時間研究・動作研究で収納の無駄をなくす習慣術

時間研究・動作研究で収納の無駄をなくす習慣術

時間研究・動作研究を収納に活かす方法と効果

収納を整えたつもりでも、毎日どこか「探している」あなたは年間150時間も損しています。


⏱️ この記事でわかること
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時間研究・動作研究とは何か

工場で使われるIE手法の基本概念と、収納に活かせる考え方をわかりやすく解説します。

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収納への具体的な応用ステップ

サーブリッグ分析・ECRSの原則・動作経済の原則を、自宅の収納改善にあてはめる手順を紹介します。

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すぐ使える実践テクニック

動線・置き場所・収納グッズ選びまで、今日から実行できる改善アイデアをまとめました。


時間研究・動作研究の基本:収納にも通じる考え方

「時間研究(タイムスタディ)」とは、作業を細かいステップに分解し、それぞれにかかる時間を測定して効率化を図る手法です。もともとは製造業の現場で、無駄な工程を排除し標準時間を定めるために使われてきました。定義としては「作業を要素作業または単位作業に分割し、その遂行に要する時間を測定する手法」(JIS Z8141:5204)とされています。20世紀初頭にアメリカの技術者フレデリック・テイラーが科学的管理法として提唱し、現在も製造業を中心に幅広く活用されています。


一方「動作研究」は、作業者が行うすべての動作を調査・分析し、最適な作業方法を見つけ出す手法体系です。こちらはギルブレス夫妻によって確立されました。つまり時間研究です。


この2つはセットで活用されます。まず時間研究で「どの作業に時間がかかっているか」を把握し、バラつきが大きい作業に対して動作研究を適用して動作レベルで改善につなげる、という流れです。工場での改善手法に聞こえますが、考え方のコアは「無駄な動きを見つけて省く」こと。これは自宅の収納でもまったく同じです。


たとえば朝の支度を思い浮かべてください。毎朝「あれ、鍵どこ?」「あのハンカチはどこだっけ?」と探している時間、これは時間研究でいう「ムダ(非付加価値作業)」にあたります。あるデータでは、人は1日平均20分を探し物に費やしており、年間に換算すると約150時間にも達するとされています。時給1,500円換算なら22万5,000円分の時間損失です。これは見逃せない数字ですね。


収納の問題はセンスや性格の話ではなく、動作と時間の問題として捉えることができます。そのフレームワークが「時間研究・動作研究」なのです。




参考:時間研究の定義や手法についての詳しい解説(日本IE協会)
時間研究 | 現状を分析するIEの手法 | 日本IE協会


時間研究を収納に使う:「探す」動作を記録する

時間研究を収納に応用する第一歩は、自分の動作を「記録すること」です。工場では作業者にストップウォッチを当てて時間を計測しますが、家庭では少しゆるやかに実践できます。


まず、1日の生活の中で「物を探した瞬間」を記録してみましょう。スマートフォンのメモアプリに「何を、どこで、何秒探したか」を書くだけで構いません。1週間続けると、驚くほどパターンが見えてきます。これが時間研究の核心、「要素作業ごとの時間バラつきの把握」です。


時間研究では、作業を次の3種類に分類します。


種類 説明 収納での具体例
✅ 価値作業 本来の目的を達成する動作 物を使う・しまう
⚠️ 付随作業 価値作業を支えるが非効率な作業 物をカゴから取り出す・移動する
❌ ムダ まったく価値を生まない動作 物を探す・置き場所を迷う


収納においてゼロにしたいのは「❌ムダ」の「探す」時間です。これが最も実行しやすい改善目標となります。


記録したデータを見ると「キッチンのどこかに入れたキッチンバサミが見つからない」「引き出しを3回開け直して文具を探す」といった動作が浮かびあがります。これこそが時間研究でいう「バラつきが大きい要素作業」です。バラつきが大きい=毎回かかる時間が違う=仕組みが定まっていない証拠。そこが改善の起点になります。


具体的な記録の目安としては、1回の探し物にかかる時間が30秒以上なら「要改善サイン」と考えると分かりやすいです。30秒の探し物が1日4回あれば、1日2分、1年で約730分(約12時間)のロスです。塵も積もれば、です。




参考:標準時間の考え方と余裕率の目安について(MONOist)


動作研究(サーブリッグ分析)で収納の「無駄動作」を見える化する

動作研究の中心にある「サーブリッグ分析」は、ギルブレス夫妻が考案した手法で、人間の動作をすべて18種類の基本要素(サーブリッグ)に分解して分析します。「ギルブレス(Gilbreth)」のつづりを逆にした造語で、古典的かつ今なお現役の分析手法です。


18の要素は3種類に分類されます。


- 第1類(付加価値を生む動作):手を伸ばす・つかむ・運ぶ・放すなど
- 第2類(付加価値を生まないが必要な動作):検査する・前置き・保持など
- 第3類(排除すべき無駄な動作):探す・選ぶ・避けられない遅れなど


収納で直接問題になるのは「第3類」の「探す(Search)」と「選ぶ(Select)」です。この2つがあなたの毎日の収納動作に潜んでいます。


例えば「引き出しを開ける→中をじっと見る→目当ての物を探す→やっと取り出す」という動作を分解すると、「探す」と「選ぶ」が間に挟まっています。理想の収納とは、「引き出しを開ける→すぐつかむ→使う」と、第3類のサーブリッグを完全に省いた状態です。これが動作研究でいう「最適な作業方法」に当たります。


実際に試してみてほしいのが「1アクション収納」の視点です。物を取り出すために必要な動作数を数えてみてください。扉を開ける、カゴをどかす、フタを外す、その先に目当ての物がある──このような「3アクション以上」が常態化している収納は、動作研究的に見て改善の余地ありです。1アクションで取り出せる状態を目標にすると、サーブリッグ的なムダが一気に減ります。


「探す」動作が減るだけで、朝のルーティンが格段にスムーズになります。




参考:サーブリッグ分析の概要と18の基本動作(日本IE協会)
動作研究 | 現状を分析するIEの手法 | 日本IE協会


ECRSの原則を収納改善に使う:排除から始める4ステップ

時間研究・動作研究の改善フレームワークとして特に実用的なのが「ECRSの原則(イクルス)」です。これは改善の効果が高い順に4つのアクションを検討する原則で、収納の見直しにそのまま使えます。


- E(Eliminate)排除:その作業・物をなくせないか?
- C(Combine)結合:まとめられないか?
- R(Rearrange)交換:場所や順序を入れ替えられないか?
- S(Simplify)簡素化:もっとシンプルにできないか?


この順番には意味があります。まず「排除」から考えることが最も効果が大きく、最後の「簡素化」は改善効果が最も小さいとされています。


収納に当てはめると、次のようになります。


| 原則 | 収納での問いかけ | 具体的なアクション |
|------|-----------------|-------------------|
| 🚫 排除 | この物、本当に必要? | 使っていない物を手放す |
| 🔗 結合 | 似た用途の物をまとめられる? | 文房具コーナーを1カ所に集約 |
| 🔄 交換 | 置き場所を変えたら動線が短くなる? | よく使う物を手の届く高さに移動 |
| ✂️ 簡素化 | 取り出しをもっと楽にできる? | フタなしボックスへの変更 |


ここで多くの人がやりがちな間違いがあります。いきなり収納グッズを買って「S(簡素化)」から始めてしまうことです。しかし物が多いまま収納を整えても、すぐリバウンドします。まず「E(排除)」で物を減らすことが、時間研究・動作研究的に正しい手順です。


排除を終えてから「C(結合)」に進みます。関連する物を近くにまとめることで、1つの目的のために複数の場所を移動するという非効率な動作が消えます。料理道具はコンロ周辺にまとめる、文房具はデスク横に集める、といった配置がこれにあたります。同じ目的で使うものはそばに置く、が基本です。


「R(交換)」では、よく使う物を最も取り出しやすい「ゴールデンゾーン」(目線から腰の高さ、奥行き30cm以内)に移動させます。使用頻度が高いのに棚の最上段・最下段にある物があれば、今すぐ交換のチャンスです。そして「S(簡素化)」では、ラベルを貼る・仕切りを入れる・フタを取る、など取り出す動作そのものを楽にする工夫を加えます。




参考:ECRSの4原則の解説と優先順位について(KEYENCE)
ECRSの4原則で始める、引き算の改善 | KEYENCE


動作経済の原則で「疲れない収納」を設計する独自アプローチ

時間研究・動作研究の理論には「動作経済の原則」という考え方もあります。これは「最小の疲労で最大の成果を上げる動作を実現するための法則」で、製造業だけでなく生活動作にも応用できます。4つの基本原則は次のとおりです。


1. 基本動作の数を減らす(不要な動作を省く)
2. 動作の距離を短くする(移動距離の最小化)
3. 動作を楽にする(無理な姿勢・持ち替え動作をなくす)
4. 動作を同時に行う(両手活用・並行作業を増やす)


これを収納に落とし込むと「疲れない収納設計」というコンセプトになります。多くの収納術は「見た目をきれいにする」ことに焦点を当てますが、動作経済の視点では「使う人の身体への負担を減らすこと」が中心になります。これが独自性のある視点です。


「動作の距離を短くする」原則でいえば、キッチンでよく使う調味料は立ったままゼロ歩で手が届く位置に置くことが理想です。冷蔵庫から調味料棚まで毎回5歩以上歩くなら、それは収納の問題です。平日毎日料理をする人なら、1年で約1,000回以上の無駄な移動が生まれている計算になります。


「基本動作の数を減らす」観点では、よく使うバッグや財布の収納が参考になります。帰宅後に「バッグをどかす→引き出しを開ける→鍵を入れる→引き出しを閉める→バッグを戻す」という流れは5動作です。これを「玄関のフックにかけたホルダーにそのまま鍵を置く」という1動作にするだけで、毎日10秒の節約、年間60分以上の短縮につながります。


「動作を楽にする」観点で見ると、重いストックを高い棚に収納するのは動作経済に反します。重いものは腰の高さに、軽いものは上・下という原則を守るだけで、長年の収納の「しんどさ」が解消されます。


収納は一度作って終わりではなく、生活スタイルに合わせて定期的に見直すことが必要です。




参考:動作経済の4つの基本原則の解説(KEYENCE)
楽することは経済的!?「動作経済の原則」とは | KEYENCE