絞り加工プレスの仕組みと種類を徹底解説

絞り加工プレスの仕組みと種類を徹底解説

絞り加工とプレスの仕組みを基礎から知る

絞り加工プレスで作られる製品は、1回のプレスだけでは完成しないものが大半です。


🔩 この記事でわかる3つのポイント
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絞り加工プレスの基本

1枚の金属板を「パンチ」と「ダイ」で挟み、継ぎ目のない立体容器に成形するプレス加工の一種です。

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身近な製品との関係

キッチンシンク・鍋・アルミ缶など、生活収納まわりの製品の多くが絞り加工プレスで作られています。

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知っておくべき加工の難しさ

しわ・割れ・くびれの3つが主な不良原因。絞り率と限界絞り比を理解することで品質向上につながります。


絞り加工プレスとは何か:基本原理と塑性加工との違い


絞り加工プレスとは、金属の薄い板(ブランク)に圧力を加えて、底付きの容器状に立体成形するプレス加工の一種です。「絞る」という動作は、机の上に伏せたコップにハンカチをのせ、コップの形に沿うよう手で包み込む動きとよく似ています。この物理的なイメージを金属加工に置き換えたのが絞り加工です。


加工の核心は「塑性変形」にあります。金属には、ある一定の力を超えると元の形に戻らず変形し続ける性質があります。絞り加工プレスはこの性質を巧みに利用し、1枚のブランクから継ぎ目のない立体形状を生み出します。継ぎ目がないことは、液体・気体の漏れを防ぐ密封性の面でも大きなメリットです。


一方、似た加工法に「張り出し加工」があります。張り出し加工は金属板を延ばして成形しますが、絞り加工プレスは板を延ばさずに形状を変えるため、加工前後で板厚がほぼ変わりません。これが絞り加工の大きな特徴のひとつです。


つまり「板を伸ばさず、形だけ変える」のが絞り加工の原則です。


この原則が成り立つため、完成品は素材の強度をほぼそのまま保持できます。加工硬化(加工によって材料が硬くなる現象)も加わり、薄い板でも丈夫な製品に仕上がります。これが鍋やシンクといった収納・キッチン用品に絞り加工プレスが広く採用される理由です。


参考:プレス絞り加工の基礎原理と仕組みを解説した専門メーカーの解説ページです。


プレス絞り加工とは?ヘラ絞りとの違いやプレス絞りが難しい理由も解説|小林製作所


絞り加工プレスの種類:形状と深さによる6つの分類

絞り加工プレスは、成形品の形状によって主に6種類に分類されます。それぞれが異なる特性を持ち、製品用途によって使い分けが必要です。


まず代表的なのが円筒絞り加工です。金属板を円筒状に成形する最も基本的な加工方法で、カップやフライパン、ボウルなどに使われます。均等に圧力をかけられるため成形が安定しやすく、他の種類と比べて加工難易度も低めです。これが基本です。


角筒絞り加工は、シンクや弁当箱など四角い容器を作る際に使用されます。円筒絞りと比べて金属の流れが複雑になるため難易度が高く、角の部分で割れが生じやすいという特性があります。厳しいところですね。


異形絞り加工は自動のボディパネルや電子部品など、複雑な形状を作るための方法です。様々な方向に力がかかるため、加工難易度は絞り加工の中でも最高水準に位置します。


そのほか、円錐絞り加工(タンブラーや照明器具)、角錐絞り加工(テーパー形状の四角容器)、球頭絞り加工(球体状の容器)があります。また、絞り深さの観点から「浅絞り加工」と「深絞り加工」にも分類されます。製品の直径より深さが短いものが浅絞り、長いものが深絞りです。


深絞り加工は浅絞りよりも更に高い技術を要し、コンデンサケースのように全高267mmに達する製品の成形も可能です。


参考:絞り加工の種類と工程を9ステップで詳解した技術情報ページです。


絞り加工プレスの工程:ブランク設計から成形までの流れ

絞り加工プレスは、いきなりプレス機を動かして始まるわけではありません。製品を正確に成形するために、事前の緻密な計算と設計が不可欠です。


最初の工程はブランク直径の算出です。完成品の形状を展開して、素材となる金属板の直径を逆算します。このとき「ブランク展開式」を使用し、加工後にフランジ(縁)をトリミングする分も見越して計算します。円筒絞りでは円形ブランクを絞っても縁は変形して四角くなるため、このトリミング代を必ず考慮しておく必要があります。


次に絞り回数の決定を行います。1回のプレスで成形できる深さには限界があり、この限界を示す数値が「絞り率」です。絞り率は「絞り後の径 ÷ 絞り前の径」で表され、初絞りでは0.5〜0.6、2絞りでは0.75〜0.8が目安とされています。繰り返し絞るうちに材料は加工硬化して絞りにくくなるため、工程ごとに絞り率の範囲が変わります。


また、破断を起こさずに絞れる限界値を示す「限界絞り比」という概念もあります。一般的にこの値はおよそ2前後が目安です。この数値を超えて無理に絞ると、底抜けやくびれなどの不良が発生します。2が基本です。


続いて金型(パンチ・ダイ)の設計、プレス機械の選定、材料の決定、潤滑油の選定と続きます。特に材料選定では、「r値(ランクフォード値)」と「n値(加工硬化係数)」という2つの数値が重要です。r値が大きいほど絞りやすく、n値が大きいほど加工中に材料が硬くなりやすい性質を持ちます。


参考:深絞り加工の基礎数値と各工程の詳細が解説されています。


プレス加工:深絞り加工の基礎、知っておくべき数値|金属塑性加工.com


絞り加工プレスが難しい理由:しわ・割れ・くびれの3大不良

絞り加工はプレス加工の中で「最も難しい」と言われる加工法です。その理由は、加圧調整がわずかにずれるだけで3種類の不良が発生するからです。これは使えそうな知識です。


しわ(Wrinkle)は、ブランクが金型に引き込まれる際に圧縮応力が過剰にかかることで発生します。ブランクホルダー(しわ押さえ)の圧力が不足している場合や、パンチとダイのクリアランス(隙間)が大きすぎる場合に起こりやすい不良です。しわ押さえ力の調整と均一な加圧が対策の基本となります。


割れ(Crack)は、しわとは逆の原理で発生します。しわ押さえの圧力が強すぎるとブランクが金型内に滑り込めなくなり、引張応力が集中して割れにつながります。「底抜け」「フランジ部割れ」「ボディ割れ」の3種類があり、それぞれ原因と対処法が異なります。また、加工直後ではなく数日後に発生する「置き割れ(シーズンクラック)」と呼ばれる現象もあります。


くびれ(Necking)は、ブランクが圧力に耐えられず反ってしまう不良です。くびれがそのまま進行すると割れに発展するケースもあります。加圧力が大きくなりすぎないよう制御することが求められます。


この3つの不良はいずれも「加圧の過不足」に起因するものです。強すぎれば割れ、弱すぎればしわという、非常に繊細なバランス調整が求められます。しわ押さえ圧力の適正範囲は材質によって異なり、鉄系材料とアルミ系材料では全く異なる設定が必要になります。


参考:絞り加工の3大不良の発生要因と対策を体系的に解説しています。


絞り加工の特徴とプレス加工の種類|しわと割れの発生要因も解説


絞り加工プレスの応用と収納まわりの製品への活用事例

絞り加工プレスの技術は、日常の収納・キッチン空間にある製品と密接に結びついています。収納に興味を持つ人ほど、実はこの技術の恩恵を毎日受けているといっても過言ではありません。


最も身近な例がキッチンシンクです。シンクの深い凹み形状は、1枚の金属板から絞り加工プレスで成形されています。継ぎ目がないため水漏れが起こりにくく、汚れもたまりにくいという機能的な利点が生まれています。これはいいことですね。


鍋・フライパン・ボウルなどの調理器具も同様です。アルミ缶も絞り加工の代表例で、DI加工(絞り+しごき加工の組み合わせ)という方法で1枚のアルミ板から胴体部分が成形されています。さらに、魔法瓶の内容器のようにステンレスを深く絞って作られる製品もあります。


特殊な絞り加工方法として「温間成形法」も注目です。板金を加熱した状態でプレスすることで成形性が向上し、通常の冷間加工では難しい深い絞りが可能になります。ステンレス(SUS304)を例にとると、冷間加工で絞り深さが20mmの製品を、温間成形法を使うと33mm、条件によっては2倍以上の深さにまで成形できるケースも報告されています。


もう一つの特殊方法「対向液圧成形法」では、液体の圧力を均等にかけることで局所的な板厚減少を抑えられます。通常の金型では傷やへこみが生じやすい複雑形状にも対応でき、高い寸法精度が実現可能です。


プレス絞り加工は金型の初期費用が比較的高く、小規模な試作用途ではコストが合わない場合があります。その際は金型が1つで済む「ヘラ絞り加工」も選択肢として挙げられます。ヘラ絞りであれば短期間・低コストで試作品を作れるため、製品設計の検証段階にも有効です。


参考:深絞り加工の実製品への活用と、アルマイト加工との一貫工程について解説しています。


深絞りプレス加工とは?|富士金属株式会社(太田金属株式会社)






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