

実は、島津の万能試験機は本体価格より維持費が年間100万円超になるケースがあります。
万能試験機(Universal Testing Machine、略称UTM)とは、材料の引張・圧縮・曲げ・せん断などの各種機械特性を一台で測定できる試験装置です。「万能」という名前の通り、金属・樹脂・ゴム・繊維・食品など多岐にわたる素材の評価に対応しています。
島津製作所(Shimadzu Corporation)は1875年創業の老舗精密機器メーカーで、材料試験機の分野では国内トップクラスのシェアを誇ります。島津の試験機は学術機関・研究所・製造業の品質管理ラインに広く採用されており、国内外でその信頼性が高く評価されています。
島津の万能試験機シリーズの代表格として知られるのが「AGシリーズ」です。エントリーモデルから大型モデルまでラインナップが揃っており、試験力(測定できる最大荷重)は500N〜300kNと幅広い範囲をカバーしています。これは、わかりやすく言うと「約50kgの力から約30トン相当の力まで測定できる」範囲に相当します。
用途別に見ると、樹脂フィルムや繊維製品には小型の低荷重モデル、金属部品や建材の強度評価には大型の高荷重モデルが選ばれる傾向があります。製品の品質保証や研究開発、JIS・ISO規格への適合確認など、使用シーンも多様です。
つまり、万能試験機は「材料の強さを数値で把握するための必須機器」です。
島津の万能試験機の価格は、試験力・機能・構成によって大きく異なります。ここでは代表的な機種グループ別に目安価格を整理します。
まず、AGシリーズの中でも小型・卓上タイプに相当する低荷重モデル(最大試験力1〜10kN程度)は、本体価格の目安がおおよそ150万円〜400万円前後とされています。10kNとは約1トン相当の力であり、樹脂ペレットや薄膜フィルム、医療用チューブなどの評価に多く使われる規模感です。
中型モデル(試験力10〜100kN)になると、本体価格は400万円〜900万円程度に上昇します。これは自動車部品や電子部品の引張・疲労試験などに対応する規模で、製造業の品質管理部門で最もよく採用される価格帯です。
大型モデル(試験力100kN以上、最大300kN超)は1,000万円〜3,000万円以上になるケースもあります。建材・鉄骨・複合材料など大型構造物の強度試験に使われ、防衛・航空宇宙・建設業界での需要が中心です。
注意が必要なのは、これらの価格が「本体のみ」の目安である点です。実際の導入では、専用の治具(ジグ)・ソフトウェアライセンス・設置工事費・校正費用などが別途必要になります。これら付帯費用の合計が本体価格の20〜40%に達するケースも珍しくありません。
価格が変動する主な要因は以下の通りです。
これは使えそうです。価格の構成要素を事前に把握しておくだけで、見積もり段階でのトラブルを防げます。
本体価格だけで購入判断するのは危険です。実はここが最も見落とされやすいポイントです。
島津を含む精密試験機全般において、導入後にかかるランニングコストは大きく3つに分類されます。
① 定期校正費用
万能試験機は計測機器であるため、JIS B 7721やISO 7500に基づく定期的な校正(キャリブレーション)が必要です。校正の頻度は年1回が一般的で、費用は機種・荷重レンジによって1回あたり5万〜20万円程度が相場とされています。外部校正機関に依頼する場合、さらに出張費・対応時間が加算される場合があります。
② 保守契約(メンテナンス契約)
島津製作所では導入後の保守契約サービスが用意されています。年間保守契約料は本体価格の5〜10%程度が目安とされており、たとえば600万円の機器なら年間30〜60万円の契約費用が発生します。これには定期点検・消耗部品の交換・故障時の優先対応などが含まれます。
③ 消耗品・オプション治具費用
試験ごとに異なる試験片形状に対応するための治具(グリップ・ジグ類)は消耗品扱いになるものも多く、交換費用が年間数万円〜十数万円程度かかることがあります。
これらを合計すると、中型モデルでも年間のランニングコストが50万〜100万円超に達するケースがあります。大型モデルや高頻度稼働の環境では100万円を超えることも珍しくありません。
ランニングコストが条件です。本体価格だけで比較せず、5年・10年の総所有コスト(TCO:Total Cost of Ownership)で検討するのが賢明です。
参考:島津製作所公式 材料試験機サポート・サービス情報
島津製作所 材料試験機 アフターサービス・校正サービス
どの機種を選ぶかは、「何を試験したいか」から逆算するのが基本です。
まず確認すべきは最大試験力(荷重容量)です。日常的に使用する試験荷重の2〜3倍の容量を持つモデルを選ぶのが推奨されています。たとえば最大5kNの試験を行う場合、10〜20kNモデルが適切です。荷重範囲の上限付近での試験は精度が落ちやすいためです。
次に重要なのがストローク(変位量)と試験空間です。引張試験では試験片の伸び量に応じた十分なストロークが必要で、伸び率が大きい素材(例:ゴム・エラストマー)は500mm以上のストロークを持つモデルが適しています。
対応規格の確認も欠かせません。ISO・JIS・ASTM・GB(中国国家規格)など対応すべき規格によって、試験速度・データ取得条件・レポート形式が変わります。島津のソフトウェア「TRAPEZIUM X」は多数の規格テンプレートに対応しており、試験条件の自動設定が可能です。これは使えそうです。
機種選定の実務的な手順は以下の通りです。
島津製作所は主要都市にアプリケーションラボを設けており、購入前の試験デモを実施しています。実際の試験片を持ち込んでテスト測定を依頼できるため、購入前に積極的に活用するのが賢明です。
参考:島津製作所 材料試験機シリーズ製品ページ
島津製作所 材料試験機・万能試験機 AGシリーズ 製品一覧
高額な初期投資を抑えるための選択肢は、実は複数あります。知らないと損するポイントです。
① ものづくり補助金の活用
中小企業を対象とした「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)」では、試験・計測機器の購入が補助対象になるケースがあります。補助率は最大1/2(中小企業)〜2/3(小規模事業者)で、補助上限は申請枠によって750万円〜4,000万円と幅があります。
採択されれば、たとえば600万円の試験機を最大300万円の自己負担で導入できる計算になります。ただし採択率は例年40〜60%程度であるため、申請書の品質が重要です。支援機関(商工会議所・認定支援機関)に相談しながら申請するのが現実的です。
② 中古市場・リユース機器の活用
島津を含む国内ブランドの万能試験機は中古市場でも流通しており、新品の40〜70%程度の価格で入手できるケースがあります。中古試験機を扱う専門業者(例:オフィスバスターズ科学機器部門、ラボ機器専門中古業者など)が存在し、整備済み・保証付きのモデルも選べます。
ただし中古品の注意点として、校正記録の有無・ソフトウェアライセンスの引き継ぎ可否・消耗部品の残存寿命を必ず確認することが重要です。
③ リース・レンタル契約
初期費用を抑えたい場合、リース契約が有効な選択肢となります。一般的に試験機の場合、5〜7年リースが多く、月額リース料は本体価格の1.5〜2.5%程度が目安です。600万円の機器なら月額9万〜15万円程度になります。
リースはオフバランス処理により資産計上を抑えられる点でも、財務的なメリットがあります。
補助金・中古・リースが条件です。これらを組み合わせることで、初期投資を大幅に圧縮することも不可能ではありません。
参考:中小企業庁 ものづくり補助金公式ページ
ものづくり補助金 総合サイト(中小企業庁)
これは意外に思われるかもしれませんが、万能試験機の「設置環境の整備費用」を見積もりに含めていないケースが非常に多いです。収納・ラボ空間の整備は、試験機の性能を最大限に引き出すためにも無視できない要素です。
万能試験機の設置に際して発生しやすい付帯費用は以下の通りです。
これらを合計すると、設置関連の付帯費用だけで50万〜200万円程度になるケースが現実にあります。見積もり段階でこれらを見落とすと、導入予算が大幅に超過する事態になります。
厳しいところですね。しかしこれらを事前に把握しておけば、トータルコストを正確に試算でき、社内稟議や補助金申請にも正確な数値を使えます。
ラボ環境の収納・整備においては、試験片の管理トレーや治具専用ラックを導入することで作業効率が大きく改善されます。特に試験品の取り出しやすさ・誤使用防止の観点から、5Sに基づいたラボ収納設計を意識することが、試験精度の維持にも直結します。
参考:産業技術総合研究所 計量標準総合センター 試験機の校正・不確かさ関連情報
産業技術総合研究所 NMIJ 校正サービス情報

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