあります。アンバランス(回転体の重心ズレ)は回転周波数の1倍成分で強い振動を示し、ミスアライメント(軸のズレ)は回転周波数の2倍成分、ルーズネス(締め付け不足)は高次の高調波成分が増大するといった特徴があります。この周波数パターンの読み方を覚えておくと、「どこが、どう悪くなっているか」をある程度特定できます。これは使えそうです。


FFT解析に使う機器は「FFTアナライザー」ですが、近年では三菱電機のiQ Monozukuri回転機振動診断パッケージのように、PLC(プログラマブルコントローラ)と組み合わせて工場のラインに組み込める製品も登場しています。測定値の傾向管理(トレンド管理)と周波数解析を同時に自動化できるため、人手による巡回診断の頻度を減らしつつ、より早い段階での異常検知が実現できます。精密診断は必須です。


カナデン|振動診断とは?診断方法の種類や選び方を解説(簡易診断・精密診断の違い、FFT解析の役割を詳しく解説)


振動診断の判定基準を現場で運用するための独自視点:「測定履歴の資産化」という考え方

振動診断の判定精度を高めるうえで、最も見落とされがちなのが「測定データを資産として積み上げる」という発想です。多くの現場では測定値を記録してはいますが、「部品を交換した後のデータ」「交換した部品の損傷状況」と紐づけて保管しているケースは多くありません。


振動値と損傷状態の照合が積み重なってはじめて、その設備専用の判定ラインが引けるようになります。例えば同じ型式のポンプでも、設置環境が屋外か屋内か、配管の接続剛性が高いか低いかによって「振動値8mm/sが示す意味」は変わってきます。この照合データが10件・20件と蓄積されるほど、基準の精度が上がります。


交換した軸受は、破棄せずに位置マーク(荷重方向・損傷位置の印)をつけて保管することが推奨されています。数ヶ月後に別の設備で似た異常が発生したとき、保管していた損傷サンプルが原因特定の手がかりになるからです。さらに、こうした損傷サンプルは新人教育や技術継承の教材としても高い価値を持ちます。


この「測定履歴の資産化」を組織的に進めるには、診断結果を部署内で共有し、メンテナンス作業への反映ルールを明文化することが重要です。異常発見時に「次の行動」が決まっていない現場では、せっかくの早期検知が行動につながらず、結果的に突発故障を防ぎきれないことがあります。振動診断の価値は、測定の精度だけでなく、「測定結果が行動に変換される仕組み」があってはじめて最大化されます。


診断頻度の設定も、この観点から見直す価値があります。導入初期は短いサイクルで測定し、「正常時の変動幅」を把握することが先決です。変動幅のデータが蓄積されれば、「これは季節変動か、それとも異常の兆候か」の判断が格段に精度良くできるようになります。


振動診断の判定基準を正しく運用するための測定ポイントと頻度設定

判定基準がどれだけ適切でも、測定ポイントや頻度の設定が不適切では、正確な診断はできません。振動センサは「振動の発生源に最も近い位置」、具体的には軸受箱に設置するのが基本です。振動が伝わる経路が長くなればなるほど、信号が減衰したり他のノイズと混合したりして、正確な情報が取れなくなります。


センサの取り付け方にも注意が必要です。一般的にはボルトや接着剤で固定する方法が信頼性が高く、プローブを手で押し当てる「ハンドプローブ法」は測定ごとに接触状態が変わるため、トレンド管理には向きません。同一条件で測定し続けることが、相対値判定の前提条件です。


測定頻度については、設備の重要度によって変えることが推奨されます。製造ラインの中核を担う設備(停止すると生産全体に影響が出るもの)は高頻度で測定し、補助的な設備は低頻度でも許容されます。重要度のランク付けを行うときの目安として、「1時間停止した場合の経済的損失額」を算出する方法があります。例えば、単価10円の部品を毎分100個製造する設備が24時間365日稼働している場合、年間の生産額は約5億2,560万円に達し、1時間の停止で約6万円の損失が発生する計算になります。この数字を積み上げて優先順位をつけると、診断資源の配分が合理的に決まります。


異常を発見したあとの対処フローも、事前に決めておくことが大切です。「振動値がいくらになったら再測定する」「いくらになったら運転を止めてオーバーホールに入る」という基準を明文化しておかないと、現場担当者の判断がバラつき、過剰メンテナンスや過小対応のどちらかに偏るリスクがあります。判定基準と行動基準はセットで設計するのが原則です。


オムロン|振動解析とは?製造現場でのメリットや解析手法について解説(センサの種類・設置方法・絶対判定と相対判定の使い分けを詳説)




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