

NEDOが推進するグリーンイノベーション基金事業では、「スマートモビリティ社会の構築」プロジェクトに予算総額1130億円を投入し、運輸部門のカーボンニュートラル実現を目指しています 。このプロジェクトは、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)の商用利用を促進し、運行管理と一体的なエネルギーマネジメントシステムの構築を通じて、物流業界の抜本的な変革を推進する取り組みです 。
参考)https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101560.html
日本国内の二酸化炭素排出量のうち、自動車の利用による排出は16%を占め、そのうち40%が貨物などの商用車によるものです 。商用車は稼働率が高くエネルギー消費量も多いため、従来の電動車では必要な稼働率を維持できず、乗用車と比較しても電動化が遅れているという課題があります 。
この課題に対応するため、商用車が計画的に運行されることに着目し、同じエリアを走行する商用電動車を連携させながらエネルギー利用と運行の最適化を図る革新的なアプローチが採用されています 。
ヤマト運輸は、NEDOのグリーンイノベーション基金事業において、「グリーンデリバリーの実現に向けたEVの導入・運用について」の単独提案事業と、「商用電動車普及に向けたエネルギーマネジメントシステムの構築・大規模実証」の共同提案事業の2案件が採択されました 。
参考)https://kyodonewsprwire.jp/release/202207153896
単独提案事業では、群馬県全域を実証地域として、特定エリア内における集配車両のEV導入・運用とエネルギーの最適化を行います 。研究開発内容には、EV運用オペレーションの最適化、充電電力平準化システムの開発、拠点間電力融通システムの開発が含まれており、2022年度から2030年度までの長期間にわたって実施される予定です 。
参考)https://www.lnews.jp/2022/07/o0719306.html
共同提案事業では、燃料電池大型トラックの導入および他社と共同のエネルギーマネジメントシステムの活用を行い、東京~大阪間・東北間を実証地域として2023年1月から2030年3月まで実証が進められます 。
佐川急便も同様に、グリーンイノベーション基金事業に参画し、商用電動車普及に向けた取り組みを強化しています 。
参考)https://fullload.bestcarweb.jp/news/361952
グリーンイノベーション基金事業では、車両・走行データやエネルギー消費、インフラ活用、地図などの外部データを基に、インフラの最適配置やエネルギー利用の最適化を検討するシミュレーション技術の開発が進められています 。このシミュレーション技術は、商用利用されるEV・FCVが本格普及した際を見据え、エネルギーシステムに対する負荷や充電・充填インフラの設置などの最適化を図る重要な役割を担っています 。
実証内容には、複数の事業者による大規模な電動車の商用利用実証が含まれており、シミュレーションを行うために必要なデータ収集や、運輸事業者が電動車の利用を拡大するために必要な運行管理と一体的なエネルギーマネジメントの構築・検証が行われています 。
特に注目すべきは、運輸事業者に対して最適な運行管理・エネルギーマネジメントなどの検討に資するモデルを提供する社会システムの構築です 。これには、データ・モデルの流通・解析などに関するアーキテクチャやその実装に必要な標準化などに関する検討も含まれており、物流業界全体のデジタル化と脱炭素化の両立を目指しています 。
NEDOのグリーンイノベーション基金事業では、次世代船舶の開発においても革新的な取り組みが進められています。水素・アンモニア輸送次世代船舶の経済性評価に関する調査が実施されており、海上物流の脱炭素化に向けた技術開発が加速しています 。
参考)https://www.nedo.go.jp/koubo/SE1_100001_00089.html
このプロジェクトでは、次世代船舶の社会実装に向けて、経済性の観点からも詳細な評価・検討が行われており、国際海上輸送における温室効果ガス排出削減の実現に向けた重要な研究開発が進行中です 。
物流業界では、陸上輸送だけでなく、海上輸送においても脱炭素化が求められており、水素やアンモニアといった次世代エネルギーを活用した船舶の開発は、国際競争力の維持・向上にも直結する重要な取り組みとなっています 。
参考)https://www.nedo.go.jp/content/100935089.pdf
これらの技術開発により、2025年までにゼロエミッション船の技術確立を目指し、国際海運のカーボンニュートラル実現に向けた道筋が示されています 。
グリーンイノベーション基金事業では、物流業界のデジタル変革も重要な要素として位置づけられています。商用電動車向け運行管理・エネルギー管理システムに関する調査が実施されており、物流事業者向けの運行管理・エネルギー管理システムに関するニーズ調査やビジネス化の検討に向けた分析が行われています 。
参考)https://www.nedo.go.jp/koubo/DA3_100321.html
このような調査により、物流事業者が抱える現実的な課題と、それに対する技術的ソリューションの最適な組み合わせが検討されており、実用性の高いシステム開発が進められています 。特に、運行データとエネルギー消費データの統合的な管理により、物流効率とエネルギー効率の両立を実現する技術開発が注目されています。
さらに、グリーン物流パートナーシップ会議によるモーダルシフトの推進や、佐川急便による大型複合施設の設計段階からの脱炭素輸送網構築など、物流業界全体でのシステム的な取り組みが展開されています 。
参考)https://www.daiwahouse.co.jp/business/logistics/dplletter/column/005.html
これらの取り組みにより、2030年の温室効果ガス排出量48%削減(2020年度比)、2050年の排出実質ゼロの実現に向けた具体的な道筋が構築されつつあります 。