
AGV(Automatic Guided Vehicle)は、磁気テープや高周波信号線などの物理的誘導体に沿って走行する自動搬送車である 。物流業界では1980年代から導入が進み、決められたルートを正確かつ高速で移動することに特化している 。
参考)https://www.okamura.co.jp/mhs/column/007222.html
AGVの最大の特徴は、誘導走行システムによる高精度な搬送能力である 。障害物検知時は自動停止するが、ルート変更による回避は不可能なため、固定レイアウトでの反復作業に最適化されている 。物流倉庫における定型的な入出荷作業や、製造現場での工程間搬送において、安定した搬送精度を発揮する 。
参考)https://www.mec.docomo.ne.jp/portal/column/agv-amr.html
初期コストは比較的抑制可能だが、導入時には現場レイアウト変更や誘導体設置が必要となる 。運用中は誘導体の定期メンテナンスが必須で、レイアウト変更時には誘導体の再設置作業が発生する 。
AMR(Autonomous Mobile Robot)は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を搭載した自律走行搬送ロボットである 。周囲環境をセンサーで認識し、リアルタイムで最適ルートを算出する機械学習機能により、人間に近い柔軟な判断能力を持つ 。
参考)https://smart-logistics.altech.jp/amr/column/agv-amr.html
協働搬送ロボットとも呼ばれるAMRは、人との作業空間共有を前提とした設計が特徴である 。障害物や作業者を検知すると自動的に迂回ルートを生成し、安全な搬送を継続する 。この自律性により、レイアウト変更が頻繁な現場や、人の往来が多い複雑な環境での運用が可能となる 。
参考)https://linx.jp/solution/logistics/01/
導入時の物理的工事は最小限で済むが、マップデータ作成や人とロボットの作業分担の明確化が必要である 。運用中もレイアウト変更時にはマップデータの再構築が求められる 。
AGVとAMRの導入コスト構造には明確な差異が存在する 。AGVは本体価格が比較的安価で、数千kg搬送可能な大型機種も選択できるが、誘導体設置やレイアウト変更に伴う工事費用が発生する 。
参考)https://lplanners.jp/blog/agv-vs-amr/
AMRは初期費用・ランニング費用ともにAGVより高額となるが、近年はサブスクリプション型サービスの普及により導入ハードルが低下している 。また、工事費用は最小限で、将来的な拡張や移設時の費用負担も軽減される 。
株式会社ライジングの導入事例では、台車型物流支援ロボット「CarriRo AD」により年間約1,080万円のコスト削減を実現し、省人化効果により導入費用を1年で回収している 。このように長期的な運用を考慮すると、AMRの方が高いコストメリットを生む場合が多い 。
参考)https://www.mirabot.co.jp/column/robotics/logistics-automation
SLAM技術は、移動体の自己位置推定と環境地図作成を同時実行する革新的技術である 。AMRに搭載されたSLAMシステムは、カメラやレーザーレンジファインダーなどのセンサーを活用し、未知環境でもリアルタイムで地図情報を構築する 。
参考)https://www.tjsys.co.jp/focuson/clms-slam/index_j.htm
従来のGPS依存システムとは異なり、SLAMは屋内環境や地下施設でも高精度な位置推定が可能である 。物流倉庫内では、商品棚や作業機器の配置変更に対してもAMR自身が地図を更新し、最適ルートを再計算する 。
参考)https://jp.mathworks.com/discovery/slam.html
近年はディープラーニング技術を応用したSLAMシステムも開発され、より高度な環境認識と予測機能が実現している 。これにより、AGVでは対応困難な複雑な物流環境での自律運用が可能となっている 。
参考)https://www.fa.omron.co.jp/product/special/library/robotics/agv/
物流業従事者がAGVとAMRを選択する際の戦略的判断基準は、現場の運用特性と将来計画に依存する 。固定レイアウトでの定型作業が中心で、搬送精度を重視する現場ではAGVが適している 。
一方、レイアウト変更が頻繁で、人との協働作業が必要な現場ではAMRの柔軟性が価値を発揮する 。EC需要増加により多品種少量配送が主流となる現代物流では、AMRの適応力が競争優位性につながるケースが増加している 。
参考)https://www.fiweek.jp/hub/ja-jp/blog/article03-agv.html
導入規模も重要な判断要素で、小規模導入から段階的拡張を計画する場合は、AMRの拡張性が有利である 。逆に、大規模な一括導入で運用コスト削減を重視する場合は、AGVの方が経済的メリットが大きい 。
参考)https://evort.jp/article/agv
物流倉庫におけるロボット導入実績を参考にすると、3PL倉庫では入荷搬送無人化によりAGVで30%の時間短縮を達成し、アパレルEC倉庫ではAMRにより生産性1.8倍向上を実現している事例がある 。これらの成功事例は、現場特性に応じた適切な技術選択の重要性を示している 。
参考)https://factory-dx-center.com/agv-case-study-10-patterns/