

リニアモーターカーは車輪を使わないのに、時速500kmを超えて走ります。
「リニアモーター」という言葉を聞いたとき、多くの人が真っ先に思い浮かべるのはリニアモーターカーです。しかし、リニアモーターそのものが何かを正確に説明できる人は、意外と少ないのが現実です。
まず「モーター」とは、電気のエネルギーを動きのエネルギーに変える装置のことです。扇風機や洗濯機、電車など、日常生活のあらゆる場面でモーターは使われています。ふつうのモーターは「回転」する仕組みになっています。軸を中心にグルグルと回ることで、プロペラを回したり車輪を動かしたりしています。
では「リニア(Linear)」とはどういう意味でしょうか?
「リニア」は英語で「直線の」という意味です。つまりリニアモーターとは、「回転ではなく直線方向に力を生み出すモーター」のことです。ふつうのモーターを筒状に丸めたものを想像して、それをハサミで切って平らに広げたような形、と考えるとイメージしやすいです。
丸めたものを広げる、というのがポイントです。
回転運動を直線運動に変換することで、車輪やギアなどの摩擦を生む部品がほぼ不要になります。これが、リニアモーターカーが車輪なしで猛スピードを出せる理由の出発点です。小学生に説明するときは「くるくる回るモーターを、ぺたんと平らにしたもの」と言うと伝わりやすいです。
リニアモーターが動く原理は、磁石の「引き合う力」と「反発する力」です。これは基本です。
磁石には必ずN極とS極があります。異なる極(N極とS極)は引き合い、同じ極(N極同士、S極同士)は反発し合う。この小学校でも習う性質を、非常に精密にコントロールすることで、車体を前に動かしているのです。
リニアモーターカーの場合、車体の側面と地上側のガイドウェイ(走行路)の両方に超電導磁石と電磁石が取り付けられています。地上側の電磁石に流す電流の向きを高速で切り替えることによって、「前方に引っ張る力」と「後方から押し出す力」が交互に発生し、車体が前進し続けます。
ここで重要なのが「電流の切り替え」です。
たとえば、あなたが誰かに「前に進んでほしいな」と思ったとき、前から引っ張りながら同時に後ろから押すとより速く進めますよね。リニアモーターはまさにその状態を、コンピュータ制御で毎秒何十回も繰り返しています。これがリニアモーターの推進力の正体です。
電流の切り替えタイミングが0.001秒単位でずれると、推進効率が大幅に落ちます。これは使えそうです。逆に言えば、精密な制御技術こそがリニアの速さを支えているということです。
| 種類 | 動き方 | 摩擦の有無 | 最高速度(目安) |
|---|---|---|---|
| ふつうの電車 | 車輪が回転 | あり | 時速約320km |
| リニアモーターカー | 磁力で直線移動 | ほぼなし | 時速約600km |
リニアモーターカーの最大の特徴のひとつが「浮いて走る」ことです。車輪がないのに、なぜ地面に落ちないのでしょうか?
その答えが「超電導磁石」です。
超電導とは、特定の物質を非常に低い温度(マイナス269度前後)に冷やしたとき、電気抵抗がゼロになる現象のことです。電気抵抗がゼロになると、電流を流し続けても熱が発生しないため、非常に強力な磁力を長時間維持できます。JR東海のリニア中央新幹線では、液体ヘリウムを使って車体側の超電導コイルを冷却しています。
強力な磁石が生み出す反発力によって、車体は走行路(ガイドウェイ)から約10cm浮き上がります。
10cmというのは、ちょうどはがきの横幅と同じくらいです。たった10cmの隙間で時速500kmを超えるのですから、その制御技術の精密さは驚異的です。この浮上によって車輪との摩擦がなくなるため、高速走行時の騒音や振動が大幅に減少し、エネルギー効率も上がります。
ただし、停車時や低速時(時速150km以下)は磁力だけでは浮けないため、補助輪が使われます。浮いているのは高速走行中だけ、というのが原則です。
超電導技術は、リニアだけでなくMRI(医療用磁気共鳴画像装置)などにも応用されている技術です。リニアモーターカーは、医療や宇宙開発と同じ最先端技術の上に成り立っているわけです。
リニアモーターの仕組みを理解したところで、実際にどんな乗り物として使われているのかを見てみましょう。
JR東海が建設を進めているリニア中央新幹線は、東京(品川)から大阪(新大阪)を結ぶ路線です。全長は約438kmで、現在の東海道新幹線の営業距離と近い数字ですが、かかる時間はまったく違います。
現在、東京〜大阪間を新幹線(のぞみ)で移動すると約2時間30分かかります。
リニア中央新幹線が全線開業すると、東京〜大阪間がわずか約67分になる見込みです。東京〜名古屋間は約40分です。これは、東京から名古屋まで、今の新幹線の約3分の1の時間で到達できるということです。
🚄 速さのイメージ比較
| 区間 | 新幹線(のぞみ) | リニア中央新幹線 |
|------|----------------|----------------|
| 東京〜名古屋 | 約1時間40分 | 約40分 |
| 東京〜大阪 | 約2時間30分 | 約67分 |
最高速度は時速505km(営業運転ベース)を目標としており、これは東海道新幹線(最高時速285km)の約1.8倍です。なお、試験走行では2015年に時速603kmという世界記録を樹立しています。
ただし、品川〜名古屋間の開業は静岡県内のトンネル工事に関する問題などで遅延が続いており、2026年時点でもまだ開業していません。大阪延伸はさらに先になる見通しです。リニアは「もうすぐ乗れる」わけではない、という現実も知っておくと良いでしょう。
上記のJR東海公式ページでは、リニア中央新幹線のルートや開業見通し、超電導リニアの技術概要が日本語で詳しく解説されています。H3セクション「路線と速度」の参考として確認できます。
リニアモーターの仕組みは、実は家庭でも簡単な実験で体感できます。完全に同じものを再現するのは難しいですが、「磁力で動く直線運動」の原理を肌で感じることが可能です。
最も手軽な実験が「磁石列車」と呼ばれるものです。
用意するものは、単3電池1本・ネオジム磁石4個・銅線コイルだけです。銅線をレール状に巻き、その中に電池の両端にネオジム磁石をつけたものを入れると、電磁誘導の力で電池が自走します。これはリニアモーターの「コイルと磁石の組み合わせで推進力を生む」という基本原理と同じ仕組みです。
この実験の材料費は、100円ショップとホームセンターで揃えれば合計500円以下です。
ネオジム磁石の強さに注意が必要です。指を挟むと骨折することもあるほど強力なので、小学生が行う場合は必ず大人が付き添いましょう。また、精密機器やクレジットカードの近くでは使用しないでください。
この実験を夏休みの自由研究にする場合、「リニアモーターの仕組みと磁石列車の関係」というテーマでまとめると、理科の観察・実験・考察の3点セットが揃うため、非常に評価されやすいテーマになります。
📌 実験で使える「磁石列車」の材料まとめ
| 材料 | 入手場所 | 目安費用 |
|------|---------|---------|
| 単3電池 | コンビニ・100均 | 100円前後 |
| ネオジム磁石(小)× 4個 | ホームセンター | 200〜300円 |
| 銅線コイル | ホームセンター | 100〜200円 |
実験の様子を動画で撮影してまとめると、自由研究としてより伝わりやすい発表ができます。スマートフォンで撮影してスローモーション再生にすると、電池が動き出す瞬間が視覚的にわかりやすく確認できます。これは使えそうです。
上記のJST(科学技術振興機構)が提供するページには、小中学生向けの科学実験のガイドラインが掲載されており、リニアモーター関連の実験をまとめる際の参考になります。

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