

アナログ式の接地抵抗計は「なんとなく針が振れればOK」と思っていると、実は測定値が30%以上ずれていることがあります。
アナログ式接地抵抗計は、内部に発振回路と検流計を組み合わせた構造を持っています。デジタル式とは異なり、針の動きで抵抗値を「直感的に読み取る」設計が特徴です。現場でベテランの電気工事士に好まれてきた理由は、バッテリー消耗の影響を受けにくく、ゼロ調整さえしっかり行えば長期間安定した測定ができる点にあります。
測定の原理は「三極法(C-P-E法)」が基本です。これは接地極(E)・電圧補助極(P)・電流補助極(C)の3点を使い、電流を流したときの電位差から抵抗値を算出する方式です。つまり三極を正しく配置するのが原則です。
アナログ計器の目盛りは対数目盛(ログスケール)になっているものが多く、低い抵抗値ほど目盛りの間隔が広く、高い抵抗値ほど狭くなります。たとえばYEW(横河計測)の2500シリーズや、日置電機(HIOKI)の旧型アナログ接地抵抗計では、0〜10Ωのレンジと0〜100Ωのレンジを切り替えて使います。測定値が10Ω付近であれば0〜100Ωレンジでは目盛りが密集して読み誤りやすいため、0〜10Ωのレンジに切り替えることが重要です。
これは使えそうです。目盛りのレンジ選択だけで誤差が変わるのは意外と知られていません。
また、アナログ計器には「ガルバノメータ(検流計)」が内蔵されており、測定ボタンを押す前に「GALV」スイッチで迷走電流(外部からの電流干渉)のチェックを行う必要があります。このステップを省略すると、地中を流れる漏れ電流が測定値に混入し、実際よりも低い値が表示されることがあります。
アナログ式接地抵抗計で最初に行うべき作業が「ゼロ調整」です。これを怠ると、すべての測定値に固定の誤差が乗り続けることになります。調整方法はシンプルで、測定端子(E・P・C)を短絡した状態でゼロ調整ダイヤルを回し、針をゼロに合わせます。電池の消耗度によって針位置がずれるため、測定のたびに実施するのが原則です。
次に重要なのが迷走電流の確認です。都市部や工場敷地内では、地中に電車のレール漏れ電流・電力線の誘導電流・他設備の接地電流が混在しています。こうした外来電流が測定回路に入ると、実際の接地抵抗が5Ωであっても2Ωや8Ωと表示されることがあります。
迷走電流のチェックは、計器のGALVスイッチ(またはGボタン)を押して検流計の針がほぼゼロを指しているか確認します。針が左右に大きく振れる場合は、測定場所を変えるか、補助極の向きを変えることで影響を減らせます。厳しいところですね。
迷走電流が大きい環境での対策として、交流電源を使わない「直流重畳法」や「選択接地抵抗測定法」に対応した計器を使うことも選択肢のひとつです。日置電機(HIOKI)のFT6031-03などのクランプ式接地抵抗計は、補助極不要で迷走電流の影響も受けにくい構造になっています。ただし、アナログ式の三極法と用途が異なるため、精密測定が必要な場面では従来のアナログ三極法が現場の標準です。
補助極(補助アース棒)の打ち込み位置は、アナログ式接地抵抗計の測定精度を左右する最大のポイントといっても過言ではありません。多くの現場では「だいたい離せばいい」という感覚で配置されがちですが、実際には電圧補助極(P)と電流補助極(C)の間隔が不足すると、それぞれの「電位影響範囲」が重なってしまい、測定値が実際より低く出る「相互干渉誤差」が発生します。
JIS C 1304「接地抵抗計」では、測定電極間の距離について一定の基準が設けられています。一般的な目安として、被測定接地極(E)から電圧補助極(P)まで10m、EからC(電流補助極)まで20mを基準とするのが国内現場での標準です。この10m・20mというのは、一般的な乗用車1台分(約4.5m)の約2〜4台分に相当する距離感です。狭い敷地では確保が難しい場合もありますが、最低でもE-P間5m・E-C間10mを守ることが条件です。
補助極の打ち込みは、地面に対して垂直に深さ20〜30cmほど刺すのが基本です。浅すぎると接触抵抗が高くなり、補助極自体の接地抵抗が大きくなって測定値に影響します。地面が固い場合は、補助極の周囲に少量の水を注いで土壌との接触をよくする「水まき法」が現場では広く使われています。
また、補助極の配置方向も重要で、被測定接地極と一直線上に並べる「一直線配置」が基本です。直角や斜めに配置した場合、補助極同士が互いの電流ループに干渉することがあります。一直線配置が原則です。
配線には接地抵抗計に付属の測定リード線を使いますが、長さが不足する場合は延長できます。ただし、リード線が長くなると線路抵抗やノイズを拾いやすくなるため、できるだけ低抵抗の太いケーブルを使い、地面に直接這わせないようにすることで精度を保てます。
実際の測定手順を順番に確認しましょう。アナログ式の場合、各ステップで計器の状態を目視確認しながら進めることが、デジタル式にはない「確かさ」につながります。
まず、端子の接続を確認します。計器本体のE(アース)端子を被測定接地極に、P端子を電圧補助極に、C端子を電流補助極に接続します。端子を間違えると誤った値が表示されるだけでなく、計器内部に過電流が流れる可能性があるため注意が必要です。
次に電池チェックを行います。アナログ計器では「BATT」または「電池チェック」ポジションにレンジを切り替えて針が基準位置(BATTマーク)に達するか確認します。電池が弱いと発振電圧が低下し、特に低抵抗域(1Ω以下)で著しい測定誤差が出ます。
ゼロ調整後、GALVスイッチで迷走電流を確認し、問題がなければ測定ボタン(PRESSまたはMEAS)を押します。針が振れたら、レンジ切替ダイヤルで針が目盛りの中央付近(フルスケールの1/3〜2/3の範囲)に来るようにレンジを選びます。針が右端に振り切れた状態や左端にほとんど振れない状態では読み取り誤差が大きくなります。中央付近で読むのが条件です。
目盛りの読み方は、針の先端が指す目盛り線の値をそのまま読みます。対数目盛りの場合、たとえば「×1」レンジで針が「5」を指せば5Ω、「×10」レンジなら50Ωです。視差(パララックス)による読み誤りを防ぐため、目の位置を針の真上から読むことが大切で、斜めから見ると0.5〜1目盛り分の読み誤りが生じます。意外ですね。
電気設備技術基準(電技解釈)では、低圧電路の接地(D種接地)は100Ω以下、高圧設備のC種接地は10Ω以下と規定されています。測定値がこれらの基準値を超えている場合は、接地極を追加打設するか、接地線を延長して基準値以下に収める対応が必要です。
参考:電気設備の技術基準の解釈(経済産業省)
電気設備に関する技術基準を定める省令・解釈(経済産業省)
接地抵抗の値は固定された数値ではなく、季節や気候によって大きく変動します。これは多くの現場作業者が見落としやすいポイントです。
土壌の抵抗率(大地抵抗率)は水分量と温度に強く依存しており、夏の湿潤期には低く、冬の乾燥・凍結期には高くなります。実測データでは、同一の接地極でも夏季と冬季で抵抗値が2〜5倍変化する事例が報告されています。東北・北海道の凍結地域では冬季に10Ωだった接地が、夏季には3Ω以下になるケースもあります。
雨天直後の測定は「有利な条件での測定」になりやすいため、竣工検査や定期点検では晴天が2〜3日続いた後に測定することが推奨されています。逆に、法的に問題のある数値かどうかを判断する検査では、最も厳しい条件(乾燥期・冬季)での測定が信頼性の高い評価につながります。乾燥期の測定が原則です。
土壌の種類も抵抗率に大きく影響します。たとえば湿った粘土質は大地抵抗率が20〜100Ω・m程度と低いのに対し、乾燥した砂地や岩盤では1,000〜10,000Ω・m以上になることがあります。これは粘土質と砂地の比較で最大100倍もの差があるということです。砂地の多い地域で施工する電気工事では、接地棒を複数本並列に打設したり、「低抵抗接地材(接地抵抗低減剤)」を使用する工法が一般的です。
低抵抗接地材としては、ベントナイトを主成分とした製品や、炭素系の導電性粉末を混合した製品が市販されています。これらを接地棒の周囲に充填することで、大地との接触面積を疑似的に拡大し、乾燥期でも安定した低抵抗を維持できます。こうした製品は1袋2,000〜5,000円程度で、ホームセンターや電気材料店で入手できます。接地抵抗が基準値をギリギリ超えてしまう現場では、まず試してみる価値があります。
参考:一般社団法人 日本電気協会「接地工事の施工と管理」
一般社団法人 日本電気協会(接地工事・電気設備関連の標準・出版物)
アナログ式接地抵抗計は適切なメンテナンスを行えば10年以上現役で使える計器です。しかし、保管方法や校正の頻度を誤ると、「見た目は正常なのに測定値が常にズレている」という状態になりやすい道具でもあります。
保管の基本は、直射日光・高温多湿・強い振動を避けることです。計器内部の発振回路に使われているコンデンサや電池は、高温環境で急速に劣化します。夏場に車のトランクに放置すると、内部温度が60℃以上になることもあり、電池液漏れや回路劣化の原因になります。車内保管は避けるのが基本です。
校正については、業務で継続的に使用する計器は年1回の定期校正が推奨されています。JIS Z 8103「計測用語」および計量法に基づく校正証明書付きのサービスを提供している機関として、日本電気計器検定所(JEMIC)などが利用可能です。校正費用は機種によって異なりますが、一般的なアナログ接地抵抗計で1回あたり5,000〜15,000円程度が目安です。
測定リード線の状態確認も重要です。被覆が傷ついたリード線はショートや感電のリスクがあるほか、線路抵抗の増加で測定精度にも影響します。定期的にリード線を目視確認し、断線や被覆劣化が見られたら交換するのが安全です。リード線の交換は計器メーカーの純正品を使うことで、端子との接触抵抗を一定に保てます。
補助極(アース棒)のサビも見落としやすい劣化箇所です。鉄製の補助極は使用のたびに土中で酸化し、補助極自体の接地抵抗が高くなっていきます。補助極のサビがひどい場合は紙やすりで磨くか、ステンレス製の補助極(1本500〜1,500円程度)に交換することで安定した測定が維持できます。これだけで測定誤差が改善することも珍しくありません。
参考:日本電気計器検定所(JEMIC)公式サイト
日本電気計器検定所(JEMIC)|電気計器の検定・校正サービス