
物流施設では、建築基準法施行令第112条に基づく防火区画の設置が義務付けられており、配管がこれらの区画を貫通する場合には特別な処理が必要です 。硬質ポリ塩化ビニル管(塩ビ管)を使用する場合、以下の3つの方法から選択する必要があります。
参考)https://kenchikusetubisekkei.com/64_section-penetration/
告示1422号による基準適用では、硬質塩化ビニル管の外径と肉厚が規定値を満たす場合、防火区画貫通部の前後1メートルを不燃材料とする必要がありません 。具体的には、給水管用途でVP75(外径89mm)の場合、1時間耐火構造では肉厚5.5mm以上、2時間耐火構造では6.6mm以上が必要です 。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001351092.pdf
大臣認定工法は、最も施工性に優れた方法として物流施設で広く採用されています 。国土交通大臣認定番号「PS060WL-○○○○」(壁貫通用)または「PS060FL-○○○○」(床貫通用)を取得した製品を正しく施工することで、1時間の遮炎性能を確保できます 。
参考)https://www.inaba-denko.com/ja/inaba_note/detail/18
耐火性硬質ポリ塩化ビニル管は、内側と外側に一般的な塩ビ樹脂を使用し、中間層に膨張黒鉛と難燃剤を配合した3層構造になっています 。火災時の熱により中間層が膨張し、延焼を防止する仕組みです 。
参考)https://www.eslontimes.com/product/build/58/
物流施設で使用される塩ビ管には、VP管(一般用)とVU管(薄肉用)がありますが、防火区画貫通には肉厚の厚いVP管のみが適用できます 。VU管は肉厚が薄すぎるため、告示基準を満たすことができず、防火区画貫通処理には使用できません。
参考)https://kakunin-shinsei.com/penetration-processing/
耐火二層管は、内側に硬質塩化ビニル管、外側を繊維モルタルで覆った二層構造の配管で、主に排水・通気系統で使用されます 。物流施設の多層階構造では、各階の防火区画を貫通する縦管にこの耐火二層管が適用されることが多く、50年から60年の長期使用に対応できる耐久性を持ちます 。
参考)https://www.pvc.or.jp/contents/news/103-3.html
施工における最重要点は、貫通部周囲の隙間を不燃材料で確実に充填することです 。モルタルまたはロックウール(密度150kg/m³以上)を使用し、グラスウールは建築基準法上認められていません 。
参考)https://sub-siteforeman.com/rockwool/220/
物流施設特有の課題として、重量物を扱う設備からの振動対策があります。配管は貫通部の前後で確実に支持を取り、振動による配管の損傷や隙間の発生を防ぐ必要があります 。特に自動倉庫システムや大型搬送設備の近くでは、追加の支持金具設置が推奨されます。
参考)https://sekouya.com/232_setsubi_sheet/H-44boukakukaku_kantsuu-A.pdf
熱膨張耐火材フィブロックは、管に巻くだけで防火区画処理が完了する革新的な材料で、200度以上の加熱により5〜40倍に膨張して断熱層を形成します 。物流施設の改修工事では、作業時間の短縮と施工品質の均一化を図れるため、積極的に採用されています。
参考)https://haikan.ocnk.net/product/1521
完成検査では、国土交通大臣認定の場合は認定番号の確認と施工仕様書との照合が必須です 。消防設備安全センター評定品を使用する場合は、消防評定プレートまたは消防評定シールの設置が義務付けられています 。
物流施設では24時間稼働が基本のため、定期的な点検計画の策定が重要です。防火区画貫通部の点検は年1回以上実施し、配管の支持状況、充填材の状態、認定シールの有無を確認します。特に冷凍・冷蔵倉庫では温度変化による配管の伸縮が大きいため、四半期ごとの点検が推奨されます。
異種用途区画を有する複合物流施設では、建築基準法に加えて消防法施行令第8条(令8区画)の規制も適用される場合があります 。令8区画では2時間の遮炎性能が要求され、電気配線や樹脂製電線管の貫通は原則として認められていません。
参考)https://www.furukawa-ftm.com/bousai/commentary/
物流施設における塩ビ管の採用は、初期費用と維持管理費の両面で経済的メリットがあります 。鉄管と比較して材料費が安価であり、軽量のため施工期間の短縮が可能です。特に東日本大震災以降の職人不足により、施工性に優れた耐火塩ビ管への需要が急速に高まっています。
環境配慮の観点から、塩化ビニル管・継手協会が運営するリサイクルシステムにより、工場端材や施工端材を回収して再びパイプの原料として利用する循環システムが構築されています 。物流施設の大規模改修時には、撤去した配管材料のリサイクル処理も考慮した計画策定が求められます。
接着剤の可視化技術として、透明な難燃材を添加した継手と青色の接着剤を組み合わせることで、接着の有無を目視で確認できるシステムが導入されています 。熟練配管職人の不足を背景とした品質管理の強化策として、物流施設の新築・改修工事で広く採用されています。
将来的には、IoT技術を活用した配管状態の遠隔監視システムの導入が検討されており、防火区画貫通部の温度や振動を常時監視することで、予防保全型の維持管理への転換が期待されています。物流業界のDX推進とともに、インフラ設備の高度化も進展していくでしょう。