
2024年の物流業界において、btob物流大手の競争はこれまで以上に激化している。売上高で見る業界トップは日本郵政の2兆7,314億円で圧倒的な地位を確保しており、続く日本郵船(2兆2,807億円)、日本通運(2兆791億円)との差は明確だ。
特に注目すべきは、ヤマトホールディングスが1兆7,936億円で4位の座を維持している点である。同社は宅配便サービスで国内シェア46.6%を誇り、年間約23億個の荷物を取り扱う巨大な物流ネットワークを構築している。
物流業界の売上高トップ20社の競争を見ると、以下のような特徴が浮かび上がる。
この激しい競争環境において、各社は差別化戦略の構築に注力している。日本通運は「トラック輸送・鉄道輸送・航空輸送・海上輸送を組み合わせた最適輸送」という独自の強みを活かし、さらに国宝級美術品の輸送という特殊分野でも他社との差別化を図っている。
2024年のbtobサイト調査では、物流業界の大手企業がデジタル戦略において顕著な成果を示している。新たに調査対象となった物流分野から、ヤマト運輸(法人のお客さま)が5位にランクインしたことは業界に大きな衝撃を与えた。
この背景には、2024年問題を受けた業界変革の波がある。物流大手各社のbtobサイトスコアを見ると。
これらの結果は、物流業界の大手企業がbtob顧客との接点強化にデジタル技術を積極的に活用していることを示している。特に注目すべきは、ニーズ充足率の向上に向けて「導入メリットの明快性」が重要な評価指標となっている点だ。
物流大手企業のデジタル戦略では、「自社製品・サービスの優位性をわかりやすく示し、導入のメリットを伝える」ことが競争力向上の鍵となっている。これは従来のbtob取引における属人的な営業手法からの大きな転換を意味する。
物流業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)は、単なる効率化を超えた業界構造の根本的変革を目指している。総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)では、「物流産業のビジネスモデルそのものを革新させていく物流DX」の必要性が強調されている。
大手物流企業のDX取り組みは多岐にわたる。
物流網最適化DX
大手物流会社の多くが採用する「ハブアンドスポーク型物流」の高度化が進んでいる。この方式は、中心拠点(ハブ)に貨物を集中させ、エリア別仕分け、末端拠点での最終仕分けという段階的輸送プロセスを取る手法だ。
AIによる配送ルート最適化
道路の混雑状況、事故情報、天候データを集積し、AIによって最適な配送ルートを割り出す取り組みが本格化している。これにより燃料費削減と運転者の労働環境改善を同時に実現している。
統合物流管理システム
在庫管理システムと入出荷管理システムの一元化により、「1回の入力ですべてのシステムに反映される」効率的な業務環境を構築している。
btob物流大手各社のDX戦略では、「BtoBの企業拠点間で大量の貨物を一括運送するケース」の効率化が重要な焦点となっている。これはBtoCの多岐にわたる配送先への対応とは異なる、btob特有の課題解決アプローチである。
環境意識の高まりを受け、btob物流大手企業のSDGs対応は競争優位性確保の重要な要素となっている。2024年のbtobサイト調査では、「カーボンニュートラルや環境配慮製品など、環境に関連したテーマを挙げる人が増加」しており、顧客側の意識変化が明確に現れている。
物流業界の大手企業におけるSDGs取り組みは以下の領域で展開されている。
クリーンエネルギーへの転換
日本郵船は高出力燃料電池を搭載した商用船の実用化に向け、2020年9月から国内初の実証実験を開始した。水素燃料の活用により燃料利用時のCO2排出量をゼロにする取り組みで、2024年に中型観光船として実験船を就航させる予定だ。
配送手段の環境対応
国際的な事例として、ドイツの大手運送会社DHLは「2025年までに自転車や電気自動車を全体の配達の約7割に用いる」計画を推進している。日本の物流大手も同様の取り組みを検討している。
業務効率化によるSDGs実現
物流業界でのSDGs達成には「業務の効率化とDXの推進が重要」とされている。配送管理システム導入による「効率的な配送ルートの自動作成で、配送時間短縮や燃料消費削減」を実現する企業が増加している。
物流大手各社は、「自社単独での取り組みだけでなく、他社との協力体制や業界全体が一丸となって取り組む」姿勢を示しており、業界全体のSDGs推進を牽引している。
2025年を見据えたbtob物流大手の戦略は、複合的な課題への対応を軸に展開されている。「人手不足や燃料費の高騰に加え、環境対策や法規制の強化」など、企業が向き合うべき課題は多岐にわたる。
メタバース展示会への対応
FA分野では「メタバース展示会」の利用意向率が5割を超えており、物流大手もこの新しい顧客接点に注目している。「参加する場所を選ばない」「移動時間が短縮できる」といったメリットが評価されている一方で、「コミュニケーションの正確性」や「操作性」に対する懸念も存在する。
国際競争力の強化
近鉄エクスプレスは「世界40カ国以上でサービスを展開」し、国際物流での強みを活かして2022年3月期に売上高9,804億円を達成した。2020年の約5,000億円台から61.0%増という急成長を遂げており、国際展開の重要性を示している。
異業種アライアンスの拡大
物流業界では「IT関連事業者やベンチャー企業等も多数参入しており、異業種間でのアライアンスも増加」している。この傾向は今後さらに加速し、従来の物流会社の枠を超えたサービス提供が期待される。
btob物流大手の将来戦略では、デジタル技術活用、環境対応、国際展開の三つの軸が重要な成長ドライバーとなる。特に「サプライチェーン全体の徹底した最適化」を目指す物流DXの推進が、業界リーダーとしての地位確保に不可欠な要素となっている。