

「4PLシナリオは人数さえ合えばどれでも楽しめる」は大きな思い込みです。HOの相性を無視して選ぶと、卓の雰囲気が崩れてトラブルに発展することがあります。
クトゥルフ神話TRPG(CoC)における「4PL」とは、プレイヤーが4人で参加するシナリオ形式のことです。「PL」はPlayer(プレイヤー)の略で、4PLシナリオはその名の通り「4人のプレイヤーが楽しむための構成」で作られています。
4PLという形式が人気を集める大きな理由のひとつが、「秘匿HO(秘匿ハンドアウト)」の存在です。ハンドアウトとは、PC(プレイヤーキャラクター)作成時に各プレイヤーへ渡される指示書のようなもので、そのキャラクターの背景・役割・目的などが書かれています。「秘匿」とは、その内容をセッション開始時にはほかのプレイヤーへ隠す仕組みを指します。
つまり、4人全員が「自分だけが知っている裏事情」を抱えながら物語を進めることになります。これがドラマ性を高め、セッション後半で秘匿が明かされる瞬間の驚きと感動につながります。情報が少ない序盤から、徐々に「なぜあのキャラがああ動いたのか」が解き明かされる構造は、ミステリー小説や映画の伏線回収に近い体験です。
4PLシナリオの形式は大きく分けて2種類あります。ひとつは「固定4人専用」で、人数が1人でも欠けるとシナリオとして成立しない構成のもの。もうひとつは「推奨4人」で、3人や5人でも調整すれば遊べるものです。有名作品の多くは前者の固定4人型を採用しており、それだけ4人の絡みが物語の核心に据えられています。
4PLが基本です。まずこの形式に慣れれば、コミュニティでの卓探しや募集もスムーズになります。
4PLシナリオの中でも特に高い知名度を誇るのが「VOID」です。作者はmyao氏で、BOOTHにて有料頒布されており、2021年の発売以降も継続的に高い人気を保っています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 🕐 プレイ時間 | 約20時間(ボイスセッション) |
| 👥 人数 | 新規4人固定(各HOに秘匿あり) |
| 🗺️ 舞台 | 2050年の日本(近未来SF) |
| ⚔️ PvP | 可能性あり |
| 💀 ロスト率 | 中程度 |
| 🤖 キャラクター | 新米刑事・アンドロイド・ベテラン刑事・旧型アンドロイドの4役 |
VOIDの世界観は「2050年の日本」という近未来SF設定で、クトゥルフ神話TRPGとしては異色の舞台を誇ります。科学技術が高度に発達した社会の中で、人間とアンドロイドが共存・協力する姿が描かれています。HO(ハンドアウト)は4種類用意されており、それぞれが「刑事と相棒アンドロイド」というペア関係で構成されています。人間2名・アンドロイド2名というバランスが独特の緊張感を生みます。
VOIDの最大の魅力は「人間らしさとは何か」という哲学的テーマを、全力のロールプレイ(RP)を通じて体験できる点にあります。アンドロイドのHOを引いたプレイヤーは「感情のないはずの存在が、徐々に感情に目覚める」描写を自分のRPで表現することになります。これが極めて感情的な体験になるため、通過後に「人生で最もエモかったシナリオ」として名を挙げる人が後を絶ちません。
プレイ時間が約20時間と長いのも特徴のひとつです。東京から大阪まで新幹線で移動する約2時間半の約8倍に相当するボリュームで、複数セッションに分けて遊ぶことが一般的です。だからこそキャラクターへの愛着が深まり、物語への没入感も高まります。
これは使えそうです。VOID通過組がVOIDの継続キャラで遊べる後続シナリオをリスト化する文化も生まれており、それほど多くのプレイヤーがこの世界観に惹き込まれています。
VOIDの継続キャラで遊べる4PLシナリオまとめ(外部ブログ:参考)
VOIDの継続HO(通過後のキャラクターをそのまま引き継いで遊べるシナリオ)を探している方向けに、個人ブログや掲示板でリスト化された記事が複数存在します。VOID通過後は「次はどこへ行くか」をチームで相談するのも楽しみのひとつです。
「庭師は何を口遊む」はUSB氏が制作した4PL固定・刑事限定の秘匿HOシナリオで、感情を揺さぶる哲学的なテーマが多くのプレイヤーを惹きつけています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 🕐 プレイ時間 | ボイセ6〜7時間(変動あり) |
| 👥 人数 | 4人固定(新規限定) |
| 🗺️ 舞台 | 現代日本・シティ |
| ⚔️ PvP | 可能性あり |
| 👮 職業 | 刑事限定(30歳以上推奨) |
| 🎯 推奨技能 | 戦闘技能・目星・拳銃 |
このシナリオが他の4PLシナリオと一線を画す理由は、4人全員が「刑事」という同一職業縛りで始まる構成にあります。探索者同士の関係性が最初から定義されているため、RPのとっかかりが明確で、プレイヤーがキャラクターを深く掘り下げやすいのが特徴です。秘匿HOの内容が非常に緻密に設計されており、最終的な秘匿開示のタイミングで「あの行動はそういう意味だったのか」と全員が驚く体験が生まれます。
「庭師は何を口遊む」というタイトルが持つ詩的な雰囲気は、シナリオ全体のトーンを表しています。この世界が存在しているから人間が存在しているのではなく、また人間が存在しているから世界が存在しているのではない——そんな哲学的な問いが物語の根底に流れており、探索者たちは事件捜査を通じて自分自身の存在意義と向き合うことになります。
ロールプレイの密度が高く、セッション後に「まだそのキャラクターのことを考えてしまう」という感想が多く見られます。キャラを入念に作れば作り込むほど、物語の重みが増すタイプのシナリオです。意外ですね。VOIDと並んで「今年一番エモかったシナリオ」として同時に名前が挙がることも珍しくなく、この2作品は4PLの刑事シナリオ界の両横綱とも言えます。
刑事PCの年齢が30歳以上推奨とされているのには理由があります。チームが発足して4年以上の経緯があるという設定上、20代では「刑事になって4年以上」という条件を満たしにくくなるためです。こうした細部の設定がシナリオのリアリティを高めています。
庭師は何を口遊む:シナリオ情報まとめ(TRPGやろうずWiki)
推奨技能や特殊ルール(発狂表・不定のリセット禁止など)について詳しく書かれています。KP(キーパー)を担当する方は事前確認に役立てられます。
有名な4PLシナリオには刑事もの以外にも個性豊かな作品が多数存在します。ここでは特に評判の高い2作品を取り上げ、その独自性を掘り下げます。
魔法少女は死を唄えはろみろみ亭が制作した4PLシナリオで、BOOTHでの頒布開始以降7,000件を超えるダウンロード実績(2024年時点)を誇る超人気作です。タイトルの通り「魔法少女」というテーマを取り扱いながら、その裏には重厚なクトゥルフ要素と精神的ダメージが絡みます。500円〜という低価格帯ながら、シナリオのボリューム・完成度ともに高水準と評価されています。
「魔法少女は死を唄え」が面白いのは、外見上の「魔法少女」というポップなイメージと、内側に広がるクトゥルフ的絶望感のギャップにあります。4つのHOそれぞれが異なる視点と役割を持っており、同じシナリオでも引いたHOによって体験が大きく変わります。HOのあたり・はずれを感じさせない設計力が、高評価の主な理由として挙げられます。
ソープスクールはねこずし卓が制作した4PL向けシナリオで、「学校」という日常的な舞台にクトゥルフ要素が忍び込む構成です。日常描写を抑えて探索イベント中心で進むため、テンポよくセッションが進みます。RPによるPvP(プレイヤー対プレイヤーの対立)要素もあるため、仲の良いメンバーで遊ぶことが推奨されています。
つまり、同じ4PLでも「刑事シナリオ」「魔法少女もの」「学校もの」と世界観は大きく異なります。参加メンバーの好みと心理的耐性に合わせて選ぶことが、楽しいセッションへの近道です。
ここからは、有名シナリオを知ったうえで「どう選ぶか」という視点に立ちます。シナリオ選びで後悔するケースのほとんどは、事前情報の確認不足に起因しています。
最初に確認すべきなのが「新規PC限定か・継続PC可か」という点です。多くの4PLシナリオは「新規限定」、つまりこれまでに他のシナリオで使用していない新しいキャラクターでないとプレイできません。VOIDも庭師も新規限定のため、すでに愛着のある継続キャラで挑もうとするとシナリオ自体に参加できないケースがあります。これは原則です。
次に確認したいのが「PvPの可能性」です。PvPとは、PLのキャラクター同士が物語の中で対立・対決する展開のことです。卓のメンバー全員が「PvP歓迎」という認識を持っているなら問題ありません。しかし、一部のプレイヤーが「キャラが傷つくのは嫌」という価値観を持っていると、PvP展開のあるシナリオは関係性にひびを入れることがあります。
特に注意が必要なのが「HOの重さの均等性」です。4PL秘匿シナリオでは、HOごとに秘匿情報の重さや役割が大きく異なることがあります。あるHOは「物語の中心で重い秘密を背負う」一方、別のHOは「公開情報とほぼ変わらない軽い設定」というケースも現実に存在します。HOのあたり・はずれの差が大きすぎると、プレイ後に不満が出やすくなります。厳しいところですね。
セッションを組む前に、KP(キーパー)がシナリオ全体を通読して各HOの情報量・負荷を把握しておくことが重要です。プレイヤーに合わせてHOを割り振る配慮も、KPの腕の見せ所と言えます。
また、長時間シナリオ(VOIDのような20時間超)を選ぶ際は、複数日程に分けることを前提に日程調整を先に行うと安心です。4人が全員揃える日程を確保するのは現実的に難しいケースも多く、最初から「月1回×4セッション」などの枠組みを共有しておくとスムーズです。セッション間の間が空きすぎると、キャラクターへの感情移入が薄れてしまうため、なるべく定期的に続けられる体制を整えておくことをお勧めします。
秘匿HOをKP側が設計・運用する際のポイントや、プレイヤーへの伝え方について詳しく解説されています。KP初挑戦の方が秘匿シナリオを回す前に読んでおくと非常に参考になります。
少し視点を変えた話をします。4PLシナリオを選ぶ作業は、収納において「モノを分類する」行為に驚くほど似ています。
収納が上手な人は、まず持ち物を「よく使うもの」「たまに使うもの」「ほぼ使わないもの」に分類します。4PLシナリオ選びも同様です。「よく集まれるメンバーとの気軽な卓向け」「特別な機会に全力で臨む長編向け」「ロールプレイが好きな仲間との感情系向け」という軸で整理すると、選択が驚くほど楽になります。
収納でよく言われる「定位置を決める」という考え方も応用できます。「このメンバーとはこのジャンル」「このKPが回すときはこの系統」という傾向を把握しておくと、毎回シナリオ探しに迷う時間が大幅に減ります。これがいわゆる「卓のレパートリー管理」です。
また、収納と同じように「一度使ったものはそのままに」という発想は4PLシナリオには通用しません。シナリオ内容を知ってしまったプレイヤーは「既知(ネタバレ)」状態になるため、同じシナリオを再体験する場合は「ネタバレあり卓」として明示したうえで行うのがマナーです。知らないと損するポイントです。
4PLシナリオを軸・ジャンル・時間で整理して「自分の棚に収める」感覚で管理すれば、次の卓探しがぐっと楽しくなります。好みに合う棚を持っている人ほど、良い卓を引き寄せやすくなります。