

受け入れ事業場の73%が、法令違反で行政指導を受けています。
外国人技能実習制度は、1993年に法制化された制度です。開発途上国の人材が日本で技能・技術・知識を習得し、帰国後にその力を母国で活かすことを目的としていました。国際貢献の一環として設計された仕組みです。
しかし実態は、日本国内の人手不足を補う「労働力確保の手段」として運用されているケースが広く見受けられました。制度の「建前」と「本音」が大きくかけ離れていたことが、長年にわたって問題視されてきた核心です。
制度の対象となる外国人には、いくつかの要件があります。18歳以上であること、単純作業ではない技能を習得しようとしていること、帰国後に習得技能を活かせる職業に就く予定があること、などが主な条件です。受け入れられる職種も限られており、農業・漁業・建設・食品製造・繊維衣服など、91職種168作業(移行対象職種)が設定されています。
受け入れ形態は、主に「団体監理型」と「企業単独型」の2種類があります。多くの中小企業が活用しているのは、監理団体(協同組合など)を介して実習生を受け入れる「団体監理型」です。この場合、毎月の監理費や送り出し機関への費用が継続的に発生します。
現時点では最長5年間(1号・2号・3号の合計)の在留が認められています。これは、コンビニのアルバイトを5年分まとめて雇用するイメージに近い長期関係です。ただし2027年4月からは制度が大きく変わるため、今後の受け入れを検討している企業は早めの情報収集が必要です。
厚生労働省:外国人技能実習制度の概要(制度の目的・仕組みの全体像が確認できます)
技能実習生を1人受け入れるのに、初年度だけで51万〜92万円の費用がかかります。これはA4コピー用紙1箱が500円とすると、その1,000〜1,840箱分に相当する金額です。決して小さな出費ではありません。
費用の内訳をもう少し具体的に見ていきましょう。主な費目は以下のとおりです。
| 費目 | 目安金額 |
|---|---|
| 監理団体への初期費用 | 15万〜25万円 |
| 渡航費・入国費用 | 10万〜20万円 |
| 入国後講習費・住居準備費 | 10万〜30万円程度 |
| 月額監理費(継続) | 3万〜5万円/月・人 |
月額の監理費3万〜5万円は「継続コスト」として見落とされがちです。1年間では36万〜60万円にのぼります。5年間雇用すれば最大300万円超の費用が毎月積み上がっていくことになります。これは中小企業にとって、相当な固定費の増加です。
また、実習生が来日前に支払った費用の調査では、ベトナム人実習生で平均65万6,014円、中国人実習生で57万8,326円という結果も出ています。実習生自身も多額の借金を抱えて来日しているケースが多く、劣悪な環境では失踪リスクが高まります。失踪が起きると企業側の管理責任が問われる可能性もあるため、受け入れ体制のコストと品質は直結しています。
受け入れを検討する際は、初期費用だけでなく月次コストと5年間のトータル費用を計算してから判断することが基本です。見積もりは複数の監理団体に依頼し、比較することをおすすめします。
ウィルオブ・ワーク:技能実習生の受け入れ費用の相場と内訳(初年度費用の目安がわかりやすく整理されています)
73.2%、という数字を見てどう感じますか?これは「ごく一部の悪質な業者」の話ではありません。厚生労働省が令和6年(2024年)に実施した立ち入り調査で、技能実習生が働く事業場1万1,355カ所のうち8,310カ所で労働基準関係法令違反が確認されました。過去最多の記録です。
業種別に見ると、建設が79.9%と最も高く、農・畜産(75.9%)、食料品製造(73.6%)と続きます。いずれも技能実習生の受け入れが多い主要業種です。これは深刻な状況ですね。
主な違反内容の内訳を見ると次のような傾向があります。
- 機械等の安全基準違反(最多):作業機械の安全カバーの不備など、安全衛生上のミス
- 労働時間の超過:法定労働時間を超えた残業の強要
- 割増賃金の未払い:時間外労働に対する割増賃金を支払わないケース
- 賃金からの過大控除:寮費・食費などの名目で不当に差し引くケース
違反は「悪意を持ってやっている」ケースだけではありません。社内ルールと法律の認識がズレていたり、外国人実習生に対して「日本人より少なくていい」という誤解があったりすることが原因のケースも多いです。
法令違反が発覚した場合のリスクは大きく、技能実習計画の認定取り消し・実習生の強制帰国・5年間の受け入れ禁止・公表処分、さらに悪質なケースでは刑事告発へと進む可能性もあります。受け入れ企業は、定期的な内部チェックと外部専門家(社会保険労務士など)によるコンプライアンス確認が条件です。
中村社会保険労務士事務所:違反率73.2%の詳細データ(令和6年調査結果の解説と企業が注意すべきポイントがまとめられています)
2024年6月、技能実習制度を廃止し新たな「育成就労制度」を創設する法律が国会で可決・成立しました。施行日は2027年4月1日です。これは外国人受け入れ制度における、30年に一度の大転換といえます。
技能実習制度との最大の違いは、制度の「目的」そのものが変わったことです。技能実習が「国際貢献・技能移転」を建前にしていたのに対し、育成就労制度は「外国人材の育成と確保」を明確な目的に掲げています。つまり、労働力として正直に位置づけた制度に切り替えるということです。
主な変更点を比較すると次のようになります。
| 比較項目 | 技能実習制度 | 育成就労制度(2027年〜) |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 国際貢献・技能移転 | 外国人材の育成・確保 |
| 在留期間 | 最長5年(1+2+2) | 原則3年(上限あり) |
| 転籍(転職) | 原則不可 | 1〜2年後に可能 |
| 監理機関の名称 | 監理団体 | 監理支援機関(新設許可制) |
転籍が1〜2年で可能になる点は、企業にとって大きなリスク要因にもなります。「1年後に別の会社に移られてしまうかもしれない」という不安を持つ企業も少なくありません。ただし裏を返せば、待遇や職場環境が整っている企業には良い人材が残り、劣悪な企業には人が集まらない、という健全な競争原理が働くことになります。
移行期間については、施行日(令和9年4月1日)時点で在籍中の技能実習生は引き続き技能実習制度のルールが適用されます。2号実習生は3号まで継続できますが、育成就労制度への横断的な移行はできません。つまり、今受け入れている実習生に関しては旧制度のまま最後まで対応する必要があります。
2026年9月1日からは育成就労計画の認定に係る施行日前申請が開始される予定です。早めの準備が不可欠です。
法務省 出入国在留管理庁:育成就労制度の公式ページ(制度の詳細・Q&A・施行スケジュールが確認できます)
技能実習生の失踪者数は、令和5年(2023年)に1万人を超えて過去最多を記録しました。令和6年(2024年)はやや低下したものの、依然として実習生全体の約1.2%が失踪しています。100人受け入れれば、1〜2人は失踪するリスクがあるということです。
失踪の主な原因として最も多く挙げられているのが「低賃金」です。法務省の調査では、失踪実習生の約67%が動機として低賃金を挙げていました。また、月収が10万円以下だったと回答した実習生も半数以上に上ります。実習生はベトナムや中国などから50万〜65万円以上の借金を抱えて来日しているケースが多く、手取りが少なければ生活が立ち行かず失踪につながります。
失踪が起きた企業側のリスクも大きいです。監督機関への報告義務が発生し、受け入れ継続の審査に影響します。再発防止計画の提出が必要になるケースもあります。
企業が今すぐ取り組める予防策としては、次の3点が効果的です。
- 賃金水準の確認:最低賃金はもちろん、同業種の日本人と同等以上の賃金設定になっているかを定期的にチェックする
- 生活相談窓口の整備:言語対応できる相談担当者を置くか、通訳サービスを活用して日常的な不安を早期に吸い上げる体制をつくる
- 定期的な個別面談:月1回程度、実習生と1対1で話す機会を設け、悩みや不満を業務外で吐き出せる場をつくる
「失踪された後」に対処するのではなく、「失踪したいと思わせない環境」をつくることが最も現実的な対策です。職場環境の整備が定着率の向上に直結します。
また、入国前から実習生の状況を把握できる「送り出し機関との連携強化」も重要です。信頼できる送り出し機関を選ぶことが、長期的なリスク低減につながります。監理団体を選ぶ際には、過去の失踪率や対応実績を数値で確認することをおすすめします。
外国人採用サポートサイト:技能実習生が失踪する理由と企業の予防対策(失踪理由の統計と具体的な対策が詳しくまとめられています)