

CAB(キャブ)は、1977年の発表以来、イタリアンモダンデザインを代表する椅子として評価され続けている定番です。カッシーナ・イクスシー公式の製品説明でも、発表年と位置づけが明確に示されています。
さらに「MoMA(ニューヨーク近代美術館)所蔵作品」として紹介されている点は、単なる人気商品ではなく、デザイン史の文脈でも語られる存在であることを示します。
家具好きがCABに惹かれる理由は、シルエットの強さだけではありません。革の厚みやステッチが遠目にも“輪郭”として立ち上がり、テーブルの素材や照明の影響を受けながら、空間全体の密度を引き上げるタイプの椅子だからです。実際にメディアでは、一脚置くだけで空間が端正に締まる、という趣旨の表現で紹介されています。
参考)A Critical Overview on Casuari…
またCABは、ホテル・レストランなどの採用例が語られることも多く、家庭用の憧れ家具でありつつ、場数を踏める耐性もイメージしやすい椅子です。日常の食卓で「毎日使うものから良さを体験する」という導入にも向く、という文脈で取り上げられています。
CAB最大の特徴は、金属フレームに厚革の“ジャケット”を被せるという構造発想です。公式説明でも、この構成が画期的なポイントとして明記され、フレームと厚革が生むテンションで背もたれのフィット感と座り心地を実現するとされています。
ここで重要なのは「クッションが柔らかい」ではなく、「張力で受ける」ことです。背に体重を預けたとき、革が面で支えながら微妙に追従し、背中側に“逃げ”が生まれます。メディアではこの感覚を、背中のハンモック構造のようだと表現し、寸法表記以上に沈み込みがある体感にも触れています。
また、CABの革は単なる張り地ではなく、椅子の表情そのものを形作ります。カッシーナ・イクスシーは「カッシーナ独自の厳しい基準をクリアーした最高級の鞣し革」をうたい、使い込むほどに身体に馴染み味わいが深まる、と説明しています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10262806/
意外に見落とされがちなのは、革が“ピンと張っているほど上質”とは限らない点です。CABは革が育つ椅子なので、購入直後に完璧な柔らかさを求めるより、数年かけて自分の座り方が刻まれていく前提で選ぶと納得感が高いです。
CABの情報で頻出する数字が「16」と「14」です。メディアでは、16のサドルレザーパーツが、14の手作業工程を経て縫い合わされ張られていく、と構造の要点として説明されています。
この“複数パーツを縫って立体にする”設計が、CABの独特な陰影とエッジ感を生みます。外ステッチの線が輪郭を立てるため、遠目には革が自立しているように見える、という紹介もされています。
さらにカッシーナ・イクスシーの説明では、レザーパーツを縫い上げたカバーを脚部内側のジッパーで締め上げ、フレームにオーダーメイドのようにぴったり密着させる構造が語られています。つまりCABは「張って終わり」ではなく、「締め上げて完成する」椅子です。
参考)https://www.cassina-ixc.jp/shop/g/g1CA0413S33K00110/
この構造は、購入後の注意点にもつながります。たとえば引っ越し時に無理な持ち方をすると、ファスナー周辺や縫製ラインに局所的な負担がかかりやすいです。搬入・搬出や日々の移動では、背やアームを引っ張って持ち上げるより、座面下側を支える持ち方を徹底すると安心です。
CABを検討するときは、まず「412(アームレス)」と「413(アーム)」を分けて考えると迷いが減ります。カッシーナ・イクスシー公式では、412 CABはW525×D470×H810(SH430)と示されています。
一方で413 CABはW620×D520×H815(SH445, AH650)とされ、アームが付く分、横幅も奥行きも増え、座面高も上がります。
選び方の現実的な基準は、空間の“椅子の引きしろ”です。ダイニングで人が立ち座りするとき、アーム付きは椅子を引く量が増えがちで、壁や通路の余裕が小さいとストレスになります。逆に書斎やミーティング用途で「腕を休めたい」「上半身を安定させたい」なら、413の価値が出ます。公式も413は412のアームチェアタイプで、背からアームに至るカーブが計算され肘の掛け心地が抜群、と説明しています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10629099/
座面高の数字は同じ“数センチ”でも、生活体感に響きます。メディアでは412相当の座面高430mmについて、表記より低く感じ、脚が床についたままくつろげる感覚に触れています。
身長やテーブル高との相性はもちろんですが、靴を脱ぐ生活の日本では「足裏が床に吸い付く安心感」が座り心地の評価に直結します。可能なら、購入前に店舗で“深く背を預ける座り方”まで試すのが安全です。
CABの経年変化は「味」と言われますが、実務としては“変化をデザインする”感覚が近いです。公式も、最高級の鞣し革が使い込むほどに身体に馴染み、味わいを深めると述べています。
ここで独自視点として効くのが、「座り癖の左右差」を意識した育て方です。人は無意識に、利き手側の肘を多く置く、片脚を組む、同じ方向を向く、といった偏りを作ります。CABはテンション構造なので、その偏りが革の伸びや艶の出方として比較的わかりやすく残り、数年後に“自分の椅子感”になる一方、気になる人にはムラにも見えます。
対策はシンプルで、週単位で座る位置を少しずらす、椅子を回転させず向きを変える、などの小さな運用です。加えて、直射日光やエアコンの風が当たり続ける位置は、革の乾燥を早めやすいので、置き場所の見直しがメンテナンスの第一歩になります(クリーム以前に環境が効きます)。
また、ユーズド個体の魅力を積極的に選ぶ手もあります。リユース販売の紹介では、ユーズドならではのレザーのシワや擦れが“味わい深い”として肯定的に語られ、新品から同じ表情になるまでの時間を想像する視点も提示されています。
参考)カッシーナ Cassina キャブ CAB アームチェア 4…
新品で「育てる」か、ユーズドで「仕上がった表情を買う」かは、好みだけでなく、家族構成や生活の余裕とも関係します。小さな子どもがいる時期に新品のCABを“作品”のように扱うのは難しいので、最初から傷や皺がある個体を選び、気持ちを軽くするのも合理的です。
参考:構造(16のレザーパーツ/手作業工程/ハンモックのような背の受け方)の要点
https://precious.jp/articles/-/30539
参考:412 CABのサイズ、素材、厚革ジャケット構造、MoMA所蔵の記載
https://www.cassina-ixc.jp/shop/g/g412cab/
参考:413 CABのサイズ、412のアームタイプという位置づけ、肘の掛け心地の説明
https://www.cassina-ixc.jp/shop/g/g413cab/