
リーマーは、ドリルなどであらかじめ開けられた下穴を追加工し、要求された寸法や精度に仕上げるための精密工具です。主に穴の寸法精度、表面粗さ、真円度を向上させる目的で使用されます。
リーマーの基本構造は、切削を行う「刃部」と工具を保持するための「シャンク部」から成り立っています。JIS(日本工業規格)では、リーマーを以下の4つの観点から分類しています。
リーマー加工の原理は、先端の食い付き部分で切削を行い、外周刃でバニッシング(擦り仕上げ)を行うことで高精度な穴を形成します。この2つの作用のバランスが、リーマー加工の精度を左右する重要な要素となります。
リーマー加工の特徴として、下穴に対して0.1〜0.3mm程度の小さな取り代で加工を行うことが一般的です。取り代が大きすぎると穴が変形し、小さすぎると表面が擦れて摩耗が早まるため、適切な取り代の設定が重要です。
リーマーには様々な種類があり、それぞれ特徴的な用途に合わせて設計されています。主な種類と特徴を以下に紹介します。
1. ハンドリーマー
手作業での穴仕上げに使用されるリーマーです。約1°の食付き角を持ち、シャンクの先端が四角形になっており、ここにハンドルを取り付けて手で回して使用します。精密な仕上げが必要な場合や、機械加工が難しい場所での作業に適しています。
2. チャッキングリーマー
機械作業用のリーマーで、約45°の食付き角を持ち、刃長が短いのが特徴です。シャンクの形状によって、ストレートシャンクとテーパーシャンクの2種類があります。刃部は直刃とねじり刃があり、用途に応じて選択します。
3. マシンリーマー
テーパーシャンクチャッキングリーマーの刃長を長くした機械作業用リーマーです。食付き角は約45°で、チャッキングリーマーと同様に直刃とねじり刃があります。深い穴の加工に適しています。
4. テーパーリーマー
テーパー穴の仕上げに使用するリーマーで、手回し作業用と機械作業用があります。テーパーピン用のテーパーピンリーマーやモールステーパー用のモールステーパーリーマーなどがあります。
5. パイプリーマー
チューブカッターなどで切断した管のバリ取りに使用します。管の内径部、外径部のバリ取りができ、管の素材に応じた専用のリーマーがあります。
6. ブリッジリーマー
鋼板にピンや棒を打ち込む穴の食い違いを合わせたり、拡げたりして修正する仕上げ用のリーマーです。
7. アジャスタブルリーマー(エキスパンションリーマー)
刃部の直径を調節できるリーマーで、様々なサイズの穴に対応できる汎用性の高い工具です。
リーマーの構造による分類としては、一体型のソリッド(むく)リーマー、刃部先端に硬質な材料をろう付けしたろう付けリーマー、シャンクに刃部を組み付ける組み立て式リーマー、刃先交換式(スローアウェイ)リーマーなどがあります。
取り付け方法による分類では、ストレートシャンクリーマー、テーパーシャンクリーマー、ストレート穴のボアリーマー、テーパー穴のボアリーマーなどがあります。
リーマーの性能を最大限に発揮し、工具寿命を延ばすためには、適切なメンテナンスが不可欠です。以下に、リーマーの正しいメンテナンス方法を紹介します。
1. 使用後の洗浄
リーマーを使用した後は、必ず切りくずや冷却剤の残留物を取り除いてください。これにより、腐食や摩耗を防ぎ、工具の寿命を延ばすことができます。洗浄には専用の洗浄液を使用し、柔らかいブラシなどで丁寧に汚れを落とします。
2. 適切な保管
リーマーは損傷を防ぐために、専用の保護スリーブやケースに入れて保管しましょう。特に刃先は非常にデリケートなので、他の工具と接触しないように注意が必要です。また、湿気の少ない場所で保管し、必要に応じて防錆油を塗布することも効果的です。
3. 定期的な点検
リーマーの刃先や外周部に摩耗や損傷がないか、定期的に点検することが重要です。特に以下の点に注意して点検しましょう。
4. 再研磨のタイミング
リーマーの再研磨は、以下のタイミングで行うことが推奨されます。
リーマーの再研磨は、外径が変化してしまうため外周刃の研磨はせず、使用した分の刃長をカットして、先端コーナーの食い付き刃を再刃付けします。頻度を多めに行うことで、最終的なリーマーの寿命を延ばすことができます。
5. コーティングの活用
リーマーの寿命を延ばすためには、工具材質とコーティングの相性を考慮したコーティング処理が効果的です。例えば、ハイス製リーマーにはTiNコーティング、超硬製リーマーにはTiAlNコーティングなどが適しています。コーティングにより、耐摩耗性や潤滑性が向上し、工具寿命が大幅に延びることがあります。
6. エアロラップ処理
エアロラップ処理は、工具表面を滑らかにし、切りくずの付着を防ぐ効果があります。これにより、リーマーの寿命を延ばし、加工精度を向上させることができます。
リーマー加工では、様々なトラブルが発生する可能性があります。ここでは、主なトラブルとその対策について解説します。
1. 工具寿命が短い
2. 狙った寸法から外れる
3. 加工面にツールマークがつく
4. 加工面が荒れる
5. 穴が曲がる
6. 穴の真円が出ない
これらのトラブルを防ぐためには、リーマー加工の基本を理解し、適切な工具選定と加工条件の設定が重要です。また、定期的なメンテナンスを行い、工具の状態を最適に保つことも必要です。
リーマーは精密加工に使用される高価な工具であるため、できるだけ長く使用したいものです。ここでは、リーマーの寿命を延ばすための6つの重要なポイントを紹介します。
1. 硬度がある材質の工具を選ぶ
リーマーは使用中に大きな垂直抗力が働くため、それに耐える強度が必要です。超硬製のリーマーは耐摩耗性に優れており、長寿命化に適しています。用途や加工材料に合わせて、適切な材質の工具を選びましょう。
2. 適切な取り代を設定する
リーマーの寿命を延ばす上で最も重要なのが、適切な取り代の設定です。下穴径が大きすぎると取り代が少なくなり、リーマーがすぐに摩耗してしまいます。逆に下穴径が小さすぎると取り代が多くなり、穴が変形する可能性があります。ワークの材質に応じた最適な取り代を設定することが重要です。
3. 正しい冷却と潤滑を行う
リーマー加工中は切削熱が発生し、これが工具摩耗を促進します。適切な切削液を使用し、切りくずの排出と冷却が効果的に行われるよう調整することが重要です。これにより、リーマーの寿命を延ばすだけでなく、加工精度も向上します。
4. 工具表面のコーティングを活用する
リーマーにコーティング処理を施すことで、工具の長寿命化を図ることができます。工具材質とコーティングの相性を考慮し、最適なコーティングを選択することが重要です。場合によっては、新品以上の長寿命化が実現することもあります。
5. エアロラップ処理を施す
エアロラップ処理により、工具表面を滑らかにし、切りくずの付着を防ぐことができます。これにより、リーマーの摩耗を抑え、寿命を延ばすことが可能です。
6. 定期的な再研磨を行う
リーマーは定期的に先端部の再研磨を行うことで、工具寿命を延ばすことができます。再研磨の頻度を多めにすることで、最終的なリーマーの寿命が長くなり、経済的にも有利になります。
これらのポイントを押さえることで、リーマーの寿命を大幅に延ばし、加工コストの削減と加工精度の向上を同時に実現することができます。特に、適切な取り代の設定と定期的なメンテナンスは、リーマーの長寿命化に大きく貢献します。
リーマーは高価な精密工具であるため、再研磨やリサイクルによって有効活用することが経済的です。ここでは、リーマーの再研磨とリサイクル方法について詳しく解説します。
リーマーの再研磨の特徴
リーマーの再研磨は、他の切削工具とは異なる特徴があります。リーマーは高精度な穴加工用の工具であり、外周は真円度が高く製造されています。そのため、リーマーの再研磨では外周部の研磨は行わず、摩耗した長さ部分を切り落とし、先端食い付き部のC面を刃付けするのみで完了します。
再研磨の流れ
再研磨の限界
リーマーの再研磨には限界があります。リーマーの外周刃には切削抵抗を抑えるための逃げテーパーが僅かに付いているため、再研磨して刃長が短くなるにつれて径が細くなっていきます。リーマーの径が加工する穴の公差より外れてしまった場合は、再研磨できなくなります。
リーマーのリサイクル事例
使用済みのリーマーを廃棄せずに、新たな用途に改造してリサイクルする方法もあります。例えば、リーマーの先端を90度底刃付に改造して、複数の工程を集約し、作業時間を大幅に短縮した事例があります。このように、創意工夫によってリーマーを有効活用することで、工具コストの削減と環境負荷の低減を同時に実現できます。
専門業者による再研磨サービス
リーマーの再研磨は高度な技術が必要なため、専門の再研磨業者に依頼することが一般的です。多くの再研磨業者では、ハンドリーマー、チャッキングリーマー、マシンリーマー、テーパーリーマー、スキルリーマー、ブローチリーマーなど、様々な種類のリーマーの再研磨に対応しています。また、定期的な集配サービスを利用することで、効率的に再研磨を行うことができます。
リーマーの再研磨とリサイクルを適切に行うことで、工具コストの削減だけでなく、環境負荷の低減にも貢献できます。特に、頻繁に再研磨を行うことで、リーマーの最終的な寿命を延ばし、経済的なメリットを得ることができます。