fta 分析のやり方と手順を図解で徹底解説

fta 分析のやり方と手順を図解で徹底解説

fta 分析のやり方と手順を解説

FTAを始める前にまず知っておきたいことがあります。


🔍 この記事でわかること
🌳
FTA分析の基本と目的

故障の木解析(Fault Tree Analysis)とは何か、どんな場面で使うのかを初心者向けにわかりやすく解説します。

📋
FTA分析の具体的なやり方・手順

トップ事象の設定から論理記号の使い方、発生確率の計算まで、実務で使えるステップをまとめています。

⚖️
なぜなぜ分析・FMEAとの使い分け

FTAが向いている場面とそうでない場面を比較。現場での判断基準を具体的に紹介します。


fta 分析(故障の木解析)とは何か・基本の考え方

FTAとは「Fault Tree Analysis(フォールトツリー解析)」の略で、日本語では故障の木解析と呼ばれます。1961年にアメリカのベル研究所が核ミサイルの安全性評価のために開発した手法で、その後ボーイング社が航空機安全分析に採用して広まりました。現在では製造業を中心に品質保証・安全管理の現場で広く活用されています。


基本の考え方はシンプルです。「起きてほしくない最悪の事態(トップ事象)」を頂点に置き、そこから原因をツリー状に分解していきます。木を逆さにした形に見えることから「故障の木」と呼ばれているわけです。


つまりトップダウンで原因を掘り下げる手法です。


トップ事象には、たとえば「製品が出荷後に動作不良を起こした」「製造ラインが突然停止した」「顧客からクレームが入った」など、発生したくない事象を設定します。そこから「なぜそれが起きるのか」を論理的に展開していくことで、原因の全体像をツリー図として可視化できます。


FTAで特徴的なのは、論理記号(ANDゲート・ORゲート)を使って原因の因果関係を表現する点です。これにより「複数の要因が重なったときだけ起きる事故」と「どれか1つが起きれば発生する故障」を明確に区別できます。この論理的な構造こそが、FTAが複雑な問題の分析に強い理由です。


JIS規格(C5750-4-4:2011)にも記載された公式な解析手法です。


用語 意味
トップ事象(TE) 分析対象となる最も防ぎたい事象(頂点)
中間事象 トップ事象の原因として展開される事象
基本事象 これ以上分解できない最小単位の原因
非展開事象 情報不足などの理由でこれ以上展開できない事象
ANDゲート すべての下位事象が同時に起きたとき上位事象が発生
ORゲート いずれか1つの下位事象が起きたとき上位事象が発生


参考:FTA手法の基本やJIS規格における定義について詳しく説明されています。


故障の影響解析(FMEA)と、故障の木解析(FTA)の活用 - 日本機械工業連合会(機械振興会館)


fta 分析のやり方・6ステップの手順

FTA分析を最初から最後まで正しく進めるには、手順を守ることが重要です。ここでは実務でそのまま使える6つのステップを解説します。


ステップ1:前提条件を整理し、トップ事象を決める


FTAで最も大切なのが、このステップです。「動かない」という同じ故障でも、「購入直後から動かない(初期不良)」なのか「3年使用後に動かなくなった(経年劣化)」なのかによって、掘り下げるべき原因は全く異なります。前提が違えば、FTA全体が無意味になってしまいます。


いつ・どこで・どんな状態で発生したか、再現性はあるかを事前に確認しましょう。その上でトップ事象を「具体的かつ対策が技術的に可能なもの」として設定します。たとえば「製品Aが通電後5分で停止する」のように、できるだけ具体的に記述することがポイントです。


前提条件が命です。


ステップ2:一次要因を抽出する


トップ事象が決まったら、その直接的な原因となる一次要因を洗い出します。よく使われる分類の切り口は次のとおりです。


- 製品の構成要素(電源系統・制御系統・機構部など)で分類する方法
- 工程順(受入→加工→組立→検査など)で分類する方法
- 4M(Man:人、Machine:設備、Material:材料、Method:方法)で分類する方法


どの切り口で分類するかはケースによりますが、あらかじめフォーマットを準備しておくとスムーズに進められます。重要なのは、一次要因が相互に独立していることです。


ステップ3:二次要因以降をツリー状に展開する


一次要因からさらに「なぜそれが起きるのか」を繰り返し、二次・三次と階層を深めていきます。分解は「基本事象(これ以上分解できない原因)」に達するまで続けます。ビルの設計図を1フロアずつ詳細化していくようなイメージです。


この段階で「本当に二次要因がないか?」という視点を持ち続けることが重要です。思い込みで「これが原因だ」と決めつけると、本当の要因を見逃す可能性があります。客観的な意見も積極的に取り入れましょう。


ステップ4:論理記号(ANDゲート・ORゲート)を整理する


要因の抽出が終わったら、各事象の間にANDゲートかORゲートを正しく割り当てます。


- ORゲート:どれか1つが起きれば上位事象が起きる(例:「電源供給失敗」→「停電」または「配線断線」または「ブレーカー落下」のいずれか1つでも起きれば発生)
- ANDゲート:すべてが同時に起きたときだけ上位事象が起きる(例:「重大事故」→「メインシステム故障」かつ「バックアップ機能失敗」が重なって初めて発生)


ANDゲートの場所には安全設計上の「砦」があるということです。ANDゲートの数が多いほどシステムの信頼性は高まります。


ステップ5:判定を記入する


各要因に対して、現在の調査・検討状況をもとに判定を記入します。


- ○:原因の可能性が高い(要対策)
- △:可能性が残る(追加調査が必要)
- ×:原因ではないという根拠がある


この段階で全部の要因を△から○か×に絞り込む必要はありません。判定が難しい△の要因を可視化することで、次のステップの調査計画が立てやすくなります。


ステップ6:追加調査を計画し、対策を実行する


△が残った要因を切り分けるために、何の評価・実験・調査が必要かを計画します。FTAの作成はゴールではなく、あくまでスタートです。最終的に原因が特定できたら、確実に対策を実施し、その効果データを記録に残すことが重要です。


根拠資料と一緒にFTAを保存しておくことで、次回同様の問題が発生したときの初動対応が格段に速くなります。


参考:FTAの6ステップの進め方、論理記号の使い方、作成のコツが実例付きで解説されています。


FTAとは? 初心者必見!失敗しないFTAの作り方のコツ教えます - QCとらの巻


fta 分析で使うAND/ORゲートと発生確率の計算方法

FTA分析の強みの一つが、発生確率を定量的に計算できる点です。これはなぜなぜ分析にはない大きな特徴です。計算方法はゲートの種類によって異なります。


ANDゲートの計算式


ANDゲートは「すべての原因が重なったときだけ起きる」関係なので、各確率を掛け合わせます。


$$P(\text{上位事象}) = P(A) \times P(B)$$


例えば、「要因A(発生確率0.01)」かつ「要因B(発生確率0.05)」が同時に起きる確率は、


$$P = 0.01 \times 0.05 = 0.0005$$


つまり0.05%という非常に低い確率になります。安全設計においてANDゲートを増やす意味はここにあります。2つの独立した安全機能を設けることで、故障確率を劇的に下げられるわけです。これは保険を二重に掛けるイメージに近いです。


ORゲートの計算式


ORゲートは「どれか1つが起きれば発生する」関係なので、次の式で計算します。


$$P(\text{上位事象}) = 1 - (1 - P(A)) \times (1 - P(B))$$


例えば「要因A(発生確率0.1)」か「要因B(発生確率0.1)」のどちらかが起きる確率は、


$$P = 1 - (1 - 0.1) \times (1 - 0.1) = 1 - 0.81 = 0.19$$


つまり19%です。単純に足し合わせると20%になりますが、「両方同時に起きる場合の重複」を除くためにこの式を使います。ORゲートが多いほどリスクが積み上がるということです。


計算するために必要な条件


発生確率の計算を行うには、すべての基本事象の発生確率データが必要です。これには過去の故障データや信頼性試験結果の蓄積が必要になります。データが不十分な場合は定性的な分析(どの要因が危険かの優先順位付け)に留めることが多く、それでもFTAとしては十分に価値があります。


確率計算は「あれば使う」程度の認識でOKです。


fta 分析となぜなぜ分析・FMEAとの違いと使い分け

FTA分析と似た手法に「なぜなぜ分析」と「FMEA」があります。これらの違いを理解しておくと、現場でどれを使うべきかがすぐに判断できるようになります。


FTAとなぜなぜ分析の違い


最大の違いは「分析の方向性」です。なぜなぜ分析はすでに起きた問題から出発して根本原因を掘り下げるボトムアップ手法です。一方FTAは「起きてほしくない事象」を頂点に置き、論理的に原因を分解するトップダウン手法です。


なぜなぜ分析は紙とペンがあれば30分ほどで実施でき、専門知識も不要なため現場主導の改善活動に向いています。FTAは複数のシステムが絡む複雑な問題や、設計段階での予防的な分析に強みがあります。


| 観点 | なぜなぜ分析 | FTA |
|------|------------|------|
| アプローチ | ボトムアップ | トップダウン |
| 開始点 | 発生した問題 | 想定する障害 |
| 所要時間 | 30分〜1時間 | 数日〜数週間 |
| 定量分析 | 不可 | 故障確率を算出できる |
| 複雑なシステム | 限界あり | 網羅的に分析できる |
| 専門知識 | 不要 | 必要 |


FTAとFMEAの違い


FMEAは「個々の部品・工程の故障モードを列挙し、その影響を評価する」ボトムアップ型の手法です。未知の不具合を予防するための洗い出しに向いています。FTAは「重大な故障(既知の事象)を防ぐ」ためにトップダウンで原因を分析します。流用度の高い製品や、既に問題が顕在化している場合はFTAが適しています。


実務ではFMEAでトップ事象の候補を絞り込み、FTAでその原因を深掘りするという組み合わせが効果的です。


現場での使い分けの判断基準


- 単純な問題が発生した → なぜなぜ分析
- 複数システムが絡む複雑な問題が発生した → FTA
- 設計段階で未知のリスクを洗い出したい → FMEA
- 設計変更・新製品開発でリスクを事前評価したい → FTAまたはFMEA
- 故障確率を定量的に示す必要がある → FTA


2つの手法は組み合わせると最も効果的です。


参考:なぜなぜ分析とFTAの7つの観点による徹底比較と、現場での使い分け判断フローが詳しく解説されています。


なぜなぜ分析 vs FTA(故障の木解析)- 目的別の使い分けガイド - 現場コンパス


fta 分析を収納・整理整頓の問題解決に応用する独自視点

収納や整理整頓の悩みは、実は「なぜ片付かないのか」「なぜすぐ元に戻るのか」という問題分析の視点が欠けていることが多いです。FTAの考え方を収納の問題解決に応用すると、これまでとは全く違うアプローチで「散らかる根本原因」を発見できます。


たとえば「押し入れがいつも散らかる」という問題をトップ事象に設定してみましょう。一次要因として「定位置が決まっていない」「収納ルールが家族に共有されていない」「収納量が収納スペースを超えている」などが浮かびます。これらはORゲートでつながっています。つまりどれか1つでも起きれば散らかります。


次に「収納量が収納スペースを超えている」という一次要因を掘り下げると、「使用頻度にかかわらず同じ場所に収納している」「1年以上使っていないものが残っている」「新しいものを買ったが古いものを捨てていない」といった二次要因が出てきます。これを見ると「断捨離の習慣がない」という基本事象に行き着きます。


この分析が重要です。


FTAの視点で見ると、「収納グッズを買い足す」という対策は表面的な解決に過ぎず、「断捨離の仕組みを作る(例:年1回の見直しルールを設ける)」こそが根本的な対策だとわかります。また「定位置が決まっていない」という要因に対しては、ラベリングや色分けで「戻す場所がひと目でわかる仕組み」を作ることが有効な対策として浮かび上がります。


収納問題にFTAを使うメリットは、「原因の優先順位が見える」点です。ANDゲートで結ばれた原因は、複数の条件が重なって初めて問題が起きるため、1つを対策するだけで散らかりを防げます。逆にORゲートで結ばれた原因が多い場合は、どれか1つが残るだけで問題が再発します。この構造を知っておくと、対策の「費用対効果」が高い場所を選べるようになります。


収納の問題も根本原因から解決できます。


実際にFTAを収納分析に使ってみたい場合は、専用ソフトウェアを使わなくてもExcelや無料のマインドマップツール(XMindなど)で十分に作成できます。フリーフォーマットでツリーを書き出すだけで、問題の全体像が整理されて見通しがよくなります。まず「散らかる原因のトップ3」だけをトップ事象にして、シンプルなFTAを試してみることをおすすめします。


参考:FTAのフォーマット例・Excelを使った実際の作成方法について詳しく紹介されています。