

「HBWって、実は収納棚の素材選びで知らずに損している記号です。」
ブリネル硬さ試験は、1900年にスウェーデンの技術者ヨハン・オーガスト・ブリネルが考案した硬さ測定方法です。その記号が「HBW」であり、これはHardness(硬さ)・Brinell(考案者名)・Tungsten(タングステン)の頭文字を組み合わせたものです。
試験の仕組みはシンプルで、直径10mmのタングステン超硬合金製の球(圧子)を、測定対象の素材表面に一定の荷重で押し込み、できたくぼみ(圧痕)の直径を測って硬さを数値化します。くぼみが小さいほど硬い素材、大きいほど柔らかい素材です。
つまりHBWが基本です。
数値の読み方にもルールがあります。たとえば「250 HBW 10/3000/20」という表記があれば、それぞれ「250」が硬さの値、「10」が圧子の直径(mm)、「3000」が試験力(kgf)、「20」が荷重を保持した時間(秒)を意味します。記号だけでなく、後ろの数値も合わせて確認することが正確な理解につながります。
収納家具や金属製品のカタログを見ていると、材料の仕様欄にこのような硬さ数値が記載されていることがあります。これを読めるかどうかで、素材の耐久性を正しく比較できるかどうかが変わってきます。
かつてブリネル硬さの記号は「HB」と表記されていました。しかし2005年に国際規格ISO 6506が改定され、現在では「HBW」が正式な記号として統一されています。
なぜ変わったのでしょうか?
以前は圧子の材質として焼き入れ鋼球(Steel Ball)も使用されていたため、鋼球使用時は「HBS」、タングステン超硬合金球使用時は「HBW」と区別されていました。しかし鋼球は圧痕測定の再現性が低く、国際的に信頼性の問題が指摘されたことから、タングステン超硬合金球のHBWに一本化されたのです。
これは知っておくべき点です。
古いカタログや仕様書には今でも「HB」や「HBS」という表記が残っていることがあります。そのまま現行規格のHBWと同一視してしまうと、比較精度に誤差が生まれる可能性があります。収納ラックや棚板などの金属製品を複数比較する場合、記号が統一されているかを確認する習慣をつけると安心です。
実務的には、現在流通しているほぼすべての製品でタングステン球(HBW)が使われていますが、輸入品や古い在庫品には旧記号が混在することがあります。記号だけ覚えておけばOKです。
日本規格協会(JSA)公式サイト:JIS規格・ISO規格の最新情報を確認できます
ブリネル硬さの単位は「HBW」そのものが単位を兼ねており、SI単位系では「N/mm²(ニュートン毎平方ミリメートル)」に換算されることもありますが、日常的な材料選びでは数値をそのまま比較するのが一般的です。
具体的な数値の目安を見てみましょう。
| 素材 | HBW値の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 純アルミニウム | 約15〜25 HBW | 柔らかく加工しやすい |
| 一般的な鋼材(SS400) | 約110〜130 HBW | 建材・収納棚の骨格に多用 |
| ステンレス鋼(SUS304) | 約150〜190 HBW | 錆びにくく耐久性が高い |
| 高炭素鋼・工具鋼 | 約600〜700 HBW | 非常に硬く傷つきにくい |
収納棚の支柱やアングル材によく使われるSS400(一般構造用圧延鋼材)は約110〜130 HBWです。A4用紙を束ねたときの厚み程度のくぼみしかできないほどの硬さと覚えると、感覚的にイメージしやすいでしょう。
ステンレス製の収納ラックはHBWが高めなので、重い荷物を長期間乗せても変形しにくいという特性があります。これは使えそうです。
一方でアルミ素材の収納ボックスや棚板は数値が低く、鋭利なものを強く当てると傷がつきやすいです。傷が気になる場所への使用には注意が必要です。
ブリネル硬さ試験には適用できる硬さの範囲があります。JIS Z 2243(現在はISO 6506に統合)によれば、HBWで測定できる上限は約650 HBWとされています。それを超える硬い素材(セラミックスや超硬合金など)にはロックウェル硬さ試験やビッカース硬さ試験が用いられます。
どういうことでしょうか?
ブリネル試験では直径10mmという比較的大きな圧子を使うため、測定面積が広く、材料全体の平均的な硬さを反映しやすいという長所があります。鋳鉄や鋼材など粗い組織を持つ素材では、この「広い測定面積」が逆に強みになります。小さな圧子で測るビッカース試験だと、粒子の粗い素材では測定箇所によってバラつきが出やすいからです。
逆に言えば、薄板や表面処理された素材には不向きです。圧子が大きいため、薄い素材に押し込むと素材を貫通してしまうリスクがあります。一般的に、測定対象の厚みは圧痕深さの8倍以上が必要とされており、たとえば0.5mmの薄板にはブリネル試験は使えません。
収納製品の仕様確認では、薄い金属板が使われているアイテムにブリネル硬さの数値が記載されているケースはほぼありません。そういった製品にはビッカース硬さ(HV)が使われていることがほとんどです。記号が違う場合は試験方法が異なると覚えておけば大丈夫です。
日本産業標準調査会(JISC):JIS Z 2243など硬さ試験の規格を検索・閲覧できます
「硬さ試験の記号なんて、収納とは関係ない」と思っていませんか?実はそうでもありません。
市販の収納ラックや棚受け金具のスペック表を詳しく見ると、材料規格が記載されている製品があります。たとえばスチール製の収納棚でよく使われる「SPCC(冷間圧延鋼板)」のHBW値は約120〜150です。同じスチール棚でも表面処理の違いや板厚によって実際の耐傷性はかなり変わります。
ここに差が出るポイントがあります。
HBWが低い素材の棚は、重い金属製の収納ボックスを引き出すたびに棚板表面に細かな傷がついていきます。塗装が剥がれてサビの原因になることもあります。特にキッチン周りや湿気の多い場所に置く収納家具を選ぶ際は、ステンレス製(HBW約150〜190)を選ぶとこの問題を大幅に回避できます。
価格差は素材の差です。
たとえば同じサイズのスチール棚とステンレス棚では、価格が1.5〜2倍程度異なることが多いですが、その差額は「硬さの差」=「傷つきにくさ・長寿命」に対するコストと考えると納得しやすいでしょう。10年以上使う収納家具であれば、初期コストより長期コストで考えるべきです。
また、収納ケースの素材として普及しているポリプロピレン(PP)はHBWによる測定対象外(プラスチックにはロックウェル硬さが使われます)ですが、金属製フレームとの組み合わせで使うときはフレーム側のHBW値が製品の総合的な耐久性を左右します。
素材の組み合わせにも注目です。
収納製品を選ぶ際のチェックポイントとして、「金属部分の材料規格」を確認する習慣を持つと、同価格帯の製品でも品質の差を見分けやすくなります。製品ページに記載がない場合は、メーカーのカスタマーサポートに問い合わせると教えてもらえることがあります。
製品評価技術基盤機構(NITE):製品の材料・安全性に関する情報を確認できます