

収納スペースが満杯なのに部屋が散らかるのは、収納量ではなく「モノの稼働率」が低いからです。
オランダのシェアリングサービス「peerby」の調査によると、家の中にあるモノの8割は月1回も触れられていないというデータがあります。人の家の持ち物は1人あたり平均1,500アイテム(段ボール箱にして約15箱分)といわれており、そのうち月1回以上使うモノは、わずか2割程度に過ぎません。
これは意外な数字です。
残りの8割は、思い出の品や季節外れのモノ、お客さん用の食器など、"何らかの理由で置いてあるモノ"が大半を占めています。さらに衝撃的なのは、株式会社サマリーが関東在住600人を対象に行った調査で、「月1回以上使うモノが収納の5割以上ある」という理想の状態を達成できていた人は、全体のわずか9%しかいなかったという結果です。
9%という数字は少ないですね。
押入れやクローゼットの稼働率が低いと、経済的にも損をしています。収納率7%の部屋で月10万円の家賃を払っている場合、収納スペースに相当する家賃は月7,000円。もし収納の7割が使っていないモノで埋まっているとすれば、毎月約5,000円を「死んだスペース代」として払い続けていることになります。年間では6万円もの出費です。
つまり、稼働率の向上は節約にも直結します。
収納稼働率の改善は「捨てる・捨てない」の問題ではありません。「使っているモノ」と「使っていないモノ」を明確に分けて、それぞれに適切な置き場所を与えることが、取り組みの本質です。まずは自分の収納の現状を正直に把握することから始めましょう。
参考:家の中のモノの稼働率についての詳細データ・考え方
家の中の8割のモノは、月1回も触れられていない(note)
収納稼働率の向上に向けた最初の取り組みとして、手持ちのモノを使用頻度別に3つのランクに仕分けることが効果的です。整理収納の現場でよく使われるのが「1軍・2軍・3軍」という分け方で、これが定着すると収納の動かし方が根本から変わります。
分類の目安は次のとおりです。
| ランク | 使用頻度の目安 | 置き場所の目安 |
|---|---|---|
| 🥇 1軍 | 週1回以上・毎日使う | ゴールデンゾーン(腰〜目線の高さ) |
| 🥈 2軍 | 月1回〜数回程度 | 腰下の棚・引き出し下段など |
| 🥉 3軍 | 年数回・季節限定 | 目線より高い棚・押入れ上段・別スペース |
この仕分けが大切です。
特に重要なのは「3軍をどこに置くか」です。3軍のモノがゴールデンゾーンを占拠してしまっていると、1軍のモノが出し入れしにくい場所に追いやられ、結果として収納スペース全体の稼働率が下がってしまいます。よく「収納スペースはあるのに片付かない」と感じる方は、このランク逆転が起きているケースがほとんどです。
仕分けを行う際は、いきなり大規模に行う必要はありません。まずはリビングや毎日使うキッチン周りなど、「よくいる場所」の収納ひとつから始めるのがおすすめです。古堅純子氏(幸せ住空間セラピスト)も「よくいる場所の収納の稼働率から上げると、散らかりにくい暮らしが実現できる」と述べており、場所を絞って取り組むことの重要性を強調しています。
また、仕分けの基準に迷ったときは「直近1ヶ月で1回でも使ったか」というシンプルな問いが判断の軸になります。使っていなければ2軍以下と判定してOKです。
ゴールデンゾーンとは、立った状態で無理なく手が届く「腰の高さ〜目線の高さ」の範囲を指します。大人の場合、床から約75cm〜150cmほどの範囲がこれにあたります。身長によって多少異なりますが、しゃがまず、背伸びもせずにモノを出し入れできる高さが基本です。
ゴールデンゾーンの活用が稼働率向上の核心です。
この範囲にモノを収納すると、「取り出す→使う→戻す」という動作がスムーズにつながるため、自然と使う頻度が上がり、かつ元の場所に戻しやすくなります。逆に、使いたいモノが高すぎる棚や奥深い場所に入っていると、面倒でつい出しっぱなしにしてしまいます。これが「出しっぱなし」問題の根本原因です。
さらに、家族の身長が異なる場合は「誰が主に使うか」を基準にゾーンを決めることが大切です。子どものおもちゃは子どもがしゃがんで取れる高さに置く、料理担当者の手が届きやすい高さに調理道具を置くなど、使う人に合わせた設定が稼働率向上につながります。
ゴールデンゾーンにあるモノが「本当によく使うモノ」だけになったとき、収納の稼働率は自然と高まります。
参考:ゴールデンゾーンを意識した収納づくりのポイント
片付け上手は知っている!ゴールデンゾーンを意識した収納作り(さくらリフォーム)
モノをゴールデンゾーンに並べ直しただけでは、数週間後にはまた元の状態に戻ってしまうことがあります。稼働率向上を「一時的な片付け」で終わらせず、継続させるための取り組みが「定位置管理」と「ラベリング」です。
定位置管理とは、すべてのモノに「住所(定位置)」を決めることを指します。住所が決まっていれば、使ったあとに「どこに戻せばいいか」を考えずに済むため、片付けのハードルが大幅に下がります。これが基本です。
定位置を決める際のポイントは以下の3つです。
ラベリングは少し手間に感じるかもしれません。しかし整理収納アドバイザーとして毎年100人以上のご自宅を訪問している専門家は「散らかっている家ほど収納グッズが多い」と口をそろえています。これは意外ですね。収納グッズを買い足す前に、今あるスペースに定位置を与えることのほうが、稼働率向上への近道なのです。
また、ラベリング後に「このモノ、ラベルを貼るほど使ってない…」と気づくことも少なくありません。それはモノを見直すきっかけになり、不要なモノを手放す判断につながります。定位置管理とラベリングは、稼働率向上のための「仕組みづくり」です。
収納稼働率の向上を考えるとき、多くの人は「ゴールデンゾーンをどう使うか」に注目します。しかし実は、稼働率向上の鍵は「稼働率の低いゾーンをどう活用するか」にも隠れています。
稼働率の低いゾーン、つまり天井近くの高い棚や押入れの奥、床下収納などのデッドスペースこそ、うまく機能させると収納全体のパフォーマンスが大きく変わります。これが見落とされがちな視点です。
具体的な活用例を見てみましょう。
古堅純子氏が提案する「バッファゾーン」という考え方も参考になります。収納スペースに余裕が生まれると「バッファ(緩衝地帯)」として機能し、急に増えたモノの一時置き場として使えるため、リビングが散らかりにくくなるという効果があります。
稼働率の低いゾーンを「死んだスペース」にするのではなく、「年1〜2回アクセスするモノの定位置」として積極的に設計することで、全体の稼働率が底上げされます。稼働率が低い=使えないスペース、ではないのです。
「8割収納」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。収納スペースを満杯にせず、2割の余白を残しておくことで、モノが増えても崩れにくく、出し入れもしやすい状態が続きます。いっぱいに詰め込むと稼働率は見た目の上では高くなりますが、実際には取り出しにくくなって使われなくなるという矛盾が生まれます。余白が条件です。
参考:バックヤード収納とモノの稼働率の考え方
よく使うものと使わないものを分ける、「バックヤードの収納法」(クロワッサン)
収納の稼働率を上げる取り組みは、一度やって終わりではありません。暮らしの変化とともに、モノの「使用頻度」も変わります。半年前には毎週使っていたモノが、今は月1回しか使わなくなっていることもよくあります。つまり、定期的な見直しが稼働率を維持するための重要な取り組みです。
見直しのタイミングとして最適なのは、季節の変わり目です。年4回(春・夏・秋・冬)の衣替えや大掃除のタイミングに合わせて収納の中身を確認すると、自然とランクの見直しができます。
見直しのときに「捨てるかどうか迷う」場面は必ず出てきます。そのときに使える判断軸は「直近1年で1回でも使ったか」です。一度も使っていなければ、3軍の中でもさらに処分を検討すべきモノと位置付けてみましょう。
また、見直しの際に「収納グッズ自体が邪魔になっていないか」もチェックすることをおすすめします。整理収納アドバイザーが現場でよく目にする光景として「収納グッズが増えすぎて、それを収納するスペースが必要になった」というケースがあります。グッズを買い足す前に、まず今あるモノを減らして定位置を見直すことが先決です。
継続的な見直しが稼働率を守ります。
仕組みとして取り組みを回すためには、「見直しデー」を年4回カレンダーに書き込んでしまうのが効果的です。忘れにくい「衣替えのタイミング」に合わせてスマートフォンのリマインダーを設定するだけで、習慣化のハードルが大幅に下がります。稼働率の高い収納は、一度作ったら終わりではなく、定期的なメンテナンスによって維持されるものです。
参考:整理収納と職場改善の取り組み事例
整理収納で職場が劇的に改善!8年間の取り組みとその成果(note)