
物流業界におけるエネルギー貯蔵バッテリーシステム(BESS)の導入は、多面的なメリットをもたらします 。電力コストの削減においては、ピークシフト戦略により電気料金が安い夜間に充電し、高額な昼間の時間帯に放電することで、電力コストを最大30%削減できることが実証されています 。さらに、契約電力を抑えるピークカット効果により、基本料金の削減も同時に実現されます 。
参考)https://www.ipros.com/product/detail/2001483582/
再生可能エネルギーとの組み合わせによる効果も顕著です 。太陽光発電などと連携することで、発電した電力を蓄電池に蓄え、天候や昼夜を問わず安定して利用できるため、外部からの電力購入を大幅に減らすことが可能です 。この取り組みにより、物流施設のCO2排出量を削減し、企業の脱炭素化目標の達成に直結します 。
業務継続計画(BCP)の強化という観点でも、蓄電池システムの価値は計り知れません 。災害や停電時にも蓄電池に蓄えた電力を使用することで、物流施設の運営を維持でき、サプライチェーンの中断リスクを最小限に抑えることができます 。
大手物流企業による実際の導入事例から、エネルギー貯蔵バッテリーの効果的な活用法が明らかになっています。ヤマト運輸では、独自に構築したエネルギーマネジメントシステム(EMS)と産業用蓄電池を組み合わせることで、営業所内の電力使用量、太陽光発電設備での発電量、蓄電池の充放電量をリアルタイムで可視化・自動調整し、効率的なエネルギー運用を実現しています 。この取り組みにより、自社再生可能エネルギー率の大幅向上を達成しました 。
参考)https://www.connexxsys.com/ess-gs/casestudy/02.html
新開トランスポートシステムズの甲府営業所では、太陽光発電システムと産業用蓄電システム〈BLP®〉を導入し、脱炭素とBCP対策を同時に実現しています 。この施設では、貨物用エレベーターの電源バックアップを蓄電池で確保することで、停電時でも緊急性の高い貨物の出荷を継続できる体制を構築しました 。特に精密機器物流を扱う同社にとって、社会インフラに関わる重要な保管品を確実に出荷できる体制の確立は、顧客満足度の向上にも直結しています 。
参考)https://ess-hn.connexxsys.com/casestudy/case07.html
コンテナ型大容量産業用蓄電システムの活用も進んでいます 。メガワット級の蓄電システムにより、大規模な物流施設での再生可能エネルギーの自立電源化や電力の安定供給を実現し、停電対策や幅広いエネルギー需要に対応しています 。
参考)https://www.connexxsys.com/products/c-type-ess/
リチウムイオンバッテリーの安全輸送は、物流業界において極めて重要な課題となっています。これらのバッテリーは加熱や衝撃により発熱・発火する恐れがあるため、海上輸送では危険物として厳格に分類されています 。セイノーホールディングスのオートモーティブ・バッテリー物流事業部では、EVバッテリーの国内・国際輸送、危険物倉庫での保管、産業用バッテリーのリサイクル回収物流を専門的に取り扱っています 。
参考)https://tkyhq.seino.co.jp/automotive_battery_logistics
消防法に適合した安全な倉庫での保管運用が実施されており、専門の電気工事士による安全な輸送・設置作業が行われています 。商品の形状や重量に応じた最適な輸送モードの選択により、危険物の取り扱いリスクを最小化しています 。
航空輸送においては、100Wh以下のリチウムイオンバッテリーは危険物適用除外扱いとして、規定の条件下で非危険物として輸送が可能です 。しかし、100Whを超える場合や3個以上を梱包する場合は、危険物として厳格な輸送規定に従う必要があり、関係者はIATAの危険物トレーニング受講が必要となります 。
参考)https://www.idx.tv/transport/
エネルギー貯蔵バッテリーの導入による物流業界でのコスト削減効果は、多方面にわたって実証されています。電力コストの観点では、大手製造工場の事例において、ピークシフト戦略により電気料金を30%削減することに成功しています 。この工場では、エネルギー管理システム(EMS)と蓄電池を連携させることで、リアルタイムの電力消費データ分析により無駄な電力使用を抑制し、さらなるコスト削減を達成しました 。
参考)https://sasutena-mirai.com/case-studies-of-grid-storage-batteries/
基本料金の削減効果も顕著で、従来は高額なピーク電力使用により発生していた基本料金を、蓄電池を活用した最大需要電力の抑制により見直すことができます 。これは「ピークカット」効果として知られ、物流施設の固定費削減に大きく貢献します 。
電力以外のコストにおいても、EVトラックの導入と連携した総合的なコスト削減が期待されています。三菱キャンターとEVのeキャンターを比較すると、1kmあたりの燃料コストが約16円から約9.0円へと43.7%削減され、さらにオイル交換や定期点検の工程も不要となるため、運用コストの大幅な削減が実現されます 。
参考)https://osaka-syoun.com/10894/
物流業界におけるエネルギー貯蔵バッテリーの将来展望は、技術革新と市場成長の両面で極めて有望です。世界のバッテリーエネルギー貯蔵システム市場は2024年に80億8000万ドル規模に達し、2033年までに133億4914万ドル規模まで成長する見込みで、年間成長率は6.80%と予測されています 。
参考)https://www.dreamnews.jp/press/0000313524/
日本国内では、トヨタ、日産、ホンダなどの自動車メーカーがEV採用を加速させており、これに伴いバッテリー技術の向上と物流業界でのEV導入が急速に進展しています 。トヨタとパナソニックの提携による先進的なリチウムイオン電池開発は、EVの性能向上と同時に物流業界のフリートオペレーションの効率化を推進しています 。
参考)https://newscast.jp/smart/news/2250639
技術革新の面では、大規模蓄電プロジェクトが世界で約1,500件稼働しており、送電網の信頼性確保と電圧変動の緩和を実現しています 。物流施設においても、メガワット級のコンテナ型大容量蓄電システムにより、再生可能エネルギーの自立電源化と電力の安定供給が可能となっています 。
政府の支援策として、物流拠点や倉庫、トラックターミナル等での水素および大容量蓄電池を活用した脱炭素化促進の取り組みが推進されており 、これらの政策的後押しにより、物流業界でのエネルギー貯蔵バッテリー導入は今後さらに加速することが予想されます 。
参考)https://loogia.jp/column/carbon_neutral/