耐火建築物と準耐火建築物の構造基準と物流倉庫における適用規則

耐火建築物と準耐火建築物の構造基準と物流倉庫における適用規則

耐火建築物と準耐火建築物の基本概念

耐火建築物・準耐火建築物の基本要素
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耐火建築物

通常の火災が終了するまで倒壊・延焼を防止する最高基準の建築物

準耐火建築物

火災による延焼の抑制を主目的とした中間基準の建築物

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法的根拠

建築基準法第2条に基づく明確な技術基準と性能要求

耐火建築物の定義と主要構造部要件

耐火建築物は建築基準法第2条第9号の2に定められ、主要構造部が耐火構造であることが必須条件です 。耐火構造は「通常の火災が終了するまでの間、建築物の倒壊および延焼を防止するために必要な性能」を満たす構造で、壁・柱・床・梁・屋根・階段すべてが国土交通大臣の認定を受けた仕様でなければなりません 。
参考)https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/kento197_14_shiryo1-9.pdf

 

耐火建築物の主要構造部は、火災が発生してから鎮火するまでの間、建物の構造的安全性を維持し続ける必要があります 。これは延焼の「防止」だけでなく「倒壊の防止」も含む最も厳しい基準です 。
参考)https://yamadahomes.jp/media/floor-plan/fireproof-building/

 

特に物流倉庫では、3階以上の階が200㎡以上の場合に耐火建築物の適用が義務付けられています 。この規制により、高層かつ大規模な倉庫では必然的に耐火性能の高い鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造が採用されることになります。
参考)https://suikou-souko.com/column/98.html

 

準耐火建築物の分類とイ準耐・ロ準耐の特徴

準耐火建築物は建築基準法第2条第9号の3で定められ、イ準耐とロ準耐の2つのカテゴリーに分類されます 。イ準耐は主要構造部を準耐火構造とした建築物で、1時間準耐火基準と45分準耐火基準があります 。
参考)https://tamamo.site/warehouse/warehouse_fireproof/

 

ロ準耐は主要構造部を準耐火構造としない建築物で、建築基準法施行令第109条の3に基づく技術的基準に適合する必要があります 。ロ-1は外壁耐火を特徴とし、ロ-2は主要構造部の不燃化を図る構造で、主に鉄骨造の建物で採用されます 。
参考)https://kakunin-shinsei.com/semi%E2%80%90fireproof-compile/

 

物流倉庫では床面積1,500㎡以上で準耐火建築物の適用が必要です 。この基準により、中規模の倉庫でも一定の防火性能確保が求められ、建築コストと安全性のバランスを考慮した設計が重要となります。
参考)https://www.taiyokogyo.co.jp/makmax_plus/67438/

 

耐火構造と準耐火構造の技術的相違点

耐火構造と準耐火構造の根本的な違いは、火災に対する性能基準にあります 。耐火構造は「火災が終了するまでの間、建築物の倒壊および延焼を防止」することが求められ、準耐火構造は「通常の火災による延焼を抑制」することが基準です 。
参考)https://www.ur-net.go.jp/chintai/college/202004/000503.html

 

準耐火構造の性能要求は、非損傷性・遮熱性・遮炎性の3つの要素から構成されます 。一般的な準耐火構造は45分準耐火と呼ばれ、主要構造部が45分間倒壊しない仕様です 。用途や規模によっては60分準耐火基準も適用されます 。
参考)https://kakunin-shinsei.com/semi-fireproof-structure/

 

耐火基準の性能順位は、耐火構造>準耐火構造>防火構造となっており、上位基準で下位要求を満足することは可能ですが、その逆はできません 。これにより、建築計画時には将来の用途変更可能性も考慮した構造選択が重要になります。

物流倉庫における防火区画と耐火被覆の実務

物流倉庫では、耐火建築物・準耐火建築物である場合、準耐火構造材質の床か壁または特定防火設備で区画することが求められます 。防火区画は火災発生時に建築物内の他の部分への延焼を防止し、避難活動および消防活動の安全性確保に極めて有効です 。
参考)http://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/faq/souko/answer.html

 

耐火被覆工事では、吹き付け乾式工法、吹き付け半乾式工法、巻き付け工法などの施工方法があります 。ロックウールとセメントを使用した吹き付け工法は、軽量で湿気に強く、どのような形状にも適用しやすく継ぎ目のない仕上がりが実現できます 。
参考)https://www.jitsukawataikou.jp/blog/column/156965

 

巻き付け工法では、高耐熱ロックウールや不織布から成る耐火被覆材を鉄骨に巻き付け、ピンで固定する簡便な施工が可能です 。この工法は工場製品による安定した品質と、発じんがほとんどない作業環境を実現します 。
参考)https://kojimakenko.co.jp/business_01/

 

耐火建築物・準耐火建築物が物流コストに与える影響分析

耐火建築物や準耐火建築物は建設コストだけでなく、火災保険料にも大きな影響を与えます 。構造級別による保険料は、M構造(耐火建築物)→T構造(準耐火建築物・省令準耐火建物)→H構造の順に耐火性能が低くなり、火災保険料が高くなります 。
参考)https://www.sompo-direct.co.jp/eraberu/kotsu/article/column015.html

 

準耐火建築物の建設では、木造でも燃えしろ設計という特殊な設計手法が採用でき、耐火建築物のように特定主要構造部を耐火被覆で連続的に覆う必要がありません 。これにより、一定の材料コスト削減が可能となります。
参考)https://www.mokujukyo.or.jp/initiative/fireproof/

 

しかし、準耐火建築物でも延焼ライン内の開口部には防火設備が必須で、告示仕様または大臣認定仕様の選択が必要です 。防火設備の設置コストや、防火区画の設置による倉庫内レイアウトの制約も、物流オペレーションコストに間接的な影響を与える要因として考慮すべきです 。
消防庁による倉庫の建築基準法規制に関する詳細資料
国土交通省による建築基準法制度概要集